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そうかここ実家か、なんかいろいろ納得。

「そうだったんですね。じゃあ従業員さんは全員ご家族ですか?」

「いや、確かに妹が二人働いてるが全員じゃない。」

「では、雇われてるんですね?」

「うーん、雇ってるっていうかなんていうか・・・、」

うん?なんか歯切れが悪いな。

なんか深く突っ込んだらまずかったのかな。

「言いづらいことでしたら話さなくても大丈夫ですよ?」

「いや、そういうわけじゃないんだ。ただな、

この話をするとお前を幻滅させるかもしれん。」

ん?、雇ってる人に何か後ろ暗いことでもあるのかな。

よっぽどのことじゃない限りたぶん引かんが。

「人は誰しも話したくないことの一つや二つあるものです。

ですから無理して話そうとなさらなくてもいいんですよ。

ただ、私はライルさんからどのようなことを話されても大抵のことは

受け入れられる自信があります。ライルさんのこと信じてますから。」


相手に話すかどうかの主導権を譲る。

ちゃんと信頼ポイント積んどくのも忘れない。


ライルさんはそれを聞いて決心したのか居住まいを正す。

「実はな、妹以外の働いてる人はみんな親父の奴隷なんだ。」

「奴隷って、あの?」

「どの奴隷を指してるかは知らんが、れっきとした奴隷だ。」

マジか!とうとう出てきたか。

妹さんにも言えることだが、鑑定使ってたら気づけたな。

身分見れば奴隷かどうかわかるし、妹さんなら名前見たら一発だろ、

確かライルさん名字もちだし。


でもなんでライルさんは俺がこのこと聞いたら幻滅すると思ったんだ?

仮に俺が奴隷を持ってる人に嫌悪感を持つとしても、実際の所有者はライルさんのお父さんなんだろ?

人気者だからこその心配なのかもしれん。

そうだとしたら俺には一生わからん。


「幻滅したか?」

やはり心配らしい。

仮に俺に嫌われたとしてもライルさんの不動の人気には傷一つつかん。

過剰じゃないか?

「そんなはずないじゃないですか、それどころかすごいと思いましたよ。

妹さんお二人以外従業員は奴隷の人たちなんですよね?

一度ここに伺った際酒場全体を見ましたが、

従業員全員が生き生きとしていらっしゃいました。

普通、虐げられてたり待遇の悪い生活を強いられてたら

あんなに楽しそうな顔して働きませんよ。

ライルさんやご家族の方々が大切に扱ってらっしゃる何よりの証拠です。

ですから私が尊敬こそすれ、幻滅することはありません。」


俺の言葉を聞いてライルさんは心底安心したようだ。


「そうか、もしかしたらカイトに嫌われるんじゃないかってかなり心配だったんだ。

カイトに話してよかった。」

「どうして私が幻滅すると思ったんですか?」

「奴隷を持ってるってだけで嫌悪感持つやつが少なくないんだよ。

奴隷自体を嫌ってるやつからしたらそれを持ってるやつも同罪。

カイトは記憶が無いからもしかしたらなくす前はそういうやつで、

奴隷の話をきっかけにして思い出すかもしれんだろ?

そしたら多分俺のこと嫌いになるし・・・。」

おおぅ、結構考えていらっしゃる。

でもその可能性ってほとんどないんじゃないの?

奴隷の話自体聞ける機会なんてここに来るまでにかなりあったし、

俺が本当に記憶喪失で奴隷の話聞いて記憶取り戻すほど奴隷のこと嫌いなら

逆に記憶無くしてもなにかしら俺自身から奴隷についてのアプローチがあるんじゃないか?

「あなたは奴隷を持ってませんよね?」とか聞いてから人と接するみたいな。

で、それだと「奴隷」について自分から発言して「奴隷」っていうキーワードを

自分で引き当てちゃってとっくに記憶を取り戻してるはずだからその線はなくなる。



要するにライルさんは心配し過ぎってこと。

でも俺なんかのためにここまで考えてくれたんだ。

俺も心を鬼にしてライルさんに言わないと。


「ライルさんのお気持ちはよくわかりました。

ですが私も言わせていただきます。

ライルさんは奴隷の人々を家族のように大切に扱ってらっしゃる、

だからこそためらわずに私に教えていただきたかった。そして私が

ライルさんの憂慮なさるような下賤な輩ならきっぱりと縁を切るべきなんです。

でないと結果的に奴隷の人々を軽んじていることになります。

ライルさんにはそのようなことは似合いません。

もっと堂々としていればいいんですよ。

ここの町の皆さんはそんなライルさんが好きなんですから。」


この町に来てまだ2週間とちょっとの奴がすんごい偉そうだな。

今回はちょっと言い過ぎたかな、俺のイケメン力が出過ぎた。

ま、こんくらいの誇張なら許してもらえんだろ。


俺が自己満足に浸っていると、すすり泣く声が漏れだす。

うっわ、泣かしちゃった。ここまでするつもりなかったのに、言い過ぎたか?

どうしよ、ヤバい、泣かれるのは男女関係なく困る。

どうすればいいかわからん。

ええっと、いないいないバァだっけ、違う、それは赤ん坊のあやし方だ。

じゃあ僕の顔をお食べよ?いや、それ俺がやってもグロッキーになるだけだし。

むむぅ、鬼の仮面と出刃包丁があれば俺の得意な秋田名物を披露するのだが・・・。


俺がああでもないこうでもないとあたふたしていると、すすり泣く声が止み、

ははっ、とライルさんが笑う声がする。

「カイトと知り合えて本当に良かった。こんなこと言ってくれたのは、カイトが初めてだよ。

皆俺に遠慮してどっかよそよそしいし。でもカイトは真正面からぶつかってくれる。

俺、こんな親友が欲しかったんだ。頼む、俺と親友になってくれ。」

ごほっごほっ、あまりの斜め上な展開に若干むせる。

俺そんな熱血キャラじゃないよ?

ただ信頼ポイント稼ごうとたくらんでただけなのに。


どうしよ、交友関係絶対広いし親友になったらライルさんを好きな人に嫉妬で殺されるかもしれん。

できるならお断りしたい。

ただ普通こんなこと言われたら断るのってすんごい勇気いるよね?

俺にそれを要求するの?

今まで碌に友達すらいなかった俺に?

親友が欲しくないかと聞かれたらそりゃ欲しいさ。

しかもライルさんみたいにいい人ならなおさらだ。

ただ今後のことを考えるとやはり厳しいものがある。

スキルとか記憶喪失じゃないこととか色々話さにゃならんようになるだろう。

するとライルさんを騙してたことがバレる。


ライルさんが親友として仲良くしたいと思ってるのは記憶が無い「俺」であって、

記憶喪失と偽ってライルさんと接している「俺」ではない。


それに、親友云々みたいな感情的な部分に今後のことを持ち出して自分の素直な感情よりも

打算的に話を進めようとしている自分がいる・・・。


こんな人間がライルさんみたいなできた人と親友?

ハッ、寝言は死んでから言えってもんだ、

あ、もう一回死んでたか。


問題はそこじゃないな、

ライルさん顔広いんだしそのうち俺なんかよりふさわしい人見つかるって。


なんかわけありの彼女が別れ際に言うセリフっぽい。

「私なんかよりもっとふさわしい人を探して。」みたいな。


これそのまま言ったら引き止められるな、やんわりと違う方向から攻めないとまずい。

どういう構成で話をするか、俺は瞬時に組み立てる。

よし、ライルさんのために、そして俺のためにもここはちゃんとお断りしよう!


「ライルさん、お気持ちはうれしいんですが私には記憶がありません。

ライルさんの話をお借りするなら、

私は記憶を失う前の自分がどんな存在だったかわからないんです。

天性の犯罪者かもわかりませんし、人ですらないかもしれません。

何もわからないままこの話をお受けして、

後になってライルさんを巻き込むような形になってしまっては

私は後悔してもしきれないでしょう。

ですから、本当に申し訳ありませんがこの話をお受けすることはできません。」

さて、完璧なロジックだったはずだが納得してもらえただろうか。


「そうだな、いやその通りだ。すまん、俺が急ぎ過ぎたんだ。

もっとカイトのことをよく知ってカイトの過去を受け入れられるほどに

なれたらまた俺からお願いすることにするよ。」


「はい、その時はまたよろしくお願いしますね。」

よかった、あとくされもなく断れたようだ。

ライルさんも若干悔しそうではあるが納得してくれたようだ。



その後、ライルさんに色々なことを聞いた。

ライルさんのお父さんが数か月前に重病で倒れ、今も治療中であること、

その看病のためお母さんが付きっきりになって看病していること、

酒場自体は妹さんや奴隷の従業員さん達のおかげで回っているが、

お父さんの治療のためにお金がかかること、

それを何とかするためにライルさんは冒険者になったこと等。


話の途中、ライルさんの妹さんの一人、ルアさんが入ってきた。

酒場の方はもういいらしい。

ライルさんは最近冒険者になりたてなのにすじがよく、

既にDランクで、Cランクへの昇格も時間の問題だと言われているらしい。

自慢の兄だと鼻高々に話していた。

ちなみに今のライルさんのレベルは17だった。

2週間の間に何があった、10位上がってね?


良い家族だな・・・・、俺場違いじゃね?


それからは、俺の相談に乗ってもらった。

とりあえず俺の知っている範囲でモンスターがどういうものかを話し、

間違っているところ、注意した方がいいところを指摘してもらい、

情報をすり合わせていく。


最初こそ無理なものの、レベルが上がればゴブリンも一人で行けると言われた。



最後にジョブ・職業について教えてもらった。

転職・昇級はギルドの受付に言ったらできるそうだ。

基本、初級ジョブの技能をマスターしたら中級、中級の技能をマスターしたら上級と

昇級が可能になるらしい。

          

戦士(初級)→剣士(中級)→剣豪etc(上級)

魔法使い(初級)→魔導師(中級)→賢者etc(上級)

ただ盗賊とか暗殺者とか一定のことをすると強制的に

そのジョブに転職させられているものもあるとか。

そういう特別なことをしないとそのジョブに就けないものを

固有ユニークジョブというんだとか。


職業を付けているとその職業に適した能力値が上がりやすくなるらしい。

戦士ならHPとSTR、魔法使いならMPとINTというふうに。


そして、ステータス上には現れないが、その職業に適した能力値が少し上昇するらしい。

とすると、俺が3つ職業を付けているのは無駄ではないということか。



話を終えると、もうかなり遅い時間になっていた。

酒場ももう閉める準備をしていたが、

ライルさんがご飯を食べていけというのでごちそうになった。


その時奴隷の従業員さん達は俺と同じ席で座ることをためらったが、

ライルさんが、「いつも通りでもいいんだよ、カイトは気にしない奴だから。」

と言った。

奴隷の方々はなおも食い下がろうとするが、俺が気を使って、

「ライルさんのおっしゃることを素直に聞けないという方が返って

ライルさんを辱めることになりますよ?」というと

あわてて座りだす。



その後は一緒に食事をとり、自己紹介をしたり、

どれだけ彼女らがライルさん家族に感謝しているかとか

ライルさんの昔話なんかを聞いて楽しい時間を過ごした。


帰り際に、ライルさんに「今日は本当にありがとう、カイト。

いつでも俺を頼ってくれ。必ず力になるから。」

と熱い言葉をもらった。


従業員さん達も「いつでもいらっしゃってください、

最善を尽くしておもてなしさせていただきます。」

とこれまた大層なことを言われた。


もう一人の妹さん、リアさんは疲れて眠ってしまったようだが、

ルアさんは見送りに来てくれて、「兄ともども今後もよろしくおねがいします、

カイトさん!」

とハグされた。

えっ、お兄さんの前だよ、こんなことしていいの?

と恐る恐るライルさんの方を見るも、普通に笑顔だ。

なんだ、なんか欧米のキスみたいなもんなの?

紛らわしい。

危うく勘違いしてしまうところだった。

そうだよね、まだ会って初日にそんなうまい話無いよね。

ルアさんの顔が若干赤らんでいるがさっきお酒飲んでたからだよね。

うん、俺みたいに訓練された紳士じゃなきゃあれでやられてただろうね。

流石俺、鍛え方が違う。



俺は宿へと戻ってすぐにベッドに向かい明日に備えることにする。


明日はとうとうモンスター狩りじゃぁー!



再び誠に残念なお知らせですがルアちゃんを今後ヒロインとして描く予定は今のところございません。

まだヒロイン一人も登場してない今女性の影が増えるのはあまり好ましく思えませんが、書いてたら出てきてしまったんです。

仕方ありませんよね。

ヒロインでないのに出すということは何かの伏線か?

と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが

まだここでは申し上げられません。

伏線かもしれませんし、伏線じゃないかもしれません。


とりあえず、できるだけヒロインの登場を急いではいますので今しばらく

お待ちください。

※ルアちゃんもターニャちゃんと同じでヒロインになれるかは今後の私達次第ということになります。どうでもいい方は無視して引き続き物語をお楽しみいただければ問題ありません。


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