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はぁ、どうしようかな?

すいません。今回は短めです。


描こうと思っていた話の中の細部が決まりませんでした。

急遽順序変更です。

昇格試験から既に3日が経った。

昇格以来、特に依頼を受けるでもなく怠惰な日々を過ごした。

3人とも心配してくれたが別にそこまで精神的にまいっているということでもなかったので「気にするな」と言い続けた。


その後のハゲのことについては聞かされていない。

別に知りたくもない。

しかしエルフやラミアのことを思うとこのままでいいのだろうかという気持ちにはなる。

かと言って助けるための手段なんかはなかなか思いつくものではない。


やっと捻りだした案ですら俺からどうこう仕掛けるものではないのだ。

まあハゲは俺のことを憎んでいるだろうからあっちから来るだろう。

……その時が勝負だ。




今日はエンリさんに呼び出されて『イフリートの炎爪』の支部を訪れた。

何だろう、また何か進展でもあったのか?

ゼノさんが話を切り出す。


「……カイト様、昇格試験の後よりご様子が優れないとエフィーから聴いたのですが、大丈夫なのですか?」

「……私もシアさんとカノンさんから相談されました。昇格試験以来カイト様は難しいお顔ばかりされている、と。何か私達でお力になれることはありませんか?」


……なるほど。

昇格試験以降の俺を心配してシア達がエンリさん達に相談していたらしい。

それで今日はお呼びがかかったと。


シア達の方を見てみる。

3人ともとても申し訳なさそうな顔をしている。

そしてシアが謝りだした。


「……ご主人様、勝手なことをして申し訳ありませんでした。最近のご主人様のご様子が優れませんでしたので、3人で相談したのですが私達ではご主人様のお力になれないと思いまして、エンリ様にもお話ししました。お叱りでしたら私がいくらでも受けますのでどうかエフィーとカノンを叱らないでやって下さい。私が最終的に判断したのです。お願いします!」

「そ、そんな!シアさん、3人で決めたんじゃないですか!私たち皆で一緒に叱られようって」

「そうだよ!マスター、悪いのはシアだけじゃないよ!私達も一緒に考えて決めたことなんだから私達も同罪だよ!」


3人ともが自分が悪いと口々に言い出す。

俺の嫌う『人間』ならこういう状況だったら絶対罪を擦り付け合う。

だから俺としては今目の前で見ているものはとても眩しい光景で同時にとても誇らしい。

3人とも、いい子に育ってくれたな……。

この子達には穢れの無いまま育って欲しい。


そのためなら俺は……


とりあえず今は3人の可愛らしい言い争いを止めてやる。


「……3人とも、根本から違っているぞ。まず3人がエンリさん達に話したのは俺のことを心配してくれたからだろう?俺のためにしてくれたことにどうして俺が叱れようか?」

「ご主人様、ですが……」

「確かにたまに暴走する時もあるけどな。でも今までそのどれもが俺のためにやってくれたことだ。そして今回も。俺は3人が一生懸命俺のために色々してくれてるって知ってるからな。だから褒めこそすれ、3人を叱るなんてことはしないよ」

「ご主人様……ありがとうございます」


シアが代表して礼を述べる。


「お礼を言うのはこっちの方だ。3人とも、心配してくれてありがとう」

「いえ、ご主人様のことを気にかけるのは当たり前のことです。お気になさらず」

「ご主人様がお困りの際に少しでもそのお力になりたいだけですから」

「あ、あんまり勘違いしないでよね!マ、マスターの元気が無いとシアとエフィーが心配するからついでに気にかけてただけだし!」

「……そうか。それでも俺は嬉しいよ。ありがとう」

「!?、ふ、ふん!……べ、別にいいわよ……」


カノンは顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。


俺は苦笑しながらもエンリさん達に向き直る。

エンリさん達にも心配させただろう。

何か話さないことには皆の心配は無くならないだろう。

うーん、どうしよう。


別に精神的にまいってるわけじゃないからカウンセリングみたいなことは必要ないし。

かと言って現状困っていることと言ったらハゲのエルフやラミアをどうしようか……

あっ、そうだ!

助けた後の匿う場所が無いからそれを困ってることにしよう!

こういう風に困りごとを話して信頼ポイントを積むのは重要なことだ。

うん、これで行こう。


「お二人にもご心配をかけたかと思います。実は今少し困っていることが有りまして……」


エンリさんとゼノさんは食いついてくる。


「そ、そのお悩みをお聴かせ下さい!」

「お願いします、カイト様!」

「わ、わかりました。お話しさせていただきます。では……」




俺はエンリさん達にハゲのことを、そしてそのハゲに虐げられているエルフやラミアのことを話した。

……オークについては別にいいだろう。

そしてそれらを助ける方法は考えてあるのだが、助けた後匿う場所が無いということを話した。


二人だけでなくシア達も俺の話を食い入るように聴いてくれた。


そして話し終えた後、すぐにエンリさんは話し出した。


「……カイトさんのお話は分かりました。でしたらエルフ達は私達『イフリートの炎爪』が一時的に保護しましょう。ラミアについてはもしかしたら難しいかもしれませんが、そう言った虐げられている女性を保護することでしたらクランでも推奨されていることです。ですのでそのことについては私達にお任せください!」

「本当ですか!?」

「はい。相手が『破壊の御手』でしたら姉からの了解もとれるでしょうし、経済的にも苦とはならないでしょう」

「……そうですか。ありがとうございます。ラミアについては考えがあります。それが無理ならまたその時に考えさせていただきます。……エンリさん、ゼノさん、ありがとうございます。おかげで悩みが解決しそうです」

「いえ、それは構わないのですが……カイトさん。あまり無茶はなさらないでくださいね?カイトさんにもしものことがあったら私……」


エンリさんは握った手をもう一方の手で包み、不安そうな顔をする。

ゼノさんはエンリさんの両肩に手を置き、安心させようとするものの、そのゼノさんの表情も曇っている。


「お二人とも、心配し過ぎですよ、相手が誰であろうと私は油断しません、むしろ私は危ないと思ったらすぐに逃げる臆病なダメ人間です。ですからお二人が心配なさるようなことは絶対起こりません」


俺はそう言って二人に笑いかける。


「……カイトさん、お待ちしていますから、ちゃんと無事に帰ってきてくださいね?」

「……はい」



俺の言葉を聴いて笑顔を浮かべた二人を見届け、俺達はその場を後にした。







……って良い話っぽくなったけどまだ何にも決まってないからね!?

どうやってハゲと会うかとかどうやって勝負まで持っていくかとかまだ全くの白紙だから!


うーん、でもやっぱりあそこはカッコよく締めた方がよかっただろうし……

今更だけどあれでよかったのかな?

こんな経験ボッチの俺にはないからあれで正しかったのかどうか全くわからん!


3人は何にも言わずついてきてくれてるけどどうしよ、「何あれ、意味わかんないんだけど」みたいに思われてたら!


な、無いよね!?うちの子達はみんないい子ばっかりだしそんなこと思う子はいないよね!?



どうしようか悩みながらぶらぶら歩いていると、後ろから不意に声がかかった。


「やあ、カイトさん」

「えっ……あっ、モルさん!こんにちは」

「ああ。突然で悪いんだけど今時間あるかい?少し話したいんだけど」

「ええ、大丈夫ですよ」

「よかった。それじゃあギルド会館の応接室で話そう、あそこなら邪魔が入らないからね」

「わかりました。その、メンバーはどうしましょう?」

「うーん、できれば二人きりの方が……」

「そうですか、わかりました。……3人とも、先に宿に戻っててくれるか?」

「「はい」」

「了解」




その後、応接室に通され、モルさんと向かい合って話し始めた。


「悪いね、いきなりで」

「いえ、特に急ぎの用もありませんでしたし。……それで、話と言うのは?」

「それはね、ハーゲンのことなんだ」

「ああ、ハゲですか」

「そう、ハゲはあの試験の後から、仕返ししようと君を探しているみたいなんだ」

「なるほど。あり得そうなことですね。露骨に態度に出しそうなやつですし」

「そうなんだよ。恐らくいつものように無理やり決闘に持ち込んで君から全てを奪うつもりなんだ」

「決闘、ですか。聞きなれない単語なんですがどういうものなんです?普通に戦うことを指すものなんですか?」

「いや、もともとは騎士同士なんかの正々堂々とした試合を指すものだったんだけど今は更に冒険者同士が争い事を解決するために用いられる試合をも意味するものとして使われるんだ」

「……さっきのおっしゃり方からすると負けた方は何かあるんですよね?」

「……ああ、決闘を行う前に試合に負けた場合何を差し出すか決めておくんだ。負けた方はそれを相手に差し出さなければならない」


……それは聞くだけなら俺にも都合のいい話に思えるんだが。


「すいません。その約束を守らせる強制力ってあるんですか?負けた場合になんだかんだ言い訳してその約束を反故にしてしまうとか考えられそうなんですけど」

「決闘はギルド職員立ち合いの下行われる正式な試合なんだからそんなことする輩はいないよ。そんなことしたら相手に何されても文句は言えないくらいなんだから」


なるほど、直接的な強制力は無いらしいが慣習的には絶対従うようなルールらしい。

郷に入っては郷に従えとも言うし俺も万が一負けたら従うと思うがあのハゲならあるいは……

いや流石に無いよね!

いくらハゲと言っても頭の中までハゲてるわけじゃあないんだし。

この世界での絶対的なルールみたいなもんなんでしょ!?

そりゃハゲでも従うよな~。

破るなんてないない!

……無いよな!?


「わかりました。要するにその決闘を使ってハゲは俺に仕返ししようとしているんですね?」

「ああ、恐らく。……ハゲは全力で君を潰しに来るだろう。だからすぐにでもこの街を離れた方がいい」

「ご忠告ありがとうございます。ですがもう手遅れでしょう。試験の日から3日経っていますし今まで見つからなかったことが不思議なくらいです。それにさっきもここに来るまで何人かちらちら俺の方を見て何か話していましたし。恐らくもう今ここにいることも知られているでしょう」

「……ギルド会館の中までは警戒していなかった。くそっ、身内しかいないと思って油断していた。すまない、別の場所を選べばよかった」

「気にしないでください。どうせ知られるのは時間の問題だったんです。それに私は全く負ける気はありません。むしろ私にとってもいい機会です。これで色々変な小細工考える手間が省けました。これを機にあのハゲに鉄槌を下してやりますよ」

「いくら君でも一人で魔物使いには勝てない!魔物使いはモンスターを使えるからこういう1対1の戦いでは最強の部類に入るんだ!しかもあのハゲはそうやって納得いかない場合は無理やり決闘に持ち込んで今まで負けたことが無いんだ!悪いことは言わない、やめなさい!」

「……モルさん、決闘の立会人お願いしてもいいですか?」

「カイトさん!?何を……」

「俺を信じて下さい。必ず勝ちます。ですからモルさんはその後ハゲに約束を守らせることだけを考えて下さい」

「……本気、なのかい?」

「ええ、今まであのハゲに苦しめられた人々の鬱憤を晴らしてあげられるまたとないチャンスです。これを逃す手はありません」

「……わかった。立会人になったら言えなくなるから今言っとくよ、私は圧倒的に君の味方だ!あのハゲに苦しめられている人は決して少なくない。その人たちのためにも、そして君自身のためにも勝ってくれ!」

「ええ。任せて下さい!……モルさん、ありがとうございます。こんな話をメンバーのあの子達に聴かせたらきっとものすごく不安にしたと思います」

「いや、それは気にする必要はないよ。でもいいのかい、勝手に進めちゃって?」

「あの子達を不安にするよりはこの方がいいと思います。フフッ、まぁ帰ったら怒られそうですけどね。……でも絶対あの子達を悲しませるような結果にはしません」

「そうか。わかった。もう何も言わない。後は君が勝つことだけを信じて立会人をするよ」

「はい、よろしくお願いします」




その後、ギルド会館をでて待っていたのはニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべ自分の勝利を信じて疑わないハゲだった。





……これ逃げたら面白いかな!?



シア「ご主人様はああ言って下さいましたが『シアはいけない子だな、お仕置きが必要だ』『ああ、ご主人様、申し訳……ああっ!ご主人様、申し訳ありません!次はちゃんとしますから……』『もうこんなにしちゃって、シアはいけない子だな、もっとお仕置きが……』

『ああ、申し訳ありません!あぁ、あぁー!……』という展開でも……」


エフィー・カノン「…………」



この話を書くときこんなことを妄想してしまいました。

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