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『勇者』、か……

「『勇者』、か……」


その単語はあまり俺にとって良いものには聞こえない。

そりゃ男なら一度はそういうカッコいいものに憧れなくは無いが、今の俺の考え方からするとただただ厄介ごとに巻き込まれるだけの面倒なものでしかない。


……最初の特典のところでちゃんと回避したんだから3人の内の一人が俺だという事態は避けれるとは思うのだが、確証が無い以上はまだ安心できん。


俺は直ぐさま自分のステータスを確認、そして『職業操作』で取得できる職業を調べてみた。



…………………



よし、大丈夫。俺ではないみたいだな!


ふぅー。とりあえずは一安心……

あっ、でもまだ『勇者』が選ばれていないだけ、という可能性も……

はぁ……まだ完全に安心はしきれないか。



「……?……カイト?」

「あ、ああ、スマン、少し考え事をしていてな。続けてくれ」

「……うん」


ステータスの確認等をしていたんだが、周りからはボーっとしているように見えたようだ。

いかんいかん、しっかりせねば!


「……クレイ……昔……モンスターだった」


ん?『勇者』の話からいきなりクレイの身の上話、か。

まぁ聴いてみるか。


「クレイが昔、ゴーレムだったってことか?」

「……うん」

「そうか。まぁ一度同じようなこと聴いてるからあんまり驚きはしないが……」


そう言って俺は竜人女をチラッと見る。


「ぬ、主よ、そ、そんな熱い眼差しで我を見んでくれ!」


……なんでそこで照れる。




ふざけんな!

俺は一切フラグを立てた覚えはないぞ!

なのに何故そんな反応をされなければならない!

あれだな、今まで男に対して免疫が無かったから男の俺に見られるのが慣れてないんだな、うん!!

そうだ!そうに違いない!!いや、そうであってくれ!!!



「……クレイ、友達虐められてたから怒った。戦ったら……負けた」


話しが本当に飛び飛びだな。


「そうか……クレイ程の奴が負けるってのは相当相手は強かったんだな。どんな奴だったんだ?」

「……昔の……『魔王』……」

「……は!?」


『魔王』に刃向ったって……

しかもモンスター時代ってことは自分の一番上の上司に逆らったってことだろ!?

友達が虐められてたからだとしても簡単にできることじゃないだろう。

……負けたとはいえスゴイな。


それにしてもさっきクレイ本人が言ってたが、男に負けたのは俺が初めてらしいから、その昔負けた『魔王』ってのは女性だってことになるな。

まあ今となっちゃそこまで珍しくは無いのかな?

そう言った魔王が女性のアニメ・マンガも死ぬ前は見たことあったし。


……そう言えば今の『魔王』はどうなんだろうな?

そもそも存在するのかすらわからん。

まあ今はとりあえずクレイの話を聴くことに集中するか。



「……クレイ……死んじゃったと思った……そしたら……聖獣が助けてくれた」


おお!!ここで聖獣が出て来るのか!!


「……クレイ……起きたら人間になってた。……それから近くに聖獣がいたら分かるようになった」

「……なるほど。ということは今回の失踪の件って……」

「……3匹がこの遺跡に現れたのが分かった……だから直ぐにここに来た。……今までも助けてもらったお礼に聖獣を助けてたから」


……そういうことだったのか。

何となくだが、そのクレイが助けてもらった聖獣ってのが気になるな。

クレイが助けた、虐められてた友達と何か関係あんのかな?


この世界では重要視されてるっぽい聖獣を助けるため、ということは褒められる行為だし、クレイの人柄からしても何となく分からんでもないが……


「……ただ、クレイ、七大クランの団長だったんだろう?結構責任有る立場だったのにそんなポンといなくなったら皆に迷惑かかると思わなかったのか?」

「……クレイ、あれ、あんまり楽しくなかった」

「い、いや、楽しいとかそう言う問題じゃなくてだな……」

「……クレイ、したくなかったのに、ギリムが……」

「『ギリム』?……確か、クレイの捜索反対派の筆頭、だったか?」

「そうですね。その方がクレイさんを団長に推薦、となると、……少しきな臭いですね」


エフィーが見解を述べる。

……確かにそうだな。

クレイは強さとしては申し分ないだろうが、それだけで七大クランの団長が務まるとは思えない。

今日初めて会ったばかりで偉そうなことは言えないが、クレイの性格からするとそういう政治的なことや腹の探り合いなんてのは向いてないんじゃないかな?


団員から好かれて推薦されたとかならいいが、捜索反対派の奴からの推薦となるとかなり怪しい。

その時は自分が団長になる地盤が固まってなくてクレイの失態なんかを演出して満を持して自分が……なんてストーリーも考えられる。

……まぁ全部憶測だが。


「……そうか。まぁそういうことは俺がどうこう言うことじゃないか。」

「……クレイ、ちゃんと、『じひょー』も書いた」

「うん『辞表』な」

「……うん。それ」


失踪って言ってもちゃんと辞表も出してるわけだし、後は『ノームの土髭』の問題だろう。

俺が干渉し過ぎるのは逆にそれはそれで問題だ。


「……変なこと聴いて悪かったな、クレイ。続けてくれ」

「……うん……大丈夫。……カイトとお話、嬉しい」




それから飛び飛びになるクレイの話を自分達で補いながら、聴いて行った。


纏めると以下のようになった。


モンスター時代、つまりクレイがゴーレムとして活動していた頃、自分の友達が昔の魔王に虐げられていたのに憤慨し、魔王に立ち向かい、敗北。死にかけていたところを聖獣に助けられ、その後漠然とではあるが聖獣を感知できる能力や人化、逆にゴーレムに戻る能力等を手に入れパワーアップして人としての生活を送っていた。


その能力を生かし、聖獣を助けながら過ごしていたら、今回、クウガー遺跡に聖獣が3匹現れたのを感じ取り、すぐさま急行した。

そこには弱っている3匹の聖獣が横たわっていた。


クレイはそこから出て助けようとしたが、上に近づくにつれ3匹の症状は悪化。

魔力の濃さが原因だと直ぐに気付いたクレイは3匹を元いた場所に戻し、様子を見ることに。


上に比べ、下の方だと魔力の影響が少ないのでいい方法が思い浮かぶまでここで3匹を守ることに。

ただ、人の姿だと空腹等、人体特有の影響を受け、長期間の守護は無理だと判断し、そう言った影響を受けないゴーレムの姿で3匹を守っていた。


話しを聴いている際、さっき俺達が倒した時のような巨大化ムカデが突然また現れ、巨大化して襲ってきたがクレイが何の苦も無く倒してしまった。

とは言っても復活するのは同じらしいので、また俺が同じように魔法で封印した。


ちなみにさっき『3匹』が『勇者』の数を象徴している、と言っていたのはクレイの勘らしい。

それを聴いて俺は激しく脱力したが、強ち否定することもできないものかもしれない。エフィーがクレイの勘を補強する話をしてくれた。



「……今までのこの世界の歴史を記述した歴史本、史実等によりますと、今までの『勇者』の数の最高数は『3人』、『魔王』は『4人』となっています。そして、勇者が誕生する際にはいつも何かしらの異変がこの世界では起きているそうです。『勇者』が『1人』だった場合は『1本』の巨大な木がいきなり出現したとか、『2人』だった場合は『2体』の巨竜がいきなり戦いを始めた、とか」


……なんとも胡散臭い情報だな。

後付けのような気がしないでもない。

そんなこと言い出したら何だってあり得ると思うんだけどもなぁ。


しかも魔王が4人いたことが有るってどういう状況だよ。

勇者が3人でも、うーん、って感じなのに。


「……それは『勇者』に限った話なのか?『魔王』が『3人』の時は、みたいな話しは無い?」

「……そうですね、私の記憶が正しければそう言ったことについての記述は『勇者』だけですね」

「そうか。……勇者の最大数が『3』、魔王が『4』ってことはいつも勇者の数と魔王の数が同じだとは限らないわけだな?」

「はい。勇者が『1人』の時に魔王が『4人』の時もありましたし、勇者が『3人』の時に魔王が『1人』の時もあったはずです。もちろん同じ数の時もあったようですよ」

「そうか……クレイ、この3匹がいることは偶然って言ってたけど、この3匹には聖獣だってこと以外共通性は無いのか?」

「……うーーー……」


何だ、その呻り方は。

不覚にも可愛いと思っちまったじゃねえか!

……どこぞの女野郎とは大違いだな。


「(チラッチラッ)」


何度もそう見てやらねえからな!

チラチラ見てきやがるが竜人女アイツは無視だ。

ここで変なフラグを立てたくない。

……おい、今、「もう既に立ってんじゃねえの?」って思った奴ちょっと出てこい!!


「……うん。多分無い」

「そうか。……エフィーはどうだ?」

「そうですね……特には見当たりませんかね」

「分かった。……その言う通りならクレイの言うことも分からんでもないな」

「……と、おっしゃいますと?」


エンリさんが尋ねてくる。


「クレイやエフィーの言う勇者の出現した時の現象って共通性が『勇者と現象の数字が同じ』という1点なんですよね?」

「そうですね……」

「聖獣と呼ばれるくらいの生き物が3体、何の共通性も無く現れるなんてことが普通あり得るんでしょうか?私はあまりそこの辺りは詳しくありませんから大きなことは言えませんが、仮にこんなことが普通起こり得ないことならその『異常性』自体が勇者の数を示すことの証明になります」

「……起こり得ないこと自体がその証明……なるほど、スゴイです、カイトさん!」

「いや、まだそうと決まったわけではありませんよ。その蓋然性が高い、と言うだけです」

「それでも、ですよ!」


そんなに大げさに言う事でもないんだけどなぁ。

……それでもこれが事実ならもう既に『勇者』は『3人』選ばれて、この世界に存在していることになる。

さっきパーティーの全員のステータス、後取得可能な職業欄を確認したが、皆『魔王』はもちろん、『勇者』になることは無かった。


ふぅー。本当にこれで一安心、かな。

『勇者』や『魔王』なんて面倒極まりないものは他の向いてる奴に任せればいいんだよ。

人任せとか薄情だとか言われようが、そんなんやる気の無い奴や適性の無い奴がなったところでいい結果なんて生まないもんだ。


誰も得をしない不幸な結末なんて避けられるのなら避けた方がいい。

俺の場合だってそうだ。

俺自身だってそんな面倒なこと望んでないし、他の奴だって俺みたいなやる気のない人間がなったって嬉しくもなんともないだろう。


だからこれは皆からした最良の結果ではないだろうか?

……まだ会ったことも無いが、選ばれた『勇者』が的確な奴かと言われればまたそれは別の話だが。


後は『魔王』、だな。

魔王の選別についてはまだ不透明なことが多い。

無いとは思うが万が一、ということもあり得なくはない。

そんなことになったら『勇者』でなくても面倒なことには変わりない。

今後も情報収集は必要だな。



さて、『勇者』の話については一段落ついた。

以降はこれからどうするか、の話に移るか。


「クレイ、その3匹の症状なんだが……」

「……皆、体が小さい……ここは魔力が多い」

「そうですね。下で魔力が薄いとは言ってもそれは上の階層と比べたら、と言う話です。体の小さい3匹からしたらこの遺跡内はどこでも魔力が多いのは変わりません」

「……うん……上に行ったら……耐えられない」

「クレイ、ここから外に出る方法は知ってるんだよな?」

「……うん……でも……」

「……直接外に出るには遺跡の上の階を必ず通らなければ出られない、か?」

「……うん」


……なるほど。

3匹の症状としては恐らくこの魔力の多さが原因なんだろう。

聖獣とは言っても生き物であることには変わりない。

モンスターと同じように魔力の大小・濃淡に影響を受ける。

コイツ等が大きくなったら自分で何とかする力がつくのかもしれんが、運の悪いことにコイツ等は赤ちゃん(今は現れてから2か月程経っているが)の体だ。

そんな術は無いのだろう。

と言うよりあったら今頃俺達が頭を突き合わせて悩むようなことにはなっていないはず。



……さて、どうしようか。

何か他の脱出口を探すか、それとも……





ん?ちょっと待てよ……

上の階層を通らず外に出られればいいんだよな?

……あるにはある。

成功するかはわからんが、一応方法としては一つ存在するな。

ただクレイがこれに納得してくれるか……



「……クレイ、一応一つ方法を考え付いた」

「……本当?」

「ああ。だが、クレイが納得できる方法かどうかはまだ分からん」

「……じゃあそれ、クレイに試してみて」

「えっ!?」

「……クレイはダメ、なの?」

「いや、出来ないことは無いが……」

「……じゃあ、クレイにやってみて」

「本当にいいのか?」

「……うん……」

「……分かった。ならまず……」



俺は先ずその方法についてをクレイも含めた皆に説明する。

……これで3匹を助け出せるだろうか?

ここら辺は本当にごちゃごちゃしています。

もしかしたらおかしなところ、抜けているところ等あるかもしれません。

見つけられた際は是非お知らせいただければと思います。

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