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さて、3匹を助け出せるだろうか……

すいません、1話で纏めようとしたらかなり長くなってしまいました。

2話に分けることも可能だったのですが、一気に進めた方がいいかな、と判断しました。

ですので今回は長めです。あしからず。



「……と言う方法なんだが、皆、どうだろう?」


俺は3匹を外に連れ出す方法を皆に説明する。

考え付いた際はこれ行けるんじゃね、と思ったのだが、皆の反応はあまり芳しくない。


その中でもエフィーや表情をあまり変えないことで定評のあるクレイが最も険しい顔をしているのではないだろうか。


……なんかドジったかな?


「……カイト……聖獣は契約……できない」

「え!?そうなの!?」


嘘!?それじゃあ根本からこの考え方はダメじゃん!

クレイの言葉にエフィーが付け足す。


「……そのですね、そもそも聖獣は魔族とは相いれず、人間と共存して生きてきた生き物と言われています。そしてその人間、一番有名なお話で申しますと、今までの勇者パーティーの召喚士ですら契約できなかったという記録が史実等に残っています。ですから聖獣は契約できない生き物というのが一般的な認識なんです」

「……そうなの?」


俺はシアとカノンに話を振る。


「……そうですね、昔私も里にあった絵本で読んだことが有ります。勇者のパーティーの召喚士が聖獣、『フェニックス』との契約に失敗した、というお話が確かその内容だったと」


何のためらいも無く里の話を出すシア。

特に辛そうな感じも無い。

……良かった。辛い過去を乗り越えてくれたのかもしれん。


「あ!それなら私も知ってる!一緒のパーティーの女性に恋してた召喚士がその女性の不老不死の願いを叶えるために頑張るお話だよね!?」

「そうそう、それです!それから失敗した召喚士の方がその女性に捨てられて、最後には荒れて盗賊になったり、って!」

「うんうん!あれいつも寝る前に妹たちに読んであげたな……」

「え!?カノン、妹がいるんですか!?」

「あれ?言ってなかったっけ?私4人姉妹の長女だったんだ……」





何だ、その絵本!?不道徳極まりないな!

女のためにフェニックスの力借りようとするなんて子供に読ませるものとしてどうなんだ!?

しかもその召喚士最後には荒れて盗賊になんのかよ!

元勇者のパーティーだろ!?

子供の夢壊しちゃうんじゃねえの!?



……カノンに3人も妹がいたという事にも驚きだが今そっちはとりあえずいい。

問題はこの世界では一般常識レベルで聖獣と契約することは無理らしい。

カノンやクレイですら知ってるんだ、基本この世界の住人全員が知ってるって思っても大丈夫かもしれん。


……さて、困ったな。これでイケると思ったんだが。


「……あのー、まぁ試してみるのもいいんじゃないでしょうか?折角カイトさんが考えて下さったのですから」


エンリさんが俺を気遣ってそう言ってくれる。

……余計に自分のこの世界の常識の無さを穿り返されてるようで正直虚しくなってくる。


「そ、そうですよね、ご主人様が一生懸命考えて下さったんですし!い、いいいいいい、いいんじゃないでしょうか!?」

「そうだよね!マスターにやってもらったら私達も童話の再現を見ることができるんだし!!」

ボソッ「こ、こら、カノン、それじゃあご主人様が失敗すること前提になります!」

「あ、しまった!!……ご、ごめん、マスター、うん、大丈夫だよ、きっとマスターなら……何とかなるよ!!」



「あ、しまった!!」じゃねえよ!!お前なぁ、最後のも何だよ!!『成功する』じゃなくて『何とかなる』って!!

ただ単にボカしただけじゃねえか!!

根拠のない応援をどうもありがとう!!


シアも『ボソッ』とか言ってるけど全部聞こえてるからな!!

エフィーもどもって『い』を連呼してんじゃねえよ!!


……お前等全くフォローする気ないだろ。

俺は悲しいぞ!3人がそんなに俺のことを蔑ろにするなんて!

くそう!!



「……ぬしよ、気を落とすでない。生きていればそう言うときもあろう。さ、遠慮せず、我の胸に飛び込んで来て泣けばよい」


竜人女は落ち込んでいる俺の肩に手を置き、優しい笑みを浮かべ、そう告げる。


「竜人女、お前……」

「さ!」


両手を目いっぱい広げて俺を受け入れようとする。


「ぐすっ、竜人女ぁ~!」

ぬしよ~!」





そうして、初めての竜人女との触れ合いを……





「んな訳あるか!!ふざけたことぬかしてんじゃねえ!」

「うぎゃ!」


俺はそのまま竜人女にチョップをくらわせてやる。

誰がそんな筋肉だけで固めた脂肪分0%みたいな分厚過ぎる胸板に飛び込むか!!

俺だってちゃんとした男だ!

そんなロマンも何もない絶望しか漂ってなさそうなところに飛び込むほど俺は落ちぶれちゃいない!!




痛がっている竜人女は放置。

とりあえずは皆の気遣いに応えるためにも一回試してみるか。


「……一回試してみることにするよ。……ダメもとで」

「う、うん大丈夫、マスターなら!!」

「そ、そうですよ、ご主人様でしたら!!」

「は、はい、ご主人様なら!!」

「カ、カイトさん、頑張って下さい!!」

「主よ、主なら何とかなる!!」

「……カイトー、……ガンバー」


ボソッ「……カイト様、おいたわしや……」



分かってくれるのはゼノさんだけだ!

くそっ、お前等、見てろよ!




俺は横たわっている3匹に、魔法陣をそれぞれ展開する。

ユニコーンには治癒魔法、キリンには雷魔法、フェンリルには氷魔法を。

ちなみに、話し合いではユニコーンは治癒属性と光属性を併せ持っていると言う結論に至った。

だから光属性を持っていない俺でもなんとか理屈上は交渉可能となる。




…………魔法自体はちゃんと発動する。

今までの成果がちゃんと出ているんだ。

後は契約内容を決めるだけ。

俺は3匹に話しかける。


「……お前達、俺はここから出すためにお前達と契約したいと思っている。だから別に力を貸して欲しいとかそう言う事じゃない。ただ少しの間だけ俺と形だけでも契約を結んでほしいんだ。……どうだ、構わないか?」


俺が『モンスター言語(会話)』を使って話しかけると、ユニコーンがその辛そうな体に鞭打ち、四つの足を使って何とか立ち上がり、頷いて見せた。

……どうやらOKらしい。


「契約内容はどうする?特に無しでいいか?」


この問いかけにも3匹を代表するようにユニコーンが首肯する。

……本当に辛そうだ。

早くここから助け出してやらんと。


俺とのやりとりをしている分ユニコーンが一番辛そうにも見えるが、キリンとフェンリルも負けず劣らず苦しそうな様子。

……何とかしないと。


「よし、じゃあ契約の楔を打ち込むぞ」


俺の言葉に再度ユニコーンが頷く。

あまりこれ以上のやりとりをさせるのは体に悪いな。

……始めるか。


俺は魔法を契約内容、文言等に変換し、魔力の塊へと組み替える。そして俺とユニコーン、キリン、フェンリルにそれぞれ放つ。


魔力の塊は俺達の体にスゥーッと入り込んでいき、一度大きな光を放って消えて行った。


…………ふぅ、成功、したのかな?







「「「「「「えーーーーーーーーーーー!?」」」」」」



皆驚いて俺の下に駆けてくる。

ふふふ、俺も意味が分からないが何故か成功したんで得意げな顔をしておこうか。


「ご、ご主人様、どどどどどいうことでしょうか!?」

「ママママスター!?」

「ご主人様!?一体、一体、どういう……」

「まあまあ皆落ち着いてくれ。俺にも理由は良くわからんが、成功は成功だ。……これで何とかなりそうだな」

「た、確かにそうですが……」

「どういうことでしょう、フェンリルもキリンも属性なんて……」

「……ああ、なるほど!そういうことか!!」

「ええ!?マスター、いきなり何!?どうしたの!?」

「今のシアの一言で俺が聖獣と契約できた説明方法が一つ思いついた!」

「え!?どういうことですか、ご主人様!?」

「聖獣だって『属性』が大きく関係してたんだよ。今まで試してきたのは人間の『召喚士』なんだろ?召喚士は属性に限らずモンスター達と契約できる。だがやはり無制限ではない。聖獣みたいな格の高い生き物については適用できないんだ。逆に魔族の使っていた、つまり俺の契約方法は一属性としか契約できない。でもその分その属性の生き物に関しては絶対的な適用力がある」

「……なるほど、つまり、『召喚士』=属性に関係無く契約できる分大きな力を持った、ここでは聖獣みたいな生き物についての応用は効かない……『ご主人様の契約』=一つの属性につきその属性の生き物としか契約できない分強かったり格が高いとかに関係なくその属性に関しては強大な契約力を誇る、ということですね!」

「ああ、俺が考えたのはそういうことだ」

「で、ですが、キリンとフェンリルには属性が……」

「シア、俺には『雷魔法』と『氷魔法』が有る。俺はそれを使って契約した。ということはその2匹の属性は?」

「……雷属性と、氷属性、ということでしょうか?」

「ああ。恐らくな」

「……なるほど、そう言われてみれば納得です」


シアも納得してくれたようだ。

カノンは……まあ後でゆっくり説明してやろう。

まだ他にも納得できてない様子の人もちらほらいるようだがとりあえず後回し、かな。



俺は改めてクレイに、この方法で行ってもいいか尋ねることにする。


「クレイ、どうだ、一応契約自体はできることは今やってみた通りだ。後はお前が納得するかどうかだが……」

「……クレイにも……できる?」

「うん?ああ、聖獣ができたんだからお前にもできるだろうな」

「……なら……クレイで1度試してみて」

「え!?でももう……」

「……クレイ、心配……」


ん?……ああ、まだ本当に上の階を通らず外に出れるかどうかは分からないからそれで心配だ、ってことか。

まあ確かにそうだな、一度本人に試してもらった方が安心っちゃあ安心だな。

そういうことなら……


「よし、じゃあクレイとも一度契約してみるか!」

「……うん!……」



俺はその後、さっきと同じように、だが今度は土魔法で契約を試み、問題なく成功した。

契約内容は今回も特に定めなかった。

まあ別にいいだろう。



その後、クレイに指示された通路を通って俺だけ一度外に出た。

この通路で確かに外に出ることはできたのだが、上の階を通らなければいけなかった。

……後は召喚が成功すれば……



俺はその場で召喚を試みる。

もちろん『無詠唱』があるので詠唱文言などを唱える必要も無い。


俺の目の前に茶色の魔法陣が展開され、その中心から眩い光が放たれる。

光は直ぐに収束し、そこには……



「……ウーーー……んーーー?……ここは?」



ぼけーと突っ立ったままのクレイが現れた。

おお!!成功だ!!

これなら……


「クレイ、どうだった!?一度も上の階を通らずにいきなりここに来たか!?」

「……うん……一度も……通らなかった。……カイト、スゴイ」


そう言ってクレイがいきなり腹にタックル……いや、ただ単に抱き着いてきただけか。

突然だったからびっくりした。

クレイの高い身長のこともあるだろうが、思わず尻餅ついてしまった。

こうして見るとクレイの体型がまた違った角度で見えてくる。

スラッとしてて背も俺と10cmも変わらないんじゃないか?

……胸も俺の目の前にあるし。

クレイの大きなルビーのような瞳が俺を見つめる。


「ク、クレイ、嬉しいのは分かったから、ちょっとどいてくれないか?」

「……やー……クレイ、カイト……好きー……」


そう言いながらも俺の上に乗っかり顔を擦り付けてくる。

!?、ちょ、直球だな。

……いや、相手はクレイだ。

猫や犬が懐いたみたいな意味だろう。

それか3匹を助けられる目途が立って嬉しいんだろう。

……あんまり深くは考えない方がいいな。



「ク、クレイ、どいてくれないと、3匹を助けられないぞ?」

「……うー、分かった。……クレイ、どく」


不承不承ながらもクレイは俺の上からどいてくれた。

ふぅー、美人にのしかかられるのは心臓に悪いな。




その後、俺達はもう一度戻って皆と合流する。


何故か一番に駆けてくる竜人女。

……何なんだ、コイツは。


「ど、どうじゃった!?成功か!?失敗か!?」

「あんまりそう急かすな。……ちゃんと成功した」

「そ、そうか!!いやー、良かった良か……あうう」


あんまりはしゃぎ過ぎるんでまだ治っていない腕が痛んだようだ。

……バカかコイツは。


「ほれ、もう一回腕見せてみ」

「……うぬー、かたじけない」


俺はまた回復魔法をかけてやる。


「……ん?主よ、さっきより魔法の力が上がったのかえ?」

「……いや、そんなこと無いとは思うんだが。……そう言われてみれば確かに治癒力が上がってるな」


さっきとは違い、竜人女の腕が、骨もちゃんと綺麗にくっ付くまで完全に回復した。

ん?どういうことだ?


さっきと違うこと……契約したことしか思い浮かばん。

何か契約で新しいスキルでも……


俺はそう思って自分のステータスを見てみることにした。

すると、レベルも上がっていたのだが、それ以上に驚くことがあったのだ。




名前:カイト・タニモト

種族:人族

身分:冒険者 所有者(奴隷:シア エフィー カノン・ファーミュラス)

性別:男

職業:1.剣士 2.魔導師 3.クレリック

年齢:16歳


Lv.35

HP:128/107(+21)

MP:88/124(+36)

STR(筋力):57(+19)

DEF(防御力):47(+27)

INT(賢さ):56(+29)

AGI(素早さ):50(+27)

LUK(運):1(+5)


『能力値中上昇』、『異世界言語(会話)』、『異世界言語(筆記)』、

『生活魔法』、『剣術』、『ステータス操作』、『全魔法素質解放』、

『無詠唱』、『鑑定』、『偽装』、『レベルアップ時ボーナス』、

『パーティ恩恵(リーダー)+α』、『パーティ恩恵(メンバー)』、

『火魔法』、『水魔法』、『土魔法』、『風魔法』、『治癒魔法』、

『職業操作』、『隠密』、『経験値解放』、『氷魔法』、『雷魔法』、

『契約恩恵(主人)』、『契約恩恵(従者)』、『闇魔法』、

『索敵』


スキルポイント:47




『パーティ恩恵(リーダー)』が『パーティ恩恵(リーダー)+α』になってる!?

しかも今まで謎だった二つの『????』が『契約恩恵(主人)』、『契約恩恵(従者)』に変わってる!?


恐らく原因はこれらのどれかだろうが、とりあえず鑑定してみることにする。


パーティ恩恵(リーダー)+α:このスキルの装備者がパーテイーにいる時に

発動する。リーダーはメンバーのスキルを使用することができるようになる。

パーティ恩恵(メンバー)がある場合、自己のスキルのうち、一定のスキルを

メンバーにも使用することができるようになる。

契約恩恵(主人)、契約恩恵(従者)も備えている場合、一度に複数のスキルを使用することができるようになる。



契約恩恵(主人):契約した従者の特性に応じて能力を得る。

契約恩恵(従者)がある場合、従者の特性に応じて能力値が上昇する。

→従者一覧


契約恩恵(従者):契約した主人の力に応じて従者の能力が上がる。

契約恩恵(主人)がある場合、主人は従者に対して自己のスキルの内、一定のスキルを使用することができるようになる。




これは色んな意味でスゴイことになってるな!?

とりあえず恐らくの原因であろう『契約恩恵(主人)』の従者一覧と言うものを見れるらしいので見てみる。


すると……


【従者一覧】


ユニコーン:治癒力一段階上昇+状態異常治癒 MP+15

キリン:雷属性威力一段階上昇+麻痺可能性上昇 AGI(素早さ)+10

フェンリル:氷属性威力一段階上昇+凍結可能性上昇 INT(賢さ)+10

クレイ:ダメージ半減+土属性威力小上昇 DEF(防御力)+10



……これ本当にスゴイことになってんな。

驚きすぎて開いた口が塞がらん。

……神様アイツ、またとんでもないものを……


『治癒力一段階上昇』が恐らく原因……ってちょっと待て!?

『状態異常治癒』!?


俺は直ぐさま竜人女のステータスを鑑定する。


…………


うっわ、『スキルキャンセル』治ってる!?

治す方法『エリクサー』だけじゃないんかい!?


「おい、竜人女、お前、『スキルキャンセル』治ってんぞ!!」

「はぁ!?主よ、何をたわけたことを。そんなわけあるまい。今まで人間として暮らしてきて18年。そんなことは無かったのにこんな簡単にパッと治るはずが……」

「いいから、騙されたと思って確認してみろ!」

「仕方ないのぉ、主がそこまで熱く言うなら……」


なぜ俺の言葉に従うかは深くはツッコまんことにする。

……うん、皆、藪蛇って言葉知ってるよね!?


「……え!?ええ!?ええええええ!?」


スゴイ驚き様だな。

ステータスを確認したようだ。


「……な、何故じゃ!?今まで、今まで我は、エリクサーを、妹は……」


軽く混乱しているようだ。

……まあそりゃそうか。


「一端落ち着け。……で、どうだった?」

「……そ、その、『スキルキャンセル』、治っておった」


他の皆も驚いている。


「まあ、その、何だ、簡単に言えばユニコーンと契約して俺の魔法のレベルが上がったと思ってくれればいい。それで回復魔法に状態異常を治癒する能力が付与されたっぽい」

「…………」


竜人女は黙って俺を見つめている。

……え!?逆にまずかったのかな!?

おせっかいだった、とか!?


「そ、その何だ、もしかして……」

「主よーーーー!!」

「うわっ!抱き着いてくんな!!」


筋肉の塊に抱きしめられる。

……俺としては何一つ嬉しいと思えることは無いが、どうやら嬉しくて泣いてしまったらしい。


「うわーーーん、主よーー……」

「ああ、もう、分かったからとりあえず離れろ!!」

「うわーん、感謝してもしきれんぞーー!!」

「分かった、分かったから離れろ!!」


その後、皆の嬉しくない温かい目に見守られながら、泣き止むまで数分間離れてくれない竜人女を宥めたのだった。

 



「……主よ、本当に感謝する。敵であった我を温かく迎えてくれただけでなく、『スキルキャンセル』まで治してくれた……妹を助けた後、我は主に忠誠を誓うことを約束するぞ!!」






止めてくれーーーーーーーー!!!

何故だ!?俺はフラグを立てないよう立てないよう慎重に動いていたはずなのに、どうしてこういう結末に!?

別に温かく迎え入れたつもりは一切ないからな!?

『スキルキャンセル』も治そうと思って治したわけじゃないし!!


もう何なのこれ!?

最早誰かの陰謀か何かって言われた方が説得力あるわ!!


「ん?何だ、主よ、我だけでは不満か?……やれやれしょうがないのう、では妹も我が説得して主に忠誠を誓わせようではないか!」



何でそうなんだよ!?俺に二人も特大の化け物を抱えろと!?

話したこと無いけど姉がこれだと妹にも一切期待できない!



「い、いや、別に妹さんもお前も俺に忠誠を誓う事なんてないんだぞ!折角自由になれるんだから俺なんかに囚われず二人で仲良く暮らせばいいんじゃないか!?」

「……我等のことをそこまで思ってくれるとは……ふふ、優しいところもまた主の良いところじゃのぉ」


顔を赤らめながらそう告げる竜人女。


ダメだーーーー!!何を言っても墓穴にしかならねえ!!

くっそーーーー!!どうすれば、どうすればこの難局を……



「……3匹の様子が……」

「ほ、本当です!とっても苦しそうです。これは最早一刻を争います!!ご主人様、急ぎませんと!!」


クレイとシアの言葉で皆が脱出の準備を始める。


ま、待ってくれ!俺に、俺に弁解する機会を!!


「マスター、ボーっとしてないで早く早く!!」


あー!カノン、引っ張らないでくれ!!

うわーーー…………




その後、俺の抵抗虚しく、3匹を救出するために俺達は3匹と付き添いでいるクレイを残して外に出た。

…………はぁ。



俺はMPポーションを1本飲み、その後、一気に3匹とクレイを召喚する。

俺の周りに4つの魔法陣が輝き、その後、さっきのように、今度は3匹とクレイがちゃんと召喚された。


……どうやらちゃんと成功したようだ。

3匹の様子もさっきと比べて格段に良くなってる。

皆さっきより元気そうだ。

ユニコーンとキリンが俺の足下に来て顔を擦り付けてくる。


「……皆カイトに感謝してる……助けてくれてありがとう、って」

「そうか。……だがフェンリルはあんまりそう言う雰囲気じゃなさそうだぞ?」

「……照れてる、だけ。……フェンリルもカイトに感謝してる」


2匹からは離れた位置でチラチラこちらを見てくるフェンリル。

……それならいいが。


「で、どうする?3匹は助けたし、契約を解除しても……」


俺がそう言うと、表情を変えないあのクレイが、とても悲しそうな顔をして俺を見る。


「……いやーー!……クレイ、カイトと契約、続けたい」

「え!?でも、形だけとはいえ、クレイが従者になるんだぞ!?それでもいいのか?」

「……クレイ、カイトの、従者?」

「あ、ああ、そうなるんだぞ?」

「……なら、これからクレイ、なんて呼べばいい?」

「え!?いや、だからな、別に従者でいる必要は無いんだぞ?解除しても……」

「……じゃあクレイ、マスターって呼ぶ」

「え!?マ、マスターって呼んでいいのは、わ、わた、私だけ……」


カノンが何故か動揺している。

ん?今は呼び方が問題なのだろうか!?


「い、いやな、別に今まで通り『カイト』でいいんだぞ!?」

「……やー、マスター」

「で、でもな……」

「……マスター」

「あのな、俺は別に……」

「……マスター」

「……もう勝手にしてくれ」

「……うん、マスター」


……俺はあきらめることにした。

……はぁ。もうなんだか疲れた。


「……それで、クレイはいいとして、3匹はどうする?」

「……3匹とも、マスターに懐いてる。……このままマスターの従者、ダメ?」



上目使いでそう聴いてくるクレイ。

……そんな尋ね方されたら断り辛いじゃないか。


目を落とすとそこにはまだ俺の足に顔を擦りつけてくるユニコーンとキリンがいる。

2匹とは少し距離を置いているが、別にフェンリルも俺を嫌って、と言うわけではないらしい。


……なら仕方ない、か。

3匹が従者でいてくれることで俺も強くなれるし、3匹が近くにいてくれた方が何かとクレイも安心だろう。


「……よし、分かった。じゃあこれからは俺の従者ってことになるが、3匹とも、よろしくな」


それぞれ異なったものだが、各自俺の返答に好感触の反応を示してくれた。

これで一応このことについては一段落、か。

後は……




その後、俺達はどうするか相談しようとしたのだが、『イフリートの炎爪』と『ノームの土髭』団員が『ウンディーネの水涙』と戦闘しているところを目撃し、何とかごまかそうとしたが、エンリさんに全てを隠し通すことはできないと判断し、俺達はこれまでの経緯を話すことに。



「……私は、姉さんのところに行きたいです」

「エンリ様、しかし、それでは敵の思うつぼでは」

「私が人質として狙われているのなら姉さんも私のことを心配してくれているはずです。私も、そして姉さんも、自分の目で確かめないと安心なんてできません!」

「エンリさん……」

「姉さんはいつも辛いことは一人で背負い込もうとします。今回のことだって……私達は家族なのに、一緒に戦いたいから私も冒険者になったのに、これじゃあ……」

ボソッ「どこかのご主人様と似たようなお話ですね」


……エフィー、今はそう言うことはいいじゃないか!

今大事なのはアイリさんの下へ向かうかどうかだ、俺のことはいいんだ!!


「……エンリさん、一緒に行きましょう、アイリさんの下へ!」

「カイトさん……」

「カイト様!?」

「ゼノさん、私がついています。このゴタゴタが終わるまで私が必ずエンリさんを守って見せます」

「カイトさん……ありがとうございます」

「カイト様……分かりました。私も必ずエンリ様をアイリ様の下へお連れして、その後もお守りして見せます。……カイト様、お力をお貸ししていただけますか?」

「当たり前です。……では行きましょう、アイリさんの下へ!」

「「はい!!」」

「カノン、トランバットの様子は?」

「ちょっと待って、マスター……あ!今、ちょうど放ったトランバットが戻ってきた。…………うん、分かった、ありがとう。……マスター、居場所が分かったよ、何でもものすごい醜い顔をした死体が近くに倒れてるらしいよ」

「恐らくそれがソトじゃろう」



何だよ、ものすごい醜い顔って!?

本当に『破壊の御手』って珍獣しかいなかったのか?



その後、俺達は二手に分かれ、行動することに。

3匹を異空間にとどめることができなかったので、クレイと弓使いのエナさん、魔法使いのメルさんは『イフリートの炎爪』の支部に3匹を連れて行くことになった。


それ以外、つまり俺達とエンリさん、ゼノさん、それに竜人女はアイリさんの下に向かうことに。

エンリさんにはゼノさん、カノン、それに召喚したベルが常に護衛に着くことになった。



トランバットを先行して偵察に向かわせていたため、途中戦闘に巻き込まれることもほとんどなく、俺達はどんどん北の平野を進んで行った。




そうして20分程走り続けた先に、ようやくアイリさんその人が見えた。

だが、普段のアイリさんからは想像もつかないような位、アイリさんは動揺した様子で、あのメガネ野郎の下に近づいていた。


俺は状況を完全には把握することはできなかったが、いいことではない、ということだけは確信したので、堪らずに大声で彼女の名前を叫んだ。



「アイリさん!!」



色々と急展開だと思います。

まず3匹とクレイさんが主人公のお供に。

そして呼び方が『カイト』から『マスター』になりました。

これどうなんですかね、『カイト』のままの方が良かったんでしょうか?


次に主人公チート化のお知らせです。

『????』のスキルの詳細がついに明らかになりました。

今までメモではずっと『契約恩恵』としていたのを本文に張り付ける形でしたので、いつも『????』に変えるのを忘れかけて、ネタバレの危機を迎えていましたが、今ようやくその緊張から解き放たれ、安心しています。


後は何か……あ!竜人女姉のフラグを主人公が意図せず回収してしまいました。

可哀想に。最早同情するしかありませんね。



後の展開は恐らくかなり予想しやすくなったのではないでしょうか?

……先の展開を当てられるのは作者としましては複雑ですがとりあえずは楽しんでいただけるよう頑張らせていただくしかありませんかね。


今回のお話でまたさらに面倒な設定が付け足されましたね。

ミスをしているかもしれません。

私の方でも見直しを行いますが、何かおかしな点を見つけられた際は是非お知らせいただければと思います。

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