猫のお供はいないけど、モンスター狩に行ってきます!
俺は朝食を済ませ、部屋で荷物の最終確認をする。
大きな物は基本アイテムボックスに入れ、
小さい物、ポーションや携帯食料なんかはリュックに詰める。
本当なら全部アイテムボックスに入れた方が楽なんだが、
冒険者において討伐依頼にほとんど手ぶらだということはありえないらしい。
町中ではリュックを背負っとくのが無難だろ。
郷に入れば郷に従えってやつだ。
ちなみに、リュック自体をアイテムとして考え、
アイテムボックスに入れることには成功している。
だから町から出た後は人がいないことを確認して
アイテムボックスに入れ、帰りにリュックを出すことを
忘れなければ問題ないのだ。
最悪、依頼遂行途中にアクシデントがあって
置いてきたでも通じるかもしれんが
そういうことは何度も使うと怪しまれかねん。
だから基本は忘れないようにしていればいいのだ。
よし、最後にもう一回確認しとくか。
タル爆弾(大)よし!
しびれ罠よし!
こんがり肉よし!
うん、ばっちり!
ごめん、調子乗った。
俺は一通り確認を終え、宿を出た。
俺は何の依頼を受けるか、ギルド会館内の掲示板で考えている。
基本、ギルドが依頼主の場合失敗しても賠償金は請求されない。
ただ、依頼失敗は依頼達成状況に大きく響く。
依頼達成状況が悪いと判断されるとランク降格。
下手をすると冒険者としての身分を剥奪されることになる。
だから依頼主がだれであろうと失敗することにはそれなりのリスクがある。
自分の身の丈に合った依頼を選ばないと。
俺は幾つかの依頼書に目を走らせ、ふと目を止める。
『ウルフ討伐:ウルフの毛皮×5』
やはり最初はやつらにするか。
基本モンスターとして最弱を誇るスライムから入るってのも手だが
最初の戦闘でウルフからは逃げるしかできなかった。
このままズルズル行くと苦手意識ができてしまう。
だから早いうちからウルフを狩ってその意識を払拭しておきたい。
まあ最悪また逃げるか!
よし、これにしよう。
俺は受付のお姐さんに引っ剥がした依頼書を持っていく。
今日は最初に応対してくれたリーさんではなかった。
「これを受けます。」
「かしこまりました。では討伐確認部位はウルフの毛皮5枚です。
よろしくお願いします。」
俺はギルド会館を後にする。
俺は以前のあの森にいる。今回は準備も万端。剣もある。
前の時は3体来たからな、1対複数の可能性も視野に入れないと
後であわてることになる。
俺はとりあえず4体来た時まで対応できるよう脳内でシミュレーションする。
ソロでやる以上こういうのは慣れとかないと。
ある程度見通しができた段階でウルフの捜索を始める。
後ろからの奇襲に気を配りつつ足を進める。
20~30分位捜索を続けただろうか。
まだ他のモンスターとすら遭遇しない。
一度休憩を取って、その後に備える。
探索を再開して約10分位だったか、
目的のウルフを見つけた。
どうやら2匹いるらしい。
モンスターの死体を食っている最中のようだ。
隠れて様子を見ようとするが、
臭いで気づかれたらしい。
まあ、気づかれている状態で始まることも想定の範囲内だ。
さて、リベンジマッチと行きますか!
ウルフは挟み撃ちにしようと左右逆方向に分かれて駆け出す。
俺は銅の剣を抜き、構える。
俺から見て右にかけてきてウルフに対して切りかかる。
袈裟切りにすると同時に地面に剣を持ってない方の手を地面につく。
自分の背後に縦2メートル横3メートルの土壁を魔法で作り出す。
まだまだ誤差はかなり出るがこれだけ大きくしておけば大丈夫だろう。
この大きさの壁を作り出すと、一発で4分の1のMPが吹っ飛ぶ。
体が重くなるのを感じる。
無詠唱のスキルがあるから発動はほんとに一瞬だ。
その分ダルさもすぐに襲ってくるが。
背後でガンっ、とウルフが壁にぶつかる鈍い音が聞こえる。
前方のウルフはまだ息があるようなので再び切りつけてやる。
今度は生死の確認をせず後ろのウルフの排除に向かう。
衝突の衝撃から立ち直ったようで、こちらを向いて「ガルルゥ」っと
にらみを利かせている。
ウルフに切りかかるも横に跳びかわされる。
その隙を逃さず、俺は火魔法を放つ。できるだけ速いものをイメージして飛ばした。
「ファイアボール!!」
魔法は命中し、ウルフは熱に耐えれずもがいている。
俺は剣を振りかざし、とどめを刺した。
ピロローン、っと音がし、びっくりして周りを見回したが何もなかった。
2匹とも生死を確認したが絶命していた。
ふぅ、終わった。
あっ、しまった、1匹燃やしちゃった!
毛皮剥ぎとれない!
うわぁー、倒すことばっかり考えてた。
1匹多めに狩らないといけなくなったな。
めんどくさい。
それにしてもうまくいったな、単純なんだよ、
って言ってもある程度は仕方ない部分もあるよな。
2匹とも同じ方向から攻めたら1度に対処されるから別々に分かれて攻めるってのは
ある程度は合理的だ。片方と獲物が対峙しているときにもう一方が背後から強襲する。
だが合理的であるからこそ俺みたいなやつに先読みされて迎撃を許すことになる。
だからまぁ仕方ないっちゃあ仕方ないんだが。
毛皮を剥ぎ取り用のナイフで切り取り、周りに何かいないことを確認してとりあえず
人心地就く。
少し冷静になった頭で考えたがさっきの音はおそらくレベルが上がったのではないか?
そう思ってステータスを確認する。
Lv.2
HP:63/43(+20)
MP:25/23(+17)
STR(筋力):23(+18)
DEF(防御力):19(+16)
INT(賢さ):22(+17)
AGI(素早さ):21(+16)
LUK(運):1(+5)
うん、やっぱり上がってる。
あれ、でも能力値上がってるか?
ああ、ここでステータス操作すんのか。
能力値の下の方を見るとスキルの上に『能力値ポイント:5』
と書いてあった。
俺はステータス操作を念じる。
今回は発動したようだ。
俺はMPに2ポイント、STRに1ポイント、INTに2ポイント振る。
Lv.2
HP:63/43(+20)
MP:31/29(+17)
STR(筋力):24(+18)
DEF(防御力):19(+16)
INT(賢さ):24(+17)
AGI(素早さ):21(+16)
LUK(運):1(+5)
となった。
ステータス操作のやり方もわかったし、どんどん行くか。
俺はその後、休憩を挟みながらも7匹のウルフとスライム2匹を狩った。
レベルも3に上がり、ステータス操作をしようとしたとき、ゴブリンが3匹通りかかった。
俺はとりあえず隠れることにする。
ゴブリンらは俺に気づかずに何やら話している。
3匹か、ちょっと疲れてるし厳しいかもしれん。
戦闘になった時のために一応消費したMPを回復するためMP用のポーションを飲む。
うん、不味いもう一杯!
嘘です、一本だけで結構です。
一人でばかやってると、手をなんか過剰に振り回して他2匹を説得?しているゴブリンに目が行く。
そのゴブリンは手に何か光るものを持っていた。
何だ、あれ、指輪か?
どうやらその指輪らしきものをどうするかで揉めているっぽい。
何となくの雰囲気だが「これは俺が見つけたから俺のもんだ!」
と持っているゴブリンが主張していて、他2匹が
「いや、それは巣に持ち帰ってリーダーに渡すべきじゃないか?」
となだめてる、いや何となくだが。
ほう、そんなに揉めるならいい解決案を提示して差し上げましょう。
俺のものは俺のもの、お前たちのものも俺のもの。
つまりはジャイ〇ニズムに屈すればいいんです!
俺はステータス操作で5ポイント全部をAGIに振る。
俺はもう一本ポーションを飲み、魔法を展開する。
1匹に一つずつ水の玉を放つ。
今回は頭上に落ちるように計算してだ。
ウォーターボールは3匹に命中し、3匹は何が起こったかわからず上を向く。
俺はその隙を逃さず駆け出し、1匹ずつ首を切っていく。
2匹目が切られてようやく3匹目が事態を理解し、
あわてて対応しようとするも時すでに遅し。
腰にある打製石器みたいな武器をとろうと手をかけたときには
もう彼の首が俺の手によってはねられたあとだった。
ふぅ、切った時の首の骨の感触が手に残ってる。
疑似的に人を切った体験をしたような気分になった。
だが俺はあくまでゴブリンはモンスターだと割り切った。
そしてモンスターを殺すことは必要なことだとしてこれも割り切った。
ウルフやスライムを倒した時なんかもそうだったが、
いちいち感傷的になってたらキリが無い。
どうせ人間は動物を殺して生きるために利用してるんだ。
こういうときだけいい人ぶって同情するなんてことはただの偽善だ。
しない善よりする偽善なんてのも聞こえのいいことを並べてるだけだ。
勝手に比較対象を作り上げて自分たちがいいことをしているという空気に酔いたいだけなんだ。
そう、人間なんてそんな醜いものなんだよ。
そんなやつらに淘汰されるって意味では同情の余地があるかもしれん。
ふぅ、少し思考に入りすぎた。
物の確認をしよう。
俺はゴブリンの死体から物を取り上げる。
やはり指輪だったらしい。
なんかあんまり見かけないようなデザインをしている。
鑑定してみるか。
リア充の指輪:リア充の、リア充による、リア充のための指輪。
リア充であればあるほど運が上がる。
逆に、リア充でなければないほど運は下がる。
何これ、俺への嫌がらせか!
なんだよ、リア充の指輪って!この世界にそんな概念あんの?
いや、それに類する言葉を俺にわかるよう翻訳してんのか。
でもこれはおかしいだろ。
どうやってリア充って判断すんの?
友達の数?恋人がいるか?仕事がうまくいってるか?
わからん、何なんだこれは。
だが俺が持ってても全く意味がないどころか
砂粒程度の俺の運がマイナスにいくかもしれんということはわかる。
ライルさんにでもプレゼントするか。
俺はその日の狩を切り上げ岐路に着く。
報酬は小銀貨3枚と、余剰分の皮1枚につき銅貨2枚だった。
俺は報酬を受け取り、酒場へと向かった。
その日は都合よくライルさんを掴まえることができた。
昨日の今日だったから大丈夫だとは思っていたが休息日だったらしい。
俺はライルさんに今日の成果報告とプレゼントがある、とはなしを切り出した。
「うれしいな、カイトからプレゼントがもらえるなんて。
なんだろ?」
「はい、この指輪です。今日の戦闘で手に入れたんですが
ライルさんにお似合いだと思いまして。」
すると、ライルさんはとても驚いて目を見開いた。
「こ、これは、もしかしてリア充の指輪じゃないのか?」
「知ってるんですか?」
「知ってるも何もその昔、
とある国の王が勇者のリア充さに感服して作り出し与えたと言われる一品で特別のデザインが施されてる。
のちの時代に幾つか同じものが作り出されたが今では世界に数えるほどしかないといわれる
とても貴重なものだぞ!」
なんじゃそりゃ。バカみたいな出自だな。
そもそもこの世界の今や昔にもリア充に似た概念があることに驚きだ。
「そんなにすごい物なんですか、でも私が持ってても意味のないものです。
ライルさんに持っていていただいた方がその指輪をずっとうまく使っていただけると思います。
ですからもらっていただけますか?」
「カイト・・・、わかった。俺の宝物にするよ。絶対なくさないよう家の金庫に厳重に保管しておく。」
「いや、ですから使って下さいって。
なくしたくないのであればちゃんと指にはめていただければいいんじゃないですか?」
「確かに装備すれば魔力の力で装備者の意思で取り外せるようになるが・・・。」
「ならいいじゃないですか、私は無くされるよりも
プレゼントしたものを使っていただけない方が悲しいです。」
別にゴブリン倒してゲットしただけだから無くされても構わないんだが。
「わかった、折角カイトにもらったんだ。大事に使わせてもらうよ。」
「はい、そうしてくださると私もうれしいです。」
ライルさんはおもちゃをもらった子供のようにうれしそうに指輪を見つめ、
大事そうに指にはめた。
俺はそれを見届け、宿へと戻った。
ステータスの表示をこの話より改めました。
以前のままですとHPの最大値や残量が分かりづらく、私が書くにも、そしてみなさんが読まれるのにも支障をきたすと判断しました。
以下、例をもとに今後の表示について説明いたします。
例え・・・HP:49/40(+15)
この例ですと、HPの最大値は55、つまり「/」の右の数値と「()」の数値を足したものになります。
そして残量はそのまま49と判断します。
例え2・・・MP:25/38
これですと、最大値は38となり、残量は25となります。
以上で説明を終わらせていただきます。
もし、こちらの方が分かりづらいというご指摘の方が多い場合は再度検討します。




