108 六柱の神
本に固定されたまま、目線は動かない。
そこにはこう書かれていた。
ラルフ、イコナ、シェーン、ソフィア、ノルアクアス、ハウディン――六柱の神が死んだ。
石碑は五柱だったというのにここでは六柱になっている違和と神々の名の中に、俺の知っている名――ラルフ、シェーン、イコナについて書かれていることに驚かされる。
それと同時に土精霊が本当に悪いタイミングで茶々を入れてきたことに気づいた。
破壊神の名を見れなかったことで、この三人のうちで誰が破壊神であるかわからない。
敵対する可能性の高いラルフ、シェーンだった場合、最悪だ。
不安に襲われているとそこからゆっくりと視線は上がっていき、俯いている黒髪の男を捉えた。
「ラルフ、どうして嘘を吐いたんですか?」
震えた声が木造の家に響く。
その言葉を聞いて俺は違和感に襲われる。
ラルフ? 俺の知っているラルフは赤髪の女のはずだが……。
ラルフと呼ばれた目の前の男と記憶にあるラルフとは似ても似つかない。
口が動けば目の前の男に聞きたかったが、俺の体でないため動かせない。
「シェーンが生きれるのなら神の書には死んだという記述はないはずでしょう。シェーンだけは生きられるていったじゃないですか、あなたは……」
こちらの意思に反して、口は言葉を紡いだ。
男のラルフは苦しそうな表情でこちらを見ると口を開けた。
「すまん。シェーンが生まれることを楽しみにしているお前を見ていると本当のことを言えなくなって……」
奴は言葉を途中で途切れさせると目を背けた。
「だからって嘘を吐くことはないでしょ……」
視界が潤んでピントがずれると、男は絶望したような顔でこちらを凝視する。
目に浮かぶ快活さを象徴のような光がひときわ強くなったかと思うと消えた。
男はこちらに近づいてくる。
こちらの肩に男の手が伸びるとともに、目端に体の主の髪であろう赤髪が映る。
目の前の男はなく、俺は赤髪に目を奪われた。
その髪の色合いはラルフの赤髪に似通っていた。
だがこちらが気になったその髪は視界からすぐにフェードアウトし、男の快活さを失った思いつめた顔を映した。
「……シェーンが生きると言ったことは嘘にしない。どんな手段を使っても神の書の記述を変えて実現して見せる」
男の何かを呪うような声を聞くと、視界が揺らいで曖昧になっていく。
記憶から解放されたことを理解した。




