隠し事は何だ……
度々遅れてしまい申し訳ありません。
今週は時間に余裕ができることに伴い最低でも後2話は進めたいと思っておりますのでご勘弁を。
「ふぅ~―さて……」
ヴィンセント氏の屋敷を辞して外で一息つく。
「これで滞在日数は稼げそうですね~」
「うん!! これで色々と調べられそうだよ!!」
先程までは少々不穏な雰囲気であったので、ヤクモに同調しているレンも一先ず安心、と言った様子か。
「ああ……だがそれにしても彼等―ヴィンセント氏とご令嬢は二人とも事前に話す内容がまるで分かっていたかのような対応だったと思うんだが」
オルトさんは切り替えが早い二人とは違い、やはりまだ彼等に対する疑念について頭を悩ませている。
俺も同意見ではあるのだが……
「確かにな。あそこまでヤクモの追及に綺麗に対応できるのもそれはそれで怪しくはある。でも今はそこは措いてもいいだろう」
「そうですね~」
もう既にいつもの軽い調子に戻っているヤクモが俺に同意する。
「嘘なら嘘で、ボクらが調べれば直ぐに分かるでしょうし」
「うん、それに本当におじさんたちが何も悪いことしてないなら、それはそれで安心できるしね!」
「う~む……二人が言いたいことは分かるのだが……」
オルトさんは俺やヤクモとは違って真面目だなぁ……
まあオルトさんは本当にただただ真面目に仕事してるだけなんだろう。
だって多分ヨミさんのことについては知らないで、ヤクモに協力する形でついて来てくれてるんだし。
ならそうなってしまうのも仕方ない。
「今は、一先ず滞在日数を稼げただけでも良しとしましょう、オルトさん」
ヤクモも彼女を気遣ってだろう、特に茶化すようなことも無く珍しいことに微笑みかけている。
「ヤクモ……うむ、分かった」
オルトさんも渋々、と言った様子ではあるが一先ず切り替えてくれるようだ。
「―ヤクモォ~、オルトォ~、終わったぁ~?」
タイミングの良いことに、何だか間の抜けたような呼び声がかかる。
声のする方へと視線をやると、今にも寝落ちしそうな様子でいるリュートさんが。
かろうじて起きていると判断できるが、傍で酔っ払いを介抱するかのようにしているライザさんの支えが無ければその場で寝てしまうのではないかと思ってしまう。
「ええ。こっちは……―って、ライザさん、リュートさんは……」
「すいませんすいません!! お仕事中なので必死に起きて下さいと言ってるのですが……」
ライザさんんは本当に申し訳なさそうにして何度も何度も頭を下げている。
「まあ……今迄ちゃんと起きてここまで連れて来れたことが奇跡みたいなものですしね~」
「リュートお姉ちゃん……日中はやっぱり弱いんだ」
ここに来るまでは、歩くという行動をし続けなければいけなかった以上、例え眠かろうが何だろうが朝に弱いヴァンパイアたるリュートさんも途中で深い眠りに誘われることは無かった。
だが、目的地である『ラセンの町』に到着すると、途端にやることが無くなった。
―いや、正確に言えば『地竜の咆哮』のメンバーの動きを観察しておいて欲しい、ということは伝えてあるのだが……
……立って誰かを見続けるだけって、やっぱり眠くなるよね。
「はぁ……済まない、ライザ。いつもコイツの世話をしていて疲れるだろう……何なら私が替わっても良いが」
オルトさんは頭を痛そうに抑えながらもライザさんを気遣っている。
おおう、オルトさんにまで心配されるって……
流石、苦労人だ。
だが、気遣われたライザさん自身は困ったように、それでいて苦労を掛けてもらえることをちょっぴり嬉しがるようにして優しく微笑む。
「フフッ、そうですね……。―いつもいつも、リュート様には苦労させられてばかりです。でも……」
一端言葉を切ると、ライザさんはコックリコックリと舟をこぎ始めているリュートさんに笑顔を向ける。
「「でも?」」
ライザさんはそこで、何の躊躇いもなく、いやむしろ誇るかのように俺達に対して笑って見せた。
「―リュート様は、私の大切な主人ですから」
「「ライザ……」」
「ライザさん……」
「ライザお姉ちゃん……」
そこまで言い切れるライザさんはとてもカッコよく俺達には映った。
こういうのを、主従の信頼関係、というのだろうか。
「ん、んん……ライ、ザ……」
今のやり取りに相槌を打つかのように、リュートさんが呟く。
「はい、何ですか、リュート様?」
寝言を呟いた主人を起こさないために優しく尋ねるかのようにして応じるライザさん。
こんな何でもないところを見ていてもライザさんがリュートさんを信頼しているのが感じ取れる。
いいなあ、こういう関係……
きっとリュートさんも、普段はあんな感じだが、副官たるライザさんには絶大なる信頼を置いて、その感謝だって……
「―ユウがぁ、エッチな格好してぇ、踊るってぇ、言ってるからぁ、えへ、えへへへ……ライザ、最前列取っといて……」
『もう、リュート、そう言うのはエッチだからダメなんだよ!! ―で、でも、リュートになら……』
「おお!! ユウが、恥じらいながら……その手を、パンツに……」
『も、もう!! 実況しちゃダメだよ!! 全く、そんなことしちゃうリュートには、ボクの履いたパンツ、被せてあげないぞ?』
「「「「…………」」」」
―今日も今日とて……リュートさんの腹話術はキレッキレであった。
「あの、その、ライザお姉ちゃん……」
「いえ、大丈夫です……こういうの、慣れてますから」
気遣いの言葉を掛けようとしたレンに対して見せたライザさんのその表情は、何だか世界の理でも見てきたかのようにどこか達観していた。
「ライザ……今度飲みに行こう。私が奢る」
「ありがとうございます……オルト様」
ライザさん……強く生きて下さい。
■◇■◇■◇
「……と、言うわけだ。―次はそちらの現状を教えてくれるか、ライザ」
「はい」
オルトさんがこちらの状況を報告した後、切り替えたライザさんに俺達がいなかった間の報告を頼む。
ちなみにリュートさんはというと……
「えへ、えへへへ……」
―眠りの彼方へと小旅行中である。
まあ彼女が本領を発揮するのはむしろ夜に入ってからなので今はゆっくり休んでもらおう。
『精霊魔法』を使えるミレアにはこうして情報を共有している間にも、風の上級精霊と共に『地竜の咆哮』に関する情報集めを頼んでいるので、この場で俺達に報告をしてくれる主要な人はライザさんに限られるわけだ。
「『地竜の咆哮』に関しては皆さんがヴィンセント氏の屋敷に入られた後、二つに分かれて行動しておりましたので私達5番隊は一方を監視していました」
「という事は……もう一つの方は今もミレアお姉ちゃんが?」
「はい」
「うむ……ではライザ達が監視していた方を頼む」
「了解しました―私達が監視していた方は主に団長の“サイガ”が5人とともに『ラセンの町』内で私達の事情聴取に協力をしていました」
ふむ……あの筋肉野郎か。
「それは……そんなに素直に協力したのか?」
「はい、そうですね……むしろ積極的に私達に情報を提供してくれていたと思います」
「……どんな内容が聞けた?」
俺がライザさんに訊ねると、彼女は一つ一つ思い出すようにして告げる。
「彼等は定期的に『ラセンの町』が発注するクエストを受注しているクランなのだそうです。町の付近に出没するモンスターを定期的に討伐して数を減らしたり、現れるドラゴンに悪さを働く者を成敗したり……」
「……そうか」
その話自体は俺も事前に王都で読んだ報告書で知っている。
この『ラセンの町』は過去、王子(正確には『王女』だが)たるフィオムの親友の父親が領主をしていた頃にドラゴンが現れて以来、様々なドラゴンがこの町に姿を見せるようになった。
この町の人々は、ドラゴン達が傷ついているようであれば医者に診せ、空腹に苦しんでいるようであれば彼等が食べれるような食糧を分け与え、彼等を利用しようと悪だくみをする者がいれば冒険者を雇って守った。
ドラゴン達もまるでその恩に報いるかのように町を襲うようなモンスターがいればそれらと体を張って戦った。
だから、冒険者が雇われていたこと自体は事前知識として頭に入ってるのだが……
何かが引っかかる。
まあその『何か』というのは今は分からんが。
そのこと自体に嘘はないのかもしれないが、俺やディールさんのように大事なことを言ってない、という事もあり得る。
先程のヴィンセント親子(特に娘のクー)とのやりとりのことだって気になるし。
「ふむ、そうですか……」
ヤクモも俺と同じくライザさんの話を注意深く聴いていた。
「ヤクモ、お前も胡散臭いと思うか?」
恐らく俺と同意見であろう彼女に尋ねると、ヤクモは一度コクリと頷き、俺の目を見て……
「はい、胡散臭い、というか……―まあ十中八九それは嘘ですね」
何でも無いかのようにサラッとそう言ってのける。
「なっ!? ヤクモ、本当か!?」
オルトさんはその言葉に驚き、飛び上がる勢いでヤクモに食いつく。
「はい、恐らく別の目的で『地竜の咆哮』はこの町から依頼を受けているはずです」
『恐らく』という言葉を使って断定する形は避けているが、ヤクモ自身の中では彼らが嘘を吐いていると信じる確固たる根拠があるのだろう。
いつも飄々としているヤクモではあるが、目がそう言う風に語っていた。
凄いな、俺は『嘘』だとまでは断言できないのに……
「……根拠を、伺っても?」
彼等自身から直接事情を聴取したライザさんが『嘘』だと切り捨てたヤクモにそう尋ねる。
「はい、勿論構いませんよ?」
ヤクモはこれまた本当に何でもないかのように頷いて、人差し指をピンと立てて淡々と語りだす。
「―そもそもですね……皆さんは『地竜の咆哮』をどういった組織だと認識してますか?」
「え? えっと……それは……七大クランの一つ―『ノームの土髭』の傘下、なんだよね?」
到着して早々、彼ら自身が俺達に語ったことを思い出すようにしてレンが代表し、ヤクモの質問に答える。
「そうですね。そのこと自体には嘘はないでしょう」
「ん? それでは何だ? 何が問題なんだ?」
「オルトさん、じゃあ彼等がどこを本拠地として活動しているか……知ってますか?」
「『ノームの土髭』の傘下なのであろう? ならナギラじゃないのか?」
オルトさんが告げた『ナギラ』は俺がカノンと出会ったところであり、またクレイやアイリさん達と出会ったところでもある。
あの時は色々と大変だったな……
―と、そんな感傷に浸っている俺を余所に、ヤクモは大きく首を振り、オルトさんの言葉を否定する。
「違います。彼等はですね……―そもそも『リューミラル王国』の領地内には普段いないんですよ」
「え!? ど、どういうことだ!?」
「オルトさん、仮にもユウさんの代理なんですから、少しは自分で調べて欲しいものですが……」
「うっ……す、すまん」
「まあ今はいいです。―彼等は北の『ソルテール帝国』を活動拠点としているんです」
「な!? 『リューミラル』ではなく、『ソルテール』、だと!?」
「はい。主要なクラン―まあ七大クランですね―の傘下にどんなクランがあるのかは大体頭に入ってますので」
「はぁ~ヤクモお姉ちゃん凄いねぇ~」
レンはさらりと言ってのけたヤクモに羨望の眼差しを向けてまで感心している。
うん、そんなところまで覚えているなんて確かに凄い。
「こんなもの、直ぐに覚えられますよ。―ちなみに七大クランの中で一番傘下のクラン数が多いのは『ルナの光杖』、2番目が『イフリートの炎爪』ですね。女性クランの圧倒的支持を得ています。『オリジンの源剣』だけは唯一傘下のクランが無く一つの組織として活動している色んな意味で規格外のところですが……」
ヤクモは誇るでもなくただただ事実を語っているが、それに加えてそれらの傘下クランがどういった役割をしているかや今語ったようにどこを活動拠点としているかまで頭に入っているのだ。
これには俺も含めてその場にいた全員が感嘆の声を漏らした。
伊達にユウさんの懐刀をしていたわけではないのだな……
「―と、話はそれましたが、要するにそう言う事です」
「ふむ……ソルテールを活動拠点としているクランをわざわざ指名してこの『ラセン』にまで呼ぶからには、ただのモンスター討伐だけ、というのは些か無理があるな」
「ですね。普段はソルテールにいながらリューミラル王国の『ラセンの町』に定期的に討伐に来る、という事自体本来ならおかしいです」
ライザさんも納得した、という風にオルトさんに同調する。
「まあ普通は母体となる七大クラン自体に関心が行きますからね~、一々傘下のクラン全部を覚える、ということはしないでしょうし、分からなくてもおかしいとまでは言いませんが……」
「むう……すまん。今後精進する」
普段からは想像もつかないな、申し訳なさそうにしてヤクモに謝るオルトさん、という逆転の図は。
「―ま、それは今は措こうぜ。ヤクモのおかげでアイツ等が何かしら隠しているのは分かった」
あまり長引かせてはオルトさんの性格上引きずる可能性もあるので話を切り替える。
「はい、ミレアさんが帰ってくればまた新しい情報も得られるでしょう」
ヤクモも俺の意図を読み取ってくれたらしい。
「うむ……分かった。皆、引き続き調査をしよう。リュートは……寝てるな。―ライザ、リュートと共にミレアの帰還を待ってアイツから報告を受けてくれ」
オルトさんは心配した風に引きずることも無く、即座にどう行動するかの指示をテキパキと出して行ってくれる。
「はい、分かりました。―さっ、リュート様、行きますよ?」
「えへ、えへへへ……ユウ、一緒に寝ようねぇ~……」
『うん、勿論!! ベッドではちゃんと優しくするから……』
「「「「…………」」」」
ライザさん、ストレスでおかしくなっちゃわないか心配だ……
「では私達は手分けして聞き込みに行くか―ヤクモ、行くぞ」
「え~~~オルトさんとですか~~~? サボ……あまり休めないじゃないですか~」
「だから私がついていないとダメなのだ!! ―行くぞ!!」
「はぁ~~仕方ないですね~―では先輩、レンさん、また後程~」
「ああ」
「うん!!」
まさに猫のようにオルトさんに首を引っ張られながらヤクモは連れて行かれた。
「さて、じゃあ行くか、レン」
「うん、お兄ちゃん!!」
■◇■◇■◇
「それで、どうしよっか……」
「うん、そうだな……」
オルトさんの方はヤクモがいるから、うまいこと誘導してヨミさんの情報収集へと導いてくれるだろう。
一方こっちは完全に俺の事情を把握してくれているレンとのタッグなので非常に動きやすい。
ただそれでもこの町の中は人っ子一人いない状態である。
聞き込みをしようにも一々一つ一つの家を訪ねなければならないのだ。
それでどうしようかと決めかねている―今の状況はまあそんな感じ。
「う~ん、それにしてもヤクモお姉ちゃん凄かったね! 強いのに、色んなこと知ってて」
レンも俺がどう動くか決めかねているのを雰囲気で察してくれたようで、適度な話題を振ってくれる。
「確かにそうだな……シアみたいに戦闘のキレもあって、それでいてエフィーみたいに知識も豊富だ」
それにアイツの人柄も俺個人としてはそんなに嫌いではない……いや、むしろ結構好意的には思っているくらいだ。
何より一緒にいても退屈しないしな。
「うん!! ヤクモお姉ちゃんが一緒ならとっても心強いもんね!! 嘘だって直ぐズバッと見抜いちゃうし!!」
「ああ……」
むう……確かにレンの言う事は俺も認めるところではあるがこんなに無批判にアイツを褒めてやるのは何だか面白くない。
お、俺だって嘘かどうか位ズバッと分かるさ!!
『か、勘違いしないでよね!! べ、別にアンタのために作った訳じゃないんだから!! ちょっと晩御飯作り過ぎちゃっただけで、捨てるのはもったいないし……そ、それだけなんだからね!!』→ダウト!! その割には指の絆創膏が目立ち過ぎ。
『俺達の冒険は、まだまだこれからだぜ!!』→ダウト!! それ言ってる時点でもう冒険終わってる。来週からはもう見れない。
『キュー〇ー3分クッキング』→ダウト!! どう計ってもクッキングが3分では終わらない無理ゲー。
『おう、の〇太!! 面白そうなもん持ってるじゃねえか!! ちゃんと返すから、それ俺様に貸せよ!!』→ダウト!! 貸したら最後、未来の科学の結晶たる青狸の力を借りないと絶対に返って来ない。
女子がにっこりとほほ笑んで言う『〇〇君って~、良い人だよね~』→ダウト!! それは『(都合の)良い人』の略。女子は純粋なる男子諸君が思っている以上に狡猾な生き物なのである!!
他にも日常では嘘が溢れている。お母さんが言う『絶対怒らないから、お母さんに何があったか言ってみなさい』も絶対『どうしてそんなことしたの!!』と後で叱られるし、『俺、全然テスト勉強してないわ~』とか言う友達ぶった野郎も絶対良い点数採りやがる。
ほらっ、俺って嘘を見抜くの上手いだろ?
これだけ嘘見抜くの上手いと嘘つくのも得意だし、多分LIAR GAM〇でも言い線行けるな、うん!!
そうして大きく脱線したバカな思考を展開していると、突如として空から声がかかって来て……
『ブーブー、カイトー、嘘吐きー!!』
『嘘吐きだもーん!!』
『そうだそうだーー!!』
正に今嘘がどうのこうのと考えていた所にそんなことを言われてしまう。
「ん? いきなりなんだ。それは流石に心外……」
咄嗟に声に反応してしまったが、隣で今迄話をしていたレンは可愛らしく小首をかしげる。
「? えと……お兄ちゃん?」
「あ、いや……」
勿論今の声はレンから発せられたものではないので……こうなる。
「スマン……精霊が何だか俺に文句を言ってきたんで」
「え? お兄ちゃん……」
そんな可哀想な人を見る目でお兄ちゃんを見つめないでくれ……
「説明しただろう? 『精霊魔法』の効果で、精霊が見えるんだって」
「それは……そうだけど……本当に大丈夫なの? 精霊さんとストレスから来る幻覚、見間違えてたりしない?」
うん、今お兄ちゃんは現在進行形で幻覚が見えるかもしれない位精神的ダメージを負ってるよ。
「いや、本当に大丈夫だから。そこは俺を信じてくれ」
「……うん、分かった―それで、精霊さんは何て言ってるの?」
「ああ、それは……」
何とか納得してくれたので、レンが促すままに俺は再び精霊達に何のことを言っているのかを訊く。
「ええっと……それで嘘って何の話だ?」
ちなみに今俺が話している精霊達はかくれんぼで見つけた内の一部―今は10人を見つけた。
彼女達にとっては隠れているつもりでも俺にとってはバレバレなので、飽きがこないよう一定時間にちょっとずつ見つけることにしている。
そして見つけられた精霊達には邪魔にならないよう「適当にそこら辺を飛び回っといてくれ。ちなみに……何か俺に有益な情報を提供した者には再度隠れる権利を与えよう」と言って情報収集にも協力してもらっている。
こうすれば彼女達ももう一度隠れたい一心で何か無いか必死に探してくれる、それも遊び感覚なのでお互い気兼ねしないでいい。
俺は言った通り、他の精霊達が隠れている場所を密告した者には再度隠れても良いと言っているので(まあ全員どこにいるか既にバレバレではあるのだが)嘘は吐いていないと思うんだが……
『嘘だもーん!! カイトー、女の子、可愛い服着るって言ったー!!』
『うーん!! 言った言ったーー!!』
『着ないと変だとも言ったぞーーー!!』
「それは……確かに言ったが……」
それは精霊達が可愛らしい女の子の姿をしているのにも拘らず素っ裸でいるから、何とかして服を着せようと弁舌を振ったのだが……
「お前等結局着てないじゃんか……」
誰に言うでもなく一人ごちる。
精霊には精霊の価値観があるのは否定しないが、彼女達には結局俺の意図は通じなかった。
なのに何故彼女達は今この話を蒸し返すのか……
「で、何でそんな話をするんだ?」
『だってー!! 女の子なのに、可愛い服着てなかった子、いたよー!?』
『そうだそうだーー!! それだけじゃないもーーん!!』
『皆男の子が着る服着てかくれんぼしてたぞーーー!!』
は?
女の子なのに……男の服を着ていた?
しかもそれでかくれんぼ??
彼女達が言うことに頭の上で疑問符ばかりが浮かんでくる。
どういうことだ?
「えーっと……それは何かを探してる時に見つけたのか?」
『うん!! だってもう一回隠れたいもーん!!』
「それは家の中に入って、ということか?」
精霊達は俺達人間のような実体とゴーストなどに顕著な虚体とを使い分けることができる。
まあ要するに壁なんかをすり抜けることもできるし、一方で形あるものに触れることも自由自在、ということだ。
だから家の中に入っちゃってることは……まあ目を瞑っても良い。
『そうだぞ、もー!! 入って誰か隠れてないか探してたら、人間の女の子がカイトーみたいな男の子の格好して隠れてたんだぞー!!』
『だからカイトー、嘘吐きだもーん!!』
「…………」
町の人が皆して、俺達が来たら家の中に入って行ったということはまあ説明できなくはない。
あんまり騎士とは関わりたくはないから俺達が帰るまで家の中で待機……
でも精霊達が言っていることは?
それが本当ならハッキリ言って訳が分からん。
どうして騎士が来たら、女性が男の恰好をして隠れるんだ?
これは調べてみる必要があるな……
「もしかしたら、俺が嘘を吐いてしまっていたことになるかもしれない。よし、皆が言ったことが本当なら全員もう一度隠れ直すことを許可しよう!」
俺がそう告げると、見つかって騒いでいた精霊達から一斉に歓喜の声が湧く。
『うしゃー!!』
『やったぜーー!!』
『もう一度仕切り直しだーーー!!』
休み時間にはしゃぐ子供達のように楽しげに暴れ回る精霊達の対応は一先ずこれでいいとして……
「えーっと……精霊さん、何だって?」
待ってくれていたレンに向き直り、俺は事情を告げる。
「何ともきな臭いことになった……何でも町の人の中に、家の中で男装して隠れている人がいるそうだ」
「え!? それって……どういうこと?」
「いや、俺にもさっぱりだ。―だから、今から調べに行く」
「うん、分かった」
俺とレンは手近い家に目星をつけ、ようやく行動を開始した。
嘘云々の話はまあネタですので軽くスル―していただければ。
キュー〇ーもあれはあれで結局はどこに視点を当てるかの話なんでしょうね。
あれもネタですのであしからず。
次話で恐らくちょびっとヨミさんの動向の一端が出てくる予定です(そしてその次話は今の所、水曜日か木曜日の予定です)。




