これからどうするかなぁ・・・。
第2章の始まりです。
とりあえず前話の続きに位置します。
リンカの町を出て2日が経った。
俺たちはリンカの町から一番近い町を目指している。
今はその道中というわけだ。
途中会った行商人に話を聞くと徒歩だと後3日かかるらしい。
だがあともう少し行けば旅の者用に運営されている小屋があるとか。
とりあえず俺たちはそこを目指すことにする。
ここまで来るのに、何度かモンスターと戦闘になった。
ライルさんとのパーティーは依頼が終わった後に
一度俺から解散していたので、
シアとパーティーを組むことはできたが、
一つ、問題が起きた。
戦闘に関してはシアは、慣れているらしく
素早い動きを見せ、相手を翻弄していたので
何も言うことはなかった。
だがどれだけ倒してもレベルが上がらない。
俺は2上がったのだからレベルの低いシアが上がらないのは
おかしい。
大体の見当はついているが、今ここで考察するのは避ける。
というのもいつモンスターが出てくるか分からないのだ。
この先にある小屋についてから考えよう。
シアの顔は晴れない。
レベルのことを気にしているらしい。
「シア、とりあえずは小屋を目指そう。
考えるのはそれからにしよう、な?」
「・・・・はい、ありがとうございます。」
うぅむ、やはりまだ落ち込んだままだ。
とはいっても戦闘ではちゃんと切り替えはできているようで、
ミスなどは今のところ出ていない。
だが、ここらへんのモンスターはレベル1には少し厳しいらしい。
対応自体はできているが、相手へのダメージがなかなか通らない。
シアの武器は少し特殊で、二刀流なんだとか。
大きくない剣であれば大抵は使えるらしい。
しかし生憎と俺の手持ちにシアが使えるような剣が1本しかなかった。
だからそれを使ってもらってる。
やはり1本では実力が発揮できないのか・・・。
また、相手の攻撃も結構避けてはいるのだが、当たると大きな
ダメージとなる。
やはり早急に対処した方がいいか・・・・。
それから2度戦闘になったが、2度目の戦闘で
シアは1度相手の攻撃回避をし損ね、
背中に大きな一撃をもらった。
一瞬ひやりとしたがその後、
立て直してすぐに迎撃した。
「シア、無事か!?」
俺は慌ててシアに駆け寄る。
「大丈夫です、ただちょっと
攻撃を受けてしまっただけです。
問題ありません。」
だがそう返すシアの言葉にあまり元気が感じられない。
俺はシアのステータスを確認する。
すると、HPが11となっていて、毒状態になっていた。
なぜ今まで気づかなかった!
ただ単にレベルのことだけを心配していたのではなく、
毒が回っていたんだ、だから元気がないように見えたんだ!
くそっ、シアのことを見ていたくせに全く見えてない。
自分が嫌になる。
「シア、何で今まで黙ってたんだ!
自分のステータス位わかるだろ!」
俺はシアに治癒魔法をかけながら声を荒げる。
ああ、今度はシアに責任転嫁か。
何なんだ、一体。
自分が分からなくなってくる。
「申し訳、ありません、ご主人様。
ご主人様に、ご迷惑を、おかけすると、
思って。」
とてもつらそうにそう話すシア。
そうだ、今はまずシアの毒を何とかしないと。
「言ってくれない方が俺にとって迷惑だ。
今から解毒する、もう少し辛抱してくれ!」
不幸なことに今手元に解毒薬が無い。
となると小屋に解毒薬があることに賭けるか?
いや、それではあまりにリスクが大きい。
やはり俺自身が魔法でなんとかするしかない!
俺はシアにかけている治癒魔法の性質を
変えるイメージを作る。
シアの中にある毒と戦う細胞を増幅させる。
何が解毒に利く物質だったかは覚えてない。
だがそれっぽいと思える物質は幾つかある。
とりあえずは毒を消せればいいんだ。
中和させるもよし、
細胞に食わせるもよし、
取り除くもよし。
何でもやってとりあえず成功させないとシアが危ない。
これも結局は俺頼みになって危険なことに
変わりはない。
だが自分がやる方が俺としては安心できる。
他人任せにしなくて済むしな。
結局解毒開始後、3分後にようやく成功した。
その間も減り続けるHPを回復しながらの
解毒だったのでMPの減りはとても速かった。
途中MPポーションを2本も飲んだ。
シアのHPが全快するまで治癒魔法をかける。
シアの表情がだいぶ良くなった。
「申し訳ありませんでした。
ご主人様にご迷惑をおかけして・・・、」
シアは尚も俺に謝罪してくる。
俺の不注意が招いたことなのに・・・。
「シア、今回のは俺がシアのことを気にしてあげられてなかったことが原因だ。
だから、そこまで自分を責めなくていい。」
「ですが・・・、」
「じゃあ、お互いが今後はこういうことが起こらないよう
注意しよう。俺はシアのことをもっと気に掛ける。
シアは何か異常が起きたらすぐに俺に知らせる。
これでいいでしょ?」
妥協案を提示する。
「・・・・、その、ご主人様。
大変申し上げにくいことなんですが・・・」
うん?あれじゃ駄目なのか?
言いにくいということは俺の案に反対ということか・・・。
「そうか、言いにくいことなら言わなくていいよ。
まあシアができる範囲で頑張ってくれればいいから。」
「決して申し上げれないことではないんです。
ですが、少々長い話になります。」
俺はこれで終わり、という意味で言ったんだが
シアにとってはまだ終わりではないらしい。
「そうか、長くなりそうなら小屋についてから話そう。
今後のことや今日の反省会も含めて。」
「はい、わかりました。」
それで納得したらしい。
それにしてもどういうことだろう。
自分のステータスを話すことがそんなに嫌なのか?
俺からは丸見えなのにな。
・・・・とか言ってるから今回みたいなことになるんだ。
まあシアも話してくれるみたいだしとりあえず小屋を目指そう。
10分ほど歩いて、件の小屋にたどり着いた。
小屋というだけあってかなり部屋は狭い。
俺たちは夕食をとって、部屋に戻る。
「じゃあ、シア、話してくれるか?」
「・・・・、」
「シア?」
「・・・・その、私、」
シアの体が震えている。
何かこれから話すことにトラウマでもあるのか?
「シア、本当に無理して話す必要はないんだぞ?」
「いえ、でも、その・・・、」
「・・・・前にね、ライルさんが俺に言ってくれたことがあるんだ。
俺が誰であろうが今まで接してきた俺が嘘になるわけではないって。
俺とシアとの付き合いもさ、言うほど長いわけじゃないけど、
シアにどんな過去があろうとそれで俺と接してきたシアが変わるわけじゃないんだ。
だから俺はどんなことを話されても受け入れるし、シアが話したくないんだったら
それでもいいと思う。だからシアがしたい方を選べばいいんだよ?」
シアは俺の言葉を聞くと顔に手をあて泣き出した。
嘘っ、またなんかやらかしたのか!?
俺は慌ててシアを慰めにかかる。
「悪かった、シア。泣くほどつらい言葉を言ったつもりはなかったんだが・・・・。」
「いえ、いえ、ぐすっ、違うん、ぐすっ、です。
私・・・・」
ああ、ダメだ。
俺に美女を宥める技能はない。
とりあえず背中でもさすってやるか。
・・・・いやらしいことは考えてないぞ!
それからシアが泣き止むのに10分くらいかかった。
そして、泣き止んだ後ようやくぽつぽつとではあるが話し始めてくれた。




