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やっぱりここがアジトだったのか!

なんかこうさ、虚しくなってくるよね。

俺の努力ってなんだったの!?って感じで。


もうライルさんのボケは今後

気にしないようにしないと俺の心が持たん。



どうやら人がもたれかかったら開く構造になっていたらしい。

俺たちが穴に入ると入り口が再び閉じる。

なるほど、魔法か何かで入った後閉じるように設定してあるんだな。

一度戻れるか試してみたが、同じようにもたれかかったら、ドスンッ、

という音とともに入り口が開いた。

よし、戻れることが確認できた。

進むとしようか。


ライルさんの開けた穴は階段になっていて奥に続いていた。

俺たちは下に進むことにする。



3分ほどずっと降りて行く。今度はちゃんとした木製の扉があった。

ライルさんの意思を確認する。


「ライルさん、この先に奴等がいればすぐに戦闘になってしまうかもしれません。

大丈夫ですか?」

ライルさんは力強く頷く。


「ああ、戦闘の準備もちゃんとできてる。いつでも行けるぞ!」

と、腰に差してある剣と背中にある斧を手に持つ動作を俺に見せ、

大丈夫であることをアピールする。


「わかりました。では行きましょう!」


俺は扉を慎重に、音を立たせないよう開けた。



中は明るさと広さにおいて、洞窟の中にある空間だとはとても思えないものだった。

ここで生活しているといわれても否定できない程度には物もちらほら見受けられる。


男のものだと思われる笑い声が聞こえてきた。

やはりここを拠点にしているのか。

俺たちは近くにあった岩に身を隠す。


なにか盛り上がっている様子。話し声が聞こえてきた。

俺は神経を研ぎ澄ませ会話を聞くのに集中する。



「がははは、やりましたねお頭!今回は大量ですわぁ。

前回はお頭がいなかったからあんまり振るいませんでしたからねぇ。

やっぱりお頭がいねぇと始まりませんぜ!」

「お頭の腕はそんじょそこらの細いごぼう野郎とは違ぇんだよ!」


この世界にはごぼうは存在しないのでそれに近い食べ物で例えているんだろう。


「そうでさぁ、俺たちお頭に一生ついていきます!」

「そうは言うがな、お前ら。俺がいなくてもある程度安定して稼げるようにならねえと

俺も安心して隠居できやしねぇじゃねえか。もうちっとしっかりしてくれや!」

「でも、俺たち、お頭がいねぇとてんで駄目なんです!簡単なことですら失敗してしまうし、

肝心なところで臆病風に吹かれちまうし、やっぱりお頭がいねぇと、俺たち・・・。

お頭ぁーー、隠居するなんて言わねぇで下せぇ、ずっと俺たちの面倒見てくだせぇー!」

「「「お頭ぁ~!」」」


何だか聴いてるだけだとお頭って奴かなりいい奴っぽいな。

手間のかかる部下の面倒をしっかり見て自分の隠居後のことも

それなりに考えているようだ。


今はそんなことはほっときたいんだが、如何せん核心的な話が出てこない。

話だけだと何だか漁師か狩人達がその日の成果を話して

お頭のことを褒め称えているとも取れる。

ハッ、もしかしてこいつら隠語か何かを使ってる?

もう俺たちに気づいていて、取り逃がした時に言い逃れするために

自分たちが盗賊だということに関する情報は一切口に出さないつもりか!

なんて狡猾な奴等なんだ!


このままじゃマズイ!

早くここから脱出しなければ。

場所さえ分かれば後はギルドの方でなんとかしてもらえばいい。

とりあえず脱出することが最優先だ。


俺が焦りつつも脱出することを考えているとまたお頭って呼ばれている奴が

話し出した。


「お前らがそんなにも俺を必要としてくれているなんて思ってもみなかった、

よし、後は俺にすべて任せとけ!俺一人で全員なんとかしてやらぁ!」

お頭は声高に宣言する。

「流石お頭!」

「一生ついていきやす!」

と子分たちはそれぞれにはやし立てる。


本格的にヤバい!

これは暗に、

「お前らは手ぇ出すな、全員俺一人で片づけてやる!」

ってことだろ!?


どうしよう、相手はもう俺たちに気づいている。

人数もおそらくはバレているんだろう。

その上で1人で片づけると豪語するんだ。

よっぽど腕に自信があるんだろう。


これは詰んだかもしれない。


もしもの時は俺が囮になってでもライルさんを・・・。


ライルさんをチラッと見たが、ライルさんの額に一筋の汗が走っている。

ライルさんも俺と同じようにこの状況の深刻さに思い至ったのだろう。


大丈夫ですよ、必ず俺が守って見せます。

この命と引き換えにしてでも・・・。


俺たちは渇いたのどを生唾を飲み込むことでしか潤せない。

緊張で手汗もすごいことになってる。


さあ、来るなら来い!







そしてお頭が声を発する。



「とりあえず一列に並べ~、今回盗んだ物の分け前配るから。

おい、お前は今回いらないだろ?町で若い女襲ってたんだから。

ほら、ちゃんとしないと次の時婆さん限定にすんぞ!?

それが嫌ならさっさとしろぉ~。」

「えぇ~、勘弁してくださいよ~、毎回それが楽しみなんすから。」

「こいつ、それを考えるだけで飯たらふく食いやがりますからねぇ!」

「なんだそりゃ、わははは!」

「「「わははは!」」」

笑い声が響いてくる。




前言撤回。こいつ等やっぱりただのバカばっかだったわ!

恥ずかしぃ~、こんなバカ共相手に滅茶苦茶警戒したわ。

命もかけかけたからね!?なのに何なのこいつ等。「わははは!」じゃねえよ!


もしかしたら何か深い事情があって盗賊をするしか道が無い、みたいな

ことがあるかもしれないな、とも思ったけど襲うの楽しみに飯をたらふく食うって

どんな奴だよ!


もう全く同情の余地もないな。



そんな心の中でのツッコミを終えため息をついた時、

ライルさんに袖をツンツン、とされる。


ライルさんは今隠れている岩の少し向こう側を指さしている。

岩がちょっとした高台みたいなところになっている。

なるほど、あそこに登れれば上から奴等の状況を監視できる。


俺はライルさんの方を向いて頷く。



登ってみると奴等の姿がはっきりと見えた。

うつ伏せになって覗いていたらあっちからじゃこっちは見えないだろう。



俺たちはそこから奴等を見張り始めた。

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