X2_Lost in Time
第十一話「Lost in Time」 サブタイトルは「秋意」。
迷宮都市でも一番の有名な人物であるカッカー・パンラ。
探索は引退したものの、その名はいまだに町中に知られており、様々な問題の解決を頼まれたり、相談を持ち掛けられては話を聞きに行く日々を送っていた。
頼まれればなんでも引き受け、他人のために走り回る性格だと知ってはいても、家で落ち着いて過ごす時間が少ないことについてヴァージは少し呆れているらしい。
そんなカッカーのもとに、とある商人が「相談」を持ち掛ける。ムーレンから紹介されたドナート・マイファーは、十六年前に亡くなった弟夫婦の子供らしき若者をみかけて、出自を確認できないか考えているようだ。
〇シュア・リシュラ
キーレイの母。夫と共にリシュラ商店を立ち上げ育てながら、子供たちも育ててきた。
初登場時は五十三歳。上品なマダムであり、カッカー一家と交流を持っている様子が見られる。
キーレイは迷宮都市に残ったが、その下の二人の子供は王都の親戚に預けており、こまめに会いに行っていた。
― 迷宮都市豆知識 ―
□カッカー・パンラの今の仕事
探索を引退してから、樹木の神殿の神官長の座を引き、カッカー・パンラはヴァージの夫になり、子供たちの父になった。
それ以外については、なにも変わらない。
人脈や相談係としての立場はそのままなので、様々な立場の人間から相談を持ち掛けられるし、街を歩いては困っているであろう人間に手を差し伸べる。
神殿による行き倒れの保護はずっと行われてきたが、より熱心で丁寧になったのはカッカーの影響を受けてのことだ。
□廊下の修繕
若者が適当にやった廊下の修繕は出来がよくなくて、カッカー自ら手直しをすることに。
二歳のリーチェとカッカーの会話は、この物語ではかなりレアなほのぼのとしたシーンになっている。
□リシュラ家との絆
キーレイの実家であるリシュラ家と、カッカーの付き合いは長い。
キーレイの父であるキアラ・リシュラが一代で薬草業者として成功したのは、自ら迷宮に赴き熱心に研究をつづけたから。
まだカッカーが駆け出しの神官だった頃に助力を求められ、共に「緑」へ通いだして以来、付き合いが続いている。
夫婦で始めた小さな薬草屋と、二人の息子であるキーレイは大きく育って、街で名の通った存在になった。
キーレイの母であるシュアとも交流が深く、リーチェとビアーナを可愛がってもらっている。
□王都のお菓子のお土産
キーレイの母であるシュアが持ってきてくれたのは、砂糖などを固めてお花の形にした可愛いお菓子である。
その他には、きれいな色の飴などもある。日持ちするお菓子は、そのくらいしか売られていない。
□甥っ子疑惑
ドナート・マイファーは弟夫婦を失ったが、生まれた子供については行方がわからず、生きているかもしれないと望みを持ち続けてきた。
弟の妻は灰色の髪、灰色の瞳を持っており、同じ色合いの若者を見つけてもしかしたら……と考えている。
これについてはドナートは記憶違いをしており、ミレユの髪と瞳は灰色ではなく、もう少し濃いめのチャコールグレー。
ニーロは探していた甥とは別人。キーレイが言ったのは適当なでまかせだが、甥その人でないのは間違いない。
□居候先選び
ウィルフレドはカッカーの屋敷を出ることになり、とりあえず誰かの家に居候してはどうか話し合っている。
ニーロはベリオが戻らないであろうと考えており、受け入れるつもりでいる。
キーレイも問題なく部屋を用意できるが、マリートは二人の家にウィルフレドが住むのがなんとなく嫌で、自分の家に住んだらどうだと言い出している。
実際にマリートの家に住むと言った場合、同居の解消まではあっという間だっただろう。
のちにマリートの家の妙な間取りについて言及される話があるが、二人以上では住みにくいであろう変な平屋である。
□あの子は何をして暮らしているのか
マリートが妙なことを言い出したばかりに、ドナートは嫌な類の勘違いをさせられることになった。




