……ふぅ、じゃあやってみるか!
すいません、前回お知らせするのを忘れていましたが、
AGL→AGIに改めさせていただきました。
俺はギルドで話を聴いた後、宿へと戻った。
部屋ではエフィーが熱心にシアに掛け算を教えていた。
この世界では四則計算ができれば大学卒業レベルのようだ。
この世界の基準で考えればそれを13歳で教えれるエフィーというのは相当すごいんじゃないのだろうか?
二人は俺に気づいて勉強の途中でやめようとしたが、「気にせず続けてくれ。後でまた呼ぶことになるから」と言ってとどめた。
俺は二人の邪魔をしないよう庭にでて自分の腹案を試してみることにする。
俺は先ず『パーティ恩恵(リーダー)』を使って『職業操作』をエフィーに使う。
すると、スキルが発動し、エフィーの職業画面が表示される。
名前:エフィー
職業:弓使い←
こんな感じ。俺は弓使いを選択する。
すると、画面が変わり、弓使いから変更可能な職業が並んでいた。
俺はその中でもエフィーに魔法を使ってもらうならば必要不可欠なジョブである魔法使いを選択する。
すると、『エフィー さんのジョブを魔法使い に変更します。よろしいですか? はいorいいえ』
とでた。今まで俺自身に使ってきた時にも出てきた。
俺は『はい』を選択する。
すると、『エフィー さんのジョブを魔法使い に変更しました』と表示された。
ステータスを確認してみる。
名前:エフィー
種族:ハーフエルフ族
身分:奴隷 所有者:カイト・タニモト
性別:女
職業:魔法使い
年齢:13歳
Lv.1
HP:42/27(+15)
MP:55/38(+17)
STR(筋力):19(+15)
DEF(防御力):16(+15)
INT(賢さ):41(+18)
AGI(素早さ):18(+15)
LUK(運):21(+5)
『火魔法素質解放』、『風魔法素質解放』、『水魔法素質解放』、
『治癒魔法素質解放』、『弓術』
よし、何とかなったか!
まあこっちについては話を聴いたときから何となくイケるかなとは思ってたが。
実際成功したところを見るとホッとすんな。
で、次からはまあダメ元なやつ。
パーティ恩恵(メンバー):このスキルの装備者がパーティーにいる時に
発動する。メンバーはリーダーの持つスキルのうち
一定のスキルの効果を享受することができるようになる。
これの効果で『トリプルジョブ』をメンバーに付与できないかなぁ?なんて……。
まぁそこまで期待はしていない。だってできてんならさぁ、俺みたいに
職業:1.剣士 2.魔導師 3.治癒術師
こういう風に1,2とか番号振ってないとおかしいだろ。
それに『パーティ恩恵(メンバー)』はいわゆるパッシブスキル。つまり意図して発動させるものではない。だから最初から効果が発動していなければそれは『トリプルジョブ』は対象外だということを意味する。
うん、だからエフィーに限らずシアの職業欄に1,2,3という番号が振ってない時点でこれはそもそも案として成り立っていなかったのだ。
職業:魔法使い←
そうそうこれこれ。だって番号無いよね?
普通あったらその隣に振ってあってそこに動かせるようになるよな?
職業:魔法使い ←
ああ、そうそう。こういう風に!
こういう……
あれ、なんでカーソル動くんだ?
そんなとこに選択するところはないぞ!?
とりあえず俺は空白を選択してみることにする。
すると、魔法使い以外でエフィーがなれるジョブが選択可能となっている。
どういうことだ、もしかしていけるのか、それともバグか!?
俺は治癒術師を選択してみる。
すると、『エフィー さんは治癒術師 のジョブにつきます。よろしいですか? はいorいいえ』と出る。
俺は『はい』を選択する。
選択後、『エフィー さんは治癒術師 のジョブにつきました』との表示が。
俺は直ぐにステータスを確認する。
名前:エフィー
種族:ハーフエルフ族
身分:奴隷 所有者:カイト・タニモト
性別:女
職業:1.魔法使い 2.治癒術師
年齢:13歳
となっていた。
嘘っ、イケたの?
えっ、何で!?
俺は急いでシアの職業にも同じことをしてみる。
すると、
名前:シア
人種:獣人族(狼)
身分:奴隷 所有者:カイト・タニモト
職業:1.戦士 2.治癒術師
性別:女
年齢:15歳
シアにも同じことをすることができた。
どういうことだ!?じゃあ3つ目もイケんのか?
俺はエフィーのステータス欄でそれを試してみることにする。
だが、2つ目の職業で
名前:エフィー
種族:ハーフエルフ族
身分:奴隷 所有者:カイト・タニモト
性別:女
職業:1.魔法使い 2.治癒術師←
年齢:13歳
この状態で止まってしまい、これ以上右にカーソルを動かすことができない。
なぜだろう?2つ目ができるなら3つ目ができてもおかしくないはずなんだが。
そこで俺は『パーティ恩恵(メンバー)』についてもう一度考えてみることにする。
パーティ恩恵(メンバー):このスキルの装備者がパーティーにいる時に
発動する。メンバーはリーダーの持つスキルのうち
一定のスキルの効果を享受することができるようになる。
パーティ恩恵(リーダー)がある場合、享受する効果が上昇する。
俺はこの説明について今まで能力値上昇系にしか当てはまらないものだと思っていた。
『効果を享受する』ということだから、『パーティ恩恵(リーダー)』のようにスキルそのままを使えるということではないはず。
エフィーの能力値を例にとる。
Lv.1
HP:42/27(+15)
MP:55/38(+17)
STR(筋力):19(+15)
DEF(防御力):16(+15)
INT(賢さ):41(+18)
AGI(素早さ):18(+15)
LUK(運):21(+5)
エフィーも『能力値中上昇』の効果を受けている。これは『パーティ恩恵(メンバー)』の効果だろう。
だが、パーティ恩恵(リーダー)がある場合、享受する効果が上昇する、と言う文言がある以上『能力値中上昇』の効果に上乗せされて効果が記載されているはず。
そして上乗せされた上昇値が俺の上昇値とほとんど変わらないと言うことは『パーティ恩恵(メンバー)』だけの効果は俺のスキルを1段階劣化した効果を与えているということになる。
つまりは、
何もなし→0
『パーティ恩恵(メンバー)』→1
『パーティ恩恵(メンバー)』+『パーティ恩恵(リーダー)』→2≒俺のスキル
ということになる。
とすると、
普通→1つのジョブ
『パーティ恩恵(メンバー)』→『ダブルジョブ』
『パーティ恩恵(メンバー)』+『パーティ恩恵(リーダー)』→『トリプルジョブ』≒俺のスキル
と言うことになるんじゃないのか?
だが、シアとエフィーには2つしかジョブをつけることができなかった。
いや、2つつけれるなら十分価値あることなんだが、ここでどうしてそうなったのかの原因を追究しないと今度同じようなことが起こった時にまた悩むことになる。
ふむ、どこの仮定が間違っているかの説明がまだできん。
最初から全部間違っているということもあり得るし、途中のどこかがおかしいということも考え得る。
ああ、くそっ行き詰った。
どうするかな、この後……。
「ご主人様ぁー」
「ご主人様」
俺が頭を抱えて悩んでいると、シアとエフィーが慌てた様子で庭に出てきて俺を呼ぶ。
「どうした、二人とも。どこかわからないところでもあったか?俺も算術なら教えてやれるぞ?」
「いえ、そうではなくてですね、私の職業が魔法使いに変わっていたのです!」
「それだけではないんです、私にもなぜか2つ目の職業がついていたんです!」
ああ、言うの忘れてた。
すっかり考え事に夢中になってたからな。
「すまん、それは俺が原因だ。本当ならできたらすぐに声をかけようと思っていたんだが、考え事をしていたらすっかり忘れてしまっていた。悪かったな」
「いえ、そんな。ご主人様のおかげで私はお母さんやお父さんと同じ魔法を使える可能性が開けたのです。これでもっとご主人様のお役に立つことができます。感謝してもしきれないくらいです」
「私の職業が増えたのもご主人様のお力なんですか……、流石ご主人様です!」
エフィーは何度も頭を下げて俺に礼を言ってくる。
シアはとりあえず俺を持ち上げている。
「うーん、とは言ってもまだ完全に俺の力かどうかがはっきりしないんだよな」
「それがご主人様が今お悩みになっていることですか?」
「ああ、まぁそうなんだが……」
「でしたらお話をお聞かせ下さりませんか?私のような奴隷でもお力になれるかもしれません」
「私もです。ご主人様のお役に立てるのでしたらどんなことでもいたします!」
エフィーとシアは俺の役に立とうと進み出てくれる。
「だがなぁ、今日は休日ってことにしたのに俺の話聞かせて一緒に考えてもらうのはなんだか気が引けるんだが……」
「そんなことを思い悩まれる必要はございません。ご主人様のお力になりたいのです!」
「私は難しいことはあまり考えられません。ですが、自分の苦手なことに挑戦することでご主人様のお役にたてるのでしたら私は喜んで考えさせていただきます」
「エフィー……シア……」
「ご主人様、お願いします」
「お願いします、ご主人様」
二人は必死に俺に頼んでくる。
ここまで言ってくれるんだったら話してみてもいいか。
俺一人だけじゃ気づかなかったことに気づいてくれるかもしれん。
三人寄れば、とも言うしな
「わかった、話すよ、二人の知恵を貸してくれ」
そう言うと二人はとても喜んでいた。
俺はどういう風にエフィーのジョブを変更したか、2つ目のジョブがなぜついたのか、そして今思考が行き詰ったスキルのことについて二人に話した。
シアは途中まで頑張ってついてきていたが俺が行き詰っていることを話し出した辺りからついていくのがやっとになっていった。
エフィーは俺の話を聴いて、時々質問してきたり、俺が話した内容をシアに要約していたりと、ちゃんと理解して自分なりにまとめられているようだった。
シアには俺のチートスキルについてそこそこ話していたが、エフィーに話すのは初めてだったのでどういう反応をされるのか少し心配だったが、少し驚いただけでちゃんと受け入れてくれたようだった。
そして、俺が考えている仮説を聴くと、エフィーは黙って考え始めた。
3分程してだろうか、エフィーは考えがまとまったようで話し始めた。
「私も恐らくとしか言えませんが、ご主人様の仮説で合っていると思います。私達の職業が2つまでしかつかなかった説明としましては、スキル間の価値の高低差を保つためと言えないでしょうか?」
「スキル間の価値の高低差?どういうことですか?」
シアがエフィーに尋ねる。
「えーっとですね、ご主人様の持つ『能力値中上昇』と『トリプルジョブ』はどちらもこの世界ではなかなか見かけないレアなスキルです。ですがどちらかというと『トリプルジョブ』の方が珍しいですよね?」
「……はい、そうですね。聴いたのも見たのもご主人様が初めてです」
「なのに『パーティ恩恵(メンバー)』と『パーティ恩恵(リーダー)』の効果で『トリプルジョブ』まで効果を受けられるとしたらスキルの価値バランスは一気に崩れるのではないでしょうか?ですから同じとは言わないまでも『能力値中上昇』と価値の近い『ダブルジョブ』止まりなのではないのですか?」
「……なるほど」
シアは納得しているようだ。
俺もある程度その説明には納得できた。でもバランスどうこうを無視するからのチートであって、その説明にはスキルのチートさを説明できる部分がない。
まぁ俺には思いつかなかった説明方法だ。
一つ他の説を聴くだけでも納得度は違ってくる。
どうせ今は完璧には説明しきれないんだ。
これで後から説明できる材料が増えたらこの説明に付け足すなりもう一度考え直せばいい。
とりあえずこんなところか。
「二人とも、ありがとう。おかげで頭の中が整理できそうだ」
「いえ、私はただご主人様とエフィーの話すところを聴いていることしかできませんでした」
「いいんだよ、適材適所っていうだろ?シアにはシアのいいところがあるんだ。そこで頑張ってくれればいいよ」
「ご主人様……、ありがとうございます!」
「私もご主人様のようにこの説明だけで完全に納得できたというわけではありませんからこれからも考えていきたいと思います」
「ああ、でもとりあえずは後回しでいいからな。今すぐどうこうしないとマズイってことでもないから。今後もエフィーの力を貸してくれ」
「はい、ご主人様!」
その後はエフィーと二人でシアの勉強を見たり、みんなで出かけたりして休日を過ごした。




