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……ふう、サバイバルって言ってもそこまできつくないな。

遅れてすいません。

話が中々切れず結局試験の終わりまで書いてしまいました。

夜になり、周りを警戒する者を決めることになった。

話し合った結果、カノンと俺、エフィーとシア、俺一人の順で3時間毎に交代することにした。

カノンについてはこの手の依頼を受けたことが無いという面から、エフィーについては体力的な面から誰かと二人で担当した方がいいと判断した。



3人は俺を気遣ってちゃんと交代すべきだと言ってくれたが、実質的に一番きついのは俺ではなくシアとエフィーだ。


というのも実際に見回り等を行ってもらうのはスケルトンやトランバット等カノンのモンスターであって俺達はただそれらの報告を聞いて警戒するだけなのだ。

そして二人はモンスターと話せない。

一緒に警備してもらうとは言え、言語でのコミュニケーションを取れないというのはそれだけでも厳しいものだ。


それに俺は元の世界での経験もあってこういうずっと起きているという事には慣れている。


それらを材料に俺はなんとか3人を説得した。


ちょっとでも3人には負担をかけたくない。

本来なら全部俺一人でやりたいところだが流石にそれは納得してくれない。

ここらへんが落としどころだろう。





シアとエフィーからバトンタッチを受け、今は俺一人で担当している。寂しさとかは感じないが結構暇だ。

いい機会なので巡回に回らないスケルトン一体を傍に置き、「魔法の入門書:スケルトンでもわかる最強の書」が理解できるか試してみることにした。


「ほれ、これ読んでみな」


俺はスケルトンに本を差し出す。

数十分後、


『……人間、難しい、これ、わからない』


との返答が帰ってきた。

……もしかしたらこいつだけがわからないのかもしれない。

そう思って巡回から戻って報告しに来たスケルトンにも一応試してみたが『人間、難しい、これ、わからない』と本当に全く同じ文言を全員に返された。



これで決定した!

この世界に民事訴訟の制度がちゃんとあるのかどうか知らんがこれは一種の詐欺だ!

著者探し出して訴えてやる!!




その後も朝、3人が起きてくるまで色んな暇つぶしをしながら警戒を続けた。

何回かモンスターが近づいてきたという報告もトランバットから受けたが3人を起こす必要もないと俺一人で全部倒した。



3人が起きてから簡単な朝食を済ませ、近場で手頃なモンスターを狩って食事用に保存する。


食用にならないモンスターとも多々遭遇したが、行きのようなゴブリンやオークのみということもなく色んなモンスターを相手した。



試験中でもあるしあまり気を抜くのは良くないのだが何だか拍子抜けだな。

確かにこの辺りは今までのモンスターよりもそこそこ強いがそれでもそこそこ止まりだ。

これなら護衛依頼の時の爺さんのオークの方が強かった。



その後もモンスターとの戦闘以外は何事もなく進んで行った。

あれ以来ハゲとも会わず、どうしているかも全くわからない。

シーナも含めたエルフやラミアは無事だろうか?

……オークは知らん!あのハゲと仲良くしとけばいいんだよ!


他人の心配してる場合かとも思うのだがあんなハゲに使われるのは誰からしても好ましいことじゃない。

……一方で助けてやれる方法も今は思いつかないでいる。


はぁ、今は我慢するしかないのか……。




その日の夜もまたモンスターとの戦闘以外は特に何も起こらず過ぎようとしていた。




だが一体のトランバットの帰還により事態は急変する。


その時は俺が一人で警戒をしている時だった。

色んな妄想して暇をつぶしている時に巡回中のトランバットがすごい勢いで帰ってきた。

俺は即座に何かあったことを推察し、「食パンの『食』っておかしくね?じゃあ食用じゃないパンでもあんのか!?」というアホな疑問についての思考を止め、何があったかを聴く。


「どうした、何があった?」

『カイトの兄貴、敵です!ここより南、約400m程の地点にハイゴブリンが出現しました!その他にもゴブリン約100体を従え進軍中です』

「何!?ハイゴブリンだと!?……わかった。ありがとう。引き続き情報捜査を頼む」

『了解です』


俺はその報告を受け、申し訳ないがすぐさま3人を起こすことにする。

最早ここまでの規模だと俺一人では対応できんだろう。


俺は急いでテントの中に駆けこむ。

3人はぐっすりと眠っていてそれぞれ寝言を呟いている。


「ご、ご主人様、し、尻尾と耳はダメです!あっ、あぁ……」

「ごしゅじんさまぁ、頭だけじゃなくて、ココも、撫でて下さぁい……」

「そう?ますたぁー、私の胸、気持ちいい?フフッ……ふにゃー……」


……お前ら3人とも本当に寝てんだろうな!?


とりあえず今の寝言は聞かなかったことにして起こすことにする。


「3人とも、起きてくれ、敵だ!」


俺の声を聞き、エフィーが瞼をこすりながらも目を覚ます。


「ん……、ご主人様、状況は?」


流石エフィー、対応が早い。


「南の方角約400m位にハイゴブリンとゴブリンの集団が出現した。まだ距離はあるがこのままだとハゲのパーティーと恐らく交戦になって最悪その後は俺達の方に来る」

「んー、わかりました。……カノンさん、起きて下さい」


エフィーはその小さい手でまだ起きないカノンをさする。

シアはまだ完全には起ききっていないが俺と起きているエフィーを見て状況を把握する。

カノンはエフィーに起こされやっと目を覚ますも事態を掴めていないようだ。


「んー?あれー?マスターがいるー」

「カノン、寝ぼけるのはそのくらいにしとけ。敵だ」

「……へ、あれ、マス、ター?」

「ああ、そうだ。俺だ」

「え!?え、何、どういうこと!?」


軽くパニックになってるな。


「落ち着け、敵だ。直ぐにどうこうと言うわけではないが準備してくれ」

「う、うん、わかった」


やっとのことでカノンも事態を把握したようだ。



その後、起きた3人とともに今現在の情況を確認し、どうするか素早く作戦会議をする。


「ゴブリン約100体を統率するハイゴブリン、ですか。かなり厄介ですね……」


エフィーが呟く。


「今まで戦闘したこともないしな。どう考える?」

「そうですね……、ハイゴブリン本体はゴブリンよりも力が格段に増し、知恵も発達しているそうです。ですから戦闘になりますと、単にハイゴブリンだけを倒すのも普通のゴブリンより苦労するでしょうし、その上ゴブリンを従えているという点でも苦労を強いられることになるでしょう」

「どうしましょう、ご主人様、あの男に知らせますか?」


シアに尋ねられ、俺は考え込む。

あのハゲにこの情報を教えてやる義理は全くないしその気も無い。

ただ、エルフやラミアを助けるという側面から考えると教えてやった方がいいかもしれない。


あのハゲが勝手に死んでもどうということもないが他のメンバーがリーダーの無能さの犠牲になるのはなんともやりきれない気分になる。


教えてやってもう既に知っているようならそれはそれでいい。

後は俺達が逃げるか戦うかするだけだ。


よし!



「……知らせよう。あのハゲに教えてやるのは癪だが他の奴隷やモンスターには罪は無い」

「……他の奴隷のご心配までなさるなんて、流石ご主人様です!」


シアは賛成らしい。


「……そうですね。あんな無能なハゲはどうでもいいですが他の方々は助けたいです」


エフィーも賛成してくれる。


「私もそれでいいと思う。マスターが決めたことなら全力でサポートするよ」


カノンも乗ってくれる。


「よし、じゃあ行ってくる。3人は戻ってくるまでに最悪の状況も考えて戦闘の準備もしといてくれ」

「「はい」」

「了解」



俺は臭いをたどってもらうため再びベルを連れてハゲの下に向かった。

今回は事前に注意してあるから大丈夫だろう。






数分後、ベルの案内の下ハゲの野営地に辿り着いた。

俺はそこで自分の目、いや感覚そのものまで疑った。



そこで目にしたのはオークに犯されているエルフの女性だった。

ハゲはそれを見ながら別のエルフの女性を犯している。

シーナは傷だらけの体を気にする様子もなく死んだ目でそれを眺めている。



吐き気が俺を襲った。

何とか吐かずに我慢したがまたすぐに戻ってきそうだ。



何だこれは!?

俺の頭がおかしくなったのか!?


何が起こるかわからない場所で誰一人警戒も立たせずただ自分の欲望のままに行動いている。

最早自分の感性が狂ってしまったのかと疑う位に目の前の光景が俺には信じられなかった。


……ここまで脳味噌が狂ってる奴に会うのも久しぶりだ。


俺はベルを待たせ、その中に進み出た。


「……おい、ハーゲン、いや、ハゲ」


不意に声が聞こえたことにハゲだけでなくオークも驚いて行為を止める。

俺に気づいたハゲは途中で止められたせいかご立腹だ。


「……テメェ、雑魚のくせにいいところで邪魔しやがって!何の用だ!?」

「っち、……あのな、お前の頭がハゲてようが狂ってようが俺にはどうでもいいんだよ。ただなぁ、無能なリーダーのせいで罪のないメンバーが死ぬのは後味悪いから教えに来てやったんだよ」

「あん?誰の頭が狂ってるだと!?もう一回言ってみろ!」


ハゲは気にしないのか……。


「テメェと問答してる暇はねぇんだよ、いいか?この先およそ200mにハイゴブリンとゴブリンが出現した。直ぐにここにもやってくる。死にたくなかったら急いで戦闘の準備するか逃げるかどっちかにしろ」

「ハン、何を言うかと思ったらハイゴブリンだと?嘘ならもっとマシな嘘をつけ。俺様を試験に受からせないための工作か何かか?雑魚は何をしても雑魚だな」


ハゲは俺の言葉を信じようとしない。


「ちっ、百歩譲ってハイゴブリンがいないとしてもこんな何が起こるかわからない状況でお前のしていることはただの自殺行為だ。お前だけが死ぬのなら何も言わんがそれで迷惑被るのはメンバーのそいつ等なんだよ。もっとマシな行動をしろ」

「コイツ等がどうなろうと俺の知ったことか!奴隷やモンスターなんて掃いて捨てる程いる!金さえあればどうにでもなんだよ!飼われているコイツ等もさぞ満足だろうぜ、俺様の盾になれるんだからな」


そういうことを言ってるんじゃねえよ!

本格的に頭が腐ってやがる。


こんな奴に説得を試みた俺がバカだった。

どうする……



「ガァー」



俺がどうするか考える暇もなく、いきなり茂みからゴブリン達が現れた。

もう来たのか!?


思っていた以上に進行速度が速かったようだ。


多くのゴブリンが俺達に襲い掛かってくる。


ハゲはいきなりのことに慌てている。


「な、何だ、ど、どういうことだ!?」


……今までよく生きれたな。

別に今回に限らずモンスターが襲ってくるかもしれない状況ではあったはずだ。


「オ、オーク共、お、俺を守れ!俺の命が最優先だ!!」


オークはハゲの命令を受け、急いでハゲを守りに行く。

オークは何とか対応している。

ゴブリンは確かに数は多いが聞いていたよりは少ないように思う。

コイツ等先行隊か別働隊なのか!?


ラミアやエルフも混乱してはいるがハゲの命令で対応しだす。


そこへ、


「無事ですか?皆さん!」


モルさんが現れた。

ということは緊急事態らしい。

剣を使って周りのゴブリンを薙ぎ払っていく。


「……今のところは。モルさんがいらしたということは緊急事態なんですよね!?」

「ええ、この数のゴブリンが一気に行動しているのは少々おかしい程度ですがこの時期には活動せず力を蓄えているはずのハイゴブリンも絡んでいるとなると緊急事態です」


なるほど、ハゲもただ単にバカで信じなかったのではなくある程度の根拠はあったらしい。

……まあそれにしても頭が二重の意味でおかしいのは変わらんが。


「すいません、こっちにいないとなるとハイゴブリンは私のパーティーの方に向かったかもしれません。ここをお任せしてもいいですか?」

「えっ!?相手はゴブリンを従えたハイゴブリンですよ!?私でもちゃんとパーティーを組んで準備をして挑まないと倒せない相手です。無茶はよしなさい。私と共にここを片づけてからでも……」

「いえ、勝算はあります。それにパーティーの仲間を見捨てることはできません。少しでも時間が惜しい」

「……分かりました。こちらはお任せください」

「ありがとうございます。……では」


もしかしたら他がシア達の方に行ってるかもしれん。

この場から離脱するのに必要な分だけ倒して俺はベルと共に脱出する。


エルフ達のことを考えると後ろ髪引かれる思いだが、流石にモルさんもいるし、ハイゴブリンもいないなら全滅することはないだろう。




俺とベルは暗い森の道をできるだけ急いで駆けた。





戻った頃には既に戦闘が始まっていた。

やはりこっちにも来ていたか!

どうやってゴブリン共が場所を把握したのかはわからん。

ゴブリンとスケルトンが戦っている。

俺は近くのゴブリンを切って3人と合流する。


「3人ともスマン、遅くなった。まさかここまで行軍が速いとは」

「いえ、こちらは大丈夫です」

「ですが恐らくこちらにハイゴブリンが……」

「マスター、あっちはどうだった!?」


あっちにもゴブリンが回っている以上こっちにいる数は自然少なくなる。

こういった会話をするくらいの余裕はあるようだ。


「話してはみたが予想をはるかに上回るほどの屑だった。信じようともせず水掛け論になっていたところをゴブリンに襲われた。……スマン、3人が折角頑張ってくれていた時に俺は……」

「マスターのせいじゃないよ!悪いのはあのハゲなんだから!」

「そうです!ご主人様は悪くありません!」

「お気になさらず。いくら聡明なご主人様でも相手の頭が狂っているのであれば仕方ありません」


3人とも俺を庇って励ましてくれる。

こういうの嬉しいな……


「……スマン、勝手に落ち込んでしまった。まずは目の前の敵のことを考えよう」

「「はい」」

「うん」



俺達が話していると奮闘していたスケルトン達が押され始めた。


奥の方を注視してみると、ゴブリンより二回りほど大きい体をした奴が現れた。


あれがハイゴブリンか!


ハイゴブリンはゴブリン達にあれこれ指示を出している。

一応『モンスター言語(会話)』は使っているが何を言っているかはここからでは聞こえない。



「早急に作戦を伝える。カノン、スケルトンと共にゴブリンの相手を頼む。シア、俺とハイゴブリンを討ちに行くぞ。エフィー、状況を見てカノンか俺達どっちの加勢がいいか判断して攻撃してくれ」

「「はい」」

「了解、マスター」

「よし、行くぞ!」




俺の言葉を合図に3人も戦闘を開始する。



エフィーは事前にスケルトンにかけていたものと同じ支援魔法を俺とシアにかける。


「……内に秘めたる力を増幅させよ、パワーオグメンテ!!」


俺達の頭上から赤い光が降り注ぐ。


剣が少し軽くなったような気がする。

いや、剣が軽く感じるの方が正しいか。


「ゴブリン共、くらえや、ダークミスト!!」


モルさんの前では使いづらい闇魔法だ。

俺はゴブリンに魔法を放ってからハイゴブリンに向けて走り出す。


ゴブリン全体に渡るように黒い霧が出現する。

後はカノンとスケルトンが何とかしてくれるだろう。


シアが後ろからついてきて、俺を攻撃しようとするゴブリンを切っていく。


直ぐにハイゴブリンの下について、護衛のゴブリンを切り倒す。

ハイゴブリンは俺達を見て持っている大きな棍棒を振り下ろしてくる。


それをバックステップでかわしながら更にシアに作戦を叫ぶ。


「シア、俺が前を受け持つ。シアは隙をついてどんどん攻めろ!」

「かしこまりました!」


シアは返事と共に横に走り出す。


俺は予備の剣を抜いて、『パーティ恩恵(リーダー)』でシアの『二刀流』を使い、今度はハイゴブリンの棍棒を受け止める。



ぐおっ、重っ!


ハイゴブリンは受け止められても動揺せず、どんどん体重を乗せてくる。

エフィーの魔法込でこれか!

はじき、返せん!


だが、シアがその横から2本の剣で切りかかる。


「グガァー」


今は『モンスター言語(会話)』をoffにしているが、どちらにしても今のはただの悲鳴にしか聞こえんだろう。


ハイゴブリンがのけ反っている間に俺はもう一度闇魔法を放つ。


「おら、お前のは特別性だ、ブラックダイス!!」


ハイゴブリンが正方形の黒い箱に包まれる。

闇に覆われ姿が完全に見えなくなる。

複数相手用のダークミストよりも単体用に特化させた闇魔法だ。


これで壊れてくれれば……



だが、


「グギャー」


ハイゴブリンが中から箱を棍棒で壊して出てきた。


嘘だろ!?

効かないだけでなくあれを壊しやがった!?


ブラックダイスの性質は精神破壊を目的としているだけでなく箱自体も強度を上げて硬くしてあるので壁としても優秀なんだが……。



俺はすぐに動揺を振り払い倒すことに集中する。

……シアの攻撃は効いている。

精神的な攻略が無理でもダメージを与え続ければ何とかなるはず。


「シア、このままどんどんダメージを与え続けるぞ!」

「はい!」





そうして棍棒で襲ってくるハイゴブリンの攻撃を受け止めながら攻め続けた。

考えれる知能があるだけあって途中パターンを変えて襲ってきたが、エフィーの機転のおかげで何とかなり、俺達はその後も臨機応変に対応して攻撃を続けていった。


3分くらい経っただろうか。


だんだん奴の動きが鈍ってきた。

周りのゴブリン達もスケルトンに倒され尽くした。


「……炎よ、燃え盛れ、ファイアボール!!」


エフィーの魔法が後ろから飛んでくる。

ハイゴブリンに直撃し、そのまま動かなくなる。


「倒した、か?」

「どうでしょう?」


俺とシアはハイゴブリンに近づいてみる。

どうやらまだ生きてはいるが動けないらしい。


……こいつの強さならちょうどいいんじゃないか?

「シア、ちょっと待っててくれ」

「はい」


俺は『モンスター言語(会話)』をonにして話しかける。


「おい、お前、俺と契約してみる気はないか?お前の強さを見込んで頼みたい」

『……ぐ、人間が、俺と、契約?』

「ああ、お前、かなり強いからな!俺の仲間にならないか?」

『……いいの、か?お前たちを、襲ったのだぞ。そんな奴を仲間に迎えるなんて』

「それに答える前に一つ聞きたい。どうしてお前は出てきたんだ?ハイゴブリンは今の時期は活動しないって聞いたぞ?」

『……確かに俺達は、この時期活動せずに力を蓄える。だが最近になって、俺達の住むところに他のところからモンスターが移住してきた。だから餌が不足してどうしても出なければならなくなったんだ』

「そういうことってよくあるのか?」

『……いや、こんなことは初めてだ』

「……なるほど。だったら仕方ないんじゃないのか?お前たちも生きるのに必死だったんだろ?逆にゴブリン達を倒しちゃったけど契約相手がそんな奴でもいいか?」

『……お前が言ったように襲ってきた者を迎撃するというのは当たり前のことであいつ等が死んでしまったのは仕方ないことだ。俺の責任でもある』

「そうか。じゃあ俺と契約して力を貸してくれるか?」

『……わかった。俺はどっちみち生きるにはお前に従うしかない。契約しよう』

「ありがとう。じゃあとりあえず……」

そう言って俺が、ハイゴブリンに手を差し出そうとした時、




ザクッ

『グフッ』



ハイゴブリンの胴体を1本の槍が貫いた。

ハイゴブリンは口から血を吐き、倒れる。

元から俺達が弱らせていたためにその一撃が直ぐに致命傷となったのが分かった。

……死んでいる。




俺は槍の飛んできた方を向く。


「よし、オークよ、良くやった!俺がハイゴブリンに止めを刺したんだ!これで俺も昇格間違いなしだ!」


投擲を終えたオークとハゲの姿がそこにはあった。

後ろにはほかのエルフ達やラミアがいた。

どうやらあいつ等は助かったようだ。


「雑魚め、ありがたく思えよ!俺様が直々に助けてやったんだ!」



俺は心の中で渦巻く色んな思いを押しとどめてハゲの方に近づいていく。


「ふん、何だ!?俺様に跪いて感謝でもしたいのか!ハハハッ」

「……ふん!」

「ぐはぁ」


俺はバカ声を上げて笑っているハゲを思いっきりぶん殴ってやった。

予想だにしていなかった攻撃にハゲは後ろにふっ飛ぶ。


「大きなお世話をどうもありがとう」

「こ、この野郎、やりやがったな!」

「いえいえ、あなたの顔に虫が止まっていたのですよ。私がわざわざ虫から助けてあげたんです。ありがたく思って下さい」

「ふざけんな!勝手に殴っただけだろうが!」

「その言葉、そっくりそのままお返しします。……ふざけんなよ、勝手に俺の邪魔しやがって」

「テメェ!」


ハゲが俺に殴り掛かってこようとする。

そこへ、


パシッ


「やめなさい!!」


モルさんがハゲのパンチを受け止める。


「やめなさい。もう敵はいないのです。これ以上争うようなら失格にしますよ!」

「うるせぇ!先に手を出してきたのはあの雑魚だ!!」

「いいかげんにしなさい。……ハーゲンさん。あなたはこの試験失格です。お帰り下さい」

「ふざけんじゃねぇ!何で俺様が失格なんだよ!?」

「ふぅ。理由なら帰ってからいくらでも報告書に書いて差し上げます。ですから今すぐ私の前から消えて下さい。……これ以上ごねるようなら私がお相手します」

「ぐっ、……こんなんやってられるか!こっちから帰ってやる!」


そう言ってハゲは引き上げていった。


モルさんは俺に向き直る。


「ふぅ。……カイトさん。ハイゴブリンをやったのは恐らくあなたのパーティーだと思います。ハーゲンがいくらモンスターを従えていると言っても倒せるとは到底思えません。ですからそこを考慮して今回はカイトさんを合格としましてもう試験は終わりにします」

「……そうですか。ありがとうございます」

「いえ。……あなたにも色々と思うことはあるでしょうが今はとりあえず街に帰りましょう」

「……はい」





そうして、俺はその場でBランクへの昇格を言い渡され、モルさんと待機していた3人と共にナギラの街へと帰っていったのだった。

すいません、200m→400m

      100m→200mに変更しました。

ハイゴブ「いつから俺が最初の契約相手だと錯覚していた?」

カイト「…………」


すいません。竜人女の時から若干はまってしまいました。

鬱陶しかったら申し訳ありません。

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