130 決めていたこと
上空には飛ぶ斬撃を打ち出す魔王。地には両腕に黒いオーラを纏い殺気を隠そうともしないシェーン。
牽制のために自分の全方位に風魔法のかまいたちを放つ。
シェーンのひび割れた影が完全に砕け、魔王たちは見える範囲ではいなくなった。
魔王たちはまだ来るのかマナの流れを見て確かめたいが、シェーンから太陽が射出され、それは許されない。
意識を空に向けたせいか、避け損なった。太陽が腿に被弾し、肉が焦げる匂いを鼻腔が感じるとともに激痛が走る。
悶絶しそうになるがシェーンが迫っているので抑え、風魔法で移動し距離を取る。
これ以上シェーンとの戦いが激化すれば生殺与奪に関わる状態になる目に見ている。
魔王の増援が来るかはわからないが、もうここで決めていたこと。
シェーンをこちら側に引き入れること。
それをやらなければならない。
「もうやめましょう。こんなこと。これじゃあなんにもならない」
こちらに向けて殺気を放ちながら、近づいてくるシェーンに戦いをやめるように呼び掛ける。
先ず誤解を解くことから始めなければならない。
この戦いの原因にはそれが在るのだから。
「貴様は父と敵対するという意思を示したはずだ……。これは貴様が選んだことだというのに、今更世迷い言をほざくな!」
こちらの申し出を拒絶すると共に、太陽を射出する。
急いで、回避する。
「誤解だ! 敵対するつもりなどなかった!」
シェーンの言葉を声をはり上げ、否定する。
「黙れ! 始神の墓を暴くために、魔王を殲滅し、エスカ帝国に進行した! 貴様のすべての行動が父への敵対の意思――私への敵対の意思を示している!」
シェーンは怒号を発すると立ち止まり、こちらを睨みつけた。
俺はそれを受けとめ、言葉を返す。
「違う……。それはホットやシェイムたちは見殺しにする可能性があったからだ! あんたは友達が魔王の大群の中に飛び込んでいって、自分にも何か力添えができるのに何もしずに居られるのか!?」
シェーンは一瞬だけ少し苦しそうな表情になるが、すぐに憎悪に染まった顔になる。
「ふざけるな! それは貴様らの都合だ! 私には関係がない! 私はただ家族に矛をむけるものを排除するだけだ!」
「俺たちの都合だと! ラルフが世界を奴自身に矛を向けざるおえない状況に陥れたんだろうが……。奴の都合に世界の人間が巻き込まれているだけだ!」
こちらがそういい終えると、シェーンは見るだけで殺せるような目つきで睨みつけてくる。
怖気が走るが奴の目を睨み返す。
「いい加減目を覚ましてくれ! あんたはいい上司だ。 俺はあんたを失いたくない! こっちに来てくれ! あんたが居れば、ラルフだって戦争をやめるはずだ。シェーン、あんただって、こんな戦争したくないだろう!」
シェーンに向けて思いのたけをぶつける。
奴の目が揺らいだような気がした。
「私は……」
こちらの言を否定する言葉をシェーンは吐くと思ったがその言葉は聞こえてこなかった。
奴は苦しそうな顔をして地面を見つめた。
その姿を見て、言葉を続けようと口を開ける。
「まだ――」
「シェーン。トカゲ野郎の言葉なんかで揺らぐとはまだまだお子ちゃまだなお前も」
それを遮るように、男らしい声が聞えた。
声がした元に目をやると、羊――ブレントがシェーンの後ろに立っていた。
「お前にはそいつの相手は荷が重いな」
ブレントがそういうと、姿を羊から赤い髪の少女に変える。
シェーンはそれと重なるように姿を消した。




