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第17話 テスト勉強開始!目指せ400点!~泊まりで勉強!?~

 楽しかった文化祭を終えてテストの不安が皆にのしかかる。


 テスト期間は3日あり、国語・数学・理科・社会・英語の五教科で行われ、この2年の最終的な点数を元に各自進路を決めていく事が多い。


 僕は高校に入り五教科合わせての最高点数は240点。月島さんから出された目標は400点と平均して一教科80点は取らないといけない計算になり、こんなの無理だと自分でも思ってしまうが今回だけは違う。



 修学旅行で約束してから少しずつだけど家でも勉強している。妹も僕の頑張りを知ってか休憩しようかなというタイミングで飲み物などを差し入れてくれたりと応援してくれている。


 部活のない日では図書室で復習や予習、生徒会の活動の時は小鳥遊先輩のみならず1年生コンビからも勉強の事を聞き努力する日々が続いた。


「僕のために皆ありがとう」


「良雄君テストの点悪いって言うから全然勉強出来ないと思ってたけどそんな事ないじゃないか」


「そうですかね? 次のテストでどれだけ出来るか……不安ですけどやるしかないですよね!」


 上級生の小鳥遊先輩に褒められると自信がついて勉強にも更に力が入る。




 そんなある日月島さんから呼び出しがあり会長室へ向かった。


「ここもなんか懐かしいね」


「色々学校行事が重なったからな。で、勉強の方はどうだ?」


「ぼちぼちかな、皆にも手伝ってもらってなんとかなってる」


「そうか。お前がどれだけの実力なのか見たいから明日の土曜日家に来い。あと日曜も用事ないから勉強見てやる、だから泊まる用意持ってこいよ」


「よーし! 月島さんと勉強して目標点取るぞ……って泊まりで勉強!?」


 思ってもみなかった展開になり驚愕していると月島さんは嫌なのか? みたいな表情で僕を見つめている。家に行ったことはあったがまさか泊まりとは……嬉しさと緊張感が一気に押し寄せてきた。




 そして土曜日になり彼女の自宅前。


 大きなリュックには着替えと勉強道具、月島さんのおばあちゃんへ渡す手土産の十万石まんじゅうも用事してきた。チャイムを鳴らすとガラガラッと音をたてて玄関の扉が開く。部屋着の眼鏡をかけた月島さんが出迎えてくれた。


「おはよう、今日はよろしくね」


「うん、よろしく……」


 朝早かったので彼女は眠そうに目を擦り僕を中へ案内してくれると、奥からおばあちゃんが割烹着姿で現れ僕を歓迎してくれているので用事してきた手土産を渡す。



「これ少しですけど、どうぞ 」


「あらご丁寧にどうも。えっと良雄君……だっけ、桜子がよく話題にあげるからよく知ってるわよ」


「おばあちゃん余計なこと言わなくていいから! ……ほら、良雄君もボサっとしてないで早く来てよ」


 彼女が焦りながら部屋へ案内してくれた。前来た時は色々あって部屋がどんな感じかよく見ていなかったが、勉強机と木製のテーブル、ベッドや照明もシンプルながらもオシャレだなという印象がある部屋だ。


「おばあちゃんの前だと口調優しくなるんだね」


「当たり前だろ! ほら、さっさと勉強だ! ……最初はお前の実力がどれ程のものか見たいからこれ、テスト出そうな所まとめてオリジナルのテスト作ったからやってみろ」


 そう言うと五教科分の達筆な字で書かれた手書きのテスト用紙を渡される。パッと見た感じ皆で勉強した所や自主学習した所などが多くあってできそうな気がしたが、いざ書き始めると思い出せそうで思い出せないことが多くあり苦戦してしまう。


 そんな悪戦苦闘する様子を、スマホで時間を測りながら彼女はチラチラと見ていた。


───────


 テストの時間と同じタイムを測られ、模擬テストは終了し彼女が採点を進めている。


「結果は五教科合わせて315点……"サイコー"……ぷっ……」


 ひとりで呟きひとりで笑っていたので何してるんだろうみたいな表情で見ていると彼女は僕を睨み険しい表情をしていた。


「目標点は400、85点足らんな。赤点ギリギリだったのが嘘みたいな点で私も少し驚いているが満足するな、これからみっちりビシビシと指導してくからな」

「はい"先生"、よろしくお願いします!」


 こうして月島さんとの勉強は始まったのだが、間違えるとチョップやデコピンなど体罰が多く、正解しても何も無いので暴力を振るわれないよう必死に頑張った。



──────────────


───────


 気が付けぱ昼も取らず勉強していたが、おばあちゃんから夕食が出来たと言われたので勉強を中断し一緒に食事する事に。メニューは唐揚げや卵焼き、漬物や味噌汁などがありとても美味しく、その事を伝えるとおばあちゃんは笑顔で喜んでくれた。


「月島さんは料理作ったりするの?」


「たまにね。でもおばあちゃん以外に作った事ないかも……良雄君、良かったら明日私早く起きれたら朝食作るから食べてほしいんだけど……いい?」


「もちろん、楽しみにしてるね!」


 月島さんも笑顔になっている……眼鏡姿の月島さんも凄く可愛いくて、笑顔の彼女を見るとドキッとしてしまうほどだった。




 夕食を終えお風呂に浸かる、風呂はリフォームされていてとてもゆったりできた。


 そしてジャージへ着替え歯を磨いて彼女の部屋に戻り勉強していると、しばらくして風呂上がりの彼女が来たのだが、ネグリジェを着ており大人っぽく見えて目線を逸らした。


「なに良雄君……もしかして似合ってない?」


「ううん、似合ってる……大人っぽくていいと思うよ」


「そう……ってかデレデレしてないで勉強再開するぞ!」


 座っている僕へ軽く蹴りを入れ勉強は再開された。


───────


「もういい時間だ、寝るぞ」


 先生の指導が終わり彼女はベッドへ、僕は用事してくれた布団で下で寝る事になったが、真っ暗にして寝る派の僕にとって明かりがついているこの部屋ではなかなか寝付けなかった。


「……良雄君寝れない?ごめんね、私電気消すと怖くて……」


「前話してくれたよね、僕は大丈夫だから」


「……良雄君って優しいよね、たまに反抗してきたりするけど私の為に一生懸命何かやってくれて……嬉しいよ」



 視線は合わせず相手とはお互い反対側を向いて寝ながら会話していた。


「月島さんだから頑張れるんだよ、ただそれだけ……」


「ありがとう……明日早く起きるからもう寝るね、お休み」


 僕はあまり眠くなかったが彼女の寝息が聞こえてきたので目をつぶり就寝する事にした。




 カーテンから差し込む朝日で目が覚める。スマホで時間を確認すると9時だった。


 軽く背伸びして、着替えてキッチンへ行くと月島さんがピンクのエプロンをつけて料理しており、僕の存在に気が付くと軽く笑みを浮かべ挨拶をしてくれた。


「おはよう、もう少しで出来るから座って待ってて」



 しばらくするとおばあちゃんも起きてきて彼女が作った朝食をいただく。メニューは白米と目玉焼きと豚汁、それに甘い卵焼きだった。


 おばあちゃんの卵焼きは昨日食べたが、だし巻きで彼女のは甘い卵焼き、個人的には甘い方が好きなのでそれを伝えると月島さんは喜んでいた。


「ごちそうさま、月島さん料理も出来るなんて流石"完璧超人"だね」


「褒めすぎ……でもお口にあったようで良かった」


 そんな会話をしつつその後は軽く勉強をして解散となる。テスト当日まであと1週間、僕は気合いを入れ直し毎日勉強した。



──────────────


───────


 そしてテストが終わってテストが返却される時期まできた。テストの点は会長室で月島さんと確認するため返却されたテストの点を見ないよう慎重に受け取り、点数の所を折って見えないようにしたが、解答欄がチラッと見えてパッと見で丸が多く自信があった。



 全ての解答用紙を持ち会長室へ入るといつもの椅子に月島さんが座っていたのでテスト用紙を彼女の前に並べる。


「よし、点数は見てないよな……順番に点数の所捲ってくからな」


 まずは国語……87点、次に数学……82点、そして理科……71点。ここまで合計240点、過去にこんな点数とったことないので自分でもこんな点数とれるとは信じられなかった。


「ここまで合計240点、残りは二教科で80点どちらも取ってないとダメだ。パッと解答欄を見た感じだと大丈夫そうなんだが……続きいくぞ」


 社会……80点、英語……彼女がめくろうとしていたので声をかけ最後は自分で捲りたいと申し出ると無言で頷いてくれた。



 そして運命の時、英語……76点。五教科合計は396点。


「……惜しかったな、いやでもよく頑張ったよ。赤点ギリギリのやつがここまで出来るなんて本当信じられ……」



 彼女が慰めてくれている時、僕は涙を流していた。



 悔しい……これまでこんな悔しい思いはしたことない。バカにされても貶されても悔しいなんて思ったことないのに……拭いても拭いても涙が溢れ鼻水も出てきた。


 持っていたポケットティッシュで拭くが足りなく腕で拭いていると突然月島さんに抱きしめられた。


 甘く落ち着く香り、頭もなでられ少し落ち着くことはできたが涙がまだ止まらない。



「テストの点はどうでもよかった。今回はお前の長所を気が付かせるために目標点を予め決めてたんだよ」


「……どういう……こと……ぐすっ……」


「お前は私と出会ってから一度も約束を破った事がない。貢いだりラブレター書かされたりリレーさせられたり……どれもやりとげて努力していた。お前の長所は”諦めず物事に取り組める事”、今回の勉強だって悔しくて泣くほど努力したんだろ?よく頑張ったよ」


「月島……さん……僕っ……」


「もういいんだ、本当よく頑張ったな……」



 強く抱きしめられ彼女の制服が汚れないよう涙を堪えたいが、体が言うことを聞かない……そして、僕が泣き止むまで彼女はそのままでいてくれた。

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