表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/53

ガ○トの出前で、やけくそディナー

      

 正直、「どの面下げて帰るのか」と思うが、まさかこのまま旅に出るわけにもいかない。 

 結局俺は、しおしおとマンションへ戻った。


 せめてものお詫びの印に、あいつらが帰る頃に合わせて、ガス○の出前を大量に頼んでおいたが、こんなので埋め合わせになるとは思えん。


 そして、こんな日に限って早めに帰ってくる二人である!


 丁度、届いた出前をテーブルに並べたところで、タイミングは悪くないんだが……どかどか入ってくるなり、声揃えて叫びやがるしな。


「にーちゃん、首尾の方はっ」

「お兄様、上手くいきましたかっ」





「……うっ」

 俺の気遣いである、出前料理は無視かよ? と思ったが、そりゃ二人にとっては、そっちの方が先だわな。

 観念した俺は、その場で頭を下げた。


「すまん! 話にもならなかったっ」


 引き延ばしても気が進まないのは同じなので、俺は真っ正直にあのじーさんと会見した顛末を話したさ。

 報告自体は五分も掛からなかったが……意外にも、二人は俺を責めなかった。


 いや、むっとした顔を並べてたから、さぞかし怒るのだろうと思いきや、こいつらが腹を立てていたのは、あの相談役っぽい元社長のじーさんに対してだったらしい。


「思ってたより、嫌なじーちゃんだったね、あの人」


 マリアが固い声で言う。

 いつもの陽気な笑顔ではなく、久しぶりに怒った顔付きだった。


「道理の通じない人は嫌いです」

「い、イヴもか」


 同じく、ひときわ冷たい表情のイヴである。

 こういう顔をする時は、内心でめちゃくちゃ怒っている時であり、俺はむしろ、自分の怒りの方が醒めてきた。


「いや……まあ、今から思えば、無職は本当だしな。そこまで連呼される謂われはないけど」

「もう忘れてくださいな、お兄様」


 わざわざ呆然と座す俺に寄り添い、イヴがそっと抱きついてきた。

 すると、マリアも負けじと抱きついてくれるわけで……大の大人としては、ちょっと面映おもはゆい気分である。


「ありがとうね、あたし達のために」

「いや……成果を出せなくて、悪かったよ。なんなら、ちょっと時間を置いて、また行っても」


「いえ、もうそれには及びません」

「そう! あたしら、決心がついたから」


 仲良く宣言する二人に、俺は思わず身構える。




「決心――と言うと?」


「二人で、こうなった時の対応を決めていましたの」

「だから、そんなに責任を感じなくてもいいからね?」


 ああああ、心が弱った無職の俺には、こいつらの優しい言葉が染みるっ。

 逆に、益々悪いことした気になるなっ。


「もったいぶらずに教えろよ? どうするんだ?」

「それはまあ、食べてからにしようよっ」


 いつもの陽気さを取り戻し、金髪のマリアが明るく言う。

 イヴもニコニコしつつテーブルに着き、なぜかこの話は済んだことになってしまった。


「たとえ○ストの出前でも、こんなに一杯あると、豪華ディナーに見えるよねぇ~」

「わたしの好きな、690円のマヨコーンピザもありますわ~」

「これ、丸々一つ分なのに、安いよね~」


 ピザ好きのせいか、二人で頷き合ったりしてな。



「ね、値段を言うな、値段をっ」



 なぜかメニューに詳しいイヴに言い返したが、なんか本当にもう、いつもに戻って元気に食べているという。


「ほら、にーちゃんも食べようよ? あたしらに任せてると、あらかた全部、平らげちゃうよ」

「わかった……じゃあ、話はメシの後だな」


 二人がそう言うので、俺もモソモソと出前のあれこれをつつき始めたけど。

 食事の後で、二人が次にどんな爆弾発言をするのか、気が気ではない。


 正直、砂を噛んだような味だったね!  


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ