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107 儀式




 大量の土のマナを一度視界からはずし、ホットに視線を飛ばしたが、奴は石碑に見入っていて気づかない。

 また土のマナに視線を戻す。


「なんでこんなところにお前がいる?」


 奴に向けて質問を飛ばす。それを聞くと土のマナは面白がるよう空中で蠢く。


「いるに決まっておろう。ラルフにとっても、精霊にとっても、お主らにとってもそれは穏やかなものではないからな。ここで忠告しないわけがない」


 忠告という割にはタイミングは遅いし、態度も面白がっているが。読むまで待って、煽りに来たようにしか俺には思えない。

 俺は警戒を強める。奴の態度が不気味だ。


『人が寝てるのにうるさいですよ……。警戒なんてする必要ありません。気疲れするだけです』


 スリートが寝起きの不機嫌な声を上げると、警戒などする必要がないと進言してきた。

 確かに先ほど石碑に目を取られていて、不意を突けたのに何もしなかったが。

 こいつ以外が何かをして来るということも考えられる。警戒しない手はない。


「まあわしの努力の甲斐なしにお主らは石碑を読んだからなぁ。ラルフと儂ら精霊――この世界そのものと敵対したということに変わりない。

さて、わしはラルフにでもお主らが石碑を読んだと伝えに行こうかのう」


 こちらを挑発するようにぐるぐると舌でなめつけるように周囲を回ると、土精霊はこちらから離れていく。


『リード……。あなたにもおそらく存在を取る機能があるでしょう。土精霊を強く意識して触れてください。それで存在を取れます……』


 スリートは冷たい声で、本来契約者にやる儀式を精霊相手にやれと要求してきた。

 その声音でそれをすれば、土精霊がどうなるか分かった。

 少し迷う。俺個人として、別にそこまで土精霊に恨みがあるわけではないし、存在を取った俺がどうなるかわからないという不安がある。

 だが、今ラルフに敵対したと報告されれば蘇生薬を手に入れられないまま、道半ばで終わってしまう。

 土精霊の存在を取るしかない……。


 こちらから遠ざかっていく土精霊を意識し、手を伸ばす。

 手からなにかが流れ込んでくるのを感じる。流れ込んでくるものの情報量が多いせいか、視界の情報を遮断するように目が勝手に閉じられる。


 ひどく強い嘲り、蔑み、誇り、自信、自尊心。流れてきたものはそんなもののように感じられる。


「なるほど、そういうことか……」


 ひどく強い思いの奔流の中で土精霊の声が聞えた。


「予言を残してやろう! お主はこの先でラルフと同じ苦しみを味わう! お主が権利を手に入れたくないとあがいても避けられん! せいぜい後悔するがいい! 

はははははは!」


 嘲るような笑いと共に、思いの奔流は止まった。

 薄気味の悪い預言の言葉と奴のプライドだけで作られたような存在で胸がむかつく。


 目を開けてみると、木の板と開かれた本が飛び込んでくる。

 体がいうことを聞かない。

 誰かの記憶の中にまた放り込まれたようだ。





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