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今日は色々とあったな。

第4章の始まりです。

そろそろ物語が大きく動き出す……はずです。


このお話は一応前話の続きに位置するのですが、あまり前話のことには触れていない中身となっています。


俺はベルと共に孤島の入り口へと向かった。


俺達は途中で降り、そこから3時間程かけて徒歩でここまでたどり着いた。

と言うのも、ワイバーンには俺の逃げた先を偽装してもらうためだ。


途中でワイバーンから降り、ワイバーンには思いっきり北に向かうように頼んだ。

ワイバーンには負担をかけるが、俺が孤島に入ったら召喚して呼び戻すつもりだ。


ワープできる祠まで来て、降りてからは互いに無言で歩いてきたベルがその口を開く。


『……カイト殿、本当に……いいのか?』

「ん?『いい』、とは?」

『あのなぁ、カイト殿、さっきワイバーンに乗っていた時に話したではないか!……今回の事、カノン様や皆さんには……』

「ああ、そのことか。……もちろん、話した通り頼む」

『それでいいのか!?ちゃんと皆で話せば、何か妙案が思いつくかも……』

「……ベル、お前は自分の主であるカノンや他の皆に辛い思いをさせたいのか?」

『いや、そんなはずは無い!!そんなはず……』

「だったらこれは俺達二人の秘密にしよう。それがいいと俺は思うぞ?」

『しかし!それじゃあ、カイト殿があまりにも辛すぎるではないか!!』

「……あのな、ベル、あんまり俺のメンタルを舐めてもらったら困る。これ位でどうにかなるような軟な精神にはなってないからな。……それに、そんなことを言うなら自分の主に隠し事をしなければいけないお前は俺なんかより相当辛いはずだ」

『俺は、そんなこと、カイト殿に比べれば……』

「俺がお前に頼んだことは滅茶苦茶理不尽だってことは理解しているつもりだ。もしかしたらカノンがお前を心配して色々聴いてくるかもしれない。辛くなってもう誰かに言ってしまいたいって思う時も一杯出てくるだろう。……そん時は俺がいくらでも聴いてやる。全部俺に話せ。全部俺にぶつけろ。スマンが俺にはそれ位しかお前にしてやれることが無い」

『そんなこと、全然気にすることは無いんだが……いつまでも隠し通せるものじゃないぞ?』

「ああ、それは分かってる。だから……………………これで行こう」

『…………分かった。もうカイト殿について行く。それがカノン様や皆さんのためなら……だがその分、俺もカイト殿が辛くなったときはいつでも話を聴くからな!遠慮するんじゃないぞ!?』

「ああ、そん時はよろしく頼む」

『うむ!……それにしてもやはり、カノン様が溺愛なさるだけのことはある。俺もコロッと行ってしまいそうだ』

「あのなぁ、獣に好かれても俺にはどうしようもないぞ?」

『むむぅ、それはそうなのだが……俺も人になれれば……』


ベルは何かブツブツ一人で何か言っている。

……まあ放っといても大丈夫か。


「ベル、行くぞ?」

『……ん?あ、ああ、済まない。今行く』


そうして俺達はワープし、孤島に戻ってきた。





「……ああ、もう、本当、どうしたらいいか分かんないよ……」


孤島ももう既に暗くなっていた。


俺達が孤島に戻って最初に目にしたのはカノンが普段見ない真剣な顔をして考え込んでいる姿だった。


同じところを行ったり来たりしている。


ん?どうしたんだ?

流石に俺達の事がもう既に知りわたっているってことは無いだろうし、何か別のことで困ってるんだろう。

まだ皆に知られてはいないとは分かっていながらも、若干身構えて孤島に帰ってきただけに何だか良く分からない感じだな。


俺とベルは顔を見合わせて、頭上にクエスチョンマークを浮かべながらもカノンに話しかけることに。



「カノン、どうしたんだ?そんな悩みこんで」


声をかけると、カノンは体をビクッとさせて俺達の方を向く。

……驚かせてしまったか?


「マ、マスター、帰ってきたの!?良かったぁー!もう私達だけじゃどうしたらいいか分かんなくて……」

「ん?何か困りごとか?」

「そうなの!もう私達だけじゃどうしようもないの……とりあえず来て」

「分かった」


俺はベルをチラッとみる。

ベルも何だか拍子抜けしたように感じているようだ。


俺達は急かすカノンについて、寝泊りしている建物に向かう。





「……大丈夫ですよ、多分もう少ししたらご主人様が帰ってきますからね、それまでの辛抱です」

「エフィー、回復魔法は?」

「さっきからシーナさんと一緒にかけているのですが効果がほとんど……あ、ご主人様!!」

「スマン、遅くなったか。……どういう状況だ?」



俺達が中に入って目にしたものは……



「聖獣3体の様子がまた……」


そう言ったエフィーの視線の先には助けた時と同じように辛そうに横たわっている3体がいた。


「これは……何があったんだ?」

「私達にも何が何だか……ご主人様が朝発たれた時は特におかしなことは無かったんですが、お昼頃から段々調子が悪くなっていったようで、今はこの様に……」


そう説明するエフィーは困惑顔だ。


「……じゃあ原因は分からないのか?」

「はい、です。私やカノンさんが話しかけましたが、聖獣達からはちゃんとした言葉が帰って来ず、です」


それについては別にモンスターの話すことが分かるリゼル(妹)やカノンに限らず、俺にも当てはまる。

まあそれは聖獣達が幼い、ということから来るもので、3体がもう少し大きくなったら自然と会話もできるようになるだろうと俺は思っている。


契約する際俺の言葉が分かったのだから自分達から話せるようになる日も遠くない、そう思っていたんだが……


「ですから私達も回復魔法を使ったり軽い食事を取らせようとしたり色々試したんですが、どれもいい効果が出ず……」


シーナは尚もキリンに回復魔法をかけながら説明を補足する。


「私達にはご主人様のお帰りを待つこと以外、どうすることもできず……」


エフィーもフェンリルとユニコーンに回復魔法をかけているが、2匹の様子は変わらず苦しそうだ。


「なるほど、分かった……ところでクレイはどうした?あいつなら何か分かるんじゃないか?」

「そうです!!私達もそれで探したんですが、見当たらず……」

「トランバット達にも探してもらったんだよ!?でも孤島の中には……」

≪もしや、クレイに何かあったのでは!?≫


皆が皆クレイや3体のことが心配で少なからずいつもより口調も早くなっている。



「……なら確かめるか」

「『確かめる』って言ってもそのクレイがいないんだよ、マスター!?」

≪そうじゃぞ!?主殿、こんな時にボケるなんていくら我でもしないことじゃ!≫

「……だからそのクレイを今から呼んでみるかって言ってるんだ。……俺がクレイを召喚できるのを忘れたのか?」

「あ……」

≪あ……≫

「カノンさん、姉じゃ……」


……悲しいかな、二人には完全に忘れられていたようだ。


「じゃあ召喚するぞ……」


俺はすぐさまクレイの召喚に入る。




「……?……呼んだー?」


魔法陣の中からクレイが……って!?



「ク、クレイさん!?どうしてまた裸なんですか!?しかもびしょ濡れで!」

≪お主は登場する時そういう決まりでもあるのか!?≫

「マ、マスター見ちゃダメ!!」

「あぶっ」


カノンが今回は正面から俺の目を塞いでくる。

だが今回使われたのは……


「うぃ、うぃぎが、ぶ、ぶるぎい(い、息が、く、苦しい)」

「あ、マ、マスター、ダメ、そんな、くすぐった……」

「カ、カノンさん、そんな豊満な物でご主人様の顔を覆ってしまっては主人様がお亡くなりに!」

「へ?……って、キャ!」


カノンが慌てて俺から離れる。


「ふぅー、ふぅー……」


解放されはしたが、まだ危難は去っていない。

その目の先には生まれたままの姿をしたクレイの綺麗な体が……

……ってこれ以上面倒になる前に一回俺が外に出ればいいんだな、うん。


俺は一旦建物の外に出て許可が出るまで待機することに。


そして待つこと数分……


「……その、マスター、もう、いいよ?」

「そうか」

「……さっきは、その、ゴメンね?」

「いや、別に俺は悪いことをされたと思ってないから気にするな。むしろ気持ち良かった、かな?……ありがとう、カノン」

「な、な!?マ、マスターのバカ、バカ、バカ!!」

「まあ、あれはいきなりのことだったし事故だと思っとけ。どっちにしてもカノンは悪くない。……とりあえず入るぞ」

「う、うん……ありがと、マスター」



俺は再び自分の居所であるはずの場所に足を踏み入れる。




「……あー、マスター、お帰りー」


クレイが呑気な声で俺を迎え入れる。

お帰りー、じゃねえよ。

誰のせいだと思って……て、もしかしたら俺のせいかもしれないのか。

いきなり俺が呼び出しちゃったんだもんな。


今後はこういうハプニングも想定しないといけないな。


「……それで、クレイ、今の状況は把握しているか?」

「……うん。……3体の調子、悪い。だからクレイ、外に行ってた」


おお!流石だ!ただただのんびりと過ごしているわけでは無いんだな!

……どこかの竜人と違って。


≪ん?主殿、どうしたのじゃ?そんなに我を熱い眼差しで見つめて……ぬわぁっ!?さては、とうとう我の美貌の虜に……≫

「なるほど、クレイは既に解決に向けて動いていた、ということだな」

「……うん」

≪な、何故じゃ、主殿!?何故我を無視するんじゃーーーーーー!!≫

「姉じゃ、ぐすっ……強く生きてください、です」


……これよくよく考えたら結構おかしなやりとりだよな?

実際に今リゼルの表に出ているのは妹だから、姉の方の声とリゼルの涙ぐむ表情がずれておかしく見える。


うーん、見方によっては面白いんだけど。


「……クレイ、外に行って、モンスター、いっぱい倒す、してた」


ん!?またいきなり話が飛んでしまった。

3匹を助けるのとモンスターを倒すのと、どう関連するんだ?


「クレイ、外に行ってモンスターを倒すのがどう関係するんだ?」

「……3匹とも、皆魔力が足りない」

「え!?今度は逆に足りないのか!?」



クウガー遺跡では魔力が多過ぎて体に支障をきたしていたのだが、今回はその真逆なのか。



「……クレイ、それはいいんだが、どうして、その、何だ、服を……」

「……クレイ、いっぱい血、ついた。だから水浴び、してた」

「……なるほど、その時に呼び出してしまったわけか」

「……マスターくれた服、置いてきちゃった。……ごめんなさい」


クレイが珍しく悲しそうな顔をする。


「いやいや、気にしなくていい。いきなり呼び出してしまったのは俺だからな。その、むしろ俺の方こそあんな時に呼び出だしてスマン」

「……クレイ、マスター……カイトになら、いい」

「ん?……そう、か。じゃあまあお互い様、ってことで」

「……うん」

「クレイ、じゃあとりあえずそこのところ、詳しく聴かせてくれ」

「……分かった、クレイ、話す!」


おおぅ!?何か良く分からんがクレイがやる気になってる!

両拳をガッツポーズみたいにして握りしめてるぞ!?

表情も若干興奮気味だ。

……別に話すだけなんだが。

俺に頼りにされて……なんてのは流石に自惚れか。

今後はそうしてもらえるよう頑張らねば……






その後、クレイの話を、細部を皆で補い合いながら聴いて行った。

纏めると、3匹の今回の体調不良は彼らの体内の魔力の減少が原因らしい。

クウガー遺跡で普通よりもかなり多くの魔力を取り込んだために魔力の容量というのが多くなってしまい、それに伴って日常的に必要とする魔力も多くなってしまった。


それは俺達なら意識せずに呼吸のように取り込んでいるので普段問題となることは無い。

一方今の3匹はこういった魔力は他のモンスターを初めとする生き物を倒すことでそれを自分の魔力とするらしい。


これは3匹の魔力の容量が多くなったために起こった弊害で、他の魔力を多く使わないようなモンスターなんかは俺達と変わらず生きていてそこで困るという事は無い。


本来なら幼い間は親がモンスターを弱らせて止めを刺させるか、自分自身で倒させるのだが、3匹はまだ狩りの仕方なんかはもちろん知らないし……親はいない。

厳しい世界だな、とは思うがだからと言ってそれで可哀想だと同情していたら3匹を助けられない。


……まあ今更俺が善人ぶるのもチャンチャラおかしいしな。



今まで3匹にモンスターを倒させなかった弊害が出始めたってことか。

大きくなって強くなれば自然にある魔力で調整もできるようになるらしいが、今はそれをできる程まだ3匹は強くないし大きくもない。


クレイはモンスターを倒すために色々と頑張ったらしいが、クレイが強すぎてこの孤島で戦闘したモンスターは一撃で殺してしまったようだ。

そこでクレイは外へ出たが、これも中々功を奏さず、思ったような成果が出なかった。


……強すぎるってのも案外考え物かもな。


「……なるほど、事情は分かった。これから何匹か手ごろな奴捕まえてくる」

「あ!ご主人様、私が行きます。事情が分かれば私でも何とか」


シアが挙手して進み出る。


「いえ、シアさん、やはり物理攻撃ではクレイさんみたいになってしまうかもしれません。シアさんのお力を信じていないわけではありませんが、ここは魔法を使える私が」


エフィーがシアの立候補を制して自分が行くと言い出す。


「エフィーは詠唱時間稼がないとキツいでしょ?弓だってこんな夜中じゃ当てるのも難しいし。ここは色々な状況に合わせられる私が」


今度はエフィーの提案をカノンが却下する。


「……カノンさん、おっしゃったように今は夜、です。カノンさんお得意の影術は使えない、です。ここは『竜技』を使う私が」

≪うむ!良く言った、ファルよ!!ここは我等姉妹が≫


そう言って挙句リゼルまでもが名乗り出てくる。

……皆手を挙げて「私が」「いや私が」状態に。

お前等、そんなに俺にあれを……


「……そんなところで揉めるんならしょうがない、俺が……」


俺は満を持して手を挙げて進み出る。


「そんな訳には参りません!ご主人様は帰って来てばかりでお疲れですから私が」

「そうです!ご主人様は休んでいてください!」

「そうだよ!!マスターは3匹と一緒に待ってて!」

「主様、ここは私にお任せを、です」

≪ああ、主殿は休んでおれ。我が大物を連れて来よう≫

「おい、ここは『どうぞどうぞ』じゃねえのかよ!?」


元の世界でのネタなのだから皆が知らないのは当たり前の事なのだが、やはりあの流れだとどうしても……

皆がそこだけ団結して俺を気遣ってくれてるのは本当に心からありがたいんだが、何だかボケをスルーされたような感じで複雑だ。



皆驚いて俺を見ている。

……スマン、色々あって帰ってくるまで結構身構えていただけに反動がデカかったんだ。


「……まあそこまで言うんだったら皆で行こう。その方が早い」


その提案が可決され、俺達はクレイとシーナを残して夜の狩りへと駆り出していった。



俺の雷魔法、氷魔法を中心にして孤島のモンスターに止めを刺すことなく捕えていき、それ等を頑張ってくれていたワイバーンを召喚し、運ぶように頼みもうひと頑張りしてもらう。


……これが終わったらワイバーンを労ってやらないとな。



そうして戻ってくると、クレイとシーナが3匹を外にまで運び出して待機してくれていた。

3匹の前に麻痺や凍結しているモンスター達を降ろす。


「……さあ、こいつ等に止めを」


俺が3匹に促すも、3匹はどこか躊躇している様子。

まあ体が思ったように動かないせいでそう見えるのかもしれないが。


「……もしかしたらお前達はこいつ等に止めを刺すことを躊躇っているのかもしれない。そうじゃなかったらただ単に俺の独り言だと思ってくれ……折角お前達と出会えたんだから、俺はこれからもお前達と一緒に生きていきたい。そのためには残酷かもしれないが他の命を奪ったり傷つけたりということは避けれないことだと思う。お前達に積極的にそうしろ、とは言わない。でもお前達が生きるために、最低限必要な分だけは頑張ってくれないか?……それ以外のことは……俺がやるから」

「ご主人、様?」

「マス、ター?」


シアとカノンが後ろで何か言ったような気がしたが今は3匹と向き合う時だ。


そうして3匹に話し終えると、また前のようにユニコーンが立ち上がり、俺に向って首肯する。

その後ユニコーンはキリンとフェンリルに顔を擦り付ける。

どうやら起き上がるように促していたようだ。


それでキリンとフェンリルも起き上がって3匹揃ってモンスターに近づいていく。



ユニコーンはそのまだちゃんと発達しきっていない角で麻痺して動けないモンスターに突進していく。


キリンは微弱ながらもその体から発生させた雷を氷漬けのモンスターに放つ。


フェンリルも放つ物こそ違うものの、体から小さな氷の槍を生成して麻痺したモンスターに。



……弱らせていたこともあって、ちゃんとその攻撃で倒せたようだ。

倒されたモンスターから小さな青白い光が出て、それぞれ3匹の体に入っていく。


その光が入った後、少しながら3匹の様子が良くなったように見えた。



それを幾らか繰り返した後、ようやくまた3匹は前のような元気を取り戻したようだ。

これで一件落着、としようと思ったのだが、今後ももしかしたら俺がいない時にこういうことが起こるかもしれない。


そこで、3匹にそれぞれ担当して世話をする者を決めよう、という話になった。



「……3匹とも、一回自分の好きな人の所に行ってみてくれ」


俺がそう言うも、3匹は俺の足元から離れようとしない。

フェンリルは一応2匹とは少し離れたところではあるが俺の足元付近に。


「……3匹とも、マスター……カイトのこと、大好き」

「ええっと、そうじゃなくてだな、俺以外でってことでなんだが」


そう言ったら今度は3匹ともがクレイの足元に移動し始める。

……そう来たか。


「……クレイはダメ、クレイの全部、カイトの、物」


クレイは少し寂しそうにしながらも3匹に諭すように言う。


「……クレイ、そういう言い方は誤解を生むから」

「……?……」


クレイは分からないようで小首をかしげる。

その仕草は可愛らしい物ではある。あるのだが……うーん、まあいいや。


「とりあえずだな、俺とクレイ以外の人の所に行ってみてくれ」


そう言うと、3匹は恐らく渋々ながらもそれぞれ自分の好みの人に向って行く。



……ふむ、今回はちゃんと分かれてくれたようだ。


「……フェンリル、よろしくお願いしますね?」


シアの下にはフェンリルが。


「……私はユニコーンですか。どの子にしても聖獣に変わりはありませんから恐縮です」


ほう、エフィーにはユニコーン、か。


「え!?わ、私!?……あんまり自信無いんだけどなぁ」


キリンはカノンの下に。


「うん、うまいこと分かれてくれたようだ。……よし、これからは3人がそれぞれ3匹の教育担当ということにしよう。定期的にモンスターも倒すようにしてくれるか?」

「はい、かしこまりました」

「了解です」

「うーん、マスターがそう言うなら」

「あんまり気が乗らないか?」


少し曖昧な返事を返したカノンに俺は尋ねてみる。


「いや、別にそういう訳じゃないんだけど……」

「だったら、いっその事、母親にでもなったつもりで接してみたらどうだ?そうしたら情も湧いて……」

「は、母親!?そ、それって……」

「父親は……主様、です?」

「マ、マ、マスターとの、こ、こ、子供……」

「……これは私達も心して育てませんと」

「そうですね、シアさん」

「おい、どうしてそうなる」

「……ご主人様との子供なんて奴隷である私達が望めるとは思ってもいなかった。この子たちはそんな中私達に舞い降りた天使……」

「ご主人様、この子の名前はどうします?女の子ですからね、可愛い名前が……」


……ヤバい、シアとエフィーまでちょっと飛んでしまってる。


「ん、んんん、いや、スマン、母親は言い過ぎた。3人ともまだまだそんな年でもないだろうから、『姉』、位の気持ちでいいんじゃないのかな?」

「マスター、そんな酷い!」

「いやいや、そこまで言う事でもないだろう。……とりあえずどうする?名前はそれぞれでつけるか?」

「……ご主人様との子供の夢が断たれた今、名前だけでもご主人様に付けていただきたいです」

「私もシアさんに同じく」


……二人とも凄い落ち込みようだな。


「……いいもん、またマスターの寝ている所に忍び込んでこっそり二人の子供を……」

「カノン、カノンはどうだ?」

「ふぇ!?え!?う、うん、い、いいと思うよ!?マスターがつけた名前で呼んであげたいな、私も」

「……声が裏返っているが大丈夫か?」

「うん、もちろん!!で、名前どうするの?」

「ふむ、そうだな……」


皆鑑定したところ、メスらしいからそれっぽい名前を付けてあげたいんだけど、そういうのはあんまり思いつかない。

それに聖獣だし、変な名前を付けてしまうのもマズいかもしれん。


……よし。


「じゃあ覚えやすいように、フェンリルは『フェリア』、ユニコーンは『ユーリ』、キリンは『リン』でどうだ!?」

「『フェリア』……いい名前だと思います!」

「『ユーリ』もとっても可愛らしい名前かと。私も賛成です!」

「うーん、『リン』か。この子もなんか活発そうだし、いいんじゃないかな?」


ふぅ、皆にも受け入れられたようだ。

3匹は……うん、メッチャ喜んでくれているな。


「よし、それじゃあ明日からそれで頼むな」

「「はい」」

「了解」


それで本日は終わりとなった。

……本当に色々とあった日だったな。




その後シーナが頑張って人数分にし切ってくれた俺の部屋で寝ることにする。

本当に簡単なものだが木の扉まで取り付けてくれている。

……有難いことだな。


ドン、ドンドン


ん?何かが扉をたたく音が。

規則的ではないからシアやエフィー、シーナ辺りではないだろう。

とすると……



「リゼルか?こんな時間に……ってあれ?」


俺が扉を開けるもそこには人の姿は無く。

どういう……ん?


足元に何かがぶつかるような感覚を覚え、顔を下に向ける。


「……ってどうしたんだ!?お前達」


そこには聖獣3体が。


ユーリ(ユニコーン)とリン(キリン)がその小さな角を使って俺の足をツンツンしている。

フェリア(フェンリル)がそれを少し後ろからチラチラと見ている。



「……ああ、そうか、今度からは皆別々の部屋で寝ることになるから最後に俺の所に、ってことか?」


俺の問いかけにユーリが首肯する。


「そうか……分かった。なら今日だけは、一緒に寝るか」


そう言ってやるとユーリとリンは俺の胸に飛び込んできた。


「……ほら、フェリア、そんなところで隠れてないでお前も来い。言っとくけどこんなことするのは今日だけかもしれないぞ?」


俺は二匹を抱え上げながら扉に隠れてこちらをチラチラ見ているフェリアに話しかける。

そう言ってやると、ようやくフェリアも隠れていた扉から出てきて俺の下にゆっくりと近づいてきた。


「……じゃあ、一緒に寝るか」



その後、俺は3匹と一緒に横になって本当にとても色々とあったその日を終えた。

……ヤバい、毛が多くてムズムズする。







~その頃、建物の外にて~



「……だって、シア。……マスターに、また、そんなことが……」

「……今度は、ご主人様のお傍に、いられなかった。ご主人様……」


聖獣3匹の名前は本当に覚えやすいようにそれぞれの名前からとったものです。

最近自分で考えたキャラでさえ名前を覚えるのが苦になってきましたので。


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