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ライルさん、あなたって人は・・・。

俺達はライルさん達と合流する。

ライルさん達は俺達に気づくと駆けてきた。


「カイト!無事だったか。

良かったぁ、救出も成功したんだな。

本当によかったぁ。」

「ライルさん、ご心配をおかけしました。

彼女をご覧の通り救出は成功しました。

お頭は排除しましたし、

心配事はもうないはずです。

とりあえずは脱出したいのですが。

みなさん大丈夫ですか?

我慢をせずにおっしゃって下さいね。

ここで無理をしても後で辛くなるだけですから。

それよりもきちんと状況を把握して

無理のない計画を立てて脱出した方が絶対安全です。」


俺はライルさんの傍にいる女性たちにも話を振る。


「カイトの言う通りだ。皆、きちんと自分の体調を申告してほしい。

安心してくれ。置いてったりなんかしない、最後まできちんと面倒見るから。」


やっぱりライルさんはイケメンだなぁ。

こういうことをさらりと言っちゃうんだもん。


彼女たちはライルさんに任せよう。

「シア、シアは大丈夫か?体調で何か気になることはないか?」


俺はシアに話しかける。

「いえ、私は大丈夫です。

心配してくださってありがとうございます、

ご主人様。」


と俺に笑顔を向けるシア。

ほんとにいちいちかわいいなぁ、シアは。


「わかった、でもおかしなとこが出たらすぐに言うんだぞ?」

「はい、わかりました。」


俺は念のためシアを鑑定しておく。


名前:シア

人種:獣人族(狼)

身分:奴隷 所有者:カイト・タニモト

職業:戦士

性別:女

年齢:15歳



Lv.1

HP:34/55

MP:25/25

STR(筋力):38

DEF(防御力):27

INT(賢さ):17

AGI(素早さ):32

LUK(運):21



『経験値蓄積』



とりあえずは大丈夫みたいだ。

しかしレベル1にしてはかなり強い方だよな?

すごいな、シアは。


これだけの優れた容姿に高い能力値。

どこへ出しても恥ずかしくない立派なものだ。

それに比べてその主人の俺はどこへ出してもこっ恥ずかしい

ただのボッチ。

なんかシアに申し訳ないなぁ。


スキルがあるようだが、これまたレベル1にしては珍しい。

『経験値蓄積』か。

あんまり見ないものだよなぁ。

どうやって手に入れたのだろう?



俺がシアのスキルについて考察しようとすると、

ライルさんから声がかかり、思考が中断される。

細かいことは帰ってからでいいか。

今は脱出のことだけに集中しよう。


「カイト、こっちは皆体力が落ちているようだが町までは何とか

なりそうだ。休憩を何度か挟めば問題なくつけると思うぞ。

そっちは?」

「こっちは大丈夫です。体力的にも問題ないでしょう。

彼女たちのペースで考えて下さって構いません。」

「わかった。とりあえずは

出発して2時間置きぐらいに休憩を挟む。

彼女たちの様子次第では休憩の回数を増やす。

そんなところでいいか?」

「はい、それで大丈夫だと思います。

出発しても大丈夫ですか?」

「ああ。・・・皆、それじゃあ出発しようか。」


ライルさんの言葉を号令に彼女たちは歩き出す。

俺とシアもそれについていく。


基本ライルさんが先頭で彼女達がそれに続き、シア、俺という陣形で進んでいる。

ライルさんが先頭の方が彼女たちの士気も上がるだろう。

まあよほどのことでもない限りはこの陣形を崩さずに進むことになる。

俺の殿という役割も重要だ、気が抜けんな。




ライルさんが穴を開けたところまで戻ってきた。

俺を最後にその入り口が再び閉じた。

それを確認し、ライルさんが進みだそうとしたその時、

不意にどこかから声がかかった。



「いやー、見事だ、ライル。

まさか盗賊を退治してしまうなんて。

それだけに飽き足らず、捕まっていた女性達も救い出したのか。

流石だよ、ライルはリンカの町の誇りだ。」


突如として聞こえてきた声の主は

ライルさんの前方より姿を現した。

一応生活魔法を利用した明かりはあるが

誰であるかは判断できない。


「お前は・・・・ケインか!

どうしてお前がここにいるんだ、

お前は確かまだ服役中だったはずじゃ!?」


ライルさんはかなり驚いている様子だ。

それにしても相手のケインとやらは本来服役中の身らしい。

確かにおかしな話だ。


「いやぁ、あることで恩赦をもらってね。

だからまずはライルに挨拶しないとと思ってね。」


俺はそのことを聞き少し嫌な予感がしてきたので

口を挟むことにする。


「お話し中に申し訳ありません。

もしかして盗賊のアジトについての情報を提供したのはあなたですか?」


俺が話すとケインと呼ばれた男は俺の方を向いて驚いた顔をした。


「ほう、お前よくわかったな。

どうして俺が情報の提供者だとわかった?」

「まず私たちがここにいるということはギルド長以外知っている人はほとんどいません。

まして最近まで服役中だったというあなたが私たちの、

特にライルさんの場所を知っているはずがないのです。

であるのにあなたはここにいて、ライルさんが盗賊に関する依頼を

受けていることを知っている。

どうやって依頼を受けたのが私達だとわかったのかまではわかりませんが

それに当てはまるのは情報提供者を置いてほかに考えられません。」


男は今度は感心したような顔を浮かべる。


「ほおぅ、なかなかおもしろい奴だな。

やっぱりライルの周りにはいろんな奴が集まるんだなぁ。」

「それで、情報提供者であるお前がどうしてここにいるんだ?」

「だから言ったろ?ライルに挨拶をしに来ただけだって。」

「ライルさん、ちょっといいですか?

この人はどうして服役していたんですか?」

俺は会話に割り込む。

さっきから嫌な予感がしてならない。

「それはな、カイト。

コイツが俺のことを逆恨みして殺そうとしたのを返り討ちにしてやったんだ。

こいつはギルド職員でありながらそんなことをしたんだ。

捕まって当然さ!」

とライルさんは言う。


あんまりこういうライルさんは見たことが無いな。

まぁ自分を殺そうとした相手なんだ、怒って当然っちゃあ当然なんだが。


だが、ライルさんの言葉を聞くと、男は途端に怒り出した。


「逆恨みだとぅ?ふざけんな!

ライル、よくもそんなことを言えたな、

俺の女に手を出しておいて!」

「あれは別にやましいことでもなんでもない!

それにあの娘はお前の女でもなかったじゃないか!」

「うるさい!お前の言い訳は聞き飽きた。

・・・この日をどれだけ待ち望んだことか。

俺にはたっぷり時間があったからな。

獄中で計画を練りに練った。

もともとこの盗賊団の頭とは知り合いだったからアジトを知ることは

造作もなかった。

獄中からでも俺の息のかかったギルド職員にもいろいろ手を回した。

お前がこの依頼を受けるように根回しも怠らなかった。

本来の計画なら盗賊に殺してもらって俺は手を汚さないはずだったんだがな。

だが今、ようやく俺の悲願が達成される!

フッハハハハ!!

やったぞ、俺はようやく成し遂げるんだ!」


駄目だコイツ・・・早くなんとかしないと。






それにしても、

やっぱり痴情のもつれかーーーーー!

ライルさん、ちゃんと色々管理しとかないからこんなことになるんですよ。

もうこういう展開嫌!



だが、これでいろいろなことが繋がった。

最初どうして俺たちにこの依頼をさせたのか疑問だった。

しかしコイツが言うことが正しければ俺が腑に落ちなかった全ての点に

説明がつく。



コイツが黒幕だとしても全部わかってしまえばどうということもない。


人はお化けや超常現象等、説明のつかないものを

畏怖の対象とする傾向がある。

逆に言えば説明さえつけば本来は怖くはなくなるというのが

道理なのだが・・・。

実際にお化けについて説明がついてとしても

恐らくはお化けを恐れなくなる、ということにはならないだろう。

最早説明の有無に関係がなくお化けは怖いものと、

ある程度刷り込まれてしまっているのだと、俺は思うのだ。


少し話が逸れたが、殊今回に限っては説明がついてしまったので恐れることはない。

戦闘においても過去にライルさんが返り討ちにしたというし。


「ライルさん、私がやります。

ライルさんは彼女たちを守って下さい。

シア、ライルさんから離れるんじゃないぞ。」


シアは俺の言葉を聞いて「かしこまりました。お気を付け下さい、ご主人様。」

と返してくる。

「ああ、わかってる。」

俺はケインへと剣を抜きながら近づいていく。

「カイト?これは俺が原因なんだ。

俺が行くのが筋だろう!?」

「ライルさん、最早ここまで来たらライルさんだけの問題とはいきません。

彼女達やシアのことよろしくお願いします。」

「カイト、だが・・・」

「今後はこういうことが起きないよう気を付けていただければそれで十分です。

それでも納得できないようでしたら、そうですねぇ・・・、私が困っていたら

同じように助けて下さい。」

「そんなの、そんなの当たり前じゃないか!俺達親友だろ!?」

「そうです、当たり前のことなんです。

ですから今回も私はただ困っている親友を助けるだけです。

なのでライルさんも私が困っていたら助けて下さいね?」

「カイト・・・・。当たり前だ!

カイトが困っていたら絶対に一番に駆けつけてやる、約束だ!」

「その言葉を聞けただけで十分です。・・・・・・では、行ってきます。」

「ああ、カイト、頼んだぞ!

彼女たちのことは絶対に俺が守る。安心しろ!」

「はい、よろしくお願いします。」


俺はそう言って奴と向き合う。

よく今まで待ってくれたな。

と、奴を見ると本格的におかしくなっていた。


「ふへへへへへ、これで、ライルが、あいつを、

俺が・・・・・・・」



駄目だな。

もういいや。

切っちゃえ!


俺は奴に切りかかる。

奴はそれをかわし、袖下から何かを出して応戦してくる。

苦無クナイか!?


いや、形状は似ているものの、俺の知っている苦無とは異なっている。

先が短くなっている。鋭利さもあまりない。

苦無の劣化版というか、ただ隠すことに特化したもののようだ。


俺は手数の差では敵わないと悟り、

距離を取ろうとする。

奴はそれを許そうとせず詰めようとしてくる。


MPはあまりない。

手は限られている。

奴の武器が隠すのに特化したものなら他にも何か

隠しているかも。

暗器使いというやつかもしれん。


それらを出される前に仕留める。


俺は残っているMP全部を使って風魔法で十字の刃を作って放つ。

「スラストウィンド・クロスッ!!」


奴は魔法が発動されると少し驚いて体が硬直した。

その後我に返り、避けれないと判断したのかその場で立ち止まり、両腕で顔を守ろうとする。

その際、懐からまた何か取り出したようだが俺は気にせず

突っ込む。

ゲームだと魔法後は硬直したりするから動けないが、

俺はなんか動けてる。

恐らくは魔法の後に間隔を開けずまた魔法を使おうとするとそうなるのかな?

それとも無詠唱のスキルにそういったものも含まれてるのか・・・。

どっちでもいい。

今は俺が動けるということが重要だ。


俺は魔法がやつを襲った後間髪入れず斜め下から切り上げた。


「でぇりゃぁ!」


その一撃で奴は倒れこんだ。


だが、倒れこむといきなり笑い出した。


「ふふふ、ふふ、ゴフッ、ふ、ふふ。

これで、お前、達も、道、

連れだ。」


そういうと奴は血を吐き、また笑い出す。


「おい、道連れってどういうことだ?」


俺は奴の襟を締め上げ言葉を促す。


「ふふ、俺、が死ね、ば、この洞窟、は、

崩れ、落ち、るように、なってる。」


そしてまた吐血する。


「皆、お、わりだ、俺と、いっ、しょに、死ね!」


俺はそこまで聞いて奴を放ってライルさんの下へ向かう。


「話はお分かりでしょう。今すぐここから脱出します。

皆さん走って下さい!」

「わかった!皆、急げ、ここから脱出するんだ!」



ライルさんの言葉とともに全員が走り出した。









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