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93 二度目の侵攻




 連なった街道が歩を進めるごとに背後に消えていく。

 前回は地下からの侵攻だったが、今回は地上からの侵攻。

 今は気づかれていないが、街の中央に向けて走っているので、確実に気づかれることは間違いない。


『リード。土のマナが異様に薄いです。厭な予感がします。警戒してください』


 緊張感に襲われているとスリートがそう忠告してきた。

 言われて空中のマナに意識を向けると、確かに土のマナがまばらにしかない。

 いつもの10分の1ほどではないだろうか。


 異常事態だ。マナが見えるようになってからここまで減っているところは見たことがない。

 なにかあるとみていいだろう。

 別働で動いているホットとボルフレディに、その累が及ばなければいいが……。


 もしも、ボルフレディが死亡するような事態になれば確実に奪還することは不可能になる。

 そうなれば現在おとりになって、わざと目立つようなことをしている俺たちの苦労どころか、すべてが終わりになってしまう。


 イレギュラーが来てほしくないが、来てくれないとまずい。

 複雑な心境になってきた。

 もし来たとしても、俺とレッド、ドムズに、リザードマン兵士、餓鬼族の戦士たちがいるので余程のことでなければ対応はできると思うのだが……。


 そんな事を考えていると、俺の視界に突然土のマナの奔流が現れた。


「止まれ!」


 俺はそれを視認し、思わずそう叫んでいた。

 前に進む一同は俺の声で止まり、怪訝そうな顔でこちらを見つめる。


「前から魔王クラスの障害が迫ってる……。構えてくれ」


 そう進言すると、兵士たちはみな前方に向けて構えを取ってくれた。

 だが、迎撃する準備ができたからと言って、安心できない。

 前から迫る奴は土のマナを制御下においている。奴にとってはこの地面そのものが凶器だ。


 前方を見て緊張感に襲われると、マナの壁の向こうから何者かが迫って来るのが見えた。

 近づいてくるごとに断片的ではあるが奴の正体が露になっていく。


 血に濡れた大きな土槍に, それを持つには不釣り合いにやせ細った腕、女リザードマンの顔。


「バルザック……。なんでお前……」


 兵士のひとりが、そうつぶやく。

 それと同時にそいつの全貌が見えた。

 大土槍を持ち、女を抱える痩躯のリザードマン兵士。

 それが奴の正体だった。


「レッド隊長おかしいんですよ。魔王が消えてからミーシャ――俺の恋人が動かんのです……」


 変わり果てたバルザックはそうこちらに語りかけてきた。


『あれは土の精霊に憑りつかれています。危険です。死にたくなければ初手で打ち取ってください』


 死んだはずのバルザックが出てきたことに衝撃を受けていると、スリートはそう無情に進言してくる。

 だが、奴はリザードマンたちにとってはかけがえのない仲間だ。

 これ以上、レッドが苦しむさまは出来れば見たくない。


 どうしたらいいんだ……。





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