表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

人間を愛する女神が、ある人間を殺した動機

作者: 椎名正

 「女神様がその人間を殺した動機を調べるですか?」

 天使は、神のその命令に戸惑う。


 「もちろん、各女神には裁量権を与えているから、自分の担当区域の人間を殺すことは何の問題もない。しかし、あの子は、いつだって人間達を守ろうとしていた。愚かな人間が戦争を起こした時だって人間達をかばっていた。そんな子が自ら手を下して人を殺したのだ。しかも、提出された報告書には、あの人間は殺すしかないとだけ書かれていた。もしかしたら、あの子は人類全体に絶望したのかもしれない。その人間一人が邪悪で処分しただけなら問題ないが、もし人間自体に失望してしまったとするなら、担当を外すことも検討しなければなるまい」


 天使は、殺された人間の調査を始めた。

 報告書には、時空のゆがみで多発していた異世界から転移者と注意書きがされていた。

 調査は長期戦になると覚悟をしていたが、動機はすぐに判明した。

 その転移者の女は、他の転移者達から告発されていた。


 はあっ?

 パクリなんて言いがかりもいいところよ。

 私の才能に嫉妬して、でっちあげの告発をしたんでしょう、その転移者のやつらは。

 だから、やってません。

 私が考えたオリジナルのミステリートリックです。

 オリエント急行殺人事件?アクロイド殺人事件?

 何ですか、それ?

 はいはい。

 じゃあ、もうミステリー小説は書きません。

 それで、満足なんでしょう。

 あーあ。かわいそうな私の読者。もう、私の考えた素晴らしいトリックが読めなくなったわ。あなた達のせいだからね。

 以前のようにミステリー以外の小説を書くわ。

 はい?

 それは前にも言ったけど、そんな漫画家なんて私の転移前の世界にはいませんって。

 手塚治虫でしたっけ?

 いませんって。私を陥れるために、でっちあげただけです。

 もちろん、やなせたかしなんてのもいませんでしたよ。

 次に書く作品の構想はもうできているのよ。

 あー、でもまたパクリだといいがかりつけられちゃうでしょうね。

 人気作家ってやつは大変なのよ。

 変なのにからまれて。

 次回作は、名前を書いただけで人を殺せる死神のノートを拾った青年が、天才探偵と頭脳戦を繰り広げるってやつなんだけど。




 「神様、あれは殺すしかないですよ」


    おわり


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ