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このジジイどうしてやろうか?

俺はオークに向かって走り出した。


オークは討伐推奨ランクはCランクだが、Dランクでもパーティーであれば討伐自体はそれほど難しいことはない。

トロールもそうだがオークのような体の大きさが特徴のモンスターはその体から生み出されるパワーをどうにかできれば倒すことは比較的楽だ。


普通はそれをパーティーで役割分担して倒すのが定石だが、今俺はそれを一人でどうにかしないといけない。しかも目の前のオークは普通のオークとは少し毛色が違う。


STRは最近少しずつ上げてきたが、オーク相手じゃ敵わない。

なら……



俺は魔法を展開する。


「ファイアアロー!!」


20本の炎の矢を作り出す。続いて、


「ウィンドライン!!」


風魔法で矢の速度を加速させる。


風に乗った矢は次々と目にも止まらぬ速さでオークに刺さっていく。


「グガァー」


ほとんどは命中したのだが熱さ以外のダメージはほとんど見て取れない。


ちっ、タフさも厄介だな。


俺はMPポーションを素早く飲み、次の攻撃に移る。


「なんと、魔法が使えるのか、小僧。厄介な」


ジジイは俺の魔法を見て感想を漏らす。


それはこっちの言葉セリフだ!


オークは俺に突進してくる。

普通は何か得物を持って攻撃を行うことがオークの主流なのだがこのオークは素手だ。

少し距離を取っていれば攻撃をくらうことは無いはずだ。


だがこのオークのスピードもそこそこのもんだ。

デカいやつはのろまって相場が決まってんだが。


俺は避けるので精一杯になる。


たまに速度重視の魔法を放つも威力が無いためほとんど効果が無い。


その間にもオークの攻撃は止まらない。



くそっ、このままじゃ防戦一方だな。



何か、打開策は無いのか……





=====  エフィー視点  =====




「ゼノ!!」


やっとたどり着いた。

そこまで離れている距離ではないはずなのに途方もなく長く感じた。


途中シアさんが追い付いてきてくれて、今はトロールの討伐に向かってくれている。

今のうちに何とかしないと……


私はもう一度友達の名前を呼ぶ。

だがエンリ様の腕に抱かれている彼女から返事は返ってこない。

息をしているかどうかすら怪しい。



「エフィーちゃん!? どうしてここに!?」


エンリ様は驚いてらっしゃる。

そう言う彼女の体も傷だらけでところどころ血が流れている。


「ご主人様から上級ポーションを預かっています」


私はポーションを見せる。


「そうなの!?なら直ぐにゼノに使って上げて、お願いします!!」


すごい剣幕で捲し立てるエンリ様。


「しかし、いいのですか、エンリ様も……」

「私のものは放っておいても死ぬものではありません、ですがゼノは一刻を争うのです!……ゼノは私を庇ってこうなったのです!ゼノが死んでしまったら、私は、私は……」

「……わかりました。ありがとうございます、エンリ様。では、ゼノにポーションを使います!」


私はゼノにポーションを飲ませる。


意識が無いから飲んでくれるか不安だったけど、ポーションはすらすらと口の中に入っていった。


すると、ゼノの体が光に包まれ、傷が見る見るふさがっていく。

光が収まると、ゼノの体からはすっかり傷がなくなり、呼吸をする音が聞こえてきた。

良かった。これで大丈夫。


「ふぅ、これで大丈夫です、次はエンリ様の番です。傷を見せて下さい」

「ですが、まだトロールが……」

「今はご自身の体を優先なさってください。それにご主人様からもエンリ様の傷を治すよう仰せつかっているのです。ですからお願いします」

「カイトさんが……、わかりました。お願いします、エフィーちゃん」

「はい、では、治療を開始します!」


私は回復魔法を展開する。


少しずつ傷がふさがっていく。

時々顔を歪めるエンリ様。

回復に伴う痛みだろう。



そうして5分位して、目に見える傷は大体治療した。


「ふぅ、とりあえず応急処置は終わりました。後でご主人様にも見てもらった方がいいかもしれません。申し訳ありませんが私ができるのは今はこれくらいです」

「いえ、十分です。ありがとうございます」

「……はい、では私はトロール討伐に加勢しに行きます。エンリ様はここでゼノとお待ちを」

「そんな、私も行きま……うっ」


エンリ様は表情を歪める。


「申した通りあくまで応急処置です。ここでお待ちください」

「ですが……」


そう言ってまだ食い下がろうとする。


だが、その時、

「うぅん、んん……」

「ゼノ!?目が覚めたの!?」

「大丈夫、ゼノ!?」

「ここは……、あ、そうだ!エンリ様、お怪我はありませんか!?」


ゼノは起き上がって早々エンリ様の体を心配する。


「そのお体……、申し訳ありません、エンリ様にお怪我を……」


そう言おうとするゼノをエンリ様が突然抱きしめる。


「ゼノ、ゼノ!無事なのですね、ちゃんと生きていますよね!?」

「えっ、あ、あの、エンリ様?」

「ゼノ、あなたは私を庇って瀕死の状態だったのですよ!? それでエフィーちゃんが上級ポーションを持ってきてくれて、それであなたは助かったのです!」

「エフィーが……」

ゼノが私の方を見てくる。

「ありがとう、エフィー」

そう言ってくれるゼノを見て私は何だかよくわからないものがこみ上げてきた。

「わた、私も、し、心配、したんですよ!?ゼノが、ゼノが死んじゃうんじゃないかって」


私は嗚咽を漏らしながらも何とか思ったことを言葉にした。


「……、本当にありがとうございます。こんな私のためにここまでして下さって……。私、私、生きてて、生きてて良かったです」


そう言って涙を流すゼノ。

それにつられて私もエンリ様も泣いてしまう。



その後、直ぐにまだ戦闘中だったことを思い出し、私は泣き止む。


「今から私は戻って戦闘に参加します。二人はここに」

「……申し訳ありませんが私が今戻っても皆の邪魔をするだけになります。エフィーちゃん、皆のことをよろしくお願いします!」

「はい、お任せください」


「エフィー、ごめんね、命を助けてもらった上にまた他のことまで……」

「いいんですよ、ポーションはご主人様が持たせて下さったものです。お礼ならご主人様に。……それに助けあうのが友達なんですから。今までも私が困っていたらゼノは私を助けてくれたでしょう?それと同じです」

「エフィー……。私エフィーと友達になれて本当に良かった!」

「……私もですよ、ゼノ。……では、行ってきます!」


私はそうしてシアさん達の下へと向かった。





=====  エフィー視点終了  =====



俺はパーティー全員のスキルを列挙していく。


あれでもない、これでもない……





あっ、これは? てれれてっててー、『魔力操作』ぁー!


あった、これだ!



俺は即座に『パーティ恩恵(リーダー)』でエフィーの『魔力操作』を使う。


まだ俺は使ったことないからあんまりわからんがこれが勝利の鍵だと思ってこれに賭ける。

『魔力操作』、君に決めた!



普段とは比較にならないほど魔力循環をスムーズに行える。

それで、何だっけ?

こういうのってどっかに集中させれば身体能力とか上がるんだよね!?

信じるよ、俺の中二病知識!?


俺は魔力を足に集中させる。


そして、魔力を身体能力を上げるようエネルギーへと還元するイメージを持つ。


すると、足の動きが良くなり、さっきまでかわすだけで精一杯だったオークの攻撃を余裕を持ってかわせるようになってきた。


ヤバい、これすごい!

そのうち目に魔力を集中させて「ぎょ〇!!」とかいけんじゃね!?


……まぁ今はそれは必要ないか。


操作の微調整もまだ慣れない。

それにやっぱり魔力の消費は通常より激しい。

長期戦は無理だ。


決着をつけてやるか……。



「くそう、いきなり小僧のスピードが増し追った!行けぃ、オークよ!あの小僧を殺してしまえ!」


ジジイの声を合図に、オークは俺に向かって再び突進してくる。


俺はそれをかわし、魔法を展開する。


「アイスライン!!」


オークの前方に氷の道を作る。


オークは俺にかわされすぐには止まれず、それに突っ込んで転んでしまう。


「な、なんじゃ、その魔法は!?」

「あんたが知る必要はねぇよ、爺さん。……ストーンランス!!」


俺は4つの石の槍をオークの四肢に突き刺し、動きを封じる。


「ガァグゥァ」


オークの叫びが上がる。



俺は再び妙なマネをされる前にジジイを始末することにする。


「正真正銘これで終わりだな、爺さん」

「……ふむ、お前のような小僧を襲ってしまったのがワシの失敗じゃったか」

「そうだな、今度生まれ変わってやる時はもっと弱そうなやつを狙うんだな」

「ホッホッホ、十分弱そうじゃったから狙ったんじゃがのぉ」

「それは見る目が無かった自分を恨みな。……あばよ」


俺はそう言って剣を振り下ろした。


死ぬ際もジジイの顔から薄ら笑いが消えることは無かった。




俺がその後、オークに止めを刺そうとすると、向こうから足音が聞こえてきた。

傷だらけのトロールが走ってきたのだ。


あっちで仕留め損ねたのか!?


遅れてシア達がこっちに向かってくるのが見える。


俺はとりあえずオークに止めを刺そうと振りかぶる。

だが、オークが暴れて、石の槍が抜けてしまった。


あれを外すのか!?結構な力で縫い付けたはずだぞ!?


そのままオークは俺の方に突っ込んできた。


虚を突かれた俺は咄嗟に簡易の土の壁を何枚か目前に作り出す。

ガン、ガン、ガン、ガン!

オークはそれをものともせずに俺に体当たりした。


ドーンッ


ぐっはっ!おっも……



俺は後方に吹っ飛ばされる。

意識が飛びかけた。


……ヤバい、肋骨が何本か逝った。


ごっほっ、ごっほっ


少量ではあるが吐血した。



またオークが突進しようと構えている。


トロールもこちらに到着してしまった。


くっそ!


俺は回復魔法を使いながらオークに向かい、魔法を放つ。


「ぐっ、スパーク、ウェーブ!!」


電撃が俺の手から衝撃の波となってオークを襲う。


オークはもろにそれにぶつかる。


「グガァ、グガァァ」


電撃を受けたオークは感電し、そのまま電熱で焦げ、倒れる。

ストーンランスのダメージもあってようやく倒せたようだ。




俺は直ぐにこちらに向かって攻撃しようとするトロールに魔法を放つ。


「はぁ、はぁ、アイス、ランス!!」


1本の大きめの氷の槍を作り出してトロールの傷口目がけて放つ。


槍は見事トロールに命中し、傷口を抉る。


「ゴガァー」


トロールは悲鳴らしきものを上げる。

だがまだ倒れないらしい。



くそっ、MPは今のでほぼ使った。

後は回復に回さないと体が……。



もう……



そこへようやく追いついたシア達がトロールへと止めの攻撃を放って行った。



トロールはそうしてようやく倒れてくれた。



……やっと、か。


俺はその場で崩れ落ちた。



「……しゅ……さま!ご……じん……」


シアが俺を抱えて泣きながら必死に何か叫んでいる。

エフィーも駆けつけてきた。涙目になって何か言っている。




よく、聞こえ、ないな。


ご、めん……。







俺はそこで意識を失った。





今までこの作品をご覧になって下さってありがとうございました。


歩谷健介の次回作にご期待下さい。




……冗談です。まだ続きます。なんか打ち切りっぽくなったのでそれらしいこと書いてみました。


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