こういうシリアスな雰囲気あんまり好きじゃないんだけど・・・。
「カイト、話っていうのは俺たちの今後についてなんだ。
俺たちはやっぱりもう一歩先の関係に進むべきなんじゃないかと俺は思ってるんだ。」
えっ、やっぱりそっち系の話!?
どうしよう、ガチで俺そっちの気はないんだけど・・・。
このことがあの試験官の人を筆頭にライルさんファンの人の耳に入ったら
また殺されかけかねん。
この世界でもいつかは死ぬことになるんだろうがこんなしょうもないことで死ぬのは御免だ。
ここはしっかり断らないと。
「すいません、ライルさんのお気持ちは大変ありがたいことなんですが、
私にはあまりそういう気持ちは・・・、それにライルさんとそういう関係になると
周りが許してくれないというかなんというか・・・。」
ああ、くそっ、はっきり言えよ俺!
俺が好きなのは女性であって男性ではないって。
やっぱりライルさんがそっち系だってことに少なからずショックを受けてる自分がいる。
ライルさん絶対モテるだろうに・・・。
「周りなんて気にする必要ない、俺たち自身の気持ちが重要だろう!?
なぁカイト、俺じゃダメなのか?」
ライルさんじゃなくても多分ダメだわ俺。
「ダメと言いますかなんと言いますか・・・、私みたいなやつが相手だと
ライルさんのことを大切に思っている方々に対して申し訳ないと言いますか。」
「カイトなら俺は胸を張って紹介できるよ、俺の大切な人だって!」
胸を張っちゃうの!?そこまで行くか!
しかも大切な人とか言っちゃったら完全に火に油を注ぐよ、それ?
「ライルさん、やはり私には無理です。ライルさんとはやはり今のままの関係の方が
私は・・・」
「頼むよ、カイト、お前となりたいんだ!」
ライルさんもヒートアップしてきたのか俺の話を最後まで聞こうとせず強引に押し切ろうとする。
俺も負けじと応戦する。
「いえ、やっぱり無理です。私にはライルさんの・・・」
「いいじゃないか、俺の」
「恋人は無理です!」
「親友になってくれ!」
声が被った。
時が一瞬止まったように感じた。
「「え?」」
ちょっと待って、どういうこと?
ライルさんも鳩が豆鉄砲食らったような顔をしている。
「え?ライルさん、なんとおっしゃいました?」
「俺はカイトに俺の親友になって欲しいって。」
「あれ、親友ですか、恋人じゃなくて?」
「恋人なわけないじゃないか、俺だってちゃんと女性が好きだぞ。
カイトは冗談がうまいな!ハッハッハー。」
ハッハッハー、じゃねえよ!俺がどれだけ自分の貞操の危機を感じたと思ってんだ!
紛らわしい発言が多いんだよ、もっと具体的に言ってくれないと。
でもホモじゃなかったんだライルさん。
なんだ、良かったぁー。
ライルさんが健全な男性だという事実がこれほどまでにうれしいとは。
でも親友って、以前断ったのに。
めげない人だな。
「ライルさん、以前もお話しましたが私は過去についての記憶が欠落しています。
そんな状態で誰かと親友になるのは怖くてできません。」
「カイト、確かに自分が過去にどんな人物だったのかわからないというのは
とても怖いことだ。
それを知られたくないと気丈に振る舞う気持ちも全部はわかってやれないが
多少はわかるつもりだ。
隠してるスキルについて話したがらないのもそういう気持ちの表れなんだろ?
でもなそういう時に支えになってくれる存在が一人でもいるのといないのとでは
天と地ほどの差があると俺は思うんだ。で、俺はお前の支えになってやりたいんだ!
だから・・・・・・・・・・・・・・」
え?ちょっと待ってくれ、待ってくれライルさん。
おーい、ライルさん、ストーップ!
「ライルさん、ストップ、ちょっと待ってください。
さっきなんて言いました?」
「ん?お前の支えになりたい、か?恥ずかしいこと二回も言わせんなよ(照)。」
恥ずかしいっていう自覚はあったのか。
いや、今はそこじゃない。
「すいません、じゃなくてもうちょっと前です。」
「もうちょっと?うーん、カイト、俺たちはやっぱりもう一歩先の関係に進むべきなんじゃないかと俺は思ってるんだ。」
「いや、戻りすぎです!思いっきり初っ端のフレーズじゃないですか!」
「どこのことを言ってるんだ、最近の王政はなっとらん、もっと庶民に迎合的な政治をせんと!
のあたりか?」
「ライルさんいつそんなもっともらしいことおっしゃいました!?
そんなこと一言も触れてませんでしたよね!?何なんです、
素ですか!素でボケてらっしゃるんですか?」
「カイトの話は時々よくわからん、ついていけなくなる。」
「私ですか!この場合私が悪いことになるんですか!?」
びっくりだ、ライルさんにここまでボケ倒されるとは。
「で、ほんとにどこのあたりのことなんだ?」
「私がスキルを隠してどうのこうの・・・、のあたりです。」
「そんなところか、てっきりもっと重要な部分かと思ったぞ。」
「重要ですよ、私にとっては今後を左右するくらい
重要です!」
「そうか、わかった。そこまで言うなら・・・、
隠してるスキルについて話したがらないのもそういう気持ちの表れなんだろ?」
やっと前に進んだ。かなり寄り道したんじゃないだろうか。
「そう、それです!私がスキルを隠してるってどういうことですか?」
「え、どうもこうもカイト、いつもどこかで水晶に手かざす前に偽装使ってるだろ?
この前俺が宿に遊びに行ったときもそうだったじゃないか。
だからスキルについては隠したいんだろうなって。」
ぬかった!あの時か。
そう、昇格した次の日にライルさんは依頼の帰りに宿に寄って俺を飲みに誘いに来たのだ。
俺もその時は断る理由が無かったので二つ返事で行くことにしたのだが、
ちょうどその日に宿の宿泊を延長しようと思い、ライルさんを待たせて、
俺は手続きのために水晶に手をかざしたのだ。
その際に偽装を使ったんだが・・・、まさかそれを見られていたとは・・・。
いやちょっと待て、偽装を使ったこと自体は問題ないはず。
外観にはスキルを使った形跡は現れないのだから。
問題はなぜ偽装を使ったことをライルさんが分かったかだ。
そんなもの、俺のように鑑定を使わなければわかりっこないはず・・・、
でもこの前見たとき鑑定なんてライルさん持ってなかったよな?
今までの期間内に鑑定を手に・・・、
いや、戦士のジョブに鑑定を必要とすることはないはず。
だったら戦士のジョブによって鑑定を得られるよう影響が及ぼされるなんてことはない、多分。
「どういうことですか、何で、っというか、え?」
俺は軽く混乱していた。
全くわからん。
頭を抱えながら一人うんうんうなっていると、
ライルさんが言葉を発する。
「カイト、俺を鑑定してみ!」
「え?でも・・・、」
「いいから、多分それで大体わかるんじゃないかな?」
「・・・わかりました。」
俺はライルさんの言葉に従う。
鑑定、対象ライルさん!
名前:ライル・アーグリット
人種:人族
身分:冒険者
職業:戦士
性別:男
年齢:23歳
Lv.22
HP:82/82
MP:27/27
STR(筋力):55(+8)
DEF(防御力):38(+5)
INT(賢さ):22
AGI(素早さ):41(+3)
LUK(運):21(+78)
『斧術』、『筋力小上昇』、『防御力小上昇』、『剣術』、『身体能力小上昇』、
『鑑定』
運が原因かーーーーー!
今回の話と次話はおそらくあまり好ましくないと思う方が少なくない数いらっしゃってくるだろうと思います。
いろいろな都合上多くを語らせていただくわけにはいきませんが、
1章の終わりまで我慢してお付き合いしていただきたいな、と思っております。
自分でハードルを上げるわけではありませんが、1章の終わりまで読んでいただいて、それでも無理だ、と思われるのであれば私にはどうしようもありません、
としか申し上げれません。
できるならば1章の後もお付き合いしていただきたいですが、
先ずは1章の終わりを目安に判断していただければと思います。




