22 留学は突然に
迷宮改築師。
修理できる謳いながら、この仕事はとかく修理できないものが多い。
俺は二つ目の仕事を終えて、そう実感した。
俺をこの考えに導いたのには、トリシュとダウニーのことが大きくかかわっているだろう。
トリシュの場合は、死んだ人間と死体を食べたという悲惨な事実は修正できず。
ダウニーの場合は、過去にあったことと迷宮攻略失敗という事実を雪ぐことができなかった。
まったく無力なものだ。結局のところ、修理できるのは上面絵だけで一番大事なところは修理などできないのだから。
そして再度修理できないものと遭遇し、俺はさらに実感を深めていた。
修理できないものがこの世には多すぎると。
「さーせんでした!! 本当にサボりじゃないんです! 無視しないでください」
「……」
頭を下げながら、俺はちらりと盗みみる。先生はそっぽを向いていた。
困った。これは修復できん類の奴だ。
今現在、俺は壊してしまった先生との信頼関係を修復しようと手を尽くしているが、なかなかに厳しい。
気軽に話しかける、お道化る、土下座、平謝り。
これらを試してもダメだったのだから、厳しいを通り越して、無理からんような気もしてきた。
だが俺にはまだ奥の手がある。
五体投地。
この最強の謝技が!
そして今こそ、それを使う時だ。
「許してください! なんでもしますから!!」
地面にだいのじにダイブする。見ずとも結果はわかった。先生は許してくれるだろう。
一分後――
何故だ!?何も反応がない!
俺は狼狽していた。
うつ伏せになったまま、一分反応なし。もはや、恐ろしいという感情しか浮かんでこない。
「そうですね。なんでもすると言いましたね。リードさん。マナを火5、風5、水5、土5で魔法を使ってください」
天から救いの声がした。俺は有無を言わずに魔法の発動に取り掛かる。
――火5、風5、水5、土5。
魔力を通して魔法を発動する。
体の周囲に白いオーラが生じ始めた。どの属性とも思えない、力の波動のようなものだ。
「何ですかこれ?」
目の前に展開される未知の魔法を見ながら、俺は尋ねる。
「それは、空属性の魔法『フォース』です。主に精霊を呼び寄せることと、全属性をレジストするときに使う魔法ですね」
先生は丁寧にそう説明した。
レジスト。確か魔法を防御するてことだったはずだ。
普通は火なら水、水なら土、土なら風、風なら火、といったように相対する属性をぶつけないといけないのだが、先生はこれ一つで全部対応できるという。
赦しを乞うたのにとんでもないものをもらってしまった。
「これで、許してもらえるんですか?」
魔法を解いて、納得できない身の上を伝えた。
何だか腑に落ちないのだ。
こちらが悪いことをしたのに、それを魔法の教授を受けることで許されるなんて。許しをこうためにペナルティを負おうと覚悟していたのに片透かしだ。
「許す。許さないも何も私はあなたのことを恨んではいませんよ」
そんなはずはないだろ。先生は俺のことを無視してたし、謝ってもそっぽを向いてたというのに。
先生の物言いに少しむっとした。
「ただ、時間を稼ぐ必要があったので、時間を稼いでいただけです」
そう先生が言うと同時に、身体の身動きが取れなくなった。
体を見ると、青い鎖でぐるぐる巻きにされていた。
少しけだるくなってきた。
この鎖の効力かなにかだろうか。
「先生、これはどういう……」
現状を理解できずに、そんな声が口から洩れる。
「今のでわかりました。やはり、あなたには素晴らしい魔法の才能が有ります。このまま、あなたをここにしばって腐らせることなど私にはできません。是非とも魔法学園に行くべきです。きっと、あなたにとってプラスになるはずです」
なるほど。現状理解するとともに、俺は今の発言で先生の新たな欠点を見つけてしまった。
この人、おせかいがひどい。
「リードさん。あなたはここで二級魔法と三級空魔法を取得しました。おそらく魔法学園では大きな躍進ができることでしょう!
では体に気を付けてご達者で!」
感動のためか、泣きながらハンカチを握りしめる先生に見送られながら、ローブの男に俺は引きずられていた。
すいません。まだプロットが練れてないので、しばらく不定期で幕間を更新します。
あと一週間くらいで練れると思うので、よしなに。




