予知夢
ゼウスとポセイドンは銀河系の恒星にいた。太陽系からは反対の端に位置するところだ。
そこには太陽系のように、美しい星ぼしが秩序よく並び、数多くの生命体を生み出していた。しかし、宇宙ウイルスの侵略で、その生活は大打撃を受けてしまっている。
『これはひどいな』とゼウス。
『全体としては50パーセントってとこだが、場所によっては、そのほとんどがやられてしまっているぞ』
そこに広がるのは、荒れ果てた荒野だった。
『この密封式のケースに入れて、持ち帰ろう』とポセイドン。
二人はサイコキネで、慎重にウイルスの採取を行った。
『よし、これでいい』
ケースは二人の超能力で頑丈にロックされた。
そして、JAXAへ向かった。
そして、サターンによって占拠されたJAXAは、怖いほど静まりかえっていた。
「くそー、JAXA の職員を人質にとられたのといっしょじゃないか」
「うかつに手は出せない!」
『どうやらこの状況が把握できてるらしいな。少しでもへたなマネをしたら、ここの奴らの命は保証しない』
「どうするつもりだ、サターン」
『せっかくだから、この装置の威力を試させてもらおう。ゼウス達がウイルスを持ち帰ったら、それをガイアに持たせこちらによこせ』
「なんだと!」
『もう一度言う。へたなマネはするなよ!』
そこへゼウス達が戻ってきた。
『なんだと!サターンが・・』とゼウス。
『やっかいなことになったな!』
『ご苦労だったな!ゼウス、ポセイドン。では、ウイルスを渡してもらおうか。おっ、そうだ!雷鳴の剣も一緒にいただこう。お前達が持っているとろくなことはないからな』
「翔太君・・」
「翔太・・」
みんな、どうしていいのかわからないでいる。
すると
『私が行きます』ガイアはそう言った。
『ガイア、危険だわ』と乙姫。
「・・マリ子さん、僕が行きます」と太郎。
『太郎さん、ありがとう。でも、あの装置を動かせるのは私だけ』
「マリ子さん・・」
『ポセイドン、ウイルスを私に!』
『気を付けろよ』
『翔太、雷鳴の剣を・・』
「気を付けて」僕は雷鳴の剣をガイアに渡した。
『・・翔太、風雲の盾も、あなたが握ればきっと輝くわ!』
その時、ガイアはテレパシーで僕にそう言った。
「えっ?・・」
『サターン、これからウイルスと雷鳴の剣を持ってそちらに行きます。そこにいる人たちは解放してください』
『いいだろう』
そして、ガイアがJAXAに姿を消すと、中から一斉に人質となっていた人たちが駆け出してきた。
「太郎さん、ワクチンができるまでどのくらいかかる?」
「おそらく3日間」
「サターンはワクチンができたら、どうするつもりなのかしら」
『どこかの銀河で試してみるだろう。そしてここ太陽系は、救うつもりなど無いのに決まってる』とゼウス。
『ワクチンが出来上がるまでの3日間が勝負だ!翔太』とアオ。
『そうだ、これがラストチャンスだ!』とポセイドン。
宇宙の縮小は今も続いている。ポセイドンの言う通り、これが最後の闘いになるだろう・・。
『苦戦しているようだな』そこにアカが姿をみせた。
『あっ、パパ!』
「どうしたんだ、アカ」
『じっとしてられなくてな・・』
「どうしたらいいの、レッド」と桃子ちゃん。
『ん・・』
「その後、宇宙の方はどうなってるんだ、アカ」
『宇宙ウイルスはさらに拡大している』
「宇宙の縮小は?」と美咲お姉さん。
『どんどん加速度を増して、破滅へと向かっている』
『止める方法はまだわからないの』
『うん、宇宙はおそらく自分の意思でそうしているんだ』
「どういうことだ」
『宇宙は、宇宙ウイルスという悪魔に占領されつつある。このままだと、宇宙はその悪魔のすみかと化してしまう。かといって、その悪魔をやっつけることも出来ない。そして宇宙は、自分を消し去ることで、そのウイルスの悪魔を絶滅させることを選んだのだと思う。悪魔に占領された自分の姿など、誰だって見たくなどないからな。つまり、悪魔を撃退する確かなものが現れない限り、宇宙は自分の選んだ道を突き進むだろう』
「誰がしたわけではなく、自分で自分を消し去るというのか!」
『そういうことだ』
『こうなったら、何がなんでもワクチンをつくって、地球を助けないと!』
「ブルーの言う通りだ!」と太郎。
『サターンは、ワクチンが出来るまでは、何も仕掛けては来ないだろう。その間に何か手立てを・・』とゼウス。
「ガイアが心配だわ」と美咲お姉さん。
『ガイアも大丈夫よ。彼女がいなかったらワクチンが出来ないんだから』とセレーネ。
「アカ、ガイアが言ってたんだけど、僕が風雲の盾を握れば輝くって!それってどういう意味かな?」
『風雲の盾が輝く!?』
「翔太も、風雲の盾が使えるってことだよ!」と駿。
「何で駿が知ってるんだ?」
「ん、ただの勘だけど」
「なんだ、ちょっと期待しちゃったじゃないか」
「でも翔太君、盾が輝くって、もしかしたら本当に使えるんじゃない!」と桃子ちゃん。
「ちょっと試してみるか」
「駿、火星まで頼む!」
「了解!」
そして僕たちは火星に飛んだ。
あの箱だな・・。僕は箱から盾を取りだし、両手で握った。
「あれ?ちっとも輝かないじゃん・・」
「本当だね。翔太、胸の前で構えてみたら?ガイアがやったみたいに」
「なるほど・・」
しかし、風雲の盾は何をしても反応してくれない。
「やっぱダメだね、翔太」
「とりあえず、地球に持っていくか」
『おう、翔太、戻ったか』とアカ。
「全然だめだ!輝かないよ・・」
『そうかダメだったか・・』
いったいガイアの言ったことの意味はなんなんだ?!
JAXA内部では・・
ガイアはウイルスの入ったケースのロックを外し、慎重に装置にセットした。
『始めるわよ!』そして、スタートボタンを押した。
あとはcompletedの緑のランプ点灯すれば終了だ。
『サターン、ワクチンが完成したらどうするつもりなの?』
『まずは試してみるさ、アンドロメダあたりでな』
『銀河系はどうするの?』
『しばらくは放っておくさ。あいつらの嘆き悲しむ姿を眺めながらな』
『なんてことを』
そこは何もない。色も音も匂いも。ただ暗闇だけが僕を包んでいた。体が立っているのか、横になっているのか。足が地に着いているのか、浮かんでいるのか。なんにもない空間では、自分の存在すら怪しくなる。
その時、暗闇の奥の方から、僕を呼ぶ声が聞こえた。
『翔太、翔太・・』
ハッキリと聞こえる男の声。だけど聞き覚えのない声だ。
『翔太、お前はまだ雷鳴の剣の力を1パーセントも使っていない。求めるものが同じならば、その者たちと力を合わせるのだ!そうすれば、雷鳴の剣は宇宙をも動かすだろう』
・・夢だった。それはとてもとても不思議な。
JAXAの建物には、サターンがバリアを張っている。中に攻めいることも、ガイアが中から出ることも不可能だ。
雷鳴の剣さえあれば、簡単に破壊出来るんだけど。
サターンにワクチンを渡してしまってはいけない。あと36時間、それまでに。
翔太となんとしても連絡をとらなければ、そして風雲の盾で、このバリアを破ってもらう。そうすれば可能性はきっとある。翔太は必ず、あの風雲の盾に命を宿せるはず!あとはバリアを破るタイミングを、こちらの行動とどう合わせるかだ。
『あとどのくらい待てばいいんだ』
『36時間ってとこね!』
『うん、成功の確率はどうなんだ?』
『数は少ないけど、今までの実験では100パーセントよ。ただ今回は宇宙からの未知のウイルス、結果がどうなるか予想できないところもあるわ』
『ガイア、この作戦がうまくいったら、もう一度二人でやり直さないか!?あの頃のように』
『・・今はそんなこと考えてる余裕なんてないわ』
僕はずっと、あの夢とことを考えていた。
「翔太・・翔太・・ああ、なんだ駿か・・」
「どうしたの?ボーッとして」
僕は昨夜の夢のことをみんなに話した。
『知らない男が雷鳴の剣のことを・・』
「しかも、まだ本当の力の1パーセントも出してないとか。雷鳴の剣に詳しい人かしらね」と美咲お姉さん。
『天空の神ゼウス・・』アカはそう言い切った!
『リスタートライフで、翔太達は超能力を得た。そして翔太は、天空の神ゼウスの後継者に!その天空の神ゼウスが、翔太の夢に現れても不思議はないよ・・予知夢さ!!』アオはそう言った。




