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さて……

痛たたたぁ……


俺、生きてる、よな?


咄嗟に風魔法で落下の衝撃を和らげたけど、他の皆は大丈夫か?


俺は立ち上がり周りを見渡してみる。


「い、痛いです~」

「うぅ、お尻、打ちました……」

「あう~、いったぁい」


どうやらシア、エフィー、カノンの3人も俺と同じように何らかの方法で衝撃を和らげたようだ。



「皆、無事ですか?」

「はい。エンリ様は!?」

「ええ、私は大丈夫です」

「私達も大丈夫」

「そうですか。良かった……」


うん、エンリさん達も皆大丈夫か。


「ふーむ、皆、無事な様じゃな。良かった良かった!」

「テメェ誰のせいだと思ってやがる!?」


コイツは一人だけピンピンしてやがる。

呑気に一人で納得してやがる竜人女に俺は立ち上がりながらもツッコむ。


「い、いや、だって、我は……」


お前のその外見で打ち捨てられた子犬みたいにしゅんとされても何の感慨も湧かんわ!!


「……兎に角、お前の立ち位置ハッキリさせろ!敵か、それとも味方か!?」

「わ、我はて、敵ではない!!じゃが……」

「……でも味方とも言い難い、と?」

「……うむ」

「ならとりあえず大人しくしてろ!不用意に変な行動を取ろうとするな!!あ、いいか、何かボタンとかあっても絶対に押すなよ!今回もマジのやつだからな!!」

「う、うむ、了解した」


竜人女は俺の必死さに何とか納得してくれた。

まだ不安は拭いきれんが今のところはこれでいいか。


よし、次は……


俺がどうするか考えていると、エンリさんが近づいて来て、俺に話しかけてきた。


「カイトさん、あの、これを……」

「うん、これ、は?」


エンリさんが懐から何か手紙のようなものを取りだし、俺に手渡してくる。


「姉から預かっていたものです。こういったもしも何かの緊急事態が起こった際にカイトさんに渡すように、と」

「アイリさんが、私に……」


俺は手紙を受け取る。

『カイト』に、というよりは『風来坊』としてエンリさんの護衛を引き受けた俺に、の方が正しいだろうな。

何せアイリさんは俺の名前を知らないんだし、エンリさんの話している『カイト』という男性とは一致しないだろうから。



さて、それはそうと中身を拝見させていただきますか。




……………………




え!?

この内容、マジか!?

で、でもアイリさんが嘘をつくメリットなんて……


うーん、外はそう言うことになってんのか。

だったらちょっとマズくないか!?

あれ?でもちょっと待てよ、このままだと中に書いてある内容におかしな点が……



俺は手紙を一端しまい、辺りを見渡す。

……あ、いた!


俺は瓦礫の下敷きになっている狼人の男を鑑定し、ステータスを見てみる。

……ダメだ、コイツはもう死んじゃってる。


他のやつは……


そうやって10人目をあたってようやくまだHPが残ってる奴に出くわす。


俺は回復魔法をかける。


「う、うぅ……」

「おーい、起きてくださーい」

「こ、ここは……」

「とりあえず私の質問にだけ答えて下さい」

「な、何故……」

「今の状況分かります?私が回復魔法止めたらあなた、死にますよ?」

「な!?ごほ、ごほ……」

「ほら、吐血もしてますし……どうします?」


俺はそう言って回復魔法の手を一時的に止める。


「が、がっ、は」


途端に呼吸が苦しくなったようだ。

再び回復魔法をかける。


「どうです?質問に答えてくれます?」

「こ、答える、答えるから、た、助けてくれ!!」

「まぁ助けるかどうかは質問の回答次第、ですかね。助かりたかったら嘘なんてつかずにテキパキ答えて下さい」

「わ、分かった」


俺は回復魔法をかけながら、質問に移ることにする。


「では、一つ目に、あなた達の今回の目的は?」

「そ、それは『エンリ』って言う女を捕えて連れて来いっていう依頼を受けたんだ」

「あなた達は戦闘のエリート一族ではあっても冒険者では無いですよね?」

「あ、ああ。だが、時々こういう個別的な依頼を受けるんだ。結構報酬も高いから儲けがいいんだ」

「なるほど……では、次です。本来あなた達は東の森に向かう予定だったのでは?どうしてこの遺跡に来たんですか?」

「ど、どうしてそれを!?」

「なぜ私がそれを知っているかは問題ではありません。今は私の質問に答えて下さい」


俺は回復魔法を止める素振りを見せる。


「わ、悪かった。こ、答えるから!……その、確かにあんたの言う通り俺達は最初東の森に向かって対象を捕まえる予定だった。でも急に依頼人から連絡が入ったんだ。『対象は森ではなく、この遺跡に向かっている』って」


……ふーむ、どういうことだ?

アイリさんの手紙じゃ、『知ってる奴には偽の情報を流してエンリは森の調査に向かったことにした』って書いてあった。

コイツ等も最初は森に向かう予定だったってことはその作戦は一応途中までは成功していたはず。

アイリさんの周到さからしたらアイリさん自身から情報が漏れてバレたってことはない。

同じ理由から『イフリートの炎爪』の団員から漏れたって線も無いはず。


……相手が一枚上手だったってだけか?

うーん、これだけじゃ分からん。


「……分かりました。では次に、一緒に行動していたようですが、あの竜人とはどう言った関係ですか?」

「ああ、アイツは依頼者から言われたんだ。アイツと一緒に行動しろって。で、基本的にはアイツの命令に従えって」

「……なるほど。では最後に、あなた達の依頼者は誰ですか?」

「……少なくとも俺は知らねぇ。他の奴も恐らくは知らねぇんじゃねえのか?」

「……本当ですか?」


また回復魔法を止める素振りをチラつかせる。


「う、嘘じゃねえ!!これは誓って本当だ!!依頼者との契約は基本的に里の長が取ってきて俺達はただ単にそれを遂行するだけなんだ!本当なんだ、信じてくれ!!」


……主観だが、嘘をついているようには見えない。

まぁこれが嘘だったら大した役者だな。


「分かりました。では……」

「ちゃ、ちゃんと全部話したんだ、助けてくれ!!」


どうしようかな。

助けてもシアにまた辛い思いをさせるだけかもしれんし……


うーん……


俺が悩んでいると、シアが近づいてきて、俺に話しかける。


「……ご主人様、私のことでしたら気にしていただかなくてもいいのですよ?ご主人様がお思いになられたようになさっていただければ」

「シア……でも、いいのか?」

「……はい、むしろ私は里の者達にはとても感謝しているんですよ?」

「えっ!?それは、どういう……」

「……だって、そのおかげで大好きなご主人様と出会えたんですから」


どこか照れた様子でそんなことを言うシア。

俺が見つめると頬を赤く染めて少しはにかむ。





メッチャ可愛いじゃねぇかーー!!

俺は堪らずシアを抱き寄せる。

「あ……」と声を漏らすところもまた何とも言えずシアに対する愛おしさだけが募る。


「シア……本当に、いいのか?俺はまたシアに辛い思いをさせるのは嫌なんだが……」

「辛かった思い出もご主人様とお会いしてからは全部幸せな思い出に塗り替えられてしまいました。ご主人様と一緒にいるだけで私はとても幸せです。ですから些細なことはお気になさらず、ご主人様のお思いになるままに……」

「シア……分かった」


俺は止めてしまった手を再び動かし、魔法をかけてやる。


「……シアに感謝するんだな」

「……ああ。シア、本当に見違えたぞ。今のお前なら里の皆は逆に強すぎて怖がるかもな。……どうやったらあんなに強く……」

「それは……」


俺が答えるかどうか迷っていると……


「それはご主人様への『愛』です!」


シアが何の迷いも無くそう答えた。


「……そうか」


言われた狼人もそれ以上は何も言わず、俺の治療をただ静かに受けていた。




恥ずかしい~!

確かに嬉しいし、秘密は守れるけどそんなこと言われる方はかなり恥ずかしいんだぞ!!

……はぁ。まぁいっか、シア可愛いし。

うん、可愛いは正義だな!



「うーむ、流石シアさんですね。ご主人様へのアタックがド直球です。参考になります……」

「……いいなぁ、シア、マスターに抱きしめてもらって!私もマスターにギュッと抱きしめてもらいたい……(フ、フン、べ、別に全く、全然、微塵も、う、うらやましくなんか、な、無いんだからね!!)」

「カノンさん、心の声ダダ漏れです!全部声に出ちゃってますよ!?」

「えっ!?う、嘘、わ、私、しゃべっちゃってた!?」

「はい、もう全部、ばっちりと」

「あー!わー!キャー!!」

「カノンさん……」


……カノンの奴は一体何を騒いでいるんだ?


「……シアさん、やっぱりあなたと私はいずれ決着をつけなくてはいけない運命にあるようですね……」

「エ、エンリ様が燃えていらっしゃる!?」

「ゼノ……やはり恋は戦争のようです」

「せ、戦争、ですか?」

「ええ……これからはもっとどんどんアタックしていかないと」

「わ、分かりました!私も微力ながら頑張ります」

「ええ」


何だかよくは聞こえんが、エンリさん達の方も盛り上がっているようだ。


騒がしいなぁ……



そんな中一人寂しそうにぽつんと座り込んでいる竜人女。

敵ではないにしても味方とも言えない状況だからそうなるのは必然なんだが……


「おい、竜人女、ちょっと来い」


俺が呼んでやると嬉しそうな顔をしてこちらに走り寄ってくる。

その容姿でそれは止めろ!!

何一つ可愛いと思えるところが無い!!

さっきシアの可愛いところを見せてもらった後だから余計に何も感じないんだよ!


スゴイな……ここまで行ったら最早才能と言えるかもしれん。


「な、何じゃ、ぬしよ、何か用か?」


相手にしてもらえたのを嬉しそうにすんじゃねぇよ!


「……お前に色々と聴きたいことがある」

「う、うむ。我に答えられることなら何でも答えるぞ!!」


それはどうかと思うんだが……


「じゃあ、とりあえず何でこんなに俺達に協力的なんだ?前も俺を殺そうとしてなかったっけ?」

「あ、あれも今回のことも脅されて仕方なかったんじゃ!い、妹を……」

「人質にでもされてんのか?」

「う、うむ」

「妹さんって奴隷だったよな?所有者は誰だ?」

「……『破壊の御手』の団長、ソトじゃ。元々の購入者は違うが、奴への献上品として差し出された」

「なるほど……じゃあ今回も以前の襲撃もそいつの指示か?」

「いや、前回のものは確かに奴から直接指示されたのじゃが……」

「ってことは今回のは違うのか?」

「うーむ、実質的には違うのかどうなのかよくわからんのじゃが、今回はソトと良く取引をしている覆面を被った男に言われたのじゃ」

「覆面……どういうことだ?」

「ソトがその男に絶大な信頼を置いていてな。じゃからその男の提案で今回の作戦が立案されたんじゃ」

「じゃあ狼人達への依頼というのも……」

「恐らくその覆面男じゃろう」

「じゃあ今回の作戦ってそのソトって奴は知らないのか?」

「うむ。ソトからは自分のいう事だけでなくその覆面の言うことも聴くようにと言われておる」

「それ覆面の中身変わってたら分かるもんなのか?」

「……そう言えばそうじゃな。分からんかもしれん……」


そんなんでいいのかよ、曖昧すぎないか!?


……それにしても誰だ!?覆面ってのは?

俺が知っている奴か、それとも知らない奴か……


今回の作戦は覆面の単独ってことか。

『破壊の御手』は今回の計画については当たり前だが知らないはず。

だから『破壊の御手』の誰か(ソトって奴本人も含めて)が覆面って可能性は限りなく薄いと思う。

そしてエンリさんが今回の計画からは外れているってことを知っている奴……

容疑者は一応4人、か。

メガネ、チャラ男、そして手紙で書いてあった『ノームの土髭』の団長代理のテリムって奴とギリムっていう失踪した団長の捜索反対派の筆頭、この4人だ。


一番怪しいのはもちろんチャラ男だな。

アイツが一番怪しい行動取ってるし!

ただ個人的にはメガネが黒幕の方が俺としては楽でいい。


まぁ個人的感情云々で判断はしないが今のところはその4人を警戒しなくてはいけない、っと。

アイリさんも手紙ではこの4人以外にも十分注意するように言ってたし。


それにしても謎だよなぁ。

特に一回アイリさんの流したニセ情報に引っかかったのに後でそれに気づくもんなのかな?

黒幕がバカならとことん最後までその情報に踊らされそうな感じだし、賢いならそもそもそのニセ情報に引っかかりはしなさそう。

まぁアイリさんが引っかけた後、それに何とか気づいて……ってことも無くは無いだろうが。


……今ここで考えてても始まらんか。



「……我も妹を人質にとられている身。じゃから同じように妹である『エンリ』という女子を人質にとることは抵抗があったのじゃ」

「なるほど。やっとお前の行動に納得できたよ。でも俺達にペラペラしゃべっちゃってもいいのか?後でそれがバレたら妹さん危ないんじゃないのか?」

「それは……そうなんじゃが……これを読んで……」


そう言って一枚の紙を渡してくる。


『 お前が 殺そうとした 男を 頼れ 』


と書かれていた。


「お前、これ、どこで……」

「昨日、夜遅くに作戦の確認をするために部屋に戻った時にあったのじゃ」


ふーむ、謎、だな。

誰が、何のために、こんなものを竜人女に……


分からん、さっぱり分からん!

今は保留だ。

どっちにしろここでできることはあまり多くない。

脱出することを優先した方がいいだろう。

よし!



「じゃあ、最後にもう一つ、『スキルキャンセル』って状態異常何で治さないんだ?お前色々と強そうなスキル持ってんのにそのままじゃ使えないだろ」


これは俺が殺されそうになった時、竜人女のステータスを鑑定した際から今まで治っていなかったので聴いてみたのだ。


ん?何か皆驚いた顔してる。

えっ!?普通状態異常があったら治すよね?

俺がおかしいの!?


「な、何故我の状態異常を……」

「うん?まあそれはいいじゃん。間違ってないんだろ?」

「それは……そうなのじゃが……」

「ご主人様、今、何とおっしゃいましたか?」


エフィーが恐る恐る俺に尋ねてくる。

えっ、やっぱり俺おかしなこと言ってたの!?


「……どうして『スキルキャンセル』っていう状態異常治さないのかって。……これ聴くのおかしかった!?」

「い、いえ。そちらは何も問題ありません。問題なのはむしろ彼女の状態異常の内容です」

「そうなの?『スキルキャンセル』が?」

「……はい。まさか『スキルキャンセル』の罹患者が実際にいらしたなんて……」

「そんなに珍しいの?この状態異常」

「はい。この状態異常は罹る者も本当に珍しく、そして治せる方法もとても少ないものだとして逆に非常に有名な状態異常なんです。今現在正式に国で発表されている治療方法は最高級薬品で知られる『エリクサー』のみです。ですから罹ったら最後、一生それと付き合っていかなければならない位の覚悟がいる、というのが一般の認識なんです」

「……その『エリクサー』ってどれ位の値段なの?」

「……正確には知りませんが、供給がほとんどありませんので貴族でもなかなか手が出せない代物だとか」

「……マジか」

「……マジです」


そうだったのか……

……ほとんど罹患することのない状態異常に罹ってしまった、と。

竜人女にとっては治さないんじゃなくて治したくても治せないのか。

本当に何なんだろうな、コイツ。


そう言う星の下に生まれたとしか……


「知られてしまった、か。仕方ない。では我と妹の幼少期の頃からの話を……」


ちょ、ちょっと待て!!

何か自分語りに入ろうとしてんぞ、コイツ!

別にお前の過去知ったところでどうにもならないだろ!


え!?皆聴く体勢になってる!?

嘘!?


俺だけがおかしいのか!?

この状態異常に罹った人にはこうしてあげるのが普通なの!?

俺だけが『異常』なの!?『状態異常』なだけに!?




……もう分からん。



そうして諦観している俺を余所に、竜人女は昔を懐かしむように話し始めるのだった。

ここの辺りは色々と頭の中での設定がごちゃごちゃしています。

メモを使ってもいるのですが、もしかしたら書き忘れがあるかもしれません。

その時は直ぐに修正すると思いますので予めご了承ください。

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