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XLI 女スザンナ・チューリング

マダム・ポーリーヌが生地を片付けて部屋から退出するのと入れ替わるようにして、ゴードンさんが部屋に入ってきた。


「ロアノークです、ルイーズ様付きの女中をお連れしました。入れてもよろしいですか。」


安定のダンディな黒ひげに安心感を覚えてくる。


ツンとしたマダムとは結局女子トークができなかったから、女中さんとのおしゃべりは楽しみだった。


「どうぞ!」


ゴードンさんが手招きをして、ピンクの上着に薄緑の広がったスカートをはいた、インパクトのある見た目の、同年代の女の子が入ってきた


「あたいスザンナ・チューリング、よろしくね。」


なんだかレミントン家の女中さんに比べたら馴れ馴れしい感じだけど、少しかすれた高い声も人懐っこい話し方も、これはこれで好感が持てる。


でも突っ込むべきところはそこじゃない。


「男爵、この人選は私への当てつけですか?」


そうとしか思えない。


だって・・・


「ルイス、落ち着くんだ、君は被害妄想に陥っているんだよ。」


だって・・・


「ルイーズ様、人選に容姿は考慮されておりません。」


だって・・・


「どうしたのルイス様?あたいどこか変?」


「大きいじゃない!!信じられないくらい大きいじゃない!!」


部屋のみんなが耳を抑えた。


「ルイス、深呼吸をするんだ。少なくともスザンナの背は君とあまり変わらない。」


背はね。


「ルイーズ様、ビスケットをお持ちしました。どうぞ。」


「ありがとうゴードンさん。」


渡されたビスケットをかじったら少し落ち着いた。お腹が空いてちょっと気が立っていたのかもしれない。


「ルイス、君はコンプレックスを持ちすぎなんだ。」


「そう言われると、そうかもしれないわ。」


ちょっと反省しないといけない。ヒステリックだと思われたくないし、客観的に見て楽しいものではないよね。


「大体ルイス、君は顔がとても可愛いのに異性に人気がないのを、全部自分の体型のせいにしていないかい?」


「そうね、すごく癇に障る言い方ですけど、そういう面も少しだけあったかもしれないわ。」


私は周りに比べればお淑やかな性格だと思うし、音楽や裁縫だってできるけど、男性にモテようと頑張ってはいなかった。「この体型じゃなかったら」なんて言いながら自分を甘やかしていた面もあったかもしれない。


「それにルイス、測ったわけではないけど、目測ではスザンナよりもヘンリー王子の胸囲の方が大きいはずだよ。」


「いい加減にして!!」


男爵とフランシス君がビクついたのが見えたけど、レディにも我慢の限界がある。

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