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嵐の前の静けさ

 ふとアランが顔を上げると、そこは妙な静けさに満ちていた。

 周囲の音を遮断しているため、物音がしないのは当然なのだが……何となく、それだけではないように思えたのだ。


 だが何がおかしいのかには、すぐに気が付いた。

 その場を見渡してみると一目瞭然なのだが……そこには人の姿が、一つたりとも見当たらなかったのである。


「ふーむ……? 僕が本に夢中になってる間に一体何が……? ……まさか、僕以外の皆が異世界に召喚されてしまった、とか?」

「何を馬鹿なことを言っているんですの?」


 と、何となく頭に浮かんだ言葉を呟いてみると、反応があった。

 そちらに視線を向けてみれば、そこにあったのは見知った姿だ。


「おや、そこに居るのはシャルロットさんじゃないか。もしかして君も、運良くまぬがれた口なのかな?」

「ですから、その馬鹿げた設定を貫き通そうとするのをおよしなさいな」


 溜息を吐き出しながら、分かりやすく呆れの感情を露にするシャルロットに、アランは肩をすくめる。

 まあ実際馬鹿げた話ではあるのだが、異世界転生というものが存在していた以上は、そんなものがあってもおかしくはないだろう。

 所詮戯言であることに、違いはないが。


「まあ真面目な話をすると、本気でこの状況に心当たりがないんだけど、何か知ってたりする?」

「知っているも何も、次の講義が行なわれる場所はここではありませんわよ? 次は特殊な器具を用いるから特別棟で講義は行なうと、先週言っていらしたでしょう?」

「あー……言われてみれば、そんな記憶がなきにしもあらず?」

「やはり忘れていたんですのね……」

「そうとも言うかな」


 再度呆れたような溜息を吐かれるが、アランとしてもやはり肩をすくめるだけである。

 実際のところ、忘れていたのは事実なので、言い訳のしようもない。

 それは皆の姿も早々にここから消えるはずだ。


「というか、そういうことなら誰か教えてくれてもいいのに……」

「皆さん教えようとしていましたけれど、あなたがそこに篭っているため、何度か試した後で諦めていましたわ」

「あー……」


 なるほど、完全に自業自得だった。

 皆ちょっと冷たいんじゃないか、とか思ってしまったことを、心の中で詫びる。

 皆ごめんなさい。


「今回のようなことがまた起こっても困りますし、音だけでも聞こえるようにしたらどうですの?」

「そうしたらどうなるか分かってて言ってるよね? まあでも確かに、本当に困ってる時に気付けなかった、とかいうことが起こったら今のままじゃどうしようもないし……何か緊急用の手段は用意しておくべきかなぁ……」

「くすくす……『先生』は、大変ですわね」

「シャルロットさんまでそんな呼び方を……そう呼ばれるのあまり好きじゃないんだけどなぁ」


 それはアランがここ最近になって、皆から呼ばれるようになった名であった。

 いつ頃からそう呼ばれるようになったのか、正直なところアランはよく覚えていない。

 というよりは、気が付いたらいつの間にか皆からそう呼ばれるようになっていた、というのが正確なところだ。

 まあその理由については、見当が付かないというわけではないのだが――


「あら、どうしてですの? それだけ皆さんから敬われ、慕われているという証でしょう?」

「そうだなぁ……まあ、自分がそんな大層な人物ではないってことを、他でもない自分自身が理解してるから、かな?」


 皆が本気でそう思ってくれている、ということは分かっている。

 自分勝手な理由で一方的にやってきたことではあるものの、それを認められたというのは素直に嬉しくもある。


 だがそれでも、アランの認識としては、カンニングをしたテストで褒められた、とでも言うかのような状況なのだ。

 知っていたから、対応できた。

 それだけのことなのであり、それ以上のことではないのである。

 ましてや敬われるなど、過大評価にも程があった。


「なるほど……それでは、あなたは知らなければ何もしなかった、ということなのかしら?」

「勿論、そんなわけはないけどさ。でも、知らなければ大して力になることは出来なかっただろうと思うし、それを考えれば、どうしたって過大評価でしかないよ」


 まあというよりは、元から大したことはしていなかった、と言った方が正確かもしれないが。


 今更改めて言うことではないが、アランはこの学院で皆から魔法についての色々な疑問を問われ、それに答えている。

 そしてそれどころか、研究の手伝いなどもするようになっているが……元はといえばそれは、何らかの切欠になればと思い始めたことであったのだ。


 最初こそ質問の延長線上のようなものではあったものの、そこでふと思ったのである。

 手伝うということは交流するということであり、ならばこれを切欠として、普通の、級友らしい交流も始まるようになるのでは、と。


 それが突拍子もない考えだとは思わなかった。

 最初は自分に質問することしかしてこなかった皆も、それぞれで意見交換をするようになったのである。

 同じように皆も交流することになるのではないかと、そう思ったのだが……結論から言ってしまえば、それは半分成功で半分失敗といったところか。


 確かに最初の頃に比べれば、皆の雰囲気は柔らかくなったし、そこその交流が生まれもしているようなのだが……まさか、それぞれの研究が独自すぎて誰も手伝えないとは予想外だった。

 勿論誰も、というのは、アランを除いて、という意味だが、そのせいで手伝いはアランに集中してしまったのである。


 もっとも実際のところ、それそのものの手間はそれほどでもなかった。

 皆手伝いとは言いつつも、欲しかったのはほんの少しの手掛かりだけだったらしく、それで行なったことと言えば、精々が一部を分かりやすく書き換えたぐらいのものだったのだ。

 時間にして十分程度であり、その程度でいいのかとこちらから逆に聞き返すぐらいだったのだが……むしろそれぐらいでちょうどいいらしい。

 それ以上は手伝いではなくなってしまうから、ということであった。


 だがそれによって色々なものが刺激されたらしく、結果的にはアランへの質問が激増したわけだが……さすがに自分の時間もまともに取れなくなってしまったのには困った。

 どうするかを考えたあげく、こうして結界に篭ることで一先ずそれへの対処としたものの……そのうちちゃんとした対応を考える必要があるだろう。

 閑話休題。


 何にせよ、結果だけを言ってしまえば、やはりアランがしたことは大したことではないのだ。

 質問への回答は、ただ知っていることを答えただけ。

 十分程度の改竄も同様だ。

 知っていることを、知っているままに書き換えただけであり……逆に言えば、それらは知っていたから出来たに過ぎないのである。

 知らなければ出来なかっただろうことを考えれば、どう考えても、過大評価としか言いようがないものであった。


「……さて、そう思っているのはあなただけでしょうし、あなたはおそらく、それでも今と変わらず先生と呼ばれていたと思いますけれど、まあいいですわ。それをあなたに思い知らせるのは、わたくしの役目ではありませんもの」

「何だか物騒なことを言われてる気がするなぁ」

「くすくす、気のせいですわ」


 今度はこちらが溜息を吐く番であった。

 とはいえ、実際にはそれほど気にしているわけではないが。

 売り言葉に買い言葉、というわけではないが……まあ、過ごした時間程度の信頼は、あるのだ。


「まあそれはいいとして……ところで、そういえばシャルロットさんはどうしてここに? もしかして、僕のことを待っててくれたとか?」

「あら、確かにあなたは今のところ色々な意味で気になる殿方ですけれど、そこまでのことをする義理はありませんわよ? わたくしは単純に、忘れ物に気付いて戻ってきただけですもの」

「なんだ、残念」

「そう思うのでしたら……代わり、というわけではないですけれど、彼女の方に何か言ってさしあげたら如何かしら? わたくしとは違って、ずっと待っていたようですけれど?」


 そう言いながらシャルロットが扉の方へと視線を向けるのに合わせ、アランもそちらへと視線を向ける。

 しかしその視界に映ったのは、切れ端のような赤い髪だけであり、それもすぐ扉の向こう側へと消えた。


 まあその直後に、何かが扉にぶつかるような音と共に、痛ぁっー!? とかいう声が聞こえてきたわけだが……それは聞こえなかった振りをするのが武士の情けというやつだろう。

 別にアランは武士でも何でもないが。


 一連のものを眺めた後で、シャルロットへと視線を戻し、肩をすくめる。


「まあ、僕としてはそれに異論はないし、むしろ僕としてもそうしたいところなんだけど……見ての通りだしね?」

「相変わらず強情ですわね……本当に、筋金入りですわ」


 それには同感であった。

 何せ、彼女とは学院に入ってから一度もまともに話せていないのだ。

 もう学院に入学してから、何だかんだで半年が経とうとしているのに、である。


 まあ多分その原因は、入学式のアレなのだろうが……近くには居るくせに、何もしてこようとはしないのだから、本当に筋金入りの強情さだ。

 もっとも、それを分かっていながら、何もしてこなかったこちらにもそれなりの責任はあるのだろうが――


「……ま、それも多分、明日までだろうしね」

「あら、随分と意味深なこと言いますわね? それは先ほどの意趣返しのつもりでしょうか?」

「いや、別にそんなつもりはないんだけどね? ただ……ほら、一対一で向き合えば、さすがに逃げることは出来ないでしょ?」


 アランが言った言葉の意味を理解したのか、瞬間シャルロットの目が僅かに細められる。

 その口元は僅かに弧を描き、まるで、面白いと、そう言っているかのようだった。


「……なるほど。随分と信頼し、そして自信があるのですわね?」

「んー……前半はともかく、後半は何とも言えないかな? 正直なところ、僕はかなり運に恵まれたと思ってるしね」


 そう言ってアランが取り出したのは、一枚の紙だ。

 計四十一名の名前とそこから続く線とで構成されたそれは、抽選結果、或いは組み合わせ表などと呼ぶべきものであり――


「運とはよく言ったものではありますわね。元を辿れば、それはあなたの実力でしょうに」

「いや、確かに僕の位置がここなのはそうかもしれないけど、三人を除けばあとは全員抽選でしょ? なら半分以上は、やっぱり運だよ」


 そう言って、アランはそれ――明日行なわれる武闘大会の組み合わせ表をひらひらと振りながら、肩をすくめた。


 まあ実際のところ、この組み合わせは総合成績の上位三人を確定のシードとし、多少有利となるように組まれている。

 暫定首位のアランは当然そこに含まれているが、しかし所詮それはその者達が初戦で負けることのないよう……つまりは、大会を盛り上げるためのものでしかないのだ。


 確かにシードは一回戦う回数が少なくなる上、対戦相手の試合を予め見ることで対策も立て易い。

 だがそれだけでしかないし……相手次第ではハンデにすらならないだろう。


 総合成績が上ならば戦闘も得意とは限らないし、逆に戦闘のみに特化している連中も数人存在しているのだ。

 元は戦闘特化である誰かさんとは異なり、アランはそこまで戦闘系の魔法が得意というわけではない。

 当たる相手次第では、あっさり負けていた可能性だってあっただろう。


 しかし幸いにも、アランがどれだけ勝ち進んでもそういった相手には準決勝までいかねば当たらない。

 それはどう考えても運だし……そういった意味で言えば――


「ところで、少し前にシャルロットさんの武闘大会での目標は優勝だって聞いた覚えがあるけど……それは今でも?」

「勿論ですわ。変更する理由がありませんもの」


 自信満々といった笑みで頷く姿に、苦笑を浮かべる。

 戦闘に特化した人達が見事なまでにそっちに集まってしまったというのに、さすがとしか言いようはなかった。


「自信があるのはそっちの方じゃないか」

「あら、わたくしは一言も自信がないとは言っておりませんわよ?」

「……なるほど、確かに」


 言われてみたらその通りだ。

 まあというよりは、敢えてそのような言い方をしたのだろうが。

 くすくすと笑みを漏らすシャルロットに、肩をすくめる。


「さて……名残惜しいけど、そろそろ準備しないと本当に遅刻しそうかな」

「確かにそうですわね。それでは、わたくしは先に向かわせていただきますわ」

「あれ、待っててはくれないの?」

「生憎ですけれど、それはまだ早いと思いますわ」

「まだ、か……なら、いつなったら、出来るようになるのかな?」

「そうですわね……」


 そんなすぐに冗談と分かるやり取りに、シャルロットは数瞬、考える素振りを見せた。


 だがそれは本当に、振りでしかなかったのだろう。

 すぐにその口元に、挑戦的な笑みを浮かべると――


「それはおそらく、明日の結果次第ではないかしら?」

「それはつまり……そういうこと?」

「さて、あなたがどういうつもりでそう言ったのかは分かりませんけれど……とりあえず、わたくしは自分より下の人間にかしずくつもりはない、とだけは言っておきますわ」

「そっか……こっちが想像した通りの答えみたいで安心したよ」


 武闘大会などと名付けられてはいるものの、実際のところそれは試験の一種だ。

 勝敗は成績に影響するし、当然それで順位も変動する。


 まあ、だからといって何がどうなるわけでもないのだが……現在アランは確かに主席ではあるものの、次席との差はほんの僅かなのだ。

 それこそ、相手が優勝でもしてしまえばひっくり返ってしまう程度でしかなく……つまり。


「……知らなかったかもしれないけど、実は僕これでも結構負けず嫌いなんだよね」

「あら、勿論知っていますわよ? あなたと最も競り合った回数が多いのは、誰だと思いまして?」


 なるほどその通りである。

 ということは、やはりそういうことでいいのだろう。


 もっとも、それは色っぽい話ではなく、どちらかといえば挑戦状的な意味なのだろうが。


「まあとはいえ、あなたの負けず嫌いがわたくしに発揮されるかは分かりませんけれど。むしろ今問題なのは、そちらではないかしら?」

「……まあね」


 実際のところ、それは事実だ。

 シャルロットは優秀であれども、万能というわけではない。

 それでも大抵のことならば何とでもしてしまうだろが……同レベルで特化した相手には、さすがに勝てないだろう。


 そして、自分が準決勝で当たるだろう相手がどれだけ優秀であるのかは、他でもないアランが最もよく知っていた。

 だが、それでも――


「ま、そこら辺は明日のお楽しみ、って言っておくよ」

「そうですか……では、楽しみにさせていただきますわね。もっとも、楽しみにしているのはわたくしだけではないでしょうけれど」


 その言葉にアランが一瞬嫌な顔をしたのは、それの意味するところを理解してしまったからだ。

 そのことはあまり考えないようにしていたのだが――


「……やっぱり来るかな?」

「むしろ何故来ないとお思いですの?」

「だよね……」


 思わず溜息を吐き出すも、どうにか出来るようなことではない。

 なので強引に思考の外に追いやると、目の前の相手へと切り替えた。


「ま、それはともかくとして……楽しみにしてるのは、僕もだけどね」

「ふふ……そちらに関しては、何の心配もいらず、純粋にお楽しみいただけるかと思いますわよ?」

「そっか」

「ええ」


 そう言って互いに不敵な笑みを交し合い……そこでふと、アランは何かを思い出したかのように、その言葉を口にした。


「ところで、一つ聞きたいんだけど……あの人って」

「……まあ、来ないでしょうね。くじを引いたのも、クロードさんだったという話ですし」

「……そっか」


 その返答に、アランは残念そうな息を吐き出す。

 そうだろうと思ってはいたものの、だからといって落胆しないというわけではないのだ。


「……前から気になっていたのですけれど、何故あの人のことをそこまで気にするんですの? 知り合い……いうわけではないのですよね?」

「んー……そうだなぁ。別に大した理由はないんだけどね。ただ、前も言ったかもしれないけど、僕は楽しい学院生活ってものを送りたいし、それを期待してここに来たからさ。出来るだけそれを果たしたいだけなんだよ」

「ついでに皆にもそうなって欲しい、でしたか? ええ、確かに以前聞きましたわね。ですが……」

「確かに皆魔導士だけどさ……別にいいんじゃないかと思うんだよね。魔法を頑張って研究して、将来のためのコネを作って……ついでに、学院生活を楽しめばいいだけじゃないか、ってさ」

「……随分と簡単に言ってくれますわね?」

「勿論簡単じゃないってことは分かってるし、究極的にはただの僕の自己満足なんだけど……でもさ、やっぱりつまらないよりは楽しい方が、不満そうな顔よりは、笑顔の方がいいでしょ?」


 と、そこで自分がくさいことを言っていることに気付いたアランがそっと視線を逸らすが、既に手遅れだ。

 シャルロットの顔には、先ほどのとは異なる笑みが浮かんでおり――


「くすくす……自己満足だというのならば、そのぐらいは胸を張ってもらいたいものですわね。……ところで、実はもう一つ気になっていたことがあるのですけれど、尋ねてもよろしいかしら?」

「ん? 別にいいけど……なに?」

「いえ、ただの純粋な疑問なのですけれど……あなたは、わたくしが今不幸だと言えば、このわたくしのためでさえ、その手を伸ばしてくださるのかしら?」

「え? 当然だけど?」


 それは本当に、当たり前のことであった。

 仮にこの場で助けてと言われれば、アランは何の躊躇いもなくその手を伸ばすだろう。


 そこに理由は必要ない。

 ただ、そうしたいと思うからだ。


 少なくともアランにとっては、級友を助けるのに、特別な理由などは必要ないのである。


 しかしどうやらその返答は……或いは、即決であったことは、シャルロットにとって予想外であったらしい。

 一瞬、その反応が途切れた。


 だがそれは本当に一瞬であり、即座に復帰すると、何故かアランのことを睨みつけるようにして見詰め――


「……今、さらにもう一つ聞きたいことが出来ましたわ。あなた、普段から人たらし、などと言われていませんの?」

「え、むしろ今初めて言われたけど……? というか、具体的にどこら辺が?」

「いえ……言われたことがないのでしたら、それで構いませんわ。つまり、そういうことなのでしょうし」

「……?」


 頭の上に盛大な疑問符を浮かべるアランだが、それでもう疑問は解決したとばかりに、シャルロットは背を向けた。

 まあ実際のところ、先ほどからさらに話し込んでしまったし、そろそろ時間的にも限界だ。

 その行動は正しく……しかし何となくその背を見送っていたら、ふと扉を越えたところで、その顔だけがこちらに向けられた。

 瞬間、再度扉に何かがぶつかったような音と、漏れた声が聞こえたが、それに一瞬気の毒そうな目を向けただけで、すぐに切り替える。


 そして。


「すぐにまたお会いしますけれど、こうして改めて話す機会は、今日はもうないでしょうから」


 そう言って、口元にのみ浮かぶ笑みを深ませると――


「それでは、明日……本当に、楽しみにしていますわね」


 それだけを告げ、もう振り返ることなく、今度こそ去っていった。


 その背をやはり見送っていたアランは、そこでふと苦笑を浮かべる。

 相変わらず様になってるなと、そんなことを思いつつ――


「これは、さすがにお気楽にやるわけにはいかないかな……?」


 自分から口にしたことではあるものの、どうやら少し真面目にやる必要があるらしい。

 何せ無様な姿を見せられそうもない相手が、二人もいるのだ。

 もっともそうして意気込んでみたところで、実際どうなるかは分からないが……その時はその時だと、肩をすくめる。


 そうして。


「ま、精々頑張ってみせようかな……二人分の期待に応えられる程度には、ね」


 三度扉に激突する音と声を聞きながら、アランは笑みを浮かべたのであった。

気が付いたら週間総合ランキングで1位にランクインしていました。

これも皆様の応援のおかげです。

いつも本当にありがとうございます。


尚、唐突に始まった武闘大会ですが、おそらくはあっさり終わることになるかと思います。

武闘大会そのものをやることが目的の話ではないので。

戦闘描写もほとんどないかと。

……まあ、予定通りにいけば、の話ではありますが。

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