15_Noxious Cuisine 〈サイドビジネス〉
第二十話「Noxious Cuisine」、サブタイトルは 「サイドビジネス」。
「橙」の迷宮の中で偶然ベリオのパーティと二度遭遇して、仲間にしてほしいとやってきた青年ギアノ・グリアドのエピソード。
仲間入りは最下層攻略後に延期され、それまで待つために料理人の仕事を見つけたようだ。
冒頭でニーロが語った通り、迷宮都市では魚は貴重品。
内陸で、水場が遠い荒野のど真ん中にあるラディケンヴィルスには、魚介類が運ばれてくることは滅多にない。
そんな魚が「青」の迷宮で採れる。珍しい迷宮魚を売り込まれたコルディの青空の店主、バルディは調理法に悩んでいるようだ。
港町からやって来たというギアノは、調子の悪いバルディの店で働き、魚の良い調理法を見つけるべく頑張る。そんなお話。
〇バルディ・コルディ
迷宮都市の西側で食堂「コルディの青空」を営んでいる。
腕の良いバルディの店は賑わっていて、王都で暮らす妻子の為に仕送りをしていたが、それももう昔の話。
近くに出来た大型店に客を奪われ、店の経営はピンチに陥っている。
一発逆転を狙うべく、迷宮魚を使った料理を作ろうとして、調理の仕事を探しにやって来たギアノを雇った。
― 迷宮都市豆知識 ―
□難攻不落の「青」
魔術師ニーロはウィルフレドを連れて「青」の迷宮へ向かっている。
長い間入口付近ですらまともに歩く者もいなかったが、ようやく奥へ進む道が発見できたようだ。
ニーロは戦士に、泳げるかどうかを問う。ニーロも幼い頃から森の奥で水に親しむよう訓練されてきたという。
魔術師ラーデンはニーロにすべての迷宮を攻略するよう言い渡している。
泳ぎの訓練も必要だとわかっていて、水に放り投げられていたのだろう。
□西側の住人
迷宮都市の西側の門の外側では、住むところも仕事もない者たちが身を寄せ合って暮らしている。
彼らは「脱落者」と呼ばれており、埋葬の為の穴掘りの仕事などをして食いつないでいる。
ニーロによれば、食料を巡って争った結果、「青」で魚を捕まえることに成功したらしい。
□迷宮魚の味
ぎょろりとした目に、大きなウロコを持つ魚が「青」の迷宮で泳いでいる。
形状、大きさはさまざまだが、味は共通していて「とてもまずい」。
どんな調理法をしても独特の臭みがあり、バルディとギアノを苦しめる。
□ギアノ・グリアドの一番の特技
明るく軽やかな態度で人懐こいキャラクターのギアノだが、このエピソードでは彼の一番の特技が見られる。
港町カルレナンからやってきた青年の一番の特技は「中年男性ころがし」であり、バルディをからかいながらも親しく接して、仲を深める。
アードウの店のバリーゼも得意なタイプで、肩の力の抜けたやりとりが交わされていく。
故郷で幼い頃から漁師、猟師、酔客、農夫などの大人の男性と働いてきたからこそ身についた特技だ。
□迷宮で採れる薬草と毒草
「緑」の低層で採れるものは毒草が多く、「紫」で採れるものは薬草が、それも値段の高いものが多い。
なかなか見つからない貴重な薬草には値段がついておらず、単体で取引されることはない。
□伝説の毒見役
薬草に魅せられ、倉庫に忍び込んではつまみ食いをしていたという伝説の女性、ダステが登場する。
何度も死にかけたがやめられず、とうとう毒見役になったという、薬草業者なら誰もが知っている婆さんだ。
□あっちの薬
迷宮の中には、精力剤も用意されているらしい。
知らずに見つけて使うと、迷宮探索どころではなくなってしまう。
□業者たちのキーレイ・リシュラ評
薬草業者たちからは、樹木の神官長という立場よりも、幼い頃から迷宮に通った凄腕の採集係として知られているようだ。
「緑」の毒はもう効かないとか、一人でも最下層に行けるとか、噂は大きく膨らんでしまっている。
□あちこちで見かけられるギアノ
究極のモブ顔であるギアノは、あちこちで見かけられるし、誰かと間違えられて声をかけられる。
迷宮都市へやってくる青年たちの平均ど真ん中の容貌は、バリーゼに「スパイか」と言われてしまうほどに記憶に残りにくいようだ。
□「少女」を見てはいけない
「紫」の採集に付き合わされることになり、ギアノは薬草の群生地帯で不可思議な人影を見る。
ふんわりと広がるスカートをはいて、はねるように歩く少女の姿だ。
その正体はまだ謎に包まれているが、「少女」を見た者は意識を失い、知らない間に襲われて命を落とすことがある。
被害を防ぐためには、口元を布などで覆い、少女をまっすぐに見ない。出現した時には身を低くして、いなくなるまで耐える。
うまくやりすごせたら、すぐに迷宮を出るよう業者たちは言われている。帰り道で同業者に出会った時は、出現情報を伝えあう。
薬草の群生地帯には探索者が入り込まないので、正体の判明にはまだ至っていない。
「戦わない」業者たちにとって最も頭が痛いのは、この「少女」現象だという。
□あまり入れ込まない方がいい
バルディにもバルジにも、女性と体だけの関係を持つのはどうかと釘をさすギアノの姿が描かれる。
ギアノ本人は誰かと深い仲になったことはなく、それどころかまともに恋愛をした経験すらない。
それでもこんな風に男女の気配を感じられるのは、故郷でおじさんたちに囲まれて暮らしていたから。
あいつとあの子がどうのこうのとたくさん吹き込まれ、打ち明けられ、聞かされた経験の賜物だ。
□バルジとデントー
仲間入りを断られても同じ部屋に逗留し、ギアノはバルジとデントーと仲を深めている。
バルジとドーンの関係やデントーの正体に気付き、勘の良さを証明していく。
その結果、デントーから「本当の名」を聞かされることになった。
ベリオとの相性も良く、軽やかな会話が交わされる様子が見られる。




