X7_Days of our Lives
第二十六話「Days of our Lives」。サブタイトルは「雲の導き」。
呆然と座り込むデルフィ・カージン。
「橙」の迷宮の中で姿を消した鍛冶の神官の隣には、彼が恐れ逃れていたジマシュ・カレートの姿がある。
カヌートと名乗っていたスカウトの仲間もいるが、違う名で呼ばれ、挑んでいた探索の記憶を否定し続ける。
混乱と絶望の中に落とされたデルフィは自分の記憶を探り、閉じ込められた家から逃れる術を探す。
〇ヌエル・ホロウ
スカウト技術を持った探索者。
カヌートと名乗り、ダンティンに巻き込まれる形でベリオたちの「仲間」になっていた男だが、このエピソードで正体が明らかに。
本名はヌエル。登場時の年齢は二十一歳、身長は百六十五センチで小柄。
同性愛者であり、デルフィ奪還の褒美としてジマシュに「愛して」もらった。
〇ゲルカ・クラステン
雲の神殿の神官長。雲の神に仕えて三十年、真摯に神官として歩み続け、迷宮都市でのまとめ役を任されている。
登場時の年齢は五十歳で、身長は百六十九センチと高くないが、がっしりとした体形をしている。
強い信仰とユーモアで、神官たちをまとめている。
雲の神殿の役割として、辛い思いをしている女性たちにも手を貸しており、性質の悪い娼館の経営者からは煙たがられている。
鍛冶の神に仕えるデルフィにも手を差し伸べ、苦しむ若者を導く。
― 迷宮都市豆知識 ―
□軟禁状態
デルフィが目覚めた場所はジマシュと暮らしていた貸家。
「02_Wrong choices」でフェリクスが訪ねた貸家であり、窓は木が打ち付けられて塞がれた状態になっている。
鍛冶の神殿へ行くことは何度かあったが、ジマシュとヌエルがぴったりと寄り添い、デルフィに自由はない。
神殿へ助けを求めることもできず、意味のない祈りにデルフィは苦しんでいる。
□ぬるいスープ
エリシャニー親子を「黒」で見捨てた辺りからの記憶を失い、ダンティンたちとの探索などなかったとジマシュたちはデルフィに囁き続ける。
すべて夢だと言われ続けて、デルフィは自身の記憶を疑い始めているが、これは無理矢理飲まされていたスープに入れられた薬の効果が出てのこと。
どうしても飲ませようとする二人を不審に思い、抗った結果、デルフィはぎりぎりのところで気力を取り戻し、ここから逃げ出さねばと決意していく。
□疑念
仲間たちの存在を否定されたが、デルフィの中には三人の記憶がはっきりと残っている。
フィーディーと向かった「白」、大きな失敗をした「紫」、挑み続けた「橙」の底への道。
そして父が傷をつけた神官のしるしへの違和感が実り、デルフィは立ち上がる。
□友情のかけら
ヌエルとの問答と疑惑のスープから、デルフィはギアノのことを思い出す。
単なる探索仲間ではなく、「友人になりえる良い人間」だと思えたギアノの存在は、デルフィの心に力を与える。
□魔術の応用
スープを拒否した結果思考がクリアになり、記憶を辿った末にデルフィは「脱出」の魔術に可能性を見出す。
ベリオの相棒であったニーロの「脱出」の自由な様子に、単純な移動ができるのではと考え、ベッドに横たわったまま試すと決める。
西の果ての荒れ地ならば建物はなく、どこに出ても大丈夫だと気づき、鍛冶の神官は見事に貸家から抜け出してみせた。
□消えてしまった店舗
無事に西側へ逃げ出したデルフィだが、世話になっていた店は消えてなくなっている。
長い間逗留していた「幸運の葉っぱ」と隣にあった食堂は更地になっており、ギアノが働いていた「コルディの青空」すらも閉店している。
迷宮調査団本部の周辺は古い建築物が多く、西側には建て直しの波が来ていた。
感じの悪い宿の主人は迷宮都市を去ってしまい、荷物は最後の客であるギアノに任されている。
□雲の神殿へ
デルフィは世話になっていた雲の神殿へ向かい、神官長のゲルカと再会する。
ゲルカはデルフィへ厳しい修行をしていると言い、自身のケープを授けていくつかの助言をした。
長いケープを纏うと神官長に護られているように感じられて、デルフィは勇気を出して歩み出す。
□迷宮調査団員
雲の神殿を出たデルフィはギアノの行方を探るべく、街の南側へ向かおうとする。
道の先に揃いの制服の集団、迷宮調査団の面々が見えて立ち止まると、最後に唯一の女性団員が姿を現し、彼女が腰から提げた剣に気付く。
ベリオの使っていた剣は「緑」の深い層で見つかった特別なもの。同じ剣は存在するかもしれないが、滅多にないものであり、女性団員の横顔には見覚えがあった。
ドーンことチェニー・ダングが女性だったことにデルフィはようやく気付き、大きな声をあげて逃げ出した団員を追いかける。
□雲の神官兄妹との遭遇
ドーンを追いかけている間に人とぶつかり、追跡は終わる。
デルフィがぶつかってしまったのは雲の神官アデルミラで、同行者は兄のアダルツォ。
雲の神官のケープを着たデルフィに、アダルツォは手を貸して欲しいと願う。
二人は赤ん坊を隠すように抱いており、樹木の神殿近くまで行きたいと打ち明け、デルフィはゲルカに受けた恩を思い出して同行を決める。
□もう一つの遭遇
ルーレイ兄妹を送り届けると、樹木の神殿からニーロが姿を現す。
すぐに去らねばと思っていたデルフィだったが、無彩の魔術師だと気付いてニーロに声をかけ、胸の中で渦巻いていた疑念を晴らしていく。
ベリオ・アッジを知っているか、彼は確かに存在していたのか、今もこの街にいるのか。
ニーロからの回答は誠実なものだが容赦がなく、デルフィは希望を得られないままだ。
けれどベリオの存在は確かなものになり、鍛冶の神官の心を強めた。




