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昇格試験、張り切って頑張ろう!  ・・・・・ん?なんか雲行きが怪しくなってくんだが・・・。

女性は俺の足音に気づくと振り返って、俺をまじまじと見る。

そして、「あなたが受験者のカイト・タニモトですか?」

「はい、試験官の方ですよね?」

「チッ、聞かれたことにだけ答えていただければ結構です。」

え?舌打ちした、この人。今舌打ちしたよね?

試験官かどうか聞いただけなのに。

厳しい人なのか?

「すいませんでした。以後気を付けます。」

俺が素直に謝ると、女性はいらだたしげに剣をガンガンガンガン石畳に打ち付けている。

なんだ、何でこの人はこんなイライラしてんだ?

俺今回は本当に心当たりないぞ?

女性は深呼吸して「落ち着け、私、落ち着くんだぁ!」とかぶつぶつ言ってる。

まぁぶつぶつ言ってても聞こえてるんだけどね。

うぅん、と咳払いして女性はこちらに向き直る。


「私は試験官を担当します、コリン・フェーブルと申します。

試験の内容は私と手合せしてDランクでもやっていけると私が判断したら合格です。

私に勝つ必要はもちろんありません。というより勝てないでしょう。Eランクの冒険者が

Cランクの冒険者である私に勝てるはずがありませんから。」


むっ、なんかむかつく言い方だな。この人なんか俺に恨みでもあんのか?

それともどの人相手でもこうなのか?

この、人を見下す感じ。

俺が言えることじゃないがそんなんじゃ友達できないぞ。


「すいません、質問よろしいでしょうか?」

同じ過ちは繰り返さない。

人間は学習する生き物だからな。

「チッ、ええ、構いませんよ。何ですか?」

また舌打ちしやがったな、コイツ!

人が下手にでてりゃ調子乗りやがって、文句あんなら直接言えや!

俺言えてないけど・・・、だって怖いじゃん!

文句言ったらこの人めっちゃキレてきそうだし。

ふぅ、ここは大人の俺がぐっと我慢するか。

感謝しろよ。


「武器や戦闘方法の指定はあるんでしょうか?私は剣しか扱えないんですが。」

「いえ、指定はありません。あなたが普段使用しているもので構いませんし、

手段は基本問いません。まあ、

あなたが卑怯な手段を使って私を殺しにかかってきたとしても

かすり傷一つつけられないでしょうけどね。」

何なんだ、コイツ。いちいち癇に障る言い方しかできんのか。

ちょっと、ガキっぽいかもしれんが流石に言い返してやらんと

付け上がらせるだけだ。


「はい、わかりました。それと、もう一つ。試験官の適性はどうなっているのでしょうか。

あなたのような人を見下すことしかできないような方が

試験官では私の試験に私情を挟みこまれかねません。

そんなバカでも試験官が務まるというのなら

ギルドの選任に対して疑惑が生じるということ以外私には何もできませんが。」


よし、言ってやった。

自分は人のことバカにするくせに自分がバカにされたら許せない。

こういうやつは怒らせた方が扱いやすい。

さぁ、どうだ?


「こんのぉ、折角人が下手に出てあげたってのに、もういいわ、試験を始めましょう。

ぶっ殺してあげる!」


殺すっておい!極端すぎんだろ。

試験だよ、これ。

試験で死人だしていいの?


彼女は俺が抜刀するのも待たずに切りかかってくる。

俺はそれをバックステップでかわしながら、

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。俺まだ準備が・・・」

「安心なさい、痛みすら感じる暇もなく楽にしてあげるから!」


ひぃー、ヤバい、ご乱心じゃぁー!

俺の言うこと全く聞き耳持ってないよ、もう。


俺はとりあえず距離を取るために風の矢を10本作り出す。

彼女が後ろに下がらなければよけれない角度に放っていく。

「ウィンドアロー!!」

彼女は一瞬驚いた顔をするが、即座に対応している。

5本の矢は切り捨て、3本の矢は体を捻ることでかわし、残りの2本はバックして避ける。

流石、伊達や酔狂でCランク語ってるわけじゃないな・・・。


俺は彼女がバックするのを見てすぐに抜刀する。


「魔法を使うなんて、卑怯よ!」

コイツ、自分で言った言葉すら覚えられねぇのか。

前言撤回だな。


「ご自分がおっしゃったんでしょう、手段は問わないって。

それに百歩譲って魔法が卑怯だとしても傷一つつけられないんでしょう?

ならいいじゃないですか。」


「こんのぉ、やっぱりコイツ、殺してやる!」

物騒だな、殺す殺すって。

そんなに殺人犯になりたいの?

家族から殺人犯出たら親御さん悲しむよ?


「私があなたに何をしたか知りませんし興味もありません、

ですが試験に私情・私怨を挟まれるのは迷惑です。」


「よくもぬけぬけとそんなことをぬかせるわね!私の・・・を奪ったくせに!」

へ?何を奪ったって?

最近強奪を働いた記憶はないんだが・・・。

それに仮に働いてたとしてもそれこそ完全に私情・私怨だよね?

ああ、涙目なっちゃってるよ。

「すいません、最後の方、よく聞こえなかったんですが、何を奪ったって?」

キッ、と睨み付けてくる。

「くっ、私の、ライルを、奪ったくせに!」






それかーーーー!

なるほどね、だからこんなに高圧的だったのね、よくわかりました。


とうとうきたか、いつかはこんなことになるんじゃないかと危惧していたが。

まさか試験官に怨念ぶっ放されるとは。

ライルさんも罪な男だな。


でも、親友になるのは断ったはず、最悪でも友達どまりの関係なんだが。

私のってことは恋人かそれに近しい関係なのか、この人は。

とりあえず誤解を解かないと。


「すいません、それは完全に誤解です。私はライルさんに助けてもらってはいますが

それはこの町の皆さんと同じ範囲でのものです。

決してあなたが思ってらっしゃるような事実はありません。」


「嘘だっ!今まで地味で何の取り柄もなかった私に優しくしてくれたライルが

数か月前からはだんだん会ってくれなくなって、最近は冒険者になってますます

会える機会が減って、仕舞いには会ってもあんたの話しかしないのよ!

もうあんたがライルに何かしたとしか言えないわ!」


むぅ、完全に誤解してらっしゃるな。

この人試験官のくせに受験者のこと何にも知ってないんだな。

俺のことを誤解とはいえ恨み過ぎて目が曇ってるんだろう、

俺に対する怒りを増幅する情報しか入ってこないんだ。

人のふり見てなんとやらってやつだな。

つくづく物事を考えるなら冷静にならないといけない。

でないと自分に都合のいい情報にしか耳を貸さなくなって

他の視点から検討することができない。

俺も気を付けないと。



恐らくすれ違いだした最初の要因はライルさんのお父さんのご病気だ。

会う機会が減ったという時期と多分かぶってる。

俺がここに来たのは約1か月前だから

会う機会が減ったことについては俺は関係していない。

会ったときに俺の話ばっかりってのは・・・、なんかごめん。



「話はわかりました。

おそらく私たちやライルさんとの認識の間に何か齟齬が生じているんだと思います。

お互いまずは腰を据えて話し合いませんか?」

「くどい!あんたが何かしたのは明白なのよ、

ライルが苦しんでいる、私が助けてあげなきゃ。」


ヤバい、また話が通じないort。

最早この人、何かに取りつかれてるって言われた方が納得できそう。

どうしよ、なんとかしないと・・・・、

うっわ、また襲ってきた。

でも単調だな、周りが見えてない。


「くそぅ、くそぅ、何で、何で当たんないのよ!

死ね!死ね!」

「やめて、下さい!とりあえず、落ち着いて!」

剣で攻撃を防ぎながら呼びかける。

だがやはりまともな返答は返ってこない。


「だま、れ!くそぅ、こう、なったら・・・・、」

なんだ、若干雲行きが怪しい。

なんか奥の手でもあんのか?


どうしよ、剣を捌くこと自体は簡単だが、

すごい必殺技とか使われたらひとたまりもない。


どうする、どうするよ俺。


ライフカード。続く・・・。



じゃないか。

いやでもほんとどうしよ。



だがその心配は杞憂に終わることになる。


「そこまでっ!」


いきなり聞いたことない男性の鋭い声が聞こえる。


俺もびっくりしたが、

彼女はびくっと震え、体を硬直させる。


俺は剣に力を残しつつも声のした方を見やる。

30代くらいの男性がこちらの方へ歩いてくる。

「この試験はここまでだ、今まで見せてもらっていたが

君の能力は十分Dクラスでやっていくにふさわしいものだった。

よってカイト・タニモト君。ここに、Dクラスへの昇格を申し渡す。」


なんなんだこの人、偉そうだな。

今まで見てたって、全く気付かなかったが。

ほんとに見てたのか、ほら吹いてんじゃねえの?



「待ってください、私は納得できません。こんなやつがライルと同じランクになるなんて

どう考えてもおかしいです、ギルド長!」


えっ、ギルド「帳」?

いや、ギルド「長」か。

ギルド長・・・、ギルド長・・・、

ぎるど・・・・、

ふぇ?

ギルド長ーーーー!?



マジか、このダンディな香りを放ってるナイスガイが

この町のギルドで一番偉い人なのか!


そうか、最初っから薄々そうなんじゃないかって俺も思ってたんだよ。

もうにじみ出るオーラっていうの?

隠しきれてないよ!

ザ・大者って感じのしゃべり方だったもんね。

いやー、お会いできて光栄です。



・・・・危うく暴言吐くとこだったわ。



「納得できないのは彼の方だと思うよ、コリン君。仕事である試験官の任務にあろうことか

私情・私怨を持ち込んで受験者を殺そうとまでしたんだ。文句を言われてもおかしくないんだよ?」

おい、殺そうとしてたの見てたのかよ、だったら止めろよもっと早く!


「しかし・・・」

「君のやった行為は本来許される行為ではないのだよ、

被害者のカイト君が無傷でしかも君を責めていないから

こうして厳重注意だけで済ませようとしているんだよ、わかるかい?」

いや、十分責めてるよ?ただ口に出して言ってないだけで。


「はい・・・。」


ギルド長の厳しいお言葉でようやく彼女も冷静になってきたようだ。


「では、後の処理を先に戻って済ましておいてくれ。」

「はい、申し訳ありませんでした。ギルド長。」

「うん、分かってくれればいいんだよ、今後の働きに期待してるよ。」

いや、オッサンよくねぇよ、謝る相手違うだろ!


「悪かったね、カイト君。早くとめたかったんだが、ライル君が絶賛する男の子が

どれだけできるか見たくってね。でも、期待通り、いや期待以上の動きだったよ。

Cランクの格上相手に互角以上に立ち回っていたからね。」

むぅ、褒められるのは悪くないな。

しかもギルド長というお偉いさんからだ。

でも増長するのは良くない。

お褒めの言葉は素直に受け取っておくものの気を抜かずに振る舞わねば。


「ありがとうございます、でも相手を怒らせて攻撃を単調にさせただけです。

攻撃のパターンがわかれば私じゃなくても対処できますよ。」

「ハハッ、そういう戦い方が思いつくだけでも他の冒険者より1歩も2歩も上手だよ。

必要以上に自分を卑下することはない。

自信を持つといい。君はどんどん強くなる。」

「ありがとうございます。」

オッサンいいこと言うな。

伊達に年はとってないか。



俺はその後、ギルド会館に戻ってDランクに昇格するに伴っての注意事項を説明してもらい、

まだ時間があったので、そのままDランクの依頼を受けた。


中級のポーションに使う薬草を町から1キロほど離れた山の麓で5束採取するものだったが、途中で

鹿に似たクールー6匹と遭遇した。


気づかれていなかったので土魔法で落とし穴を作って4匹はめてやった。

その間に2匹をかって、落ちた4匹は風の矢で仕留めた。



依頼を終えて宿に戻り、くつろぎながらステータスを確すると、

レベルは13に上がっていた。


名前:カイト・タニモト

種族:人族

身分:冒険者

性別:男

職業:1.戦士 2.魔導師 3.治癒術師

年齢:16歳



Lv.13

HP:83/63(+20)

MP:67/50(+17)

STR(筋力):32(+18)

DEF(防御力):26(+16)

INT(賢さ):32(+17)

AGI(素早さ):33(+16)

LUK(運):1(+5)




『能力値中上昇』、『異世界言語(会話)』、『異世界言語(筆記)』、

『生活魔法』、『剣術』、『ステータス操作』、『全魔法素質解放』、

『無詠唱』、『鑑定』、『偽装』、『レベルアップ時ボーナス』、

『パーティ恩恵(リーダー)』、『パーティ恩恵(メンバー)』、

『火魔法』、『水魔法』、『土魔法』、『風魔法』、『治癒魔法』、

『職業操作』



  




そろそろ一つ目のターニングポイントに差し掛かろうとしています。

作者の中であと何話くらいでヒロイン登場の話に入れるか、というのが大体固まってきました。

ヒロイン無でこれ以上引き延ばすと作者自身も辛いです。

何とか一刻も早く登場させれるように頑張ります!


ご指摘いただいて気づいたのですが、

火魔法以外を記載するのを忘れていました。

修正させていただきます。


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