これからについて話し合おう!!
お待たせしました。
本日2つ目です。
次の日、朝皆を集めて先日のことを全部話した。
まだ知らなかったリゼル、クレイ、シーナはそれぞれの反応を見せたものの、俺を非難する者は誰も……
「なんじゃ、水臭いぞ、主殿!!どうして我に何も言ってくれなかったのじゃ!!」
……ゴメン、いたわ。
「スマン……」
「そもそも主殿ならその場で騎士団なる奴等を倒せたじゃろうて。どうして何もしなかったのじゃ!?」
「……俺が攻撃して騎士団を倒せたとしても、俺がアイリさん達と一緒に倒したと見られてしまってはアイリさん達まで王国の敵として扱われてしまったかもしれない。……王国なんて巨大過ぎるもん相手にすんのは俺一人で十分だと思ったんだ」
「ぐぬぬぅ、主殿は優しすぎるのじゃ!もっと我儘に、自分のことだけを考えてもじゃな……」
「リゼル……」
≪姉じゃ、主様も一杯悩まれた、です。あんまり主様を責めないで……≫
「甘い、甘すぎじゃぞ!ファルよ!!主は主殿に甘々なのじゃ!!街中で手頃な女子を見つけた時の男の反応くらい甘いのじゃ!!!」
≪そ、そんなことは……≫
「……まあ我も好いた男を庇いたいという気持ちはよーく分かる。じゃがの……」
「……王国、敵。……クレイ、カイトのこと、守る!」
「カイト様、カイト様にいただいた御恩を少しでもお返しするため、私も頑張ります!!」
「にょえ!?クレイ、シーナ、まだ我がしゃべっているのに……」
「……クレイ、カイト、すきー」
「おおっと」
「ぬわー!!クレイよ、主殿から離れるんじゃ!!」
「……いやー」
「こんのぉ、うらやま……」
「……聞いてください、皆さん」
エフィーの一声で皆行動を止める。
声だけでも何だか逞しくなったように感じるな。
「……私がハーフエルフであることでも皆さんにご迷惑をおかけすること、大変申し訳無く思います。ですから少しでもご主人様や皆さんのお役に立てるようこれからも精一杯頑張らせていただきます」
エフィーの挨拶に誰も口出しする者はいなかった。
……エフィーの方が威厳が出てきたのかもしれないな。
「……さて、本題に移りますが、これから私達は王国と戦うことになりそうです。ですから、ご主人様をお守りするためにも、現実的にどのように戦っていくかを考えたいと思います」
……やはりエフィーの言葉には何だか力がある。
戦うと決めた人はこうも強く見えるんだな。
だが実際に能力が飛躍的に伸びたのかと言ったらそういう訳ではないだろう。
エフィーの成長を嬉しく思いながらも、あまり手放しで喜んでいられるという事ではない。
「ああ。俺もエフィーの考えに賛成だ。そこでこれからワイバーンに乗ってこの孤島の調査を行ってくる。その間に色々と話を進めておいてくれるか?」
「孤島の調査……確かにそれは必要になってきますね」
「エフィー、どうして?」
「王国が敵になった以上、この孤島は私達の絶対的な拠点となります。有事の際、拠点がどういう所で、どういった利点・欠点のある所かを知っていないと、対処するのが遅くなってしまいます。全貌を解明、とまではいかなくても、調べられる範囲で調べておくのはやはり必要なことかと」
「なるほど……」
「議論は私が進めても?」
「ああ、エフィーに任せる……じゃあ行ってくる。何かあったらクレイを召喚するから」
「……んーー。分かったー」
俺はワイバーンに乗り建物を離れて、先ずは孤島の東に(建物やワープがあるのは南)向かう。
===== シア視点 =====
「……では僭越ながら私が司会進行を務めさせていただきます。ご主人様もいらっしゃりませんから、皆さん反対意見を恐れずご忌憚ないご意見をおっしゃって下さい。よろしくお願いします」
「「「おーー」」」
カノンとリゼルとクレイがそれぞれ声を上げながら拍手します。
エフィーは何だか一皮むけたような感じがします。
皆のお姉さんとして、エフィーの成長は嬉しい限りです。
「ではまず初めに、相手の規模、つまり戦力を確認したいと思います」
「そうですね、現状の戦力でどれだけ立ち向かえるかを客観的に把握できるのは大切だと思います」
「ありがとうございます、シアさん。……では、まず騎士団の数ですが、原則を話しますね。師団の数が10。各師団には5個の大隊が。つまり全部で50大隊ですね、それがまた5つの中隊、小隊と分かれていきます。全部で1250小隊です。それぞれの師団、小隊、中隊、大隊には隊長が一人、副隊長が二人います。そして小隊には隊長たちを除く隊員は基本7名。ですから単純に考えますと……」
「……我はもうギプアップなのじゃ……」
「……申し訳ありませんが私もです」
リゼルとシーナが堪らずエフィーに答えを聴きます。
クレイは聖獣3匹と遊んでしまっています。
……まあクレイですしね。
「……純粋に小隊の数だけを考えたら、12500人、ってこと?」
「そうです、カノンさん!!良くわかりましたね?凄いです!!」
以前買い物に行ったとき私もカノンが計算できることに驚かされました。
ですがカノンは何だか不満げです。
「……何かバカにされているような……」
「……気のせいです、カノンさん。……では続けます。さっき『原則』と付けましたが、この話に当てはまらない師団が1つ存在するのです」
≪そうなの、です?≫
「はい。それは『第1師団』です。師団は数字が若くなるだけ強い・優秀だということを表します。この国の騎士団で『第1師団』と言ったら最も優秀な団体を表す意味で用いられます。ここは例外で、隊長を含めてもその数わずか100人。それだけ優秀な人材が集まっているんでしょう。エリートの中のそのまたエリートだけが入隊できる狭き門だと聞いたことが」
私もそんなに詳しくは知りませんでしたので、エフィーの話はいつも参考になります。
……というよりこれは議論とは言わないのでは?
一方的にエフィーが説明して解説を加える勉強会みたいになっています。
「後他に例外な数を挙げるとしますと、騎士団全てを統括する者、『騎士団長』。これはもちろん1人ですね。それから騎士団ではありませんが王国に常駐している、宮廷魔道士が400人、非番で更に400人。……ですから大体数にして国のエリートが1万と1000人位ですね」
「確かに数字にしたら戦力差は歴然としてるけど、全員が全員同時に私達を追いかけているわけじゃないんでしょ?」
カノンがとても鋭い質問をします。
……カノンも普段とは大違いですね。
「そうですね、ご主人様のお話ですと、第4師団の隊長を滅茶苦茶怒らせたらしいですから。最低でも1つの師団は完全に敵に回ったと思った方がいいでしょう」
「それも数字が4ですし、優秀な方なんでしょう。それから無傷で逃げてくるなんて、流石ご主人様です!!」
「……そうですね、シアさん。とりあえず多めに見ておいて、2000人はご主人様を捕まえようとしている、と考えて進めたいと思います。現在王国は隣国とあまり良好な関係ではありません。小規模な小競り合いなんかも見受けられます。私の見立てでは他国に協力を仰ぐということは無いと思っています。まあ必要以上に王国が他国と仲良くしようとすればこの発端である王国の恥部がさらけ出される可能性もそれだけ上がりますからね。他国に弱みを見せないという意味では王国はやはり保身に走るでしょう。ですから考える対象は今は王国の騎士団に絞ろうと思います」
「分かりました」
「了解、エフィー」
≪わかりました、です≫
「……うむ、了解じゃ」
「……では話を進めます。相手が2000人に対して私達はカノンさんやご主人様の召喚を踏まえても50にも満たない数です。それぞれ皆さんがお強いことは分かっていますが、流石に心許ないということは皆さんご自身でも思っていらっしゃると思います。……皆さんがとてもお強いことも踏まえて正直申しましても私はもう少し戦力が欲しいと思っています」
「……うん、それは私も思う。このままじゃ絶対マスターにまた無理させることになる。それだけは絶対ダメだよ」
「……その通りですね。ご主人様をお守りするためにも、戦力の補強は必須でしょう」
私も賛成します。
ご主人様はありがたいことに私達のことをとても大切に思って下さっています。
ですが一方でそのためにご主人様お一人で何でもなさろうとしてしまいます。
ご主人様が私達を大切に思って下さっているように、私達もご主人様のことが何より大切なんです。
ですから私達もご主人様のお力になりたいのですが……
「じゃが実際問題戦力を増強すると言ってもどうするのじゃ?」
≪そうですね、考えられるのはまず単純に数を増やす、とかです?≫
「確かにそれが一番手っ取り早いようにも思えます。……ただですね、問題があります」
「問題……エフィー、それは一体」
シーナが考え込んで、そしてエフィーに尋ねました。
恐らく、問題とは……
「シーナ、恐らくそれは『敵が誰か』という事だと思います」
「『敵が誰か』……」
「はい、シアさんの仰る通りですね。……私達の敵は『王国』なのです。そんな私達に味方してくれるという人は恐らく出てこないでしょう」
「え!?じゃ、じゃあ……」
「慌てないでください。あくまで普通に考えたら、という話です。まだ仲間を増やす方法はありますから」
「うむー……カノンの召喚はどうじゃ?」
「そうですね、カノンさんの召喚もその一つの手です。モンスターと契約してもらえれば数を増やすことができます。……ですが、これは契約内容によって契約できるモンスターが変わるというのが安定して数を増やせないですし、少し難儀な話ですね」
「うん、だからあんまり多くは望めないかも」
「……少しの補充は望めるが、根本の解決は難しい、というところじゃな」
「はい。ですから私はこう考えます。……『量』より『質』で勝負しましょう」
「『質』、ですか」
「はい。そして、どうやって仲間を増やすかは……私達がカギ、です」
「私達……ってどういう……」
「つまりは『奴隷』ということですね。奴隷なら買われたら基本主人には逆らえません。ですから強い奴隷を……」
「あ!!そうか、なるほど!!」
≪確かに、それなら買ってしまえばこっちの物、です≫
「はい。幸いご主人様のお人柄のおかげで、皆さんとても良い方が揃っています。ご主人様のお人柄に触れれば大抵の奴隷はご主人様に忠誠を誓って一緒に戦ってくれるはず」
「そうなるとお金やどうやって外に行くか、どう買うか、とかの問題も出てくるね」
「そうですね、その案で行くなら、性別はどうするんでしょう?」
「……また綺麗だったり可愛い奴隷がマスターの周りに増えるのは複雑だけど……やっぱり女の方がいいんじゃない?」
「私もそう思います。たとえ奴隷でも男を近くに置くと、ご主人様は親友であったライル様のことを……」
「ライル?誰じゃ?それは……」
リゼルが私に尋ねてきました。
丁度いいですし、リゼルとクレイ、シーナにもあのことを話しましょう。
「……主殿はやっぱり優しすぎるのじゃ。……他に何か方法は無かったのか……主殿が傷つかん方法は……」
≪主様のお優しさを考えると、心が痛い、です≫
「……カイト、一杯傷ついてきた。カイト、とっても優しい。……クレイ、カイトのこと、大好き」
さっきまで遊んでいたクレイや、聖獣3匹も今はしっかりと話を聴いてくれています。
皆、ご主人様のことが大好きなんですね……
「よぉし!!奴隷は女子で固めようぞ!!主殿の心労を少しでも減らさんと主殿が耐え切れなくなってしまうやも……」
≪でも、実際に買うのは主様、です。だからどうするかは主様に話してみないとどうにも……≫
「……それは私からご主人様にお話ししましょう。必ず何とかして見せます」
「エフィー……分かりました」
「うん、エフィー、お願いね」
「はい。……仲間の『数』を増やすことについてはそんなところかと。後は私達自身を強化することでしょう。私達の『質』を上げるのです。レベルを上げたり、スキルの取得を目指したり、色々とできることはあるかと。……そして最後に、重要になってくるのは聖獣3匹の成長だと思うのです。一緒に戦ってほしいとまでは言えないのですが、大きくなってくれるだけでも十分に威嚇になるかと……」
「……エフィー、大丈夫」
「クレイさん?『大丈夫』、とは……」
「……聖獣達、皆カイトのこと、大好き。3匹とも、カイトや皆のために、一緒に戦いたいって」
クレイの言葉に応じて聖獣達もそれぞれ首肯します。
皆……
「分かりました……ありがとうございます。皆でご主人様をお守りしましょうね」
「後は……」
「話は進んでいるみたいだな」
===== シア視点終了 =====
俺が帰ってきた時にはかなり話も終盤に近づいていたようだ。
俺はエフィーとそれぞれの成果を報告し合う。
「……なるほど、東西南北それぞれにワープポイント、ですか」
俺がワイバーンに乗ってそれぞれ回ったら、ここと同じ様にワープできる箇所が見つかった。
恐らく全部別々の場所に繋がっているんだろう。
……本当にこの孤島は謎だらけだな。
それにしても……
「なるほど、そっちの話し合いの結論は分かった。俺も反対は無い。今後シア、カノン、エフィー、クレイは聖獣3体の育成に力を入れてくれ。俺とリゼルとベルでワープ先の調査をしよう。シーナには引き続き孤島の開発、それと皆の補助を頼むことにするか」
「はい……それで、ご主人様、奴隷のことなのですが……」
「うん?何か要望でも……」
「はい……実はそれも皆で話し合ったのですが、私達は偶然ご主人様を除いて皆性別が女です。今後も女性で揃えていただければ士気に乱れも生じないでしょうし、私達も性別の違いを気にせず動けます。男の奴隷を加えるよりも全体としてメリットが多いかと」
ふむ、俺は皆の話し合いの要点を聴いたうえでなら別に強ければどんな奴隷でも、程度の考えなのだが、皆が話し合った結果そういう話になったなら別にそれでもいいか。
以前シアやエフィーに奴隷を買うなら、という話をしたときにも「女性がいい」ということになったし。
……あれ?それだと周りが奴隷の女性ばっかりになるが……ま、いっか。
皆が皆俺のことを好きになるわけじゃないだろうし。
……そうだよな、だって『俺』だもん。
……あんまり過度な期待はしない方がいい。
自分の事は自分が一番良く知ってるし。
こんな俺を好きになってくれた、皆には本当に感謝しかないな。
「分かった。俺はその方針に全く異議は無い。それで進めよう」
「ありがとうございます。条件が増えればそれだけご負担をおかけすることになりますが……」
「気にしないでくれ、エフィー。……これからもうちの参謀としてよろしく頼むな?」
「ご主人様……はい!!」
その後、俺とリゼル、ベルは早速東にあるワープ地点の調査をすることに。
「じゃあ行ってくる。何かあったら直ぐクレイを召喚するから、カノンは……」
「うん、そうなったらベルを直ぐに呼ぶ」
「ああ。それから、3匹をちゃんと育ててやってくれ。とりあえず俺がいない間はシアとエフィーを中心に動くように」
「かしこまりました。……お気をつけて」
「ご無事で帰ってきてください、ご主人様」
「マスター、ちゃんと帰って来てね」
「カイト様、お帰りをお待ちしています」
「……クレイ、呼ばれるのも、ちゃんと、待ってる」
「ああ。……行ってくる」
「主様のことは私達にお任せ下さい、です」
≪我らがしっかりと主殿をお守りする!安心せい≫
『今回こそはカイト殿を……』
俺達3人は、そうして、東にあったワープに入った。
騎士団の人員数はどうなんでしょうね。
あんまり少なすぎるとダメかな、と考えてこの数になったんですが。
それと、ついさっき分かったことなんですが、5月の第3週目は特に忙しくなりそうです。
それに伴ってその週は上げれなさそうです。
ですから代替措置としてその前の週か、後の週に2つ上げたいと思います。
急なことで申し訳ありませんがご理解頂けたらと思います。




