え!?どういうこと!?
さて、女性が一体誰だったのかの答え合わせです。
何で!?
さっきのゴーレムは!?
っていうか何で裸の女性が!?
体になんか良くわからん文字が書かれてるし。
し、しかもむ、胸までバッチリ見えて……
「カ、カイトさん!!見ちゃダメです!!」
「何じっくり見てんのよ、マスター!!」
「わ!?ちょ!?」
エンリさんとカノンに二人がかりで目隠しされる。
くそっ、目の前には楽園が有るというのに!!
「だ、誰か、ふ、服を!」
「あ、私が……」
音だけしか今の状況を把握する情報が無い。
何が起こっているのかは大体分かるが何とも慌ただしいものだ。
皆があたふたしながら走り回っているのが何となくだが感じ取れる。
……まだか?
「……ふぅ、これで何とか……」
どうやら何とかなったらしい。
二人の手が俺の顔から離れていく。
「カイトさん……あんまり、見ちゃ、ダメですよ?」
「マスター……じろじろ見たら承知しないから」
「りょ、了解です」
二人からのプレッシャーに俺は首肯するしかなかった。
さっきのは俺の妄想でも幻覚でもなかったらしい。
目を開けると、そこには1枚上着を羽織った女性がいた。
あんだけ時間かけといて服一枚って……
女性の髪はショートカットを少しだけ長くしたもので、色はカノンよりも少し濃いめのブラウン。
目は大きめで、眉毛は少し下がっている。
たださっきも感じたように何だかボーっとしているというか何というか、綺麗な顔をしている割には表情
があまり出ていない。
肌の色は若干茶色がかっている。
全体的にスラッとしていながらも出るところは出ていてとても魅力的な身体つきをしている。
……うーん、これでも結構際どいんじゃないか?
1枚だけだとどうにも体のラインがはっきりと分かってしまって、目のやり場にかなり困る。
俺は自分の着ていたローブを彼女に差し出す。
「そのー、それだけじゃ色々とマズイと思うんで、これも使って下さい。男が着ていた物だから嫌かもしれないけれど……」
「……?……」
女性は俺からローブを受け取ると、いきなり匂いを嗅ぎだす。
「あっ、ちょ……」
「…落ち着く…良い、匂い。……これ……着る」
「そ、そうですか……それは良かった」
女性はそう言ってローブを着る。
……ふぅ、加齢臭するとか臭いとか言われたらどうしようかと思った。
ボソッ「また、カイトさんの傍に綺麗な女性の影が……」
ボソッ「マスター、また他の女に優しくしちゃって……」
「うん?何か、言いましたか、エンリさん、カノン?」
「い、いえ、な、なんでも!?」
「ふ、ふん、べ、別に!」
それぞれ異なった反応を示す。
うーん、どうしたんだろうな?
「……エン、リ?」
女性がエンリさんの名前に反応する。
「ん?エンリさんこの方とお知り合いなんですか!?」
「い、いいえ、私はこの人とは……」
エンリさんは否定するも女性の反応からしたら無関係とは思えないんだが……
「……エンリ……アイリの……妹」
「嘘!?姉のことを知ってるんですか!?」
「……アイリ……友達」
「え!?アイリさんのお友達なんですか!?」
何か受け答えがどっかの宇宙人みたいだな。
その内人差し指出しながら「……カイト……友達」みたいなこと言い出しそう。
「うん……アイリ……よく、エンリの話、してた……エンリ、アイリとそっくり」
「姉さんが……」
「……意外なところにお知り合いがいたようですが、あなたは一体……」
俺が驚きながらも女性に誰何する。
「……クレイ……前まで、クラン『ノームの土髭』に、いた』
「えっ、『ノームの土髭』の団員さんだったんですか!?」
「カ、カイトさん、ち、違います、この方は……」
「え?ああ、前までってことは今はもう団員じゃないってことですか?」
「そ、そうではなくて『クレイ』さんというのは今現在行方不明とされている……」
「行方不明……ってまさか!?」
「そうです!『ノームの土髭』の元団長の『クレイ』さんです!!」
「……?……」
嘘だろ!?何で今まで行方不明だった団長さんがこんなところに!?
まだゴーレムの謎も漠然としか分かってないのに!?
アンタも「?」じゃねえよ!首かしげんな!
アンタのことについて話してんだよ!
……これはビックリだ。
エンリさんも含め皆驚いている。
あの竜人女でさえ言葉で表現してはいけないような顔をしている。
ふーむ、やっぱり多少なりとも『元』とは言え七大クランの団長がこんなところにいるってのは衝撃的なことなんだろう。
それにしてもゴーレムとこの人の関係ってどういう事なんだろう。
さっき女性が呟いた「……あなた、強い。……負けた」で何となくは分かるんだが……
「その、クレイ、さんでしたか?あなたとさっきのゴーレムの関係性についてお聴きしたいのですが……」
「……クレイ……」
「へ?は、はい。(ちゃんと名前呼んだよな?)クレイさん」
「……クレイ……」
何!?『さん』付けのこと言ってんの!?
「そ、その、やはり目上の人ですし、『さん』付けの方が……」
「……ダメ……クレイ……」
「い、いや、やはり……」
「……クレイ……」
「……分かりました。クレイ」
「……うん……」
根負けした。
全く表情を変えずに睨まれるとこんなに精神的に圧迫されるんだな。
……自分も今まであんな風にしてたのかな。
「……では、クレイ、……あっ、流石に言葉遣いはこのままでも……」
「(フルフル)」
えっ、首を横に振られてしまった!?
「で、ですが流石に……」
「……いや。……さっき戦ってた時の話し方……して」
上目使いでそんなことを言ってくる。
くそっ、コイツ、意図してやってんのか!?
「そ、そのですね……」
「……ダメ……」
「で、でも……」
「……いや……」
「…………分かった。……じゃあクレイ、俺はカイト。よろしく」
「……うん。……カイト」
はぁ……何だかなぁ。
……俺も意志が弱い。
「クレイ、さっきの質問なんだが……」
「……?……」
「クレイとさっきのゴーレムとの関係性なんだが、ぶっちゃけさっきのゴーレムってクレイなの?」
「……うん……カイトとそこの三人、強かった……男に負けたの、初めて」
うっわ、マジか!?
やっぱりクレイ=ゴーレムだったのか!?
……俄かには信じ難い。
だが今までの言動や本人の話からするとそう考える方が妥当、だろうな。
さっきの竜人女の話を聴いてるから幾らかは信憑性も増している。
だが……
「だったら、どうしていきなり襲ってきたんだ?一応俺話しかけたよな?」
「……うん……エンリも、カイトも、いる……今は敵じゃないってわかった……でも……」
ん?クレイが言い淀んでいる。
何か言い辛いことでもあんのか?
「ご主人様、あっちに……」
「ん?どうした、シア?」
シアが俺を呼び、さっきまでクレイが守っていた(?)向こう側を指さす。
そちらの方を見てみると、微かだが、光のようなものが見て取れる。
……何だ?
「……クレイ、クレイの行動はあの光と何か関係があるのか?」
「……うん……」
「そうか……」
あっちで光ってるものが何かを確かめる必要があるらしい。
「俺達が見てもいいか?」
「……意地悪……しない?」
意地悪?どういうことだ?
「……クレイが何を心配しているかは分からんが、約束する。クレイが嫌がるようなことはしない」
「……分かった。……カイトを信じる」
クレイは立ち上がり、光に向かって歩き出す。
俺達は口を開かず、ただ彼女について歩いていく。
……これは!?
「……クレイは、この仔達守ってた。……だから近づく奴皆、倒す…してた…でも、負けた」
「……なるほど。クレイはそれで……ところで、こいつ等は……」
俺達が目にしたのは何だか苦しそうに横たわっている小さな生き物3体。
それぞれの体が微かにだが、光っている。
……光の原因はこれか。
俺の知識からはこの生き物等が何なのかの断定ができないでいる。
何となく1匹は推測できる外見なんだが……
「これは……『ユニコーン』、ですか!?」
エフィーが1匹を指さして確認する。
「……うん。……この仔はユニコーンの赤ちゃん」
俺もコイツについては何となくだが推測できた。
白い体に金色の角。
綺麗な毛並みをしている。
……やっぱりユニコーンだったか。
それは分かったんだが、他の2匹は……
「クレイ、他の2匹は一体……」
「……こっちは『麒麟』の赤ちゃん……あっちは『フェンリル』の赤ちゃん」
「なっ!?キリンに、フェンリル、だと!?」
俺は驚きを隠せずそのまま聞き返してしまった。
「え、嘘!そんな、聖獣と呼ばれる生き物が3体も!?」
エフィーも驚いている。
クレイやエフィーの言葉からすると、この世界でも麒麟やフェンリルは存在するらしい。
ただ『聖獣』なんて大層な名前からするに、滅茶苦茶希少だってことは俺の認識と変わらないのだろう。
『麒麟』は世界によっては神獣なんて呼ばれたりもしているが、元の世界での認識としては中国の神話に出てくる伝説上の生き物と言う位のものだ。
他に詳しいことは良くは知らない。
ユニコーンと似ていて良く対比されてるってことくらいなら何となく聞いたことが有るんだが……
実際に俺の目の前にいる奴も見た目は1本の青い角が生えていて、4本の足が有る。
体もユニコーンのように馬若しくは鹿みたいなスラッとした形をしている。
ただ違うのは体表に鱗(?)のような紋様がちらほら見えるところだろう。
だから最初に見た時も「ユニコーンの亜種かな?」みたいに思ってしまった。
バチバチと体からは微弱ながらも電気が漏れ出している。
この世界ではキリンは雷を操るのか……
『フェンリル』は北欧神話に登場する狼、だったかな?それ位なら何とか知ってるが、こちらも詳しくは知らん。……俄かで悪かったな!
コイツは他の2匹とは違って角が無いから棲み分けが出来ていて分かりやすい。
クレイにフェンリルだと言われれば確かに見た目は狼のように見える。
ただ毛の色はシアよりも薄く、どっちかと言えば水色に近い色をしている。
……だから色的には3匹とも皆白に近いんだよな。
フェンリルも例に漏れず苦しそうに横たわっていて、吐く息はコイツだけ白くなっている。
……体温かそれとも吐く息の温度の違いかはよく分からんが、とにかくそのせいでコイツだけより苦しそうに見える。
フェンリルはこの世界では氷を司る、のかな?
「……皆……苦しい……」
クレイが3匹の様子を見て呟く。
あまり良くわからなかったクレイの表情からも今回は3匹を心配していることが何となくだが窺えた。
……確かに心配な気持は分かるが俺達はそもそもの問題がまだ良くわかっていない。
どうしてこんなところにこの世界では『聖獣』として扱われている3匹がいるのか、どういった経緯でクレイが3匹を守護するに至ったのか等、他にも色々と聴きたいことが有る。
それに何故この3匹なんだろう?
他にも伝説とか神話上の生き物ならもっといるはずなのに……
「……クレイ、お前に聴きたいことが山ほどある。知ってることだけでもいい。話してくれないか?」
「……分かった。……クレイの知ってること、話す……」
「ああ。頼む」
「……3匹がここに現れたのは恐らく偶然。……『3』は、多分……『勇者』の、数」
「え!?ゆ、『勇者』!?」
いきなりのその単語に俺は普段なら出ないような声を上げて驚いた。
……いよいよファンタジーの王道のお出ましか。
答えは『クレイ』さんでした!
ご感想の中には既に勘付いていらっしゃることを仄めかすものもあればユニーク溢れるものもありました。
お送りいただきありがとうございました。
さて、とうとう『勇者』の話が出てきました。
またさらに色んな謎が深まってしまいましたが、大丈夫です。
私自身ですらメモを見ないと把握しきれません。
ちょっとずつ解けて行けばと思います。




