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【8巻予約開始!】裏稼業転生~元極道が家族の為に領地発展させますが何か?~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第596話 披露宴ですが何か?(3)

 結婚披露宴でのリューとジーロの試合は、ランドマーク伯爵家の与力に相応しい白熱したものであった。


「さすがランドマーク伯爵家を支えるシーパラダイン、ミナトミュラー両男爵家だな……!」


「この二人が与力なのが不思議なくらいの剣の腕前だな……」


「うちの部下でもあれほどの試合をできない。ランドマーク伯爵殿が羨ましい事だ」


「ぐぬぬ……。これがランドマーク伯爵派閥の力という事か……!」


 列席者はこの二人の試合を絶賛している者がほとんどであった。


 異様なほどの盛り上がりを見せた余興であったが、その後は、新婦から両親への手紙の朗読が行われる。


 これもこちらの世界では行われない演出であったが、新婦エリス夫人の手紙に列席者も人の親が多いから、娘が嫁いだ時の事を思い出したり、これから、うちの娘がどこぞの馬の骨に嫁入りする事があるのかと想像すると自然と涙が出てしまう。


 そして、当人であるベイブリッジ伯爵は日頃、冷静沈着でスゴエラ侯爵派閥の知恵者という立ち位置なのだが、この日ばかりは娘の感謝の手紙に涙を流していた。


 さらには演出を考えたリューも親子の絆の前には感動して人知れず涙を流す。


 傍でリーンがハンカチを渡してリューに涙を拭かせるのであったが、そのリーンも鼻を啜っていたので、泣く寸前だったようである。


 こうして、新婦と両親の温かい空間に感動する時間が過ぎると、次は両家代表の挨拶だ。


 父ファーザが、ランドマーク伯爵家の代表として列席者に感謝の言葉を述べる。


 新婦のベイブリッジ伯爵家との関係性やその派閥の長であるスゴエラ侯爵家との絆が深まった事を強調した。


 これは列席者であるエラソン辺境伯、ダレナン伯爵両派閥の代理貴族への牽制でもある。


 スゴエラ侯爵派閥との親密ぶりをアピールする事で、ランドマーク伯爵派閥には手を出さないでね? のアピールなのだ。


 政治の絡む結婚披露宴だが、最後に新郎であるタウロが、改めて列席者全員に感謝の意を伝える。


 そして、今後の二人を温かく見守ってほしい事を伝えると大きな拍手でこの披露宴は幕を閉じるのであった。



「タウロ様達、マジ良かったっす! 最高っす!」


 ランドマーク家の執事セバスチャンの孫でタウロの将来の執事になる予定のシーマが、涙を流しながら披露宴がとても良かった事を褒め称えた。


「そうだね。エリスお姉ちゃんも、綺麗だったよね」


 妹のハンナもシーマに同調するように言うと頷く。


「私もまさかメイドの立場で参加できると思ってなかったので、タウロ様の晴れ姿を見れて良かったです……!」


 とランドマーク家のメイド(塩を撒く事も仕事のうち)も泣きながら、雇い主の幸せな姿を見れて感動していた。


「本当だね……。子供の頃にはこんな事、想像すらしていなかったけど、もう、タウロお兄ちゃんも既婚者かぁ」


 リューが感慨深げに、ランドマーク一家で思い出に浸る。


「エリス嬢……、いや、エリス義姉さんへの交際申し込みの時は、うちも大騒ぎだったよね」


 ジーロが数年前の懐かしい思い出を口にした。


「はははっ! あの時はシーマがタウロお兄ちゃんにずっと引っ付いていたから、空気読まなさそうな事が気がかりだったよね」


 リューは次男のジーロの思い出語りに不意にその事を思い出して指摘する。


「えー!? 何っすかそれ!? 俺、空気読める方っすよ! 実際、告白時は静かにしてたっす!」


 シーマは不本意とばかりに反論して、その時の事を語った。


「「いやいや、告白の時くらい二人っきりにするのが普通だからね?」」


 リューとジーロが思わずツッコミを入れる。


「そうなんっすか!?」


 シーマはそこでようやく、自分がいけない事をしていた事にようやく気づく。


「シーマは番犬みたいに学校時代はタウロに引っ付いていたんでしょ。少しは空気読めるようにならないと駄目よ?」


 リーンがもっともらしく、シーマに説教をする。


 するとこの言葉にはリュー以外の全員が、


「「「リーンがそれを言うの……?」」」


 と内心でツッコミを入れた事は、言うまでもない事であった。


 そこに、新郎新婦であるタウロとエリスがリュー達の下にやってきた。


「みんな、今日は本当にありがとう。特にリュー、結婚式から披露宴までいろんなアドバイスをくれたから、とても良い式になったと思う。ありがとうね」


 長男タウロはいつもの人たらしの笑顔で、リュー達みんなに感謝の言葉を告げる。


「リュー君が教えてくれた白色のドレスでの結婚式、みんなにも評判が良かったわ、ありがとう」


 エリスもタウロ同様、とてもいい笑顔で、リューに感謝を述べた。


「そう言ってもらえて良かったよ!(前世では組のしきたりで、和式の結婚式に参加する事ばかりだったから)僕も楽しめたからありがとう」


「「?」」


 長男タウロとエリスはリューからのお礼に、疑問符が浮かぶのであったが、内容が楽しめたという事だろうと解釈するのであった。


「本当は結婚式の後にブーケトスも入れたかったんだけど、あれは危険だと聞いたからやめておいたよ」


 とリューが笑って告げる。


「「「ブーケトス?」」」


 リューの言葉にその単語と説明の意味が繋がらないでみんなが不思議がった。


「新婦が手にしているブーケを未婚の女性陣に投げ込んで、その取り合いをさせるイベントなんだ。それを取った女性は次、良縁に恵まれるという習わしがあるからみんな必死になるらしいよ?」


 リューの説明に各自頭の中でブーケを取り合う未婚の女性陣(貴族の令嬢やリーンやハンナなど)が争う姿を想像してゾッとする。


 みんなリューとジーロの試合の後でもあったから、女性陣のサバイバル戦を想像したようだ。


「なんだか危険そうだから、その演出は入れなくて良かったね……」


 とタウロが応じると、その場にいた全員が激しく同意するのであった。

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