11_Pay Day〈思いがけない出来事〉
第十五話「Pay Day」 サブタイトルは「思いがけない出来事」。
ため息をつき、なにやら悩んでいるカミルとコルフから物語は始まる。
「緑」で救った少女が目を覚まし、ティーオはお見舞いするのに夢中で探索をさぼっているようだ。
同室で暮らし少しばかり付き合いの長いフェリクスがいさめることになったが、一日分の予定が空いてしまった。
自分がやるべきこと、目指すべきところを考えて探索初心者は立ち上がる。
なにか学べるのではないかと考えて向かった先は「慧眼の剣士マリート」の家で、摩訶不思議な訓練の時間を持つことになる。
― 迷宮都市豆知識 ―
□目を覚ました少女
ティーオがウィルフレドたちの手を借りて迷宮から連れ帰った少女は目を覚ましたものの、まともに話すことすらできない状態に陥っている。
男性を怖がっているので、お見舞いに行ってもティーオは会うことができない。
けれど、きっと美しい少女であろう「あの子」の恩人ポジションに入りたくて、若者は一生懸命通うのだ。
□マリートとフェリクス
突然やって来たフェリクスに、マリートは片目を覗かせるくらいしか扉を開けない。
コミュ障のマリートらしい対応なのだが、こんな様子を初めて見たフェリクスは当然驚く。
驚きながらもなんとなく受け入れるフェリクスは良い奴だし、おとなしくまじめそうなフェリクスになんとかマトモな先輩であろうとマリートも努力をする。
悪くない組み合わせの二人と言っていいだろう。
□有名な探索者には通り名が付く
マリートの名は知れ渡り、「慧眼の剣士」と呼ばれていることが明かされる。
カッカーは「聖なる岸壁」、ニーロは「無彩の魔術師」、ラーデンは「大魔術師」か「偏屈のラーデン」などと呼ばれている。
難しい探索を成功させた者はいつの間にか迷宮都市で噂されるようになり、あだ名をつけられるようになっているようだ。
□行ったことある?
ウィルフレドからの情報を聞き、フェリクスたちは娼館街へ向かうことになる。
男女のあれこれについて穏やかでいられない年代の青年たちには憧れ半分、不安半分の場所であり、勝手をわかっている者がいればと思ったのだろう。
残念ながら、四人とも北西のあたりに世話になったことはない。近くを通ったことくらいしかない。
□悲劇の恋人たちの噂
カミルとコルフが聞いた噂は、四話目「迷宮心中」で死んでしまったカティリアとデリンについてのもの。
だいぶ美しく脚色されているようで、二人は愛を引き裂かれた悲しい恋人同士に仕立て上げられている。
□下働きの暮らし
ウィルフレドから聞かされた情報は正しく、フェリクスたちはアデルミラの兄、アダルツォを発見することができた。
美女まみれの素敵なところだと思っていたのに、悲哀に満ちた裏側から見ることになり、四人は娼館への憧れをずいぶん薄めたようだ。
□迷宮都市に現れた強盗
花を買って浮かれ歩くティーオは裏路地で襲われ、まんまと全財産を奪われてしまう。
同室であったフェリクスの分まで奪われて意気消沈するティーオを、フェリクスは許し、慰めてくれる。
ティーオの良心は猛烈に痛み、心を入れ替えるきっかけになった。
この強盗二人組は、二つ前の話でデルフィが「紫」から連れ帰った死者たちである。
どうやら気力が少し足りなかったようで、大男の体には毒が残っていた。
□有効な金の使い道
術符の代金の一部をまだ受け取っていなかったティーオは、隠し財産の使い道をアダルツォの救出に使うと決めた。
一部はフェリクスが払い、足りない分はウィルフレドが負担している。
フェリクスもティーオも、隠し持っていた金が「良い使い道」のために使われてほっとしている。
特にティーオはなんとなくドレーンとドニオンのことが心に引っかかっているので、ここで使いきれたことに安心したようだ。




