ふう、オークションか。……何か緊張する。
今までで一番の長さになってしまいました。
オークション終わりまでを想定して書きましたので区切りがいいところがありませんでした。
俺達は次の日、オークション会場へと足を運んだ。
街の中央にある、円形の大きな建物がそれだった。
始まる前に来たつもりだったのだが大勢の人が既に会場へと入場している。
ふむ、月一ってことでそれなりに人が来るだろうことは予測していたが結構な数だな。
色んな物を扱っているっていうし奴隷を見に来た人以外にも沢山いるんだろう。
中に入ってみると多くの係員がそれぞれの分野に誘導している。
『奴隷→』のようなプラカードを持った人が複数人いたので俺達も迷うことなく目的の場所に辿り着けた。
中に入ってみる。
既に多くの人が着席している。
俺達も空いている席を見つけ、かけることにする。
俺たち以外にも奴隷を座らせていると思える人が見受けられたので特に問題は無いのだろう。
うーん、オークションだからある程度は仕方ないがやはり人の多いところはそわそわして落ち着かん。
さっさと終わらせて帰りたいところだが良い奴ほど後に回される傾向があるらしい。
最悪最後までこの人の集団の中にいなければならないことを覚悟しなければならんか……。
ああ、想像しただけでダルくなってきた、帰りたい。……まだ始まってもいないのに。
そんな思考に耽っていると周りから話し声が聞こえてきた。
「おい、今日出品される戦闘用奴隷のこと聞いたか!?」
「ああ、どうやら中々上物の奴隷が出されるらしいな!」
「そうらしい、何でも竜人の女が手に入ったんだとか」
「嘘だろ!?竜人って言ったら2年に一回有ればいい方なんだろ?それが今回だされるってのか!?」
「らしいぜ!おそらくどいつもこいつも金持ちはそいつ狙いだろうな」
「そいつは見物だな!楽しみだぜ、早く始まんねえかな」
ほほう、竜人とな!?
それはすごい。話からしても今回の目玉はその竜人で決まりだな。
竜人か、かなり珍しいんだろう。
能力を見て悪くなければ買いたいところではあるんだが、そんなに珍しいんならきっと高いんだろうなぁ。
65万ピンスあるからある程度の額までなら出せるが、金持ち達が狙っているという話だ。
もしかしたら足りないかもしれん。
うーむ、どうなるだろうか……
しばし待つと、ホールの席はほとんど埋まった。
ステージに男が一人登場する。
恐らく司会者か何かだろう。
檀上から話し始める。
「ご来場の皆様。本日はナギラの街、奴隷オークションにご参加下さり誠にありがとうございます。私が本日の司会進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いします」
会場から拍手が起こる。
「……ありがとうございます。ではさっそく本題に移らせていただきます。本日皆様に紹介させてただく奴隷は全部で38人。紹介させていただく順に家庭用奴隷が8人、戦闘用奴隷が10人、観賞用奴隷が6人、最後に性奴隷が14人でございます」
ん?どういうことだ?
戦闘用奴隷が最後じゃないのか?
普通人気があるのを最後に回すと思うんだが……。
確かに性奴隷なら人気ありそうだから最後ってのもわからなくはないが。
俺がうんうんと呻っていると、隣にいるシアがどうしたのかと尋ねてきて、説明してくれた。
「この順序は恐らく人気順でしょう。性奴隷は身分職業問わず常に人気があります。観賞用奴隷は主に資産家の人々がよく買われるのです。戦闘用奴隷は確かに人気がありますが、それは主に冒険者や傭兵等戦闘を生業としている、つまり資産家等と比較すると資金が低い人々に人気があるということですのでこの順になっているのだと思います」
なるほど。そう言われれば納得だな。
「やり方は簡単でございます。私達主催者側が最低落札価格を提示させていただきます。欲しいとお思いになられた際はご自身が支出できる額をコールしてください。最終的に最も高い価格を提示していただいた方を落札者とさせていただきます。落札なされた方はその後落札額をお支払いただき、この建物内にいる奴隷商人と契約の手続きを行っていただきましたらそれにて終了でございます」
ここのあたりは昨日エンリさんとゼノさんに聴いた通りだ。
「……よろしいでしょうか?では只今より奴隷オークションを開始させていただきます。……まず最初にご紹介しますのは家庭用奴隷の……」
とうとうオークションが始まった。
最初は家庭用奴隷だからあんまり気にしなくてもいいとは思うんだけど一応鑑定はしておく。
名前:サジ
人種:人族
身分:奴隷
職業:大工
性別:男
年齢:26歳
Lv.5
HP:30/30
MP:17/17
STR(筋力):21
DEF(防御力):18
INT(賢さ):12
AGI(素早さ):16
LUK(運):26
うーん、家庭用だけあってステータスもパッとしない。
なんでこの能力で出品されたんだろう?
「9万!」
「10万!」
おおう、もう始まってんのか!どんどん入札者が増えてってる。
「11万!」
「12万!」
そうこうしているうちに落札者が決まりそうだ。
「16万、16万ピンス、それ以上の方はいらっしゃいませんか?……では16万ピンスで落札とさせていただきます!おめでとうございます」
そこでホール全体から拍手が起こる。
どうやら落札者が出たようだ。
その後もオークションは進んで行き、どんどん落札されていく。
家庭用だけあってあまり期待していなかったがその通りに進み、「これだ!」と思う者はいなかった。
その後間を置かず、そのまま戦闘用奴隷のオークションに移るらしい。
思ってた以上にパパっと進むんだな。
まあ俺としては好都合だけどな。
家庭用奴隷を見に来た人もまだ帰らない様子。
一応全部の奴隷を見てから帰るのかな?
「……では続きまして、戦闘用奴隷のオークションを始めさせていただきたいと思います。最初にご紹介しますは獣人族・犬人の男。年齢16歳で戦闘経験もあります。では、アピールを」
司会者の男がそう促すと、奴隷の男は前に進み出る。
ふーん、アピールとかするんだ。
さっきの家庭用奴隷の時はあんまり興味なかったし覚えてないけど。
「はっ、ふっ、たぁ!」
男は何かの型のような動きをとる。
うむ、中々なお手前。
おっと、鑑定鑑定。
名前:ジョア
人種:獣人族(犬)
身分:奴隷
職業:格闘家
性別:男
年齢:16歳
Lv.10
HP:54/54
MP:25/25
STR(筋力):37(+3)
DEF(防御力):26
INT(賢さ):15
AGI(素早さ):28(+3)
LUK(運):24
『身体能力小上昇』、『足捌き』
ほう、やはり戦闘用奴隷だけあってそこそこ能力はあるな。
普通戦闘用って聞いたら戦闘経験もあるって思うんだけど司会の男がわざわざ説明に含めたってことはこっちでは最初から戦闘経験があるのは珍しいのかな?
「45万!」
「46万!」
こっちももう始まってるな。
俺はとりあえず良い人材が出て来なければ竜人を狙ってみたいからこれには参加はしなくていいや。
「……55万、他にはいらっしゃいませんか?55万、……では、55万ピンスで落札とさせていただきます!おめでとうございます」
その後も滞りなく進行していく。
戦闘用だけあってどれもそこそこ強そうではあるがどうもぱっとしない。
シア・エフィーと比べるから良くないのかもしれん。
周りを見てみる。
屈強そうな野郎共がちらほら見て取れた。
やはり冒険者で戦力補強しに来てる奴もいるんだろう。
だがどこか浮き足立ってるというかそわそわしているというか。
まあ皆考えていることは同じなんだろう。
皆竜人が目当てなんだ。
俺も話を聞くまでは全く知らなかったから適当に良いやついないかな?程度の観光気分でいたが知ってしまった以上はそいつを見てみたいしなんなら欲しい。
他の奴等が欲しているから、という部分も多少ならずあるだろうが竜人ってのはやはり能力的にも珍しいだろう。
鑑定して悪くなければ是非とも欲しいところである。
話によると女性らしいし、シアとエフィーの条件にも合致する。
「……最後になりました。皆様大変長らくお待たせいたしました。この中にいらっしゃる多くの方がもう既にご存じのことかと思います。ですので私からは多くは語りません。では戦闘用最後の奴隷です!」
皆、生唾を飲み込む。
ホール全体から緊張が走っているのが分かる。
男の言葉と共に脇から一人の女性が姿を現す。
俺がそこで目にしたのは……
「スゲー!何だあの奴隷、筋肉ムキムキじゃねえか!あんな奴がパーティーに入ってくれりゃ百人力だぜ!」
「何なんだ!ここの奴隷は化け物か!?」
「やっべー!あんな女見たことねぇ。あんな顔を見たら怖くてゾンビも逃げ出すぜ!」
「まるでお預け食らって憤慨している時のボアみたいな顔してやがる!」
「本当だ、お前うまいこと言うなぁ!」
「「「ダハハハハ!!」」」
「ダハハハハ!」じゃねえよ!
おかしいだろ、だって竜人でしょ!?何で顔がボアみたいなんだよ!
普通竜に近いんじゃないの!?
しかもゾンビも逃げ出すくらいってどんな比喩だよ!……あながち間違って無さそうだし余計に性質が悪い!
俺は竜人って言うからてっきり美人かロリっぽいのを期待してたのに何だよあのゴリマッチョ!
女の人にマッチョなんて表現使うんボディービルダー以外で初めてだわ!!
……ごめん、シア、エフィー、俺にあれは無理だ。
お前たち二人みたいなかわいい子の中にあれが入るのを俺は我慢できん!
しかもあれに刃向われたら俺は御し切れる自信が一切無い!
……ヤバい、これはトラウマになるレベルだわ。
灰になっている俺をよそに、周りの野郎共は皆こぞってあれを手に入れようとコールする。
お前等正気か!?
どうやら奴等の脳味噌はあれを強くて美しい・素晴らしいものと判断したらしい。
俺が間違っているのか、それとも世界が間違っているのか!?
オークションは進んで行き、最終的に130万ピンスで落札されたようだ。
……これでよかったんだ。
どっちにしろあれを手に入れることは無かったんだよ。
後はあれを入手するようなイベントを悉く避けてフラグを立てないようにしないと。
あれを買った奴とは絶対に諍いを起こさないと俺は固く誓ったのだった。
……絶対にフラグじゃないからな!!
その後、何事もなく進行していくオークション。
次は観賞用奴隷の最後か。
はぁ、まだ性奴隷もあるのか。
めんどくさい。
どうせ可愛い子出てきても高くて買えないってオチだろ?
俺が今後の展開に辟易していると、観賞用最後の奴隷の紹介が始まった。
「……続いては観賞用奴隷の最後となります。皆様、こちらはまた珍しい物となっています。今回ご紹介させていただきますのはなんと、『魔族』でございます!」
その言葉を聞いて、ホールは一瞬でざわめき出した。
「魔族!?」
「え、本当?」
「何でオークションに!?」
「でも戦闘用と観賞用なら今までにも出されたことが……」
あちこちで言葉が飛ぶ。
ふむ、経験者でさえ驚いているんだ。初心者の俺もびっくりだ。
興味はある。まあとりあえずは成り行きを見守るか。
「……この魔族はただの魔族ではありません。上級魔族でして、魔法を使い、なんと召喚が出来るのです!」
何!?
召喚、だと!?
あの一件以来召喚については多少なりとも興味があった。
もし本当なら買って本人に直接聴いてみたい。
俺や周りが動揺しているのをよそに、司会の男は気にせず続ける。
「……言葉でいくら語ってもわからないでしょう。実際に見ていただいた方が早いと思います。では」
その言葉と共に一人の首輪をつけられた女の子が登場する。
質素な服装をしているがそれよりも気になるのはあの背中の黒い羽というか翼というのかわからんが、それだ。
尻尾も生えてるっぽい。先っぽが尖ってる。
何か角っぽい物まである。
ライトブラウンをもう少し明るくした色に、肩まで伸びたサラッと流れるような髪。
目は結構大きい。色は恐らく青かな?
耳はエフィーとはまた違った感じの尖り方。
どこか妖艶さを感じさせるも整った美しい容姿。
体型はまたすごいことになってる。
引き締まった体にたわわに実った二つの果実。
シアにも負けないんじゃないかと言う位大きい。
うーん、あれは……ドラキュラ?
わからん。
鑑定してみることにする。
名前:カノン・ファーミュラス
人種:魔族(サキュバス)
身分:奴隷
職業:影使い
性別:女
年齢:14歳
Lv.1
HP:38/38
MP:41/41
STR(筋力):26
DEF(防御力):24
INT(賢さ):28
AGI(素早さ):25
LUK(運):21
『闇魔法』、『魅了』
なっ、『サキュバス』か!?
ゲームやマンガ等でエロくて有名なあの!?
ヤバいじゃん、別に観賞用なんてただの括りに過ぎないんだし、買っちゃえばこっちのもん……
……ふぅ、興奮してしまった。
危なかった。思考がバカにはしってしまった。
ただサキュバスと知っただけでここまでの影響を与えるとは、恐るべし!
……あれっ、なんかもっと興奮する材料があったようななかったような……
うーん、何だろ、『魅了』はそりゃ男なら興奮せんこともないがそのくだりはさっき似たようなことしたし……
『闇魔法』は滅多に見ない珍しいただの特殊魔法だし……
……えっ、『闇魔法』!?
うっそ、マジか!?
中二病全開のあの『闇魔法』か!!
えっ、でもおかしくない?
これかなり強い方だよ、この子!?
何で観賞用なんだろ?
しかもさっき召喚できるって言ってたのにスキルにはそれらしいのないし。
わからん、さっぱりわからん。
俺が混乱していると司会がまた話し始めた。
「……この奴隷は上級魔族ですのでただ召喚が使えるというだけでなく自分でも戦える能力を持っています。ズバリ影を操るのです!……それも含めて実際に見ていただきましょう。では」
司会の言葉とともに女の子の周りに魔法陣が展開される。
女の子は何かぶつぶつ言い始めた。
ああ、詠唱か。
最近はエフィーのを見ているから慣れてはきたが如何せん俺の無詠唱のせいでぶつぶつ言いだすと何かおかしな人なのかと思ってしまう。
「……契約者の名において命ずる。出でよ、『ベル』!」
声に合わせて女の子の周りが輝く。
次の瞬間俺も見たことのある現象が目の前で起こった。
魔法陣の中からモンスターが1体現れたのだ。
少し小さめの黒っぽい犬が。
見た目はどうあれ今見たものは間違いなく召喚だ。
女の子はその後も影をリボンか何かのように扱って色々な技を見せていった。
どういうことだ!?
彼女のスキルには『召喚』は無い。
もしかしたら『偽装』を使っているのか、とも疑ったがならなぜ『召喚』だけを隠すのかが分からない。
実際に召喚をしてしまった以上召喚を使えるということは明白なのに。
俺は堪らずエフィーに耳打ちした。
「エフィー、俺があの女の子のスキルを挙げる。なぜ召喚が使えたか考察してみてくれないか?」
「はい、かしこまりました」
俺が彼女のスキルを挙げると、エフィーは考え込む。
そろそろ女の子のアピールが終わり、競売に入りそうだ。
できれば何か当たりをつけてから買うかどうかを決めたい。
しょうもない理由だったら買う必要ないんだからな。
エフィーが「恐らく……」と俺に話し始めた。
「『闇魔法』が原因かと思われます。以前、本で読んだことが有るのですが、魔族は魔法を色々と応用することに長けていて、召喚術も召喚士にはならずに行使できる、と。つまり、何らかの方法で闇魔法を使って契約・召喚に代替しているのではないかと」
「あの影の技もか?」
「はい、恐らくは。職業は恐らくは副次的なものでしょう。どうして影だけ詠唱無しで使えて召喚は詠唱したのかまではわかりません。もしかしたらそう言う風に闇魔法を応用できる技術があるにはあっても召喚だけは詠唱しないといけない理由があるのかもしれません」
「わかった。ありがとう。……二人とも、聴いてくれ。俺はあの子を落札しようと思う。あの子は魔族だ。だから二人はもしかしたら嫌かもしれない。俺は二人の嫌がることをしたくないからそうなら言ってくれ。遠慮はいらない」
「……この奴隷は魔族で観賞用として提供させていただいてますのでレベルも1にしております。ですので安心してご鑑賞していただけると思います」
もちろん俺達のこととは関係なくオークションは進行している。
それにしても何だ、「レベル1にした」って?そういう技術があるのか?
疑問に思ってるとエフィーが話し始めた。
「私はご主人様のお考えに賛成です。魔法を利用して召喚できる技術というのは有用です。……それに私は相手が誰であろうと優しく接して下さるご主人様を見てきました。私も相手の種族によって態度を変えるということはありません。ただ、相手の子が私のことを知って同じようにしてくれるかと言ったらそれはまた別ですが……」
その言葉の後、魔族で観賞用に出される奴隷限定でレベルを1にする魔法が存在するということを教えてくれた。
「……では最低落札価格は15万から始めさせていただきます」
競売が始まったようだ。
どうしようか迷っていると、シアが口を開いて話し出した。
「私は元々ご主人様のご意向に一切反対などございません。確かに魔族はあまりよく思われていません。しかしだからと言ってあの子が悪いことをした、ということにはならないんですよね?…もしかしたらあの子も私達みたいに辛い思いをしているかもしれません。私はあの子にもご主人様のお優しさに触れて欲しいです。ですから、私もあの子を買うことは賛成です」
「……わかった。よし、絶対落札して見せる。待ってろ!」
「「はい」」
「28万!」
「29万!」
今まだ6人くらいが競りを行っている。
俺も参加する。
「30万!」
「31万!」
中々振り落されてくれない。
そこで、誰かが焦れたのか、
「50万!」
いきなり一気に吊り上げやがった。
おい、慣習はどうした!?
恐らくそこそこの金を持ってはいるが今回初参加と言った感じなのかな。
俺はとりあえずついていく。
「51万!」
「くっ、52万!」
いきなり吊り上げられたからか、俺とそいつ以外、一気に脱落していった。
「53万!」
「57万!」
やべぇ、危ない額になってきた。
足りるかな!?
「58万!」
「くそっ、60万!」
ひぃー、ギリギリだ!
もう俺達以外はいない。一騎打ちだな。
じゃあ、賭けに出るか!
「64万!」
「ぐっ、64万、1500!」
何だその微妙な額は!?
だがもう相手もギリギリなんだろう。
……俺もだけどね。
よしっ、もういいや、やっちゃえ!
「65万!」
「!?、っく、っそ」
相手はコールしてこない。
声のしていた方を見てみると、デブチンが悔しそうに俺の方を睨んでくる。
よっしゃぁー、見たか!世の中全て金なんだよ!
……でも今からほぼ無一文になっちゃったけどね!
「65万、他にいらっしゃいませんか?……では、65万ピンスで落札とさせていただきます」
ふぅ、何とか落札できたか。
俺はその後、落札額の65万ピンスを支払って女の子を引き取り、奴隷商人に契約の手続きをしてもらった。
その後、会場の外に出て、とりあえず自己紹介することにした。
「俺がこれから君の主人になるカイトだ。俺と無理に仲良くなる必要はないが、こっちにいる二人とは仲良くやって欲しい」
「……ふん」
ぷいっと横を向きやがった。
無視か。まあいいが。
「……じゃあ、二人とも」
「はい。……私はシアと言います。ご主人様の一番奴隷です。これからよろしくお願いします」
「……よろしく」
『一番奴隷』って?……ああ、そりゃそうか、シアが一番最初に俺の奴隷になったんだもんな。
まぁシアにはちゃんと反応してくれるならそれでいいか。
「私はエフィーと言います。……その、私はハーフエルフです。ハーフエルフの私と仲良くしていただけるとは思っていません。ですが、どうかご主人様とシアさんのおっしゃることはちゃんと聞いてください。私個人としましてはカノンさんと仲良しになりたいと思っています。……よろしく、お願いします」
「……も」
「へ?」
「……私も、」
「えっと?」
「私も、魔族で嫌われ者、だから。だからハーフエルフだってこと、私は、気にしないわ」
カノンは顔を赤くして正面を向かずに答える
「……えっと、本当、ですか?」
「……こんなことで嘘つかないわよ」
それを聴いてエフィーは笑みを浮かべてカノンに抱き着く。
「私、うれしいです!カノンさん、これから一緒にがんばりましょうね?」
「ちょ、ちょっと、くっつかないでよ!」
「えへへ、いいじゃないですか」
微笑ましい光景だ。
普段のことを思うと忘れがちだがエフィーはまだ精神的に成熟しきってないんだ。
だからこういった些細なことにも素直に嬉しくなってしまうんだろう。
いや、ハーフエルフであるということを気にしないでくれる人は圧倒的に少ない。
だからエフィーにとっては些細なんかじゃないだろう。
こういう子供らしい一面を見れただけでも今日は収穫かもしれない。
まだ会って間もないが、カノンもどうやら素直に喜べないだけでエフィーと仲良くできることは嬉しそうだ。
全くの想像だがカノンも魔族ということで辛い思いをしてきたんじゃないのかな?
だから仲良くできる人が増えるのは純粋に嬉しいのかもしれん。
普段傷のなめ合いって言葉はあんまり好きじゃないが本人たちにどうしようもないことでついた傷についてはそれもアリなんじゃないかと思えてくる。
……カノンの事情については魔族ってこと以外知らんが。
シアも二人の中に入って楽しそうにしている。
あっ、カノンが恥ずかしそうにしながらも自己紹介してる。
……俺はあんまり懐かれてないようだが、ま、いっか。
さて、これからどうしよう?
買ったはいいが養って上げるお金がない。
うーん、子供を持った親の気持ちが何となくわかってきた。
こういう辛いようなことはあの子達には知らせずに俺がやって、穢れの無いまま育って欲しい。
楽しそうにしているのを見ているとそう言う気持ちになってくる。
……何だか本当にオッサンみたいになってきたな。
「おい、お前!」
不意に俺に声がかかった。
竜人女「いつから私が3人目のヒロインだと錯覚していた?」
カイト「…………」
ただこれをやりたかっただけです。
しかし、もしかしたら次話……




