88 見たことのないタイプ
英雄は魔王を仲間だと言ったが、そのことについてそれ以上のことはしゃべらなかった。
口をうごかす代わりに、奴はずんずんと歩を進めて行き、探索を続ける。
その行動は今必要とされていることだし正しいのだが、何だかモヤモヤとした感覚に襲われる。
その様子が怒っているように感じられるからだろうか。
「こっちの建物の中にも何もないな」
ホットは剣から衝撃波を生じさせ家を壊すと、機械的に報告をよこしてきた。
どこかに絶対に魔王の間につながる道があるはずなんだけどな……。
先ほどから目ぼしいもの建物を壊しているがすべてはずだれだ。
奴が怒っているように見えるのはこれでイラついていることもあるかもしれない。
少し閉塞感を感じている。この深淵は今までの迷宮とは作りや仕掛けがまるで違う。
こちらの常識がまるで通用しないのだ。
大概の迷宮は一本道から始まり、そこから道が分岐していき、ある程度攻略する道筋がつくようにできている。
だというのにここは……。
道もない。分岐もない。エレベーターもない。
ないないずくしだ。
あるのはただ開かれた駄々広い空間だけ。攻略の道筋がまったくつかない……。
今の取れている攻略の方法は、どこかにあるだろう次の階層に移動するエレベーターもしくは階段を発見することだ。
だがこの広い街の建物を白み潰しに探しても埒が明かないし、時間がかかりすぎる。
新しい方策。それを練ることが今必要だった。
だがどうやってやればいいのか……。あまりにも情報が少なすぎるような気がする。
そうやって考えことをしながら上空を揺蕩っていると遠くに風変りな人形が2つ見えた。
一人は折れた剣も持ち。
一人は糸を番えた大きな怪物の人形を近くにおいている。
「ホット、風変りな人形がいる。気を付けてくれ」
下にいるホットに注意喚起をする。
すると、ホットは駆けていた。
踏み込み、切り裂き、叩きわる。
もはや、戦いでもない。ただの処理とかしたそれを見届けると、怪物を従えた人形の方からスクロールが、落ちてきた。
見たことがない文様。
そのスクロールにかかれた文様は、ある程度魔道具に精通しているおれでもまったく見当がつかなかった。
移動系、駆動系など文様の形である程度は読み取れるものだが、既存のものにそいつに似たものはなかった。
俺は地面に落ちたスクロールを拾い上げると試しに魔力を通してみた。
文様が光ったが何も起きない。
「何だこれ?」
「転送のスクロールだ」
口から疑問を漏らすと、仏頂面のホットが応えた。
俺からそれを奪いとると地面に置いて、奴はその上に立った。
するとホットは光と共にそこから消えた。
なるほど。
奴の言動でこのスクロールが何なのか把握した。
こいつは使用者を別の空間に転送するものなのだろう。
転送した先が少し心配だが、入るしかないようだ。
「コールド、俺は誰もが平等に生きれる国を作るのが夢なんだ」
俺が決心すると怪物を従えていた人形の残骸が、そうつぶやいた。
英雄の名前をつぶやいたことと、首だけの人形がつぶやく様を不気味に思いながら俺はスクロールの上に立った。




