117 友人との再会
異国クウネは他の国にように一つの民族に一つの文化というわけでなく、多数の民族による多数の文化によって成り立っている国だ。
自由の精神を大切にしているようで、検問が甘く、大概は来るものは拒まない。
検問ではいつもは少しごたごたするのだが、ここでは荷物を提示するだけですぐに通ることができた。
衛兵は前来た時と同じで相変わらず、警戒心ゼロだ。
こんな感じだというのに、犯罪が起きないのが不思議なものだ。
エスカ帝国の情報収集のために通りに出向く。
通りには出店がたくさんあり、人がごったがえしていた。
前回もひとがすごかったが、今回も凄いことになっている。
その中を通りながら、活発そうな武器屋に目をつけた。
エスカ帝国というくらいだから軍事に精通しているだろうし、軍事に欠かせない武器を扱う奴ならなにか知っているかもしれない。
目ぼしをつけて武器屋の元に近付いていくと、その前の肉屋によく見知った顔がいることに気づいた。
予定を変更してそいつに声をかけることにする。
「シェイム、久しぶりだな」
そう声をかけるとシェイムは訝し気な顔をした。
「誰ですか、あなた?」
奴の口から放たれたその言葉に少しダメージを受ける。
シェイムに再会できたことに浮足立って、俺が奴の知ってるリザードマンの姿でないことを失念していた。
リーデンベルグといっても信じてもらえないだろう。
身内に何度も嘘を吐くのは応えるがしょうがない……。生徒の振りでもするか。
「嫌ですね。冗談がきついですよ。あんなに良くしてくれたじゃないですか。あなたの生徒のリーヅです。リーヅ」
そういうとシェイムは少し申し訳そうな顔をすると、表情をほころばせた。
「そ、そうですよね。リーヅ君ですよね。リーヅ君。も、もちろんおぼえていますとも……」
絶対に覚えていなかった奴が吐く常套句をシェイムは吐く。
そんな生徒はいないのだから覚えていないのはしょうがないのだが、もっと何かなかったのか。
そんなことを思っているとシェイムの表情が少し険しくなった。
「リーヅ君。折角の再会は嬉しいけど、今僕は極めて危険なことに関わっている。君を巻き込みたくないんだ。戦争が終わった時にまた会うと約束するよ。ごめん」
そういうと、シェイムはこちらから逃げるように人ごみの中に入っていってしまう。
極めて危険なことていうのは、『始神の伝道書』を持っていることだろう。
そんなことは承知済みだ。
危険なことならこちらも首を突っ込んでいるから、シェイムと距離をおいてもしょうがない。
奴の後を追っていく。
シェイムはこちらを巻くためか、通りから路地の中に入っていた。
通りから路地に入ると俺は風魔法で飛んで近づき、走っていく奴の肩を掴む。
「待ってくださいよ。水臭いじゃないですか。そんな大変な目に会ってるなら、是非とも俺に手助けさせてください」
そうこちらが言葉を投げかけるとシェイムはこちらに振り向いた。
「本当に危険なことだ……。命の保証は出来ないよ。それでもいいのかい?」
「無論です。友人のためなら、命くらいいくらでも掛けますよ」
「リーヅ……」
こちらがそう返事をすると、さらにシェイムは申し訳なさそうな顔をした。
なんかよく覚えていない奴の俺が命までかけるて言ってるから罪悪感に襲われているようだ。
「ありがとう。実は人の手が足りてなかったんだ。君が協力してくれるならとても助かる」
シェイムはこちらの瞳を見てそういうと少し表情を陰らせてつづけた。
「僕は君のまえで厳格な態度をとっていたから。今僕がやってることを見たら幻滅するかもしれないけど、必要でやってることだからそれは理解してくれると嬉しい」
「必要ゆえならしょうがないですし、幻滅することなどありませんよ」
そうこちらが返すと、シェイムは頬を緩めた。
「今の僕の拠点に案内するよ。ついてきて」
奴の後ろに張り付いて、路地から通りに歩を進める。
シェイムもなにやら立て込んでいるようだし、エスカ帝国の情報収集と平行で進めなければいけなくなりそうだ。




