んもう、うっかり屋さん!!
どなたか、読者の皆様の中に私が探している該当部分のお話をお知りの方はいらっしゃいませんかーー!?
“『バジリスクの毒鱗』って昔偉かったけど『オリジンの源剣』に蹴落とされちゃいました!!”的な話を探してるんです!!
書いた記憶はあるんです!!
でもどのお話で書いたかが中々思い出せなくて、探しても探しても……。
確か、『オリジンの源剣』のクランメンバーの名前も、そこには書いていたはずなんです!!
このままじゃ、作者が適当に『オリジンの源剣』の話をでっちあげることに……。
すいません……全然見つからなくてテンションおかしくなりました。
勿論自分で探します、あんまり気にしなくて大丈夫です。
話の中身からすると、多分4章か5章にあるはず、という当たりはついているので。
次回は多分シアやディールさん、ユウさんも出てくると思います。
「ミレアさん、今、先輩たちは大事な話の最中でして――」
「ですから、私も色々と話をですわね、しないといけなくて――」
『喧嘩だ喧嘩だ! 出会え出会え!!』
ミレアがなんだか急ぎの様子で俺たちに話に来た。
それを、気を使って外してくれていたヤクモが、やんわり止めようとしている。
……空中に浮いている精霊は、単にはしゃいでいるので放っておく。
「えっと……とりあえず聞くよ。ミレア、何があった?」
今俺たちがどういう話をしているのかを説明して追い返すのも手間だ。
なので、ミレアの用件だけ聞いてそこから優先順位をつけていくことにする。
ヤクモも俺の言葉を聞いて素直にうなずく。
通されたミレアは、先ず第一に俺とフィオムへと視線を行ったり来たりさせた。
「――えっと……マーシュさん、その奇妙な恰好は? それと、このこの上なくお美しいお方は?」
そう言われれば、確かに今の俺の恰好は事情を知らない他者からは変に映るのだろうか。
それに、ミレアはこの姿のフィオムは多分初めて見た、のかな。
まあ……もうここまで来たら。
「そうだな。流石に首から下だけ普通の恰好で、後はヘルムってのも奇妙か」
俺はそう言ってヘルムを取る。
久しぶりに素顔が全部、外の空気に晒されることになり、冷やっとした風が心地いい。
「あ……」
「え……」
「「ああ、なるほど……」」
俺が持ち上げたヘルムを脇へと挟むと、主にフィオムとミレアから視線を感じた。
フィオムは何か興奮したように、けれど嬉しそうに口に手を当てて目を見開いている。
一方のミレアは何故か俺の顔をガン見だ。
そしてフレアとヤクモは、そんな二人と俺の顔を交互に見やり、納得気に頷いていた。
……何だよ。
「確かに、先輩の素顔の威力は中々ですもんね」
「……内面も伴ってて、顔がこれか。アイリさん達の気持ちがちょっとわかった気がする」
ヤクモもフレアも、気を使ってか声を抑えているけど、普通に聞こえてくるからね。
「……悪かった。戻すよ」
何、俺顔だしNGなの?
モザイクかけてないと映せない顔してんの?
テレビの倫理コードとかに引っかかる顔してんのかよ、俺は。
ショックを受けながらもヘルムを顔へと戻そうとすると――
「「も、戻さなくていいです!!」」
「え、え、何? どっち?」
物凄い勢いでフィオムとミレアに止められた。
なんでそんなに息ピッタリなの?
それに何だよ、この気迫溢れる阻止は。
俺の腕をガッシリと掴んで二人とも離さない。
……君ら普段そんなに積極的じゃないでしょ。
顔、出しとかない方がいいんじゃないの?
「えっと、何か反応が凄かったが……俺の顔が、問題なんだよな?」
俺がそう問いかけると、二人は俺と目を合わせることなくコクンと頷く。
やっぱそうじゃねえか。
ぐすん。
「……俺の顔が、おかしかったんだよな?」
今度は二人がお互いに顔を見合わせる。
今の質問の意味が合っているかどうか確認しあっている、という感じだ。
「えっと、確かに、おかしいといえば、おかしいです、私はタイミング的に、と言いますかグッと来たと言いますか……」
うう……フィオムにまで言われた。
普段男性の容姿で、あそこまで凄い外見のフィオムにまで。
最後は尻すぼみになって聞こえないくらい言いづらい容姿なのだろうか、俺。
「はい、その、お顔のために、ちょっと反応してしまったといいますか……」
ミレアもゴニョゴニョ言ってるが、結局のところ俺の顔が原因らしい。
……今夜は枕がびしょ濡れになりそうだぜ。
――い、いや、まだだ!!
「さっき言ってた、俺の顔が変とか威力がおかしいって――」
そう!!
この流れだ、俺がこの後“俺の顔がブサイクすぎって意味だよな?”と言えば!!
“そんなわけないだろう!!”が返ってくるはず!!
……多分!!
これで――
「――先輩、もういいです、先輩は十分頑張りましたから、ね?」
「――これ以上カイト・タニモトの犠牲者を減らすべき。顔はやっぱりできるだけ隠したほうがいい」
――ヤクモとフレアが、俺の肩に、優しく手を置いた。
まるで、この先の言葉を言わせないようにするかのように。
「…………」
俺はもう何も言わずにヘルムを取って、頭からかぶった。
目から零れる汗の結晶が、誰にも見られることが無かったのが、せめてもの救いだぜ……。
……うぅぅ。
視界の端ではヤクモとフレアの仲良さげな握手の様子が映ったが、もう俺はどうでもよかった。
やっぱり、シア達は俺のことを気遣ってあまり言わなかったんだろうか。
その可能性は大いにある。
優しい子たちだからな……。
――ちっくしょぉぉおおおお!!
「――第3師団の団員がいたというのも、今更感がありますね。警戒はしてましたから」
「……はい、そうですね。残念ではありますが、そう驚きもありません」
自分の顔があまり女性受けしないことのショックから何とか立ち直る。
その間に、ミレアが来た用件が告げられていた。
やはりなんというか、中や外で俺たちの妨害をした人間の敵には第3師団の団員がいた、ということだ。
多分だが、あの魔人たちの仕業かと思われる。
モンスターはその魔人たちか『バジリスクの毒鱗』のどちらか、あるいはその両方だろう。
ミレアの報告を補足するようにして、ヤクモがその感じた所を述べる。
フィオムも、そして俺もそのことについては特に落胆のようなものはない。
「では、オルトさんにお任せする、ということでよろしいですか?」
相手がフィオム王“女”であると知って先ほど以上の驚きを見せたミレアも、今では普通に接している。
先ほどのやり取りの中で、何か通じるところがあったらしい。
……いいんだ、俺は皆の団結を強めるための必要悪。
ダークヒーロー、良いじゃん、カッコいいじゃん。
……グスッ。
「それでお願いします――オルトには負担を掛けますね」
フィオムが申し訳なさそうに俯く。
「大丈夫ですよ、フィオム様。オルトさんは体を動かしている方が性に合うので、喜んでやりますよ」
ヤクモが言う通り、オルトさんはフィオムに対して敬意・尊敬の念みたいなものをもって接していた。
だからそこまで気にする必要はないと思う。
「そうですか……」
「ええ。何ならもっと負担を掛けちゃっても大丈夫です!! その方がもっと喜ぶと思いますよ!!」
「お前な、言い方」
フィオムを気遣って言っているんだろうことはわかる。
だがその言い方だと、何だかオルトさんがドMの女騎士みたいに聞こえてくるだろう。
そして『クッ、私はどんなことをされようと屈しない!!』みたいな言葉がセットになるともう完全に変態扱いになる。
「えぇ~、別に嘘はついてませんよ?」
不満顔なヤクモも、本心から不服だというわけではないだろう。
……だよな?
「フフッ……はい。わかりました。オルトにお願いしますと伝えてください」
フィオムは俺とヤクモのやり取りを見て小さく笑ってくれる。
「はい!! では、お先に失礼します」
去っていくヤクモの背を見送り、ミレアが口を開いた。
「――それで、皆さんは一体何を話されていたのですか?」
そういえばそうだった。
ミレアが来たために話の腰が折れた形になっている。
「……まあ、もういいんだけどな」
誰か『オリジンの源剣』と伝手がある知り合いがいればな、という話だったが。
そんな都合のいい奴、そうそう直ぐに見つかるはず、ないよな……。
「そうなんですの? 何か困りごとがあったんではなくて? よろしくてよ、私を頼ってくださっても!!」
『そうだそうだー! ミレアは凄いんだぞー! 俺たち精霊が見えるんだー!』
『なにをー!? カイトだって、精霊と沢山仲いいんだよー!』
『な、何だってー!? カイトは精霊と仲が良かったのかー!? ――って知ってたけどな!!』
……ミレアの言葉に触発されるようにして周りの精霊がまた活発に動き回り始めた。
じゃれてても基本放置で良かったんだが、他の人と仲のいい精霊と出会うとどうも騒ぎ出す。
「まあ、頼れることなら、頼らせてもらうよ。でもなぁ……」
「まあ、ですね、そんな都合よく、いないですよね」
「まあ、うん……いないよね、都合よく、知り合いに」
俺も、フィオムもフレアも。
3人揃って頭を悩ませる。
フィオムの案が良さそうなだけに、余計実現できないことが悔しい。
クソっ、誰か、いないものか……。
「……本当に、何をそこまで悩んでいらっしゃるのかしら。誰かをお探しで?」
俺たちが真剣に悩んでいる様子が伝わって、ミレアも少し身構える。
「ああ、でも、やっぱり中々見つからなくてな。そう簡単にはいかないって壁に当たってて」
俺がそう説明すると、ミレアにもその難しさが伝わったのか。
「そうですか……それではお力になれなさそうですわね。残念ながら」
「ああ、別にお前が落ち込むことはないぞ?」
俺やフィオムの力になれないと知ると、露骨に肩を落とすミレア。
そのミレアの雰囲気に影響されてか、周囲にいた精霊たちも沈みこむ。
『そうかー、ミレア力になれない、残念』
ミレアが力を貸してもらっている風の精霊も残念そうだ。
『残念無念だ。ミレアは無理でも、ミレア、強い人と知り合いなのにー』
『へー、すごいね、ミレア、強い人と知り合い?』
「知り合いでもどうしようもありませんよ。フィオム様達のお目当ての人とは違うのでしょうから」
ミレア自身がそう宥めても、俺の周りにいた精霊たちは、止まらなかった。
一度関心を持つと、それ自体に興味が移ってしまう子供のように、風の精霊に質問攻めをした。
『だれだれ?? だれとしりあい?』
『偉い人? 強い人? 賢い人?』
『イケメン? カイトよりイケメン?』
おい、最後どうでもいいだろう。
ってかその論争、殆どさっきの“ヘルム脱ぎで威力強すぎ論争”を流用できるから。
それで納得してろ、もう一回説明させるな。
『うーん……偉し強し賢し。三拍子揃った強面イケメンですな。カイトよりイケメンかは……拙者答えを持ち合わせておらぬ』
風の精霊は全ての質問にちゃんと答える。
でもね――
それがもう答えだよ!!
答えなくていい質問もあるんだよ、思いやりという概念を学べ!!
嬉しすぎて涙が出てくるぜこの野郎!!
「えーっと、カイト君?」
「どうしたの、カイト・タニモト?」
精霊の声が聞こえないフィオムとフレアが、俺の様子を怪訝に思い、心配そうに尋ねてくれる。
……いいんだ、今はそっとしておいてくれ。
「……あんまり気にしないでくれ。『精霊魔法』の副作用みたいなもんだから」
メンタルに直に来るけどね。
「精霊? えーっと……」
「イマイチよくわからないんだけど……」
話が見えない、という感じでフィオムとフレアはミレアの方へと視線を向ける。
ゴメンね、役立たずのブサイクボッチで。
「あの、えっと……多分、精霊が私の親戚のことについて話しているんです」
困り顔でミレアはそう言って、『精霊魔法』についての極々簡単な説明を二人にもした。
それで今のところは理解したと頷くフィオムとフレア。
「――へ~ミレアの親戚の方は凄い人なのですか?」
「……あまり話題には出さないのですがね」
フィオムは純粋に、ミレアに対して感嘆の声を漏らす。
ただ、ミレア自身は本人が言っているようにあまり話題にはしたくない様子。
相手がフィオムだから殆ど態度には出していないが。
俺は助け船を出すつもりで、代わりに何でもないように告げる。
……でも、あれ、何か引っかかるんだけど。
「――まあ、あれだ、コイツの親戚がSランク冒険者のグリードってだけだ」
俺がそれを口にするとフィオムは言葉が出ないというように、目を大きく見開いて息を飲む。
一方のフレアも驚きこそするものの、フィオムとは逆の反応を示した。
「ああ~!! グリードさんってあのグリードさん!!」
「そういえば、フレアはクランの会議で会ってるんだっけか」
俺の言葉に珍しいぐらいに強くフレアは頷いた。
「うんうん!! あれは流石に私もビビった。なんせ顔に物凄い傷があるんだもん」
フレアは自分で見たことを説明するように、自分の顔を大きく指でなぞった。
「へ~そんなに怖い人なのか?」
ミレアに水を向けてみる。
「別にそういう方ではありません。普段は寡黙ですが意外に気さくですわよ? 精霊にはとても愛されている方ですし」
「そうなんだ。てっきり怖い人かって思ってた。なんせティアーナさんの護衛でわざわざクラン会議に出てたくらいだし」
ミレアの話に、フレアは考えを改めたというように感心して頷いていた。
ミレア自身も、苦手な話題なはずだが、優しい目をしていて、どこか生き生きとしているようにも見える。
何だか共通の話題が、俺たちの間にあった少しのよそよそしさみたいなものを取っ払ったみたいだ。
たまにあるよね、そういうの。
女子同士で、他人の悪口言い合ってたらいつの間にか仲良くなってる、みたいなの。
……皆、俺のいないところで俺の顔のこととか話題にしないでね。
「――って、フィオム、どうしたんだ、そんな“あれ、私がおかしいのかな……”みたいな顔して」
折角盛り上がってきたところで、反対にフィオムは固まってしまっていた。
口は何かを言おうとあわあわしているが、言って良いのか悪いのか混乱中、みたいな。
「……えっと、ミレアは、その、Sランク冒険者のグリードと、親戚、なんですよね?」
「ん? だから、そう言っただろう?」
俺がそういうと、フィオムは“やっぱり私の方がおかしいのかな……”としょぼんとする。
……その顔を見ると、何かやっぱり見落としているみたいな感覚が。
「えーっと……何だ、もしかしてまた何か忘れてるか?」
「あの……その、グリードは今『オリジンの源剣』にボディーガードとして雇われてる、んですよね?」
「ああ……そうだよな?」
今度は念のためフレアに確認する。
フレアは頷く。
「うん、ちゃんと私自身の目で見たから、間違いないよ?」
「…………」
俺とフレアが揃ってフィオムの言葉を待つ。
そんな俺たちを見て、フィオムはしばらく口を開いては閉じてを繰り返していたが。
「あの――」
意を決したように、告げる。
「――私達、その“グリード”も含めて、誰か『オリジンの源剣』の団員とコンタクトできる人を、探してたはずなんですけど」
「「あ」」
俺とフレアの間抜けな声が、重なった。




