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【8巻予約開始!】裏稼業転生~元極道が家族の為に領地発展させますが何か?~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第707話 死人に口なしですが何か?

 王立学園生徒個人情報漏洩事件は、教頭であったコブトール男爵の処罰で解決を見たが、一部の生徒の情報はすでに漏れていたのではないか? という疑惑を残してのものとなった。


 だがそれも、コブトールは否定を続けて認めなかったことで有耶無耶となる。


 そのコブトールだが、学園長チューリッツのお情けで、仕事を斡旋してもらっていた。


 そこは、とある地方貴族領主の事務職であり、計算の能力が優れているコブトールにはうってつけのものである。


 しかし、一週間もしないうちに、コブトールはその職も辞して行方をくらますことになった。


 雇い主であった領主が、チューリッツ学園長にその知らせをしたのだが、その内容は不可解なものであった。


 それは、コブトールが、


「さる上級貴族が、私の能力を買ってくれておりまして、少しでも早くうちに来てほしいとお願いをされました。路頭に迷いかけた私を雇ってくれたことには感謝いたしますが、そういうことですので、辞めさせて頂きます」


 と雇い主である領主に告げて、去ったのだという。


 領主は、コブトールが雇っていた数日間、外部の者と接触した様子がなかったので、その言葉に不信感を覚えたのだが、本人が辞めると言っている以上、止める義理もないので認めたのだとか。


 どうやら、ここに来る前に、すでに誰かと接触していたのかもしれないと手紙には記されていた。


 チューリッツ学園長も、そのことで不審に思い、事件と関係があるかもしれないと考え、近衛騎士団に報告する。


 近衛騎士団もその報告を聞いて、コブトールの再調査を始めたのであったが、数日後、王都郊外の川に水死体でコブトールは発見された。


 やはり、コブトールの情報売却には、裏があったというべきだろう。


 コブトールとやり取りの疑惑があった御者と搭乗者についても、釈放後、近衛騎士団がその後の動きを監視していたのだが、コブトールの水死体発見と時期を合わせたかのように失踪した。


 このことは、近衛騎士団諜報部の関係者から、ランスキーの部下を通してリューの耳に入る。


「……コブトール男爵が情報を売った相手は、やはり、ただの商会関係者ではなかったかぁ。そこを辿ったらエラインダー公爵に行き着きそうだけど、そこも尻尾をださないだろうね。それにしても、生徒の個人情報を集めてどうするんだろう?」


 リューはリーンと共に、数少ない情報漏洩を免れた生徒であったが、コブトールがどのくらい、生徒の情報をこれまで漏洩させていたのかは、わかっていない。


 当人は、今回が初めてだったと弁明していたが、死んだ今となってはそれも疑わしい話である。


 実際、近衛騎士団諜報部も生徒だけでなく教師やその関係者情報も漏洩していた可能性を示唆していたから、ますます、怪しいところであった。


「リューやイエラ・フォレスさんの個人情報が守られただけでも、運が良かったんじゃないかしら? まあ、イエラさんのは全て偽装情報でしょうけど」


 リーンは、『次元回廊』持ちのリューや、成績一位を取っているイエラの能力が外部に漏れたらそれだけで騒ぎになるのは明らかだから、それだけを安堵した。


「僕の情報は『王家の騎士』の称号を得た時点で、ある程度知られているから問題ないよ。移動も複数できることは、称号のお陰で無理を言う人がいなくなったから公表できたことではあるけどね。でもまあ、イエラ・フォレスさんの個人情報は出鱈目でも注目は浴びるかな。すでに、王家が興味を持っているらしいし」


 リューは自分のことはともかく、その自分より上位の成績を取ったイエラ・フォレスが国に目を付けられたら、当人が迷惑に感じてこの地を去る可能性を心配した。


「そうね。せっかく千年ぶりに、穏便な形で人間に接触してくれているのに、下手に刺激して国が滅びました、では笑えないもの」


 リーンはどこまで本気かわからない冗談を言う。


「イエラさん静かにしているから、そのことを忘れてた……。そうだよ、刺激したら国の一つや二つ滅ぼされるかもしれないんだよ……」


 リューもリーンの冗談が本当に笑えないので、真面目に受け取る。


 そこへ、執務室の扉にノックがあり、返事をすると部下が入ってきた。


「失礼します。──東部の動きについての報告に上がりました」


「東部の動き? ああ! 『屍』の後継団体の動きだよね? そろそろ大きな組織が出来たのかな?」


 リューは、未だ後継団体の動きがなかった東部方面であったので、ある程度予想できることを口にした。


「……それが、表向きには全く動きがありません。ですが……、どうも、地下に潜ってすでに、後継団体ができているのではないかという噂があります」


「地下に? どういうことだい?」


「自分もいろんな不確定の情報や噂を総合しての予想なので自信がないのですが……。裏社会に近い商会の不穏な動きや、チンピラ達の動きなどの報告の他に、先日まで連合を組んでいた情報屋組織が東部地方方面でそういう未確認情報を掴んだと、こちらに流してくれたこともありまして、本当に噂の類なので信憑性はないんですが、西部地方方面の『屍人会』、南西部地方方面の『亡屍会』、そして、王都周辺一帯で結成した『屍黒』という流れがあっての東部方面の噂だったので、噂でも報告した方が良いかなと思いました」


「……それで、その地下組織の名前くらいはわかっているのかな?」


 リューは、部下の勘を信じて、その組織名を聞く。


「情報屋組織の奴が言うには、『むくろ』という名前だそうです。ただ、これも本当に噂程度なのでわかりませんが……」


「……『骸』……ね? ──他の組織が表に出てきたのに対して、東部地方方面が反応ないのは気になっていたんだよ、ありがとう。また、何かわかったらすぐに報告してね」


「へい!」


 リューは、部下を労うと、下がらせるのであった。


「『骸』か……。『屍』の後継組織っぽい名前だよね。それも、また、表に出てこない組織として結成したのなら、これこそ、バンスカーの後継団体として相応しいかもしれない……」


 リューは『屍人会』『亡屍会』『屍黒』は、裏社会の表舞台に出てきた分、大きくても、まだ、やりやすい相手と思っていたのだが、ひっそりと地下に潜った状態で組織を結成したと思われる『骸』を不気味に感じるのであった。

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