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114 訓戒

副題「リフォームで魔王と仲良くなる異世界放浪記」をタイトルにつけました。

よろしくお願いします。




 深淵からの神聖力について不気味に思いながらも城に帰還する。

 このことを考えたところで情報が少な過ぎて何も出てこないので、ひとまず頭の片隅に追いやることにする。


 ここでやることはボルフレディに報告することだけだ。

 そのことだけについて考えよう。

 現実逃避のような気がするが、答えの出ないことを不安に思っていてもしょうがない。



 今はまだ昼くらいだからボルフレディは会議でもやっているだろう。

 会議室に向けて歩を進める。

 石の廊下を進んでいくとすぐに会議室に至った。


「入るぞ」


 会議室の扉を叩いて、そう告げる。


「入れ」


 中からレッドの声が聞えた。

 扉を開けて会議室の中に入ると大きな机の向こうにレッドが座っているのが見えた。


「他の連中は何処に行ったんだ?」

「ああ、会議ができないから休憩させている」

「何かあったのか?」

「いや、ただコールド殿が寝坊しているだけだ。あの人がいないと遷都するかどうかの話ができないからな」


 なるほど。あいつの意見で遷都するかどうか決めようという決めようとしているが、奴が起きないからできないのか。


「そりゃ、難儀だな」

「確かにそうだな。だけど、俺にとって一番難儀なのはお前がここから離れることだ」


 レッドはそういうとこちらの目を見つけてきた。

 話が長くなりそうな予感がするので、目の前の椅子に座る。


「できれば、おまえがここに居てくれた方がこちらとしてはありがたい。お前が居ればもし有事のときで負傷者が出たとしても神聖術で回復させることが出来るからな」

「そう言ってくれるのは嬉しいが、俺にもやることがあるからな……。悪いが諦めてくれ」


 実の父の申し出であるし、今の現状を慮ると人手がいることはわかっているので言い出しにくかったが、何とか断った。

 レッドはこちらの顔を見ると少し悲しそうな顔をする。


「そうか……」


 静かにそうつぶやくと、レッドは少し申し訳なさそうにつづけた。。


「お前には助けられた。なにか渡したいのだが生憎物資が不足していて、俺の一存ではどうにもできない……。その代わりとしてだいぶ劣るかもしれないが、兵士に代々伝わる訓戒を送らせてもらいたい」

「ああ、それで構わない。武具とか鎧とかをもらったとしても持て余すだけだからな。それよりかは訓戒で兵士の思考パターンとかある程度読めるようになった方がいいから」


 こちらがそう返事すると、レッドは安心したような顔になった。


「そうか。ならよかった。……では送らせてもらおう。『願望を取らず、必要を取り続けろ』。これが兵士の訓戒だ」


 なるほど。その訓戒を聞いてなんでレッドがこの国のために尽くし続けられたのか分かった。

 レッドはこの訓戒に忠実に従っていたからだ。

 必要を取ることだけ考え、願望のことはすべて切り捨てたのだろう。

 でないと国民に手を上げることなく、この国を奪還することなど不可能だ。


「……お前はずっとそれを貫き続けたのか?」

「いや大局で貫けただけだ。小さな局面では何度も破っている。俺程度が成すことができるならば訓戒としては残らんよ」


 自分に厳しいな。俺には十分守れているような気がするが。


「なるほど。いいことを聞いた。心に刻んでおくよ」

「きっとお前が窮地に追い込まれたときにこの言葉は役に立つだろう。心に刻んだという言葉が嘘でないことを信じているぞ」


 レッドは俺の目をまっすぐに見つめ、こちらに念をかけるようにそういった。


 訓戒ももらったし、ここからそろそろ出て、ボルフレディに報告にしに行くか。


『父親に息子だと言わなくていいんですか?』


 別れの言葉を切り出そうとすると、スリートは俺が失念していたことを指摘してきた。

 そういえば言ってなかったな……。

 言いたい気持ちがあるが、ここでいえば逗留してしまいそうな気がする。

 どうしようかと迷っているとレッドが口を開いた。


「リード。一つ頼みを良いか?」

「いいぞ」

「お前と同じ名の息子がいるのだが、それにもしあったら『村にいつでも帰ってこい』と伝えてくれ。恥ずかしい話だが、息子とはけんか別れをしている。変に真面目なところがあるからまだ気に病んでるかもしれない……。それがすこし心残りなのだ」


 こんなに大変な状況でも俺のことを気にかけてくれていたのか。

 思わず息子だと告白したくなったが、視界の隅に牙の首飾りが映って踏みとどまった。

 今、訓戒で告げられたばかりだ。

 願望ではなく必要を取れと。

 ここで告白することは出来ない。

 そいつをするのは必要なものを取り戻してからだ


「そうか。確かに聞いた……。またかならず会おう。その時はお前の息子も連れてくるよ」

「そうだな。その時は3人で盃をかわそう。達者でな、リード」

「ああ、そっちこそ」


 会議室を出てボルフレディに報告した後、俺はドラス共和国だった国から去った。





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