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【8巻予約開始!】裏稼業転生~元極道が家族の為に領地発展させますが何か?~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第690話 正体を突き止めますが何か?

 警戒を強めていた『竜星組』の傘下組織の幹部にも負傷者が出ることになり、『屍黒』の攻勢は強まっていた。


『屍黒』はすでに警備隊、王国騎士団から広域危険団体として認定され、動きづらいはずにも関わらず、ここまで強硬な姿勢を崩していない。


「あちらはまだ、その重大性に気づいていないようだ」


 とリューは思いながら、裏で着々と反撃のタイミングを計っていた。


 そう、国を敵に回すことの重要性を『屍黒』はわかっていなかったのだ。


 前身の『屍』時代では、裏社会でも地下に潜ってその存在をひた隠しにしていたことで国に睨まれると厄介であることをあまり、理解できていないのである。


 リューはその辺りを情報収集を行いながら『屍黒』の動きを分析していた。


 ランスキー達大幹部達も同意見であったから、今は大規模な反撃は控え、やる時は徹底的に追い詰めるつもりである。



「頭、味方の情報屋組織が、『屍黒』の大幹部の一人を、割り出したようです」


 浮浪者の恰好をして物乞いをしているサン・ダーロに、同じ格好をした部下が横に座ってそう声をかけた。


「これで、うちの情報と合わせて大幹部の数は五人か……。どうやら、この五人で全員かもしれないな。──あとは、その上であるボスだけなんだが……」


「へい。その五人の動きを見る限り、味方の情報を照らし合わせてもボスと接触する様子はないみたいです。その下っ端の動きも見張っていますが、他の大幹部の幾人かとやり取りをしている動きしかないですね」


「……『屍黒』のボスが、ブラックという名前なのはわかっているのに、なんでその存在が浮かんでこないんだ……? ──もしかして、何か見落としている?」


 サン・ダーロは部下からの情報を頭に入れて自分の情報と比べる。


 もしかすると、抗争が始まった時点で、大幹部達との直接的な接触を避けているのではないか? と考えた。


 だが、指示をしないと組織もまとまった動きができないはずだ。


 しかし、ここまで統制の取れた動きをしているから、連絡はどこかで取っているはずである。


「……大幹部達の事務所に出入りしている業者がいたよな?」


 サン・ダーロが、ふと思い出したように、部下に確認した。


「業者、ですか……? ああ……! 事務所によって違いますが、食材を配達させている事務所もあれば、新聞や、ミルク、手紙などの配達をさせているところもありますが、それのことですか?」


 部下は、思い出したように、サン・ダーロの疑問に答える。


「その出入りしている業者の背後を当たれ。多分、どこかで繋がっているはずだ」


 サン・ダーロは確信したように、部下に答えた。


 部下はその指摘でハッとしたのか、


「わかりました……! ──なんだよ、銅貨の一枚くらい分けてくれてもいいだろうによー!」


 部下は、浮浪者の仲間同士で揉めている体を装って愚痴を漏らすと、その場を離れていく。


 くそっ。なんで気づかなったんだ。業種が違うからって、調べるのを怠っていたぜ……。若やランスキーの旦那なら気づきそうなもんだ……。


 サン・ダーロは、苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべると、自分の見落としに呆れるのであった。


 そして、サン・ダーロの予想通り、大幹部連中が潜む事務所に出入りしている業者はバラバラだが、背後を調べると一つの商会の名前に辿り着いていた。


 それが、地方貴族領をいくつか跨いで手広くやっている白山羊総合という名前のかなり大きな商会である。


 香辛料から雑貨まで大金の動くものから小さい儲けにしかならないものまで色々と扱っており、裏社会とは関りがなさそうなホワイトな商会というイメージのところであった。


 商会長の名前は、ホワック。


 家族は妻と成人前の男の子供二人だ。


 自宅は、地方貴族の領都の郊外に構え、領主とも昵懇じっこんの仲。


 部下に調べさせたら怖いくらい何も出てこない、真っ白な経歴の商会である。


 サン・ダーロは、そのホワック家族を確認する為にその豪邸が見下ろせる木々の上まで足を運んだ。


「頭、あれがホワックで、横にいるのが妻です。庭で遊んでいるのが息子二人ですが、さすがにこの家族は叩いても埃が出ない真っ当なカタギかと……」


 部下が、調べた情報を元に、屋敷の庭を見下ろしながら、木陰でそう告げた。


 多少距離があるが、サン・ダーロは遠視系能力を持っているから困らない。


「……いや。これは、多分、当たりだ……。叩いても埃が出ない? 白山羊総合商会はあんなに大きいのに、何も出ない方がおかしいんだよ。それにな? あの夫婦、口元に笑みは浮かんでいるが、目が全く笑ってねぇ。子供二人も遊んでいる割に、足の運び方が、玄人くろうとすぎないか?」


 サン・ダーロはこのホワック家族を一目見て、その違和感に気づき指摘する。


「! ──確かに、言われてみれば……。もしかして、これは、偽家族?」


「そういうことだ……。多分、この庭に出てきて仲良し家族を演じる日付や時間は決まっていると思うぞ。偽装する為にここまでやるのは、腹の中が真っ黒な証拠だ。多分、これ以上調べたら、こっちの存在がバレて、罠にハマるだけだから中断した方がいいだろう。こいつらの元ボス・バンスカーのやり口と同じものを感じるからな」


 サン・ダーロは過去にバンスカーを調べていて、その大幹部の一人の罠にハマった経験があるから、それと似たものを感じたのだ。


「わ、わかりました! ランスキーの親父にそう連絡します」


 部下がサン・ダーロの推論に説得力を感じ、その場をあとにする。


「バンスカーの部下はこんなのばかりかよ……。そりゃあ、これ程までの白い経歴、普通なら誰も疑わないわな……」


 サン・ダーロは綺麗すぎる経歴を金で用意したのだろうことを、想像するとその徹底ぶりに気味悪さを感じていた。


「つまり、あのホワックという男が、『屍黒』のボス・ブラックか。どす黒い闇を感じるぜ……」


 サン・ダーロは木陰から、豪邸の庭で家族ごっこをする男を一瞥すると、その場をあとにするのであった。

ここまで読んで頂きありがとうございます。


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そちらの方もよろしくお願いします!


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これからも、書籍共々、よろしくお願い致します。<(*_ _)>

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