ランクも上がって、レベルも順調に上がってきたし、しばらくは依頼をコツコツこなしてお金でも貯めようかな。・・・え、お願いですか?
俺は今ギルド会館の応接室にいる。
Dランクになってから5日経った。
依頼も順調にこなし、レベルも15に上がった。
本来今日は休息に充てようと考えていたのだが、
昨日依頼を終わらせて帰ろうとするところをギルド長に呼び止められた。
曰く、頼みたいことがあるらしい。
それに伴って明日ギルドに顔を出してほしいんだと。
俺は何かめんどくさいことを押し付けられそうな予感がしたので、
「申し訳ありません、明日は友達と約束がありまして・・・。」
と言ってやった。
そうだよ、いないよ友達なんて!見栄張りたかったんだよ、俺だって。
しかも「達」って複数を指すから余計にむなしくなるっていうね。
すると、オッサンが、「そうか、ならその友達も一緒に連れてきてくれるかい?
私が直接謝らせてもらうよ。お願いするのは私だからね。」だって。
そんなに俺の心をえぐりたいか!
自分で言っといてなんだがいねえよ、「友」すらいないから!
もう、蒸し返さないでくれ・・・(涙)。
「いえ、ギルド長にそこまでしていただくわけにはいきません。
私が話しておきますので、明日はちゃんと伺わせていただきます。」
「そうかい、それは助かるよ。じゃあよろしくね。」
オッサンはそういって去って行った。
ちなみにオッサンはボルグさんというらしい。
鑑定した。
名前:ボルグ
種族:人族
身分:冒険者
性別:男
職業:1.剣豪 2.ギルド長
年齢:41歳
Lv.44
HP:225/225
MP:63/63
STR(筋力):115(+12)
DEF(防御力):88(+9)
INT(賢さ):51
AGI(素早さ):83(+8)
LUK(運):33
『剣術』、『心眼』、『筋力小上昇』、『防御力小上昇』、『素早さ小上昇』、
『盾術』、『攻撃魔法耐性』、
とかなり強くていらっしゃった。
オッサン見直したわ。
この世界で見てきた中で一番強かったと思う。
ギルド長に特有のスキルとかはないのかな?
まだポイントが足りないだけかもしれん。
とまあ俺はそんなわけで今は応接室に通されコーヒーにあたるものを飲んで待っている。
色はコーヒーよりは薄黒いが味はかなり苦い。シンという豆を使ったものらしい。
俺は根っからの甘党だが苦いのが嫌いというわけではない。
けどもこれはかなりきつい。まあその分寝ぼけてる時に飲めば目も覚めるだろうが・・・。
応接室に通されて10分位したころだろうか、ドアがノックされ、誰かが入ってくる。
ほう、こちらの世界にもノックの習慣があるのか。
ノックって、大事だよな。
よくマンガとかアニメでドジな主人公がノックせずに部屋に入ったら同居してる
ヒロインが着替えてるところにばったり出くわして
「もう、ノック位しなさいよ!この変態!」
って顔を赤らめて怒られるなんてラッキーイベントあるけど、
普通に生活してたらそんなうらやまけしからんイベントまずない。
でも習慣として身に着けとかないと俺もそんなことになるかもしれん・・・・、
うんごめん。ないよね。
ただでさえ友達いないのにね。
はぁ、うらやましい。
入ってきた人は俺のよく知る人だった。
「あれ、ライルさん?どうしてここに?」
「あれ、カイトじゃないか。カイトこそどうしてここに?
俺はギルド長に呼ばれたんだよ。なんか頼みたいことがあるとか。」
あれ、ライルさんもギルド長に呼ばれたのか?
俺だけじゃなかったのか。
「私もライルさんと同じです。ギルド長に呼ばれました。
ここで待っていて欲しいと言われたのですが・・・。」
「そうか、なんだかよくわからんがカイトと一緒ってのはうれしいな。」
あぁ、眩しい。
そんなにめをキラキラ輝かせないで!
でも、ライルさんと一緒ってのは俺も心強い。
無理難題押し付けられそうになったらライルさんが何とかしてくれそうだし。
それから5分くらいして、ようやくギルド長が応接室に来た。
「いやー、待たせて悪かったね、それから二人とも来てくれてありがとう。
感謝するよ。」
来て早々頭をぺこりと下げるギルド長。
できた人だな、格下相手に誠意をもって接している。
こういうところがギルド長たりうる品格を表しているんだろう。
「頭を上げてください、俺はただギルド長の力になりたいだけですから。」
とライルさん。
すごいな、堂々とそんなこと言える人はそうそういないぞ。
「そうですよ、それにお話を聞いてからしか受けるかどうかはお答えできないんですから。」
俺も一応そういって、話次第では受けれないぞと釘を刺しておく。
「いや、来てくれただけでもありがたいと思ってるからね。
もちろん話を聞いてから受けるかどうか考えてくれて構わないよ。」
「安心しました、お願いという名の命令でも
されるんじゃないかと内心ひやひやしてましたから。」
「そんなことはないよ、もちろんギルド長として命令しなければいけないことも時としては
あるんだけどね。でも今回に限ってはそういうことはないから安心してくれていい。」
よかった。
断ることも選択肢にあるってことはありがたい。
「じゃあ、本題に移らせてもらうね、君たち二人に頼みたいことっていうのは
最近活発的に活動している盗賊集団についてのことなんだ。
このリンカの町の住民や冒険者もかなりの被害を被っていてね。
ギルドもなかなか手をこまねいていて、実態をつかもうといろいろ
試みたんだがなかなか成果が上がらない。
そんな折にある情報筋からアジトらしきところを突き止めたという
情報を得てね。
そこで君たち二人にはそこがやつらのアジトかどうか確かめてほしいんだ。
君たち二人は最近の冒険者の中でも成長著しい優良株だからね。
ギルドの会議でも君たちに任せようという声が多いんだ。
それに、カイト君の記憶喪失と何か関係があるかもしれないんだろ?」
なるほど、俺の記憶喪失に信憑性を増す一躍を買ってくれている盗賊さんたちのアジト調査ですか。
「私自身はっきりとした記憶が無いので何とも言えませんが、
自分の手で確かめれるよい機会だとは思います。」
ただライルさんと一緒だと俺の都合のいいように捏造することができない。
調査途中で二手に分かれましょうとかなんとか言って、一人で処理したいというのが本音だ。
受けること自体は吝かではないが俺は潜入・調査系の依頼をまだ受けたことが無い。
隠密を20ポイントでとれるから何とかなるかもしれんができうるならポイントは貯めておきたい。
「私は潜入とかの経験が無いのですが大丈夫でしょうか?」
「そこはライル君にいろいろ聞くといい。彼はいろんな種類の依頼をこなしているからね。」
流石だな、どんな方面でも関係なく困ってる人を見過ごさない。
実にライルさんらしい。
「ああ、カイト。心配しなくても俺が一緒だからな。
安心して俺に頼ってくれ。」
なるほど。その点についての心配は不要ということか。
じゃあ俺の一番の懸念はどうなんだろう。
「すいません、あと一つ、この依頼を二人で行うということは
パーティーを組むということですか?」
そう、俺の一番の懸念とはこのことだ。
パーティーを組めば必然的に
『パーティ恩恵(リーダー)』、『パーティ恩恵(メンバー)』
のスキルが発動してしまう。
ちなみにそれぞれの鑑定結果は
パーティ恩恵(リーダー):このスキルの装備者がパーテイーにいる時に
発動する。リーダーはメンバーのスキルを使用することができるようになる。
パーティ恩恵(メンバー)がある場合、自己のスキルのうち、一定のスキルを
メンバーにも使用することができるようになる。
パーティ恩恵(メンバー):このスキルの装備者がパーティーにいる時に
発動する。メンバーはリーダーの持つスキルのうち
一定のスキルの効果を享受することができるようになる。
パーティ恩恵(リーダー)がある場合、享受する効果が上昇する。
となっていた。
細かい解釈については今は問題にしない。
今問題なのは、パーティーを組めば確実にライルさんにこのスキルの恩恵が行く。
すると、俺のスキルだということを説明しなければならない。
このスキルの説明だけで済めばいいが、それだけじゃ説明しきれない部分が出てきて
他のことについても話さなければならないかもしれない。
最悪俺が転生人だということがバレてしまう。
そんな事態は避けなければならん。
だからでき得る限りパーティーを組む人間は限定せねばなるまい。
今はまだライルさんとどう向き合うべきかの判断がつかない。
パーティーを組むのはまだ避けるべきだろう。
「ああ、こちらとしてはパーティーを組んでもらって
依頼にあたってもらおうかと思ってるんだが。
何か不都合でもあるのかいい?」
こういう言い方ってちょっと卑怯だよな、
裏に、無いよな?空気読めよお前、みたいな意味が含まれている気がしてならん。
俺だけか?こんなこと思うの。
「私は今までパーティーを組んだことがありません。
パーティーで行動するというのは調査や潜入の話とは大きく
異なってきます。ライルさんを信用していないわけではありませんが
ぶっつけ本番というのは殊パーティーにおいては避けるべきだと思います。
それよりかは私は慣れたソロでの動きの方が柔軟に動けると思います。」
「そうか、カイト君の言うことはもっともだね。
ライル君はどう思うかね?」
ギルド長はそういってライルさんに話を振る。
するとライルさんは真剣な顔をして、
「俺はパーティを組んで依頼に当たりたいのですが・・・。
ギルド長、そのことについてカイトと二人きりで話したいことがあります。
少しお時間いただけませんか?」
ん、ライルさんが俺と二人きりで話したいこと?
なんだろ、愛の告白とかじゃないだろうな?
もう嫌だぞ、ライルさんのことを思う女性から殺されそうになるなんてこと。
告白だったらはっきりと断ろう。
俺にはそっちの気もその気もないって・・・。
「わかった、話終わるまで外で一服してくるから、
話終わったら読んでくれ。」
「はい、ありがとうございます。」
そう言ってギルド長は出て行った。
ライルさんは俺に向き直って真剣な表情を作る。
「で、ライルさん、話っていうのは?」
ライルさんは少し躊躇していたが意を決して話し出す。
「カイト、話ってのはな・・・・、」
最近話の前後で辻褄が合わないというミスが増えてきました。
私が気づけるだけでも少なくない部分があるのでまだ気づいてなくてもおかしいところがあるかもしれません。
見つけられた方はぜひご指摘くだされば幸いです。




