ほぅ、ここが次の町か。
すいません、私の欲望が滲み出てしまっているかもしれません。
生温かい目で見守って下さればうれしく思います。
俺たちは今、また次の町への道を歩いている。
シアについては結局経験値を全部解放した。
するとレベルは18まで上がった。
シアのスタイルは前衛で且つスピードとパワーで翻弄するものらしいので
それに合うように能力値を上げ、スキルを取得した。
その結果、
名前:シア
人種:獣人族(狼)
身分:奴隷 所有者:カイト・タニモト
職業:戦士
性別:女
年齢:15歳
Lv18
HP:97/79(+18)
MP:46/31(+15)
STR(筋力):60(+22)
DEF(防御力):35(+16)
INT(賢さ):20(+15)
AGI(素早さ):56(+20)
LUK(運):21(+5)
『経験値蓄積』、『ステータス鑑定(自己)』、『剣術』、『身体能力小上昇』
スキルポイント:12
という結果になった。
何か俺より強くね!?
とは言えやっぱりシアもエリート一族の一人なんだ。
本来のシアの強さがこれくらいなのだろう。
戦闘も格段に良くなった。
モンスターに後れを取ることも無くなり、
剣1本でも圧倒するようになってる。
本当に俺いらねぇんじゃねぇの?
冗談交じりにそんな軽口をシアに言ったら、
「私にはご主人様しかいません、
お願いです、そんなことおっしゃらないでください。」
と結構マジな雰囲気で目を潤ませながら言われた。
あ、耳と尻尾がペタンとなった。
「お、おう、すまんかった。」
と謝っておいた。
シアみたいなかわいい娘にそんなこと言ってもらえるのはめっちゃうれしいんだけど
あんまり俺に依存しすぎんのもなぁ。
まぁ、今はいっか。おいおい考えていけば。
俺たちはそれから順調に次の町への道程を消化していった。
そして、とうとう次の町に着いた。
だが、町に入るにはどうやら身元を証明しないといけないらしい。
町の入り口にその審査待ちの列ができている。
俺は最後尾に並ぶ。
全然進まん。
もう30分は待ったぞ!
まだまだ最前列が見えない。
暇だなぁ。
シアと他愛のない話でもしとくか。
そう思ってシアと話し始めて5分ほどしたころだろうか、
少し後ろで並んでる奴等がごちゃごちゃ言い出した。
「なんだよ、全然進まねぇじゃねぇか。」
「おかしいんじゃねぇのか、この列。」
「どうなってんだよ、おい、こら責任者出せ、責任者!」
うわー、チンピラだ。
関わりあいになりたくないな、
無視しよ、無視。
俺が気にせずシアとの話を続けようとすると、
チンピラは列から抜け出し、俺の少し前方にいる商人風の男に絡み始めた。
「おい、おっさん、ちょっと場所譲ってくんねぇかな?
俺ら急いでんだよねぇ、なぁいいだろ?」
「こ、困ります、私も忙しいのは同じなんです、
でもちゃんと並んで待ってるんです、ですから・・・。」
「あぁ!?ふざけてんのか?俺らが誰だか知ってて言ってんのか、おっさん。」
「ですから・・・・」
商人風の男も抵抗しようとしているがチンピラは強引に割り込もうとしてやめない。
ああやってちょっとずつ前の奴に絡んで前に行こうとしているんだろう。
本当にめんどくさい奴等だ。
別にちょっとくらい遅くなろうと、もうあんまり変わんないし俺はどうでもいいけど。
とりあえず俺に関わってこないようほっとこう。
そう思って無視を決め込んでいると、チンピラの一人が俺を見て、
何やらニヤニヤして近づいてきた。
嘘っ、俺何もしてないよ!?
絡んでくんな!
「おうおう、兄ちゃん、いい女連れてんじゃねぇの。
お前みたいな野郎には荷が重いだろう、俺たちが
もらってやるよ、ありがたく思えや!」
なんだ、シア目当てか、コイツ等。
お前等だって人のこと言える面か!
ゴブリンとチワワの悪いとこ足して2で掛けたような顔してるくせに!
シアはコイツ等の下卑た気持ち悪い顔を見て怯えながら俺の後ろに隠れる。
こういうところも小動物みたいでかわいいなぁ、シアは。
俺に絡んでこなければほっとこうと思ったが、
これ以上シアを怯えさせるのはかわいそうだ。
しゃあないな。
「申し訳ありませんがあなたたちのような下賤な輩にこの娘を渡すつもりはありません。
大人しく戻っていただけませんか?」
「あぁ?俺たちに意見するってのか?いい度胸してんじゃねぇか、
覚悟はできてんだろうな?」
「意見をするのに相手も何もないでしょう。これはマナーの問題です。
あなた方のような自分がバカとも知らずにのうのうと生きているような
人達に覚悟も度胸も必要ありません。」
「この野郎ぅ、よぉく分かったぜ、どうやら死にてぇようだな!
おい、お前等、このクソガキぶっ殺すぞ!」
「ああ、それでそこの女も奪っちまうぞ!」
「俺たちにケンカ売ったことたっぷり後悔させてやるよ。」
チンピラはそれぞれ思い思いに俺に暴言を吐いてくる。
そうやって挑発に簡単に乗るからバカだって言ってんのになぁ。
「それはそれはありがとうございます。
ですがバカの押し売りはお断りしていますので
お帰り願います。」
「こいつぅ、おい、やっちまえ!」
チンピラが一斉に襲い掛かってくる。
シアが心配そうに見つめてくる。
「ちょっと待ってろ、シア。
自分のご主人様を信用しな。」
と言ってシアの頭を撫でてやり、後ろに下がらせる。
「はい、お待ちしております、ご主人様。」
シアも俺の言葉を聞き下がる。
さて、この町のゴミ掃除にでも貢献しますか。
俺は鑑定でチンピラ3人のステータスを確認する。
どいつもこいつも雑魚ばっかだな。
こういう奴等ってどうして自分が強いと勘違いするんだろうね。
ああ、バカだからか。
それだけで説明できてしまうのもなんだかなぁ。
俺は切りかかってきた2人の攻撃をかわし、腹に蹴りを入れてやる。
「ぐほぇ!」
「ぶるふぇ!」
もう一人の奴はそれを見て一瞬ひるんで動きが止まる。
俺はその隙にそいつに走り寄り、グーで顔面に一発パンチをくれてやる。
「ぶぐはぁ!」
そしてリーダーっぽい奴の首に抜いた剣を突きつける。
そして一言。
「死にたくなかったら二度と汚ねぇ面俺の前に見せんな、
それができないんなら今すぐここで死ぬことになるが、
どうする?」
と俺なりにドスの利いた声を作ってチンピラ共に聞かせてやった。
すると、
「ひ、ひぇー、助けてくれぇー!」
「お、俺たちが悪かったー!」
「勘弁してくれぇー!」
と鼻水や垂らしてはいけない物まで垂らして一目散に逃げて行った。
ふぅ、終わったか。
そうして戻ろうとするといきなりの拍手喝采に見舞われた。
え、えっ?何、これ。
目立っちゃった!?
目立たないよう魔法使うのも控えたのに。
俺はどうもどうもと頭を下げつつシアの下に戻った。
「お待たせ、シア。」
「お帰りなさいませ、ご主人様。
とてもカッコよかったです!」
「そうか、まぁシアが他の人の物になるとしてもあれは嫌だったからな。
何とかなってよかったよ。」
「私はずっとご主人様だけの奴隷としてお仕えしたいです。
ですからどうかこれからもご主人様のお傍にいさせてください。
お願いします!」
「あ、いや、別に今すぐどうこうって話じゃないんだ。
ただこれから先シアがちゃんと一緒にいたいと思える人が現れるかもって・・・・」
「それこそそんな方ご主人様以外ありえません!どうか、どうか・・・・」
また涙目にさせてしまった!
手をグーにしながら体が震えている。
どうやら不安にさせてしまったようだ。
「俺が悪かった、すまん、シア。
そうだな、これからも一緒だよな。」
俺は慌ててフォローに入る。
そう言ってやると、シアの不安げな表情は去り、
パーッとシアの笑顔が咲く。
「はい、ずっと一緒です!」
シアは満足してくれたようだ。
それからもまた自分の順番が来るまでシアとおしゃべりしながら
待ち続け、3時間位待ってようやく俺たちの番が回ってきた。
「身元を確認できるものはあるか?」
と衛兵さんに聞かれる。
「すいません、私は冒険者なんですが、
水晶かなにかで確認していただくことはできますか?」
「ああ、わかった。ちょっと待ってろ。」
そう言って衛兵さんは詰所の中に戻って行って、
2分くらいで水晶を持って戻ってくる。
俺は偽装をシアにも使うのを忘れずにしてから、
水晶に手をかざす。
「・・・・・・・・・・よし、確認ができたぞ。
入って構わん。
・・・・ようこそ、ミュタルの町へ。」
俺たちは町の入り口をくぐって中へと入っていった。
ミュタルの町はリンカの町より約4倍の広さをほこり、
約7000人が住んでいて、内外からの人の出入りも激しい。
商業が盛んで店を構えるための税等で成り立っている。
その分あまり畜産等自然に関する産業には力を入れていないため
そこは多くを外からの輸入に頼っている。
入ってすぐに男の声が俺たちを呼び止めた。
「いやー、さっきはどうもありがとうございました。
おかげでケガもせずに済みましたし。
お礼を言わせてください。」
どうやらさっきの商人風の男のようだ。
「いえ、私は別に大したことはしていません。
ただ降りかかってくる火の粉を払いのけたにすぎません。」
「いえいえ、ご謙遜なさらずに。
並んでいた者は皆感謝していますよ。
私はこの町で奴隷商人をしています、
パヴロという者です。」
「はぁ、それはどうもご丁寧に、
私は冒険者をしています、
カイトと申します。
こっちは私の奴隷のシアです。」
シアはぺこりと頭を下げる。
「ほう、奴隷をお持ちで!
でしたら奴隷が必要になられた際はぜひ
うちへいらしてください。
お安くさせていただきますよ。」
ほう、安くしてくれるのか、それはありがたい。
「それはどうも、ですが今は手持ちがあまりありませんので
懐が温かくなったら伺わせていただきます。」
「はい、その際はよろしくお願いします。
うちは良質な奴隷をそろえておりますので。
では失礼します、カイト殿。」
と言って去っていく。
「ご主人様、この町で奴隷を買われるのですか?」
「うーん、今すぐってことはないけど、お金がたまって
なお且ついい人材がいたら買いたいかな。
まっ、とりあえずそれは置いとこう。先ずは宿を探そうか。」
「はい!」
俺たちはそうしてミュタルの町を探索しつつその日の宿を探した。
ここの町の宿は一泊二日朝夕食事つきで100ピンスが相場らしい。
幾つか回ってみたが大体そこらへんで落ち着いている。
ただ、俺たちが最後に見つけたところは一泊二日朝夕食事つきで80ピンス。
最もここはお湯がついていない。
その代わりと言っては何だが大きな浴槽がついていた。
普通の客からしたらそんなもんいらないからお湯を付けてほしいと思うだろう。
だが俺としてはお湯は魔法で作れるし、何より他より安くて
お風呂に入れるとなると、もう文句つけようがなかった。
俺は2週間分払い、シアと共に部屋へ向かう。
部屋の大きさ自体はリンカの町のものと大差ないが、
何よりちゃんと浴槽がある。
何でも昔ここらで貴族が大勢滞在したときにもしかしたら
ここにも来るんじゃね?と思って浴槽を全部屋に設置した時の
物らしい。
結局一人もここに足を運ぶものはいなかったが
他よりも安く価格を設定しているため一般客の利用はそこそこあるから
撤去しなくても済んでるらしい。
俺にとっては沿革などどうでもよく、あることが重要なのだ。
「やったぞ、シア、風呂だぞ風呂。風呂に入れるぞ!」
俺は一人で子供の様にはしゃいでいる。
すると、
「ご主人様、お風呂とはどういうものなのですか?」
と言われた。
風呂に入る習慣は無くても概念自体は知ってると思ってたんだがな。
そうか、知らんのか。
「風呂っていうのはな、体を綺麗にするためにあるもので、
入るととっても気持ち良くなるんだぞ。」
「そうなんですか?よくわかりませんが、気持ちいいものなんですね?」
「ああ、何だったら使い方を教えてやろう。シアにも風呂の良さを
知って欲しいからな!」
「いいんですか、奴隷の私なんかに・・・・」
「いいんだよ、そんなことで遠慮なんてすることないんだぞ。」
「・・・・はい、わかりました。
でもとっても楽しみです。ご主人様と一緒にお風呂というものに入って
使い方を教えていただけるなんて。よろしくお願いしますね、ご主人様!」
うん?あれ、なんだか一緒に入ることになってる!?
うそーん、俺はてっきり入り方のレクチャーだけして
一人ずつ入る意味で言ってたんだけど。
一緒に入ることは俺としてはものすごーくうれしいことではあるんだが
如何せん心の準備が・・・・
「あのな、シア、俺としては一人で入るってことを
意図してだな・・・・」
「やっぱり、私のような奴隷では駄目なんですよね・・・・。」
あぁーもう、わかったよ、入ればいいんだろ、一緒に!
「いやいや、うそうそ、入る、入るよ、一緒に!」
「わぁー、嬉しいです、ご主人様と一緒に・・・・」
もう知らん、後は風呂に入る時の俺に任せた!
こんな展開でいいんでしょうか?
かなり不安です。




