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俺は人を殺したのか・・・・。

俺は全員が死んでいることを確認してから迷わず吐いた。

今まで我慢してた分かなり激しく吐いた。



もうこれ以上は吐くものが無いというところまで吐いて、俺は生活魔法で口をゆすぐ。


体自体はずいぶん楽にはなったが心の方はかなりひどい。

初めて人を殺した。

必要だった、ここではそれが当たり前、そんな慰めを自分にかけてやるも

ほとんど効果は出なかった。


だがこんな姿を戻ってきたライルさんに見せては心配させるに違いない。

なんとか少しでもマシな顔にならなくては。




俺はとりあえず色んな自分のうれしかった思い出や大好きな歌なんかを思い出して

気を紛らわそうとした。


「ふんふんふふん♪」


歌については好きなアーティストや好きな曲が人並にあったため効果があったが

うれしかった思い出というのがなかなか思いつかなかった。


いや、人を殺した後だから気が動転してる、とかじゃなくてほんとに思い出せん。

最近のならライルさんに出会えたことがあるんだが・・・。


あっ、モンスターボー〇で伝説のポケモ〇捕まえたことがあった!

あっあれは?小学生が進〇の巨人ごっこしてる時に

エ〇ァの初号機のマネして乱入したらウケたこともあったな!

そうだ、学校行ったら靴に画びょう入ってなかった日があったんだ、

あれは嬉しかったなぁ!

・・・・・なんか虚しくなってきた。

俺のうれしかった思い出って地味だな。


えっ、幼馴染とのキャッキャウフフな真っピンクな思い出?


・・・・・、それはほらっ、ええっと、もういいじゃん!



ほら、俺もう大丈夫だし。



10分位休憩していた。

あまり死体がいる場で休憩ってのもどうかと思うが

下手に動いてしまってもかえってお頭と遭遇する可能性だってある。


ここはライルさんと合流するまで待って体力を回復させるのが先だな。

さっきのでMPも残り4分の1になってる。


あっ、レベル上がってる。


18になってた。

人でも経験値入んだな。

ま、一人で20人も倒せばこれくらい当然か。


俺はとりあえずMPを重視し、後は均等に振っておくことにした。



Lv.18

HP:83/69(+21)

MP:32/68(+18)

STR(筋力):36(+30)

DEF(防御力):32(+23)

INT(賢さ):36(+17)

AGI(素早さ):36(+22)

LUK(運):1(+5)



うん?ちょっと能力値中上昇の上昇値が上がってる?

微妙にだがHPとMPの値が。

能力値が高くなれば少しだが上昇値が補正されるのか?

STR、DEF、AGIはライルさんのスキルの効果を受けたんだろう。

だがライルさんのスキルにHP、MPを上昇させるスキルはなかったはず。


今のとこは確かなことはわからん。

細かい考察は帰ってからにしよう。


俺は返り血をできるだけ生活魔法で洗い、手ぬぐいで拭いていく。

全部は拭いきれないな。まああれだけの返り血を浴びたんだ、仕方ない。

後は宿に戻ってからだな。


俺は盗賊の死体を漁る。何人かは特に何も気になるような物は持っていなかった。

だが10人目になって俺の目に留まる物を持ってるやつがいた。

見た目からしてかなりの良品が3本。


鑑定してみる。



上級ポーション:ポーションの上級版。

大けがや大病と言われる傷・病もこれを飲むだけで治る。

調合には高級の材料を複数必要とする。


ほう、上級ポーションを3つも。

高級で貴族とかしか手が出ないアイテムだ。

買えば一財産するものだ。


恐らく盗んだものだろう。


この世界では盗賊を倒せばその盗品は倒した人の物にしていい。

だからこれは3つとも俺の物ということになる。

俺はアイテムボックスにそれらをしまう。


他の奴を漁ったが目ぼしいものは出てこなかった。

まあ上級ポーション3つでも上出来か。




そうこうしているとライルさんが女性を4人引き連れて戻ってきた。

ライルさんの服はところどころ破けていた。


女性達は俺を目にするとみんな顔が歪んでライルさんの後ろに隠れるようにする。

「大丈夫だ、彼はカイト。今回の協力者でもあり、俺の親友だ。安心してくれていい。」

その言葉を聞き、彼女達はホッとしたようだ。

「ライルさん、お疲れ様です。

無事救出できたようですね。」


彼女達に目をやる。

服装はとても簡素ものでただのなんの意匠も施されていない

薄汚れた布一枚を着ているだけだった。

ただ彼女たちの表情は少し疲れた感じはあったが

皆一様に生気がある。


ライルさんが救出に向かったことが功を奏したようだ。


「ああ、だがカイト、これは一体・・・。」

ライルさんは周りの惨状を目にし少し困った表情を浮かべる。


「私も少し驚いてしまいました。

ライルさんが動きやすいようただ引き付けるだけのつもりだったんですが・・・。」


ライルさんは俺の表情を読み取って、苦しそうな顔をする。

「カイトに辛いことをさせてしまったんだな。

すまない。カイトの故郷のことについては聞いていたのに・・・。」

「いいんですよ、ライルさんが気にすることはありません。

この世界で生きていく以上遅かれ早かれは経験することだったんですから。」

「でもな・・・、」

ライルさんはまだ食い下がろうとする。


早いこと立ち直らないからライルさんにこんな顔をさせることになるんだ・・・。


「ところで、服が少し乱れているようですが、

お頭と戦闘があったんですか?」

この話はこれで終わりというように話を切り替える。

ライルさんは納得していない様子だがここにとどまり続けるのもあまりよくないと

判断したのか話に乗ってくれる。


「いや、お頭には遭遇していない。

牢屋を見張っていた奴らがいてな。

そいつらと戦闘になった。

カイトがお頭をやったんじゃないのか?」


ここのほかにもまだ手下がいたのか!

ぬかった。

だがそれだとおかしいことになる。

「私が相手にしたのは子分だけです。

それにライルさんも知っているはずです、

お頭が牢屋に向かったということを。

ライルさんも遭遇していないとなるとお頭はどこかに消えたことになりますが・・・。

彼女たちはお頭に遭遇してないんですか?」

俺は彼女たちに目をやる。

小さな声でヒッ、と声をあげられる。

これは特別俺が怖いということではなく、

男性に対して恐怖感があるんだろう、

そう思いたい・・・。


「あの・・・、」

と女性の一人が話し出そうとする。

だがまだ話すかどうか迷っているようだ。

「どんな些細なことでもかまいません。話していただけますか?

このままでは大きな心配材料を残して脱出に入ることになります。

できれば後顧の憂いは断っておきたいのです。」


俺がそう言うと、彼女は決心して、ぽつぽつと話し出した。


「あの、実は牢屋というのはここには二つあるんです。

私たちが捕まっていたのは1つ目にあたるところで、

4人が収容人数の限界となっていましたので2つ目が作られることになったんです。

しばらくは前に捕まった娘が自害して以来使われてませんでしたが、

もしかしたらその2つ目に・・・、」


お前最初っからそれライルさんに伝えとけよ!

と口に出しそうになるもそれを飲み込む。

言っても彼女たちを威迫するだけだ。


「とすると、あなた達は今日連れてこられた娘と会っていないのですね?」

「えっ、また誰か連れてこられてたんですか?

・・・すいません、今初めて知りました。」

「いや、気にしないでください。そうすると・・・、」


また面倒なことに。

まだ一人捕まってる娘が残ってる可能性が出てきた。

しかも今現在お頭と二人っきりでいる可能性が非常に高い。


ここまで来たんだ。その娘も助け出すことに異論はない。

だがもう一度ライルさんに向かわせるのは・・・。


「ライルさん、私が今回は救出に向かいます。

もう恐らくは手下は残っていないでしょうし、

ここで待っていていただくか、

先に脱出していただくかしても大丈夫だと思うのですが。

私としましては先に脱出していただいて少しでも彼女達の安全を

優先したいのですが・・・。」

「カイトが行くのか!?・・・もうカイトに辛い思いをさせたくはない。

俺が行く。」

「ライルさん、彼女たちはライルさんを信じてついてきたんです。

彼女達を私に任せるつもりですか?

ライルさんが私を信頼してくださることと

彼女達がライルさんの信用する人を

信用できるかといったらそれはまた話が違ってきます。

それともライルさんは彼女達をつれたまま救出に向かうつもりですか?」


彼女たちも心配そうにライルさんを見ている。

「カイト・・・。」

「ライルさんは彼女達の傍にいてあげてください。

大丈夫です、ちゃんと捕まってる娘も救出して戻ってきますから。」

「・・・わかった、すまない。いつもカイトには無理をさせてしまう・・・。」

「いいんですよ、こういうのは適材適所です。

ライルさん、先に脱出してください。後で追いかけますから。」

なんかちょっと死亡フラグっぽい。

殿しんがりは俺が務めるから構わず先にいけ!!みたいな。


「・・・いや、俺はここで待つ。これだけは譲らんぞ!」

「強情な!いいですか、ここはまだ・・・」

「ここにはもう手下は残ってないんだろう?

それに最後のお頭もカイトが向かうところにいる可能性が極めて高いんだ。

だったらここに残ってても大丈夫じゃないか。」

「しかしですね・・・、」

「大丈夫、ちゃんと彼女達の安全を優先する。

危ないと判断したら絶対脱出するから。」


この人は、もう~。


「・・・わかりました。ちゃんと危なかったら逃げてくださいね。」

「わかってる。だからカイトもちゃんと成功させろよ!」

「ええ、任せてください。

それで、2つ目の牢屋はどこにあるんですか?」

俺は彼女達の一人に話を振る。


「はい、ここからまっすぐ行って、突き当りを右に、そのまま進むと扉があってその先の階段を

降りると2つ目の牢屋になっていたはずです。」

「わかりました、ありがとうございます。では行ってきます。」

「ああ、任せたぞ、カイト!」



俺はライルさんに送り出されて救出に向かうのだった。

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