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【8巻予約開始!】裏稼業転生~元極道が家族の為に領地発展させますが何か?~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第544話 島を満喫しましたが何か?

 島長によって用意された料亭での食事は、満足のいくものであった。


 すぐそばの海で取れた食材の数々はとても新鮮でそのまま生で食べられるものであったし、簡単な味付けでも同じく元の味が生きていて、王都ではほとんど食べられないものばかりであったからだ。


 王女リズは食卓に無数に並べられた色んな料理をリーンと一緒に少しずつ楽しんでいたが、実はかなりの量を食べていた。


 あまりにも丁寧に礼儀正しく食べていたので、周囲の者は全く気付いていないだけで、リューとリーンはリズが実は大食いである事を知っているから、気づいていたのである。


 かと言って、何か悪い事をしているわけでもないし、今後に支障があるわけでもないので気づかないフリをしていた。


「この新鮮な海の幸を王都で出せたら、かなりの武器になるよね」


 リューがお金の臭いを感じたのか、次男ジーロに話しかけた。


「そうだね。通常、マジック収納がある者でも王都までの距離を考えるととてもじゃないけどコストがかかり過ぎるからほとんど商売にならないと思うけど……、リューならそれも可能だよね」


 ジーロはおっとり口調で、それを指摘した。


「王都で海産物は超贅沢品だからなぁ。この大きな伊勢海老、サザエ、キントキ、ノドグロ、ヤリイカにその他色々。こんな種類を王都で食べる機会なかったもの! サウシーの港街は魚介の種類が少なかったから、これだけ豊富だと嬉しくなるよね!」


 リューはマジック収納に持参していた醤油にそれらを付けて舌鼓を打つ。


「そう言って頂けるとありがたい事です。この海域は他所と違っていくつかの海流がぶつかるところなので、魚介の種類が豊富なんですよ。ところで坊ちゃん、その黒い液体はなんです?」


 料亭の板長が王女リズに挨拶していたところ、リューの持ち込んだ調味料が気になったのか、声を掛けて来た。


「あ、これは醤油です。生魚を食べる時なんかに付けると美味しいんですよ。舐めてみますか?」


 リューはそう言うと醤油が入った小皿を板長に渡す。


「……ふむ。……こいつは!? ちょっと、失礼! ──確かに生魚に合うたい! 坊ちゃん、これをどこで入手したとね!?」


 板長は地元の方言が思わず出る程、動揺して醤油の正体を知りたがった。


「はははっ! 魚介系が得意な料理人なら、この良さがわかると思いましたよ。──これはうちの商会で作らせたものです。どうです、良い調味料でしょ?」


 リューは自慢気に板長に自慢した。


「色は怖かけど、この味、他にも可能性がありそうたい。坊ちゃん、うちにちょっと譲ってくれんね?」


 板長は完全に方言丸出しでリューにお願いする。


「もちろん、いいですよ。良かったらこの醤油を使った他の料理も教えますよ。その代わり──」


 リューはそう言うと交換条件を付けた。


 それは、板長の目利きで、定期的に魚介類の買い付けをリューの代わりにする事である。


 もちろん、料金はこちらが支払うが、地元の板長が買い付けてくれれば、ぼったくられる心配もなく、その日の旬な良いものが入手できるという寸法だ。


 板長は、


「それは俺が毎朝やってる仕事の延長線上の事だから全然問題なかよ!」


 とノリノリである。


「では契約で!」


 リューはそう言うと、がっちり握手を交わし、次は料理を教える為に板長共々調理室に入っていくのであった。


 そこにスードもそれに付いて行くのだが、残された他の王女リズの親善使節団一行は、まだ、時間があるので放っておく事にした。


「リューお兄ちゃん、いつも忙しいね」


 妹のハンナがリューの事をそう指摘すると笑う。


「はははっ! リューはいつも何か思いつくから休む暇がないんだよ」


 ジーロも妹の指摘に賛同すると笑う。


「あの子ったら、親善使節団の一員だって事忘れているんじゃないかしら?」


 母セシルが苦笑して指摘する。


「うふふっ。リュー君は、いつものことですよ。──私達はゆっくり食事を続けましょう」


 みんなが、満腹になって食事の手も止まっていたのだが、王女リズがまだ食べ続けていた事で、一同はようやく、


 王女殿下って、もしかして大食いなのでは?


 と気づきつつあるのであった。



 各親善使節団の船への補給は、予定よりちょっと遅い四時間ほどで終了した。


 遅れた理由は、補給を急かして二時間ほどですぐに旅だったヤーボ第三王子親善使節団が原因である。


 ヤーボ王子と使節団責任者のヤミーイ侯爵は、この島の事が気に入らなかったのか、食事も早々に島長に補給を急がせていたのだ。


 元々、この中継島であるファイ島で王女リズ一行とヤーボ王子一行は別れる事になっていたから何の問題もなかったが、挨拶も無しというのは、最後まで失礼極まりないなというのが、リュー達の間での一致した感想であった。


 もちろん、コモーリン侯爵には言えないが、それを察したのか、


「王家への不平はもちろんないが、ヤミーイ侯爵の礼儀のなさは同じ貴族として呆れている」


 とだけリュー達の前で不満を口にした。


 コモーリン侯爵はずっとヤミーイ侯爵から嫌味を言われ続けていた立場だから、そう思うのも仕方がないところである。


「あちらを優先した分、こちらが少し遅くなりましたが、その分、この島を満喫できたので良しとしましょうか。はははっ!」


 一番満喫していたリューがそう感想を告げると、それを聞いていた女性陣が思わず吹き出して笑う。


 王女リズも同じで、


「うふふっ。そうね。私もリュー君ほどではないけど、この島を満喫できたと思う」


 と笑いながら感想を漏らす。


「思うも何も、はっきり言って、リューとリズがこの中では一番、この島を満喫していたと思うわ」


 とリーンが指摘すると、親善使節団関係者全員は思わず、


「「「確かに……!」」」


 と内心で納得するのであった。

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