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【8巻予約開始!】裏稼業転生~元極道が家族の為に領地発展させますが何か?~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第536話 合宿場所ですが何か?

 期末テスト期間を終えた事で、リューはようやく勉強から解放され、領主業、商会業、そして裏社会業に集中できそうであった。


 というのも束の間、生徒会業務がある事を王女リズに指摘された。


「リュー君、リーンさん、スード君にナジン君、そしてシズさん。私達は生徒会役員だからまだ色々と業務があるのを忘れないでね。特に二年生は夏休み期間に避暑地への旅行が予定されています。私達生徒会は先生達のお手伝いをする事になっているので、夏休みまでその打ち合わせもあるので、授業が終了してもすぐに帰らないでくださいね?」


「「「うっ……」」」


 リュー達は王女リズの指摘にテスト明けの安心感もすぐに霧散する。


「そっか……、そう言えば二年生から学年行事が増えるんだったよね? 確か避暑地への旅行って、目的はサバイバル合宿だよね……。 今年はどこでやるのかな? まだ、目的地を聞いていないけど……」


 リューが首を傾げて王女リズに聞く。


「それが、例年は王都から馬車で三日の距離にある王家直轄領オソーレ山地の麓の森で行うのだけど……。今その森、数十年に一度の虫系魔物の大量発生で駆除作業が行われていて目途がつかないらしいわ。だから、先生達が他の候補地を急いで探しているのだけど……。何か案がないかしら?」


 王女リズは困った様子を見せると、リュー達二年生生徒会役員のメンバーをチラッと見る。


 リュー達生徒会役員は、王都からそれなりに近い距離に領地を持っている貴族の子息令嬢ばかりだからだ。


 それ以外にもランス・ボジーンも王都に近い。


「マイスタの街はサバイバルに向かない土地だからなぁ」


 リューは苦笑すると可能性を否定する。


「ランス、君の領地はサバイバルに適した土地はあるかい?」


 ナジンがイバルやラーシュと話していたランスに声を掛けた。


「俺んちか? うちは精々丘がいくつかあるくらいで、あとは平地ばかりだぜ? 森も小さいし、サバイバルというよりただの野宿って感じだな。はははっ!」


 ランスはリュー達の会話を聞いていたのか、すぐに冗談を言って否定する。


「ラソーエ侯爵領もマーモルン伯爵領も王都からだと片道四日以上かかるから、微妙に遠いんだよな。サバイバルでの宿泊は基本三日間、往復には最大六日の計九日だから、うちだと往復に八日、そうなると一泊しかできない。それでいいのか?」


 ナジンがシズの代わりに微妙に距離がある事を指摘した。


「それなら、ランドマーク領でやれば良いんじゃない? ランドマーク領都から往復二日程度でサバイバルにうってつけの魔境の森奥深くを満喫できるわよ!」


 リーンがとんでもない提案をする。


「魔境の森はこの世界で足を踏み入れてはならない『四大絶地』のひとつなんだから、そんなところに学生のサバイバル訓練で行かせてはいけないって!」


 ナジンが間髪を入れずリーンに聞き慣れないツッコミを入れた。


 ちなみに『四大絶地』とは、一度入ると生きて帰れる保証がない土地を指し、危険すぎる所以に入らない事を推奨している場所の事である。


 魔境の森以外にも北の大氷地、暗黒大陸、地下の大迷宮があるのだが、魔境の森はクレストリア王国の国境に面している為、一番知られている場所だ。


「その魔境の森を切り拓いた土地で僕は育ったんですが、ナジンさん……?」


 リューが心外とばかりに、わざと敬語で聞き返す。


「……だからリュー君達は、みんなより凄く逞しいんだよ?」


 シズがナジンを擁護するように指摘する。


「リューも頑張って生きているのよ。化物扱いは止めてあげて」


 リーンがリューを庇うように答える。


 いや、リーン。君もその中に入れられているんだけど?


 リューは内心でツッコミを入れるのであった。


 その間、王女リズは考え込んでいた。


 王女リズは、ランドマーク領の事は、みんなよりはよく知っているからだ。


 春休みの南部視察やエマ王女と会う為に、数日滞在もしていてランドマーク領のイメージはとても良い。


 そしてそこで生きるランドマーク家の人々の逞しさと優しさにも触れていたから、とても良い案のように思えていた。


「リュー君、御父上であるランドマーク伯爵に相談できないかしら? 先生達には私から話してみます。今から他の場所の選定には時間がかかると思うから、リュー君達がよく理解している土地ならまだ安心だわ。予算は王家で負担するので、いくら請求してくれても構わないからお願いできる?」


 王女リズはリーンが言い出した国内で一番危険な場所である魔境の森でのサバイバル訓練を受け入れて話を進めるつもりのようだ。


 これには生徒会役員以外で話を聞いていたランスやイバル、ラーシュもびっくりして王女リズに視線を向ける。


「リ、リズ! リュー達が知っていると言っても、魔境の森だぜ? 命知らずの冒険者達でも深く分け入ろうとしない場所に先生達や学生だけでサバイバル合宿したら、命がいくつあっても足りないって!」


 ランスが、みんなを代弁して至極真っ当な反論をする。


「それなら大丈夫! ランドマーク領の領兵は魔境の森で鍛えられているから、サバイバル合宿の間は周囲を警戒してもらうよ」


 リューが問題ないとばかりに、命の保証をする。


「それなら決まりですね。早速、私は職員室に行って先生方と相談してきます。警備は近衛騎士団、宮廷魔法士団、王国騎士団にも相談してランドマーク領の領兵と協力体制を取る方向で提案してみますね」


 王女リズはそう言うと、教室を出て行く。


「……リズが張り切ると簡単に国が動くな」


 ナジンが一言、呆れて指摘する。


「王女様だからな」


 とランス。


「これが王立学園なんですね……」


 とラーシュが国内随一の学校のスケールの大きさに感心して感慨深げにつぶやく。


 いや、ラーシュ。王立学園でも国の中枢が動くのはおかしいからね?


 と内心でツッコミを入れるリュー。


「リズも大袈裟よ。別にランドマーク領の領兵隊だけで事足りるのにね?」


 リーンが呆れ気味に言うとリューもそれに頷く。


「いや、二人共。感覚麻痺しているところ悪いが、さっきもナジンが言った通り、魔境の森は『四大絶地』と言われている土地だからな? そこに王女を含めた学生達が合宿に行く事が異常だぞ?」


 イバルが、友人であり直属の上司でもある感覚のおかしい二人に呆れて、ツッコミを入れるのであった。

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