覚悟
『ブルー、覚悟は出来ているんだな』
『うん』
『なら、もう止めることはしない。おまえの思った通りにやるといい。ワタシはおまえの親だ、出来る限りのサポートを約束しよう」
『ありがとう、パパ』
『成長したな!ブルー』
・・レオン彗星・・
「駿、駿・・」
僕は、倒れこみ気を失う駿を見ていた。
「駿に何をするんだ!許さないぞ!」
僕は無意識のうちに、サターンをにらみつけていた。
小さい駿を攻撃するなんて・・許せない!絶対に。
ふと僕は、自分の身体がどんどんどんどん熱くなっていくのを感じていた。なぜなのか、どうしてなのか、もう自分自身で自分をコントロール出来ない。
その時、サターンの目が再び怪しい光を放った。
それと同時に僕は、身体にわいたすべての力を、サターンにぶつけた!!その瞬間・・。
『・・ウオー・・』
サターンの身体は、遥かかなたまでふっ飛んでいった!
「翔太君、すごい」と桃子ちゃん。
「サイコキネキスね・・」
「駿、駿、しっかりしろ」
「・・ん?翔太」
「良かった、気がついたか」
「駿君、良かった」
「あれ、サターンは?」
「翔太君がやっつけたのよ!サイコキネで」興奮の桃子ちゃん。
「うわー、すごい翔太」
「ぼんやりはしてられない。サターンはまた来るぞ。今度は本気で・・」
「でも、これからどうしたらいいの?・・」
そうなんだ、美咲お姉さんの言う通り、僕達はどうしたらいいんだ。
「そうだ、ブルーのママは?」と駿。
「そうか・・」僕達は女神の眠るガラスのケースまで走った。
「あった!」ガラスを叩いてもびくともしない。
「助け出してあげたいけど、私達だけの力では無理だわ」
「翔太、ブルーの時みたいに、みんなでお願いしたらどう?」
「そうよ翔太君、やってみる価値はあるわ!」
「そうか・・やってみよう」
僕達は、ガラスケースを囲むように輪をつくった。並ぶ順もあの時と一緒、そして手をつなぎ目を閉じた。
「うわー・・!」
一瞬のことで何が起きたのか理解できなかった。
呪文を唱えようとしたまさにその時、僕達はものすごい圧力に吹き飛ばされたのだ。
『地球人よ、おまえらを甘くみすぎていたようだな。今度は手加減しないぞ!』
まずい、サターンだ・・。
『よしブルー、行くぞ!』
『うん・・ごめんねパパ、パパにそむいてばかりで』
『いや、ワタシは嬉しいんだよブルー。おまえの成長がな』
『うん』
『よし、カードに封印するぞ!気を付けるんだぞ』
『はい』
「駿、みんな、大丈夫か」
「うん」
「私達も大丈夫よ」
「くそー、駿、瞬間移動だ」
「えっ、でもさっきできなかったよ」
「バリアの外へは無理でも、バリアの中だけの小さい瞬間移動ならできるはずさ。そして隙をみてまたあいつをふっ飛ばす」
「うん、わかった」
「サターンの真後ろだ!駿」
「よーし、いくよ」
僕達は、サターンの真後ろに瞬間移動を成功させた。
今だ、僕は再びサターンをふっ飛ばした。
「わー、翔太、やったねー」
「だけどこんなことを繰り返しても、いつかはやられてしまう」
どうしたらいいんだ・・。
その時だった。駿のズボンのポケットがまぶしく光った。
「駿君、ポケット!」と美咲お姉さん。
「えっ・・」駿はポケットに手を入れ、それを取り出した。
「アオ!」
「あー、ブルー!」
『よっ!久しぶり』
「なんでおまえがカードの中に?」
『訳は後だ!これからボクが一瞬だけバリアを破壊する。翔太達はその時を狙って月へ瞬間移動するんだ』
「アオ、そんなこと出来るのか?」
『出来るとも、ボクは月の王子だぞ!』
「えー、そうなの!」
『そんなことに感心してる場合か!早くしないとサターンがやって来るぞ』
「よし、わかった!駿、今度は失敗するなよ」
「まかせとけ!」
『おのれーまたしても!もう許さん』
『サターンだ、急ごう!』
「わかった」
僕達は瞬間移動のため、気持ちを集中させた。
『じゃあバリアを破壊するよ!』
アオのカードは光をおび、ぼく達の遥か頭上まで上昇した。
『そうはさせるか!』
サターンの赤い目がアオのカードをにらんだ。
『あーあ』
アオは僕達の足元に叩き付けられてしまった。
「アオ、大丈夫か」
『くそー』
『どうする?アオ」
『みんなよく聞いてよ!次にボクが飛び上がった瞬間、バリアを壊し、同時にサターンの動きも止める。そのわずかな時間にタイミングを合わせて瞬間移動をしてくれ』
「そんな、二つを同時になんて、アオ・・」
『ボクを信じて』
「・・王子だもんな!で、わずかな時間って?」
『5秒だ!出来るか駿』
「たったの5秒かよ・・」
「わかったよブルー、駿くんやる!」
『ワン・ツー・スリーで飛び上がるぞ』
だけど、そのあとアオはどうなるんだ?怒り狂ったサターンの攻撃をひとりで受けることになる。そんなことになったらアオが死んじゃうよ・・。
『何をごちゃごちゃやってるんだ。そっちが黙ってるなら、こちらから行くぞ』
『みんな行くぞ!・・ワン・ツー・スリー・・』
アオは光りながら飛び上がった。
『今だ!』アオからのテレパシーがかすかに届いた。
「アオ、なんとかこらえてくれよ・・駿、瞬間移動!」
「おう!」
アオは体をくるりと反転させ、サターンをにらんだ。
その瞬間、サターンの動きが静止した!アオの渾身のサイコキキスだ。
『1秒、2秒、3秒、4秒、5秒』
『生意気な!』サターンの怒りが、アオを襲った。
そしてアオは力尽き、地面に伏してしまった。
・・月では・・
ブルーを自らの手で封印し、あとはただ祈るだけの神。
その封印からどのくらい過ぎた頃だろうか、ほんの一瞬、息子ブルーのテレパシーを感じ取った。
それは彗星のバリアが、一瞬破壊されたことを意味し、同時に息子の命の危機を意味するものでもあった。
『息子よ・・』




