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さてと、行きますか……

彼女の目から零れた涙、そして言葉を信じるならやはり何らかの理由があってヤクモはユウさん達から距離を置いているのだろう。


その原因を突き止め、可能な限りそれらを全て排除する―それが今俺達のやるべきこと。

俺は隣にいてくれるレンと頷き合って彼女に近づこうとする。

だが、数歩足を進めた途端、眠っていたはずの彼女がスッと目を開け、即座に俺達に睨みを利かせてくる。


「……誰、ですか?」


その瞳には先程涙を流し、弱音を溢していたような脆さはない。

明確な殺気を伴って俺達を射竦めようとする意志の強さが点っている。


近づいていったのは俺たちなのに、こっちが驚かされる。

俺はそれで警戒したレンの頭をポンと撫でてから前に進み出る。


「……今ので気づくか。流石だな」

「…………」


自分でも胡散臭いとは思うが彼女は俺の応対に不信感でも抱いたのか、沈黙してしまう。


「はぁ……俺はマーシュ。お前がいる12番隊に新しく入ることになる。その挨拶だ」


うん、一応『誰』という問いに対する答えにはなっている。

まだ正式に入隊が認められたわけでは無いのでどこかのガールフレン〇のように語尾に『(仮)』でもつけないといけないのだろうがまあ嘘は言っていない。


「んで、こっちがレン。同じく12番隊に入ることになった」

「よろしくね! ヤクモお姉ちゃん」

「そう、ですか……」


自己紹介は受け入れられたようだ。

だが彼女はその際も警戒を一切解かない。


俺がこれ以上一歩でも近づこうものなら一閃にして体を真っ二つにされる―そんな想像がクリアに出来てしまう程に彼女の纏う空気は厳格だった。


ただ、以前に彼女を見かけた時にも思ったがその懐に差している刀は抜けないよう紐でグルグルと縛られている。

なので何で切り裂かれるのか―それはまあ彼女が過去得た能力と関わってくるわけだが……


「それで……何が目的ですか?」


ヤクモは眼光の鋭さそのままに先を促してくる。


「ん? 目的って……だから言っただろう。挨拶だって。同じ隊に所属するわけだからな、挨拶位しておかないと―」

「……嘘は、結構ですよ? 時間の無駄ですから」

「嘘? 何を根拠に―」


そうしてすっ呆けようとしたその刹那、嫌な感覚が俺の目前まで迫る。

俺は即座に剣を抜いてそれを遮ろうとしたが、その前にレンの槍によって迫ってきた何かは打ち払われる。

それはまるで刃と刃がかち合うような火花と金属音を上げる。


ちょっ!? レン……助けてくれるのは嬉しいんだけどさ、俺抜刀しといて何もしないってカッコ悪いじゃん。


俺は「別にわざわざ自分が出る幕も無かったんですよ? 俺もやろうと思えばできたんですよ?」という雰囲気を醸し出すために剣をブンブン余計に振って特にレンにそれを伝える。


べ、別に俺だって感じ取ってたんだからな!?

動けなかったわけじゃねえんだからな!?


レンはそんな健気な俺には気づかずに、俺を守らなければいけない原因を生んだ主から視線を外さない。

その主であるヤクモはやはり、刀は抜いておらず、そして手には何も持っていない。

なら何故、レンの槍が衝撃を受けることになったのか……


恐らくこれだと言う検討はついているのだが、その考察を行わせてくれるほど目の前の相手は優しくは無い。


「……言ったはずですよ? 『時間の無駄』だって。ボクに挨拶? こんなスラムまで? そんな嘘だと直ぐに分かるような嘘は止めた方が良いですよ」

「…………」


鋭い。

こうして直ぐにバレてしまうと次の嘘をつくのに萎縮してしまうからできればもう少しお手柔らかにして欲しかったのだが……


仕方ない。

今折角会話が成り立っているのだ。

恐らくシキさん達よりかは会話が続いている。


何の利害関係も無いからこそ彼女もどう判断すべきか窺っているんだろう。


俺は予定を前倒しして、本題である次の一手に移ることにする。


「…………ハッハ、流石、第10師団総隊長の懐刀なだけはあるな」

「…………」


大仰に頷いて見せたが彼女は特にリアクションは示さず、警戒を続ける。


「目的が聞きたかったんだろう? 教えてやるよ。……総隊長がいない今、第10師団の中で一番強いのはお前だって聞いた」

「…………」

「要するに、そのお前をどうにかすれば第10師団内に敵はいないってことだ……なあ、お前、俺と組まないか?」

「…………は?」

「俺は第10師団の中でやらなければいけないことがある。そうした中で憂いはできるだけ少ない方がいいだろう? そう考えると、やっぱり一番強い奴と手を組んどけば色々と安心できるわけよ、これが」

「……そんなバカみたいなことに、何でボクが付き合わなければいけないんですか?」


ごもっともで。

俺も自分で意味わからないバカみたいなこと言ってるなぁ、って思うもん。

でも噛ませみたいな雑魚キャラって大体こういう意味わからないこと言ってない?


頑張ってそれを参考にしてんだけどな……だってそれっぽいこと言わないと嘘ってバレるもん。

大きな嘘のために小さな嘘をつく。

これ、真の嘘吐きの鉄則ね。


さて、それはそうと、布石は置いた。

ここからが本番だ……


「あん? だってお前も第10師団の奴等に不満があるからこうやって不良ぶってんだろう? 聞いたぜ? お前、総隊長だけでなく1~5の各隊長とも親しいらしいな」

「なっ!?」


そこでようやく彼女は動揺に表情を変える。

猫の耳はビクッと震え、目は驚きで見開かれる。


俺はこの隙を逃さず、彼女に反論する暇を与えまいと次々に言葉を紡いでいく。


「なのにこうしてアイツ等から距離を置くってことは、アイツ等に愛想を尽かしたんだろう? 弱い奴等の近くにいたら、こっちまで性根が腐るからな!!」

「違うっ!! ボクは、ボクは!!」

「何が違うんだ? 俺だってお前の立場ならそうするぜ? 嫌いな奴等からは誰だって距離を取るだろうさ」

「黙って下さい!!」

「させないよ!!」


ヤクモが叫び、腕を振りぬいた瞬間、また先程の如く目前まで何かが迫ってくる感覚に襲われる。

そして今度もレンがそれを槍で撃ち落とす。


明るさとは程遠いこのスラムでは、その襲い掛かるものが何かを捉えることは困難を極めるも、レンは寸分違わずそれを防いでくれる。

……俺の出番は無くなるが、ここでの役割分担としてはこれがベストだ。


本来なら俺がああいった口汚く罵るようなことをレンは好ましく思わない。

だがヤクモを捜すまでの間にどういった風にしてヤクモの本音を引き出すか―それについては二人で話し合って決めていたのだ。


勿論最初、提案した際には反対された。

だが「これも彼女の本音を引き出すためなんだ、そうしないと根本的な解決ができない」ということを根気強く説得した結果、レンは「……じゃあ、お兄ちゃんが危ないことをするのはダメだからね? 戦うのはボクがやるから!!」という条件付で折れてくれた。


だから俺は今、この折衷案を元にヤクモと話をし、何が原因なのかを突き止める。


「何も、何も知らないくせに!! 偉そうなことを言わないで下さい!!」


ヤクモは感情を剥き出しにして俺を睨みつけてくる。

そこには一切の遠慮なんてものは無い。


気圧されそうになるのを何とか自分に喝を入れて持ちこたえる。


まだだ、まだ終わるわけにはいかない。ここからだ……


「ああ、何も知らないさ。知らないからこそ知っていることだけに基づいて話してんだよ。第3者舐めんな」

「なっ!?」

「2番隊隊長のウォーレイはお前に『碌な言葉をかけてやれなかった』って落ち込んでたぜ?」

「ウォーレイ、さんが……」


今度は俺に噛みついてくるようなことはせず、俺が話すことに聞き入る。


「1番隊隊長のオルトはそりゃもう凄いテンションの下がりようだったさ。俺が入ることには独りででも反対を貫く位の勢いだったのによぉ、お前と話した後なんて地面にめり込むんじゃないかってくらい凹んでやがったぜ。『鬼』が形無しだな」

「オルトさん……」

「アルセスもシキもそうだ。お前と話した後は一様にテンションダダ下がりでこっちはたまったもんじゃねえぜ。……そのくせアイツ等は揃って自分のことじゃなく、皆してお前のことを心配する」

「アル……シキさん……」


ヤクモの目には薄らと光るものが滲み始めた。

後一歩ってとこか……


「5番隊の隊長とは会ったことはねぇが、お前に酷いことされても、皆が皆お前を心配しやがる。聞いてるこっちとしてはもう笑うしかねぇよ。―ああ、そう言えば総隊長さんと話す機会があってな、アイツ、何て言ったか知ってるか?」

「ユウ、さんが……何て?」


俺がユウさんと会ったということ自体はもう彼女の関心の外らしい。

本来ならそこをツッコまれると、俺としてはディールさんのことなり色々と話さなければいけないことが出て来るのでスルーしてもらえるのは助かる。


俺はなるべく面白いことでも話すかのように振る舞い、続く言葉を述べてみせた。


「『僕、嫌われ、ちゃったのかな?』だってよ? ハッハッハ、おかしいよな!? だってどう考えてもお前の方に原因があるのに、総隊長ですらお前のことを責めねぇで自分に原因があるんじゃないかって思い出す始末だ。もうこっちとしては手に負えねえぜ」

「ユウ、さん……う、うぅ……」


ヤクモは崩れ落ちるかのように膝を地に付き、口元を抑えてすすり泣く。

彼女が俺の話をどう捉えたかは分からないが、利害関係の無い、もしくは仮にあったとしても対立関係にある者が話すからこそ、嘘が無い事実を話していると分かることも有る。


そう言う風に捉えてもらえるよう話したつもりだが、彼女がそのように捉えてくれていたら俺としては何も言う事はあるまい。


ヤクモは誰に聞かせるでもなく、自分に言い聞かせるかのように嗚咽を漏らしながら言葉を発する。


「ボクが……ユウさんのことを、嫌いになるはず、無いじゃないですか……」


良かった……彼女自身の言葉からそれを直接聴けたのは何よりだ。

俺達が進んでいる道が間違いでは無いことが分かる。


「ユウさん、オルトさん、ウォーレイさん、シキさん、アル、リュートさん……ボクは、皆のことが、大好きです―大好きだからこそ、ボクはこうするしか……ないんですよ」


俺とレンが聞いているなんてことはもう彼女は認識していない。

それだけ今は彼女の中で大切な人達のことを想うことがすべてを占めているのだろう。


「皆さん、優しすぎる、んですよ。ボクが皆さんに、頼ったら、皆さん、こんなボクでも、絶対に助けようと、してくれます。……でも、それだけ、早く、ボクがボクじゃなくなる……」


ん!?

ようやくどこか核心めいたことをヤクモが口にし出して俺とレンは顔を見合わせる。

どういう事だ?

『ボクがボクじゃなくなる』?


「皆さんと、少しでも、一緒に、いたいから……ボクは、ボクは……」


その時だった。

彼女はいきなり「っ!?」っと先程以上に目を見開き、途端に懐から一つの小瓶を取り出す。


俺はそれを見逃さず鑑定する。

すると、名前こそ見慣れない・聞き慣れないものだったが内容は要するに状態異常の『猛毒』を治すための薬だった。


それを踏まえて彼女ヤクモ自身のステータスを鑑定する。


その薬を飲むのだから、彼女のステータスに『猛毒』があったのは言わば当然なのだろうが、問題はそこじゃない。


俺はずっと『索敵』を用いてこの周囲を見張っていた。

と言うのも、念頭にはディールさんから聞かされた話があったからだ。


ヤクモが何かしらの理由で『黒法教』の者と接触、或いは最悪脅されているというようなことでもあるのではないか、ということが念頭にあった。

だからこそ、彼女と話をする際に俺達以外の第3者がいないかどうか―要するに黒幕が出てこないかどうかを見ていたのだ。


…だが、誰もいない。

人っ子一人いない。


だからこそ、異常なのだ。


外的要因がないのにも拘らず彼女は『猛毒』状態に罹った。

そしてそれを当たり前、日常的に起こることだとでも言うかのように薬を用意していて、それを飲んで『猛毒』を治癒した。


シキさん達からはポーションのようなものを飲むことが多くなったとは聞いていたが……


そして彼女自身のステータスを一通り見渡してもそれらしいものは見当たらない。

ハッキリ言ってもう何が何やらよく分からない状況だった。


折角彼女が本音を漏らし始めてくれたというのに、謎はむしろ深まってすらいるように感じた。

レンも不安げな様子で俺の顔を覗いてくる。

安心させるように頭を撫でてやり、その間頭を回転させ続けることは怠らない。


一体どういうことだ……


だが、そんな俺の疑問は彼女が放った一言で氷解していく。


「もう、90%を、超えて……」


その言葉をきっかけに、何故か彼女の手が不自然に動き始め、いきなり俺達に襲い掛かってくる。

レンがいち早くそれに気づいて攻撃を防いでくれるも、驚きは隠せない。


ヤクモ自身も表情は驚きで一色に染まっている。


「お、お兄ちゃん!?」


彼女の奇行に一瞬思考を停止させてしまったがレンの言葉ですぐさま我に返り、ヤクモの発言を過去の事象と照合する。


90%、それに『ボクがボクじゃなくなる』……まさか!?


そう思って鑑定を彼女自身に使う、しかし先程見た時に何もそれらしいスキルが無いことは自分のこの目で確認済みなのだ。

その時から殆ど時は経っていないのだから、再び見たステータスの欄に変化はないのは当然と言えば当然だ。


じゃあ何なんだ!?

何が、何が原因だ……


そうして悪態をつきつつも究明の手を止めない。

過去、ユウさんを助ける際に尽くしたあらゆる手を再現して見せる。


すると、一つのスキルを使った際に導き出された一つの答えが、先程までの自分の認識のミスを俺に思い知らせた。



『索敵』のスキル自体を使う事は間違えていなかった。

むしろ誤ったのはその認識する対象だった。


ユウさんの際はユウさん自身のステータスに『寄生虫(闇)』というスキルがあり、それが問題だと直ぐに分かった。

そしてディールさんの話を聴いていたのでてっきりこういった原因は『黒法教』の誰かは分からないが、少なくとも『人』がもたらしたものだとばかり思っていた。


だが実際には違った。

いや、もしかしたらヤクモが実験にあった際に植え付けられたのだとしたら『人』が原因だと言っても間違いではないが、今のところ、そんなことを論じていても問題の解決にはならない。




―ヤクモの中にいたのは、明確な形を持った『モンスター』だったのだ―




ユウさんの時のそれとは違い、それ自体がステータスを持ち、一つの生命体として生きている。


名前:寄生虫パラサイト


Lv48

HP:212/212

MP:119/119

STR(筋力):68

DEF(防御力):21

INT(賢さ):107

AGI(素早さ):124

LUK(運):34


寄生パラサイト』、『植付【寄生虫・子】』




寄生パラサイト:侵入後、対象の体力を徐々に奪う。奪った体力に応じて侵食率を上げ、100%に達すると対象を完全に乗っ取る。精神状態により体力を奪う間隔の遅速は左右される。スキル所有者が80%侵食すると対象者は常時所有者を認識可能となる(認識可能となってからは、体力を奪う際は対象においては『猛毒』状態として顕在化する)。90%を超えると、侵食される程対象は自己の操作権を無くしていく。……90.2%




『植付【寄生虫・子】』は言うなればコイツ自身では無く、ユウさんのケースのようにスキルとして自分の子を植え付けるものだった。

どんな属性の寄生虫が生まれるかはランダム。


だが俺としては子の方が色々と対処がしやすかった。


むしろ親たるこのパラサイト自体の方がとても厄介なのだ。

自分自身が寄生するので定義がバラける、ランダムになるといったことは無いがその分、子と比較してとても厳しい内容となっている。


ユウさんの際にはユウさん自身が『装備』として扱うと言う定義だったからこそああして『装備貫通』を用い、そして聖水で消滅させることができた。


だが一方でコイツはどうだ?

そもそも消えることを想定した定義が一切書いていない。

恐らく寄生している本体を叩かないと消滅してくれないのだろう。


でもそれをするにはヤクモ本人を攻撃しないといけない。

更に言えばユウさんの場合は100%侵食されて初めて乗っ取られるという言わばall or nothingの関係だった。

しかしコイツは本体が侵食する分乗っ取りやすいとでも言いたいのか、90%で一部を乗っ取れるという。


それが今、ヤクモが突然襲い掛かってきた理由とも符合する。



何てことだ……


この定義を読み返せば読み返す程に、それがこの子が今迄言っていた言葉やユウさん達が話してくれた事態と一致していってしまう。


それまでは全く認識していなかった体調の悪さと言うのを、一年前に侵食率が80%を超え、ヤクモはその原因を知ってしまった。

そして『精神状態により体力を奪う間隔の遅速は左右される。』この文言部分の意味が~皆さん、優しすぎる、ですよ。ボクが皆さんに、頼ったら、皆さん、こんなボクでも、絶対に助けようと、してくれます。……でも、それだけ、早く、ボクがボクじゃなくなる……~ということと深く関わってくる。


精神状態がどういったものになれば不安定になるか、なんてことはその人によってまちまちだ。

それがヤクモにとっては逆に、彼女の周りにいる大切な人々に頼ってしまうことだったのだろう。


本来なら安心すべき居場所が、むしろこの場合に限って言えば最悪の方向へと作用してしまったのだ。



もう愕然とするしかないような、膝を折ってしまいたくなるような気持ちに襲われたのだが、そんなことは許されないし、勿論俺自身も許してやるつもりは無い。



レンと対峙しているヤクモは務めて冷静に、しかし今迄一度として見せたことの無いような笑顔を俺達に向けて言葉を発する。


「……あなた達が誰で、何が本当の目的なのか―本当言うともうどうでもいいんです。―でも、もう、体が言う事を……聞かないんです。ユウさん達のこと、教えてくれて、ありがとうございました。―逃げて、下さい……ボクがボクじゃなくなる前に、早く」


ヤクモに対して俺は好印象を抱いてもらえるようには振る舞っていなかったはず。

この子の心の内を完全に知ることは勿論できないが、なのにこの子はこうして俺達の身を案じて逃げろと言う。


今迄大切な人達を想って身を裂くような辛い思いをしてきたはずなのに、なおもこの子は……


「レン!!」


俺は彼女と対峙しているレンに向かって叫ぶ。


「うん、分かってる!! ボクがお兄ちゃんを守って見せるから、その間に!!」


レンも阿吽の呼吸で俺に叫び返してくれる。


「『守護天使ガーディアン+α』は出し惜しみするな!!」


レンが天使だという事はでき得る限り秘匿すべき事項だがそれも命に関わるとあってはその限りではない。

隠し続けて、それが原因でやられました、なんてことになったら話にならない。


バレたらバレたでそれを隠すのは後で考えればいい。

でも死んでしまってはそれの対応など考えようもないのだ。


「うん!! ―はぁぁ!!」


レンは事前に決めていたことも有って即座にスキルを発動する。

それと同時にレンの背中には純白の天使の羽が姿を現す。


守護天使ガーディアン+α』:固有ユニークスキル。天使のみが取得できる。

このスキルを所有する天使は、天使を除く『天竜族』、『人族』、『魔族』、『機械』と戦闘する際HPとMPを除く能力値が2倍になり、相手のスキルの効果を受けないようになる。

また、このスキルの所有者が大切なものを守る際、その気持ちの強さに応じて強くなる。

このスキルの発動中は『光』の属性を帯び、『光』以外の属性に対するあらゆる攻撃が強化される。


「逃げ、て……」


ヤクモの口から漏れ出るようにして聞こえてきた言葉を逃さず、俺はそれを明確に否定する。


「誰がここまで来て逃げるか!! こちとらここまで来るのに2週間近くかかってんだ!!」

「どう、して……」

「理由なんて今更欲しがるな!! 単なる第3者の気まぐれだ!!」

「そんな……はず……」

「ああ、くそっ、だったら先輩だからってことにしとけ!! 一応お前より俺の方が騎士歴長いんだよ、一応な!!」

「せん……ぱい……」

「ああ!! ―レン、頼んだぞ!!」

「うん、任せて!!」


俺はそこで言葉を打ちきり、戦闘をレンに託す。

ちなみにスキルの最後の一文が+αの部分だが、ヤクモの攻撃の正体は事前にユウさん達から話を聞いていたことも有って凡そ掴めている。


謎の攻撃の正体……


「くっ!!」

「やあぁ!!」


今もその衝撃を受け流すべくレンが奮闘してくれているがそれがとある属性を帯びているのでレンのスキル効果の発動対象となる。



獣人であるにも関わらず、『黒法教』の実験によって彼女が得た魔法……



『刃魔法』



文字通り刃を創り出すことを主としたもの。

だから彼女は無手であったのに、コチラに攻撃が飛んできたのだろう。


ヤクモは時々自分で攻撃を仕掛けてはそれを自分で止めるかのような仕草をしている。乗っ取られているのが一部に留まっているだけあって彼女自身の中で抵抗があるのかもしれない。

それもあってかスキルを発動したレンに対して被害が及ぶことはなく、その後ろにいる俺には何も襲い掛かってこない。


レンが作り出してくれたこの時間を無駄にしないためにも、ヤクモを救い出す方法を考え出さなければならない。



先程一度考えた様に、『装備貫通』を使っての解決は望めない。

それに無理してヤクモの頭の中で根を張っている寄生虫を攻撃しようとすればヤクモ自身にも被害が及ぶ。


そうすれば最悪の事態すら考え得る。

だからそれ以外の方法を考えなければならない。


もう一度この定義を読み直す。

どこか、どこかに穴はないのか……


俺の能力でつける穴は……




そうこう考えている間にもレンとヤクモの攻防は熾烈を極めている。

ヤクモはその全てが操られているわけでは無いが、かと言ってそれで全て安心というわけにもいかない。


ヤクモ自身がユウさんと渡り合えると言われるほどの実力者であることに加えて、操られていること自体にも問題がある。

そこは当たり前だが言わば自分の制御の外にある。

だが逆に言うと制御できる部分については自分の限界なんかと相談が利く、ということだ。


つまり操られている部分についてはヤクモは普段以上の力を出すことを強いられていると言ってもいい。


人間はそれ以上出すと危険だから普段力を制御しているとか何とか言われるが要はそこだ。

ヤクモが自分の意志の利く部分については抑えていると言ってもだからこそレンも本気で対応している。


普段使用していないスキルまで使っていることがその何よりの証左である。




その分俺に急がなければ、という焦りが生まれ、碌なことが思いつかない状態に。

同じことを2度3度と考えてはそれは1度考えただろう、と却下することが幾度となく繰り返される。



シアの『ワーウルフ』を借りれば、二人がかりでヤクモを抑え込み、その間時間を稼げるなんて考えも浮かんだが根本の解決には至らない。

それこそただの先延ばしだし、『ワーウルフ』自体にもデメリットがある。

それを回避するためにユーリを召喚するというのもそれはそれでデメリットも無いではない。

まずいきなりこの状況で呼び出して、どう説明する?


そんなことを考えている暇があるのならもっとマシなことを考え付くかもしれないのに……


定義をまた反芻して、『猛毒』のことが根本の原因なら俺でもユーリでも解決できるのに、なんて生産性の無い仮定を思い浮かべてしまう。



だがそこで少し引っかかることが。



…………『毒』?

それにアイツはモンスター…………ああ、いや、ダメだ。


結構いい線行ったと思ったのだが直ぐに自分の頭の中から反証が挙がる。


そもそも契約と言うのはお互い納得できる契約内容を事前に定めて行うもの。

つまりお互いが納得できる条件を提示できなければ合意には至らない。


今迄俺やカノンが契約できていたのは、ベルやクレイ、それに聖獣達を始めそれを問題としない者が多かったからだ。


今回のパラサイトはそうはいかない。

長い時間をかけて寄生した相手から離れるなんてこと、そう易々と納得してくれるはずがない。


当たり前だ、すねをかじっていた心地いい寄生先を変えなければいけないとなると、それ相応の条件を出さないと寄生虫ニートは頑として動かない。


くっそ、行けると思ったのに……………………いや、待て。


そうして廃案にしかけたものをもう一度戻して検討してみる。

そこは発想の転換だ。


逆に、その条件を出せればいいんだ。

あの、寄生している自宅警備員が動きたいと思える、そんな条件を…………ある。


いや、あるにはあるのだが……危険が伴う……



そんなことを検討しようとした頭の中の危険分子を一掃する。

今はそんな消極案は考えなくていいんだよ。

実現させる方向を考えろ!!



そうして何とかする算段を整え、ここでやっとそれでいけるかどうかの検証を許す。




……………………よし、行ける!!




俺は剣を抜き、レンの反対側からヤクモに向けて駆け出す。

ヤクモ自身はそれに対応する気は無かったのだろうが、驚いたような表情を浮かべて右手が上がる。

俺は無遠慮にそこに切りつけるが、しかし、それは見えない壁のようなものに阻まれてヤクモに届くには至らなかった。


刃状の物とぶつかり合う感覚が手の痺れを誘う。


ふぅ……止めて当たり前だこの野郎……そのままザックリ行ったらどうしようかと思ったぞ。


だがそこは寄生虫が乗っ取った一部によって防衛が働いてくれた。

そりゃそうだ、憑代が死んだら憑いてる方としては元も子もないんだもんな。


そこで俺とレンの攻撃を防ぐために、ヤクモは力を込める。

そこで動きは拮抗して、俺達はその場でギリギリと鍔迫り合いをする形になる(勿論ヤクモの手には何も無いのだが、俺達の感覚としてはハッキリと何か刃状の武器とせめぎ合っている感覚が手に残るのだ)。


俺はそこで、語りかける。


「おい、お前、契約に興味は無いか?」

「ボクの、中に、モンスターが、いることを!?……」

「え? お兄……ちゃん?」


勿論ヤクモからは素っ頓狂な声が帰って来るし、俺と同じくヤクモの攻撃を防いでいるレンからは訝しむ言葉が。

そしてヤクモのセリフを聞いてレンは驚愕に顔を歪める。


だが俺はそれには答えず続ける(と言うよりほかに注意を払ったら今剣に入れている力が崩れてしまうかもしれん)。


「そんな今直ぐ死んでしまいそうな脆弱な体じゃお前も不便だろう。俺と、契約しないか?」

「お兄ちゃん、何、言ってるの?」

「さっきの会話、聞いてただろう? 俺はある目的を達成するために力が欲しいんだ」


先程ヤクモに話していたことを利用して、ペテンを進める。


「お前が俺を乗っ取る自信があるんなら、いいじゃねぇか。俺は自分の意志があるかどうかはむしろ問題だとは思ってない。今差当り重要なのは力が手に入るかどうかだ。―お前がいれば、力が手に入る、そうだろう?」


訊ねると、元はカノンのスキルである『モンスター言語』を介して寄生虫から返答が返ってきた。


……なるほど。


「裏がありそうで心配か? はんっ、乗っ取ることを専門としといて、乗っ取り切れるかどうかが心配たぁやっぱり自分の能力に自信が無いか。そんな雑魚だったたとは、俺の勘違いだったか?」


あまり刺激しすぎるとかえって断られてしまうので煽る匙加減が難しいがこれ位ならむしろ乗ってくる範囲だと判断する。


そして考える暇を与えず食いついてくれるよう更なる餌を垂らす。


「何なら契約内容に含めてやっても良いぜ? 『契約が成立した暁には先ず第一にお前を俺の体内に召喚する』という事を」

「な!?」

「お兄ちゃん!?」


二人から俺を非難するような声が響く。

だがそこを気にしている様子を見せてしまうと勘付かれるかもしれない。


申しわけないと心で二人に謝罪しつつもヤクモの中にいるだろう寄生虫から注意を逸らさず見続ける。


「俺が契約を持ちかけることが何よりの証左だ。俺は『毒魔法』を使える。お前にとっては色々と都合がいいんじゃねえのか? 憑代が毒を操れる方が」


相手からの反応に否定的な色が入っていることは窺えない。

このことからも『毒魔法』で契約することができるということが分かる。


よし、もう一押し……


「何なら『俺がお前を直接害することはできない』という項目を付け加えてやってもいい。俺は言った通り力が欲しい。力をくれるんならその相手が誰であろうと俺は構わない。重要なのは意志があることじゃない、強くなれるかどうかだ」

「お兄ちゃん!! ねぇ、何を言ってるの!? ねぇったら!!」


スマン……だが、ちょっとの間だけだ……


そうして奴からの返答が返ってくる。

…………よし。



「じゃあ、契約成立、だな」

「な!?」

「っ!! お兄ちゃん!!」



俺は毒魔法を媒介として、契約のための魔法陣を展開する。

その際にも、横にいるレンから悲痛な叫びが聞こえて来るのだが、今はそれを必死に自分に言い聞かせて耳にしないようにする。



ヤクモ自身の眼もそれを信じられないとでも言いたげなもので、俺から視線を外さない。

もう少しだ、我慢しろ……そうすれば……



そうして契約はつつがなく成立し、魔法陣も収束していく。


「お兄、ちゃん……何で……」


スマン……


しかし、その疑問には答えず……


「じゃ、契約通り俺の中に召喚するぞ?」


そうして俺は契約内容に定めた通り、寄生虫を自分の体内に呼び出すべく詠唱する(・・・・)


「お兄、ちゃん……」


しかし、その違和感に気付くものはおらず、更にレンは涙まで浮かべてしまう。

レン……



「契約者の名において命ずる―出でよ、寄生虫パラサイト!!」


しかつめらしくわざわざ詠唱まで唱えて俺の中に異物を召喚してやる。


レンはそれで、顔色を絶望一色に染め、解放されるヤクモですらもその顔から希望の色は窺えない。

そうして俺の体内に異物が入り込んだという感覚が押し寄せてきた時、さしもの寄生虫もしめしめとほくそ笑んだであろう。

その瞬間―








俺は寄生虫を『無詠唱』で体外へと再召喚する。








そしてレンに向かってこう叫ぶ。



「レン!! やれ!!」

「え!? ……っ!!」


突然呼ばれたレンは瞬間何を言われたのか理解できないようだったが、自分の目の前に現れた異形の生物を見て反射的に槍を一閃させた。


寄生虫はそれで、一刀両断。

気色の悪い青緑色の体液を撒き散らして一撃の下に絶命した。




……ふぅ。

俺は別に一切嘘は言ってないからな。

『俺は』直接手を下していないし、『一度』体内に召喚もしてやった。

俺みたいな能力の無い人間に足元を掬われるようならそもそも先が見えている。


はんっ、あまり人類をなめるんじゃねえ。


……これ、一回言ってみたかったんだよね!!




「レン、良くやった。信じて―」

「お兄ちゃん!!」

「うぉっつ!!」


全部言い切る前に、レンに抱き着かれる。

涙を流すレンのタックルは容赦なく、勢いそのまま俺の体に衝撃を与える。

連続で召喚したこともあって疲れていたのか俺は踏ん張ることが出来ずそのまま地面に倒れこむ。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん……」

「ああ、スマンなレン……心配させたか……」

「お兄ちゃんのバカッ、お兄ちゃんのバカッ、お兄ちゃんのバカッ……」

「ああ、悪かった悪かった……ただ、その、敵を騙すには先ず味方からって言う言葉があってだな……」

「そんなの、知らないもん……お兄ちゃんが、お兄ちゃんじゃ、なくなっちゃうって、ボク、とっても怖かった……」

「ああ、ごめんな……」

「お兄ちゃんのバカッ…………もう、お兄ちゃんなんか、知らないもん……」


そう言いつつ俺の胸に泣いた顔を擦りつけて離れてくれないレンを宥めつつ俺はヤクモに顔を向ける。

ヤクモも俺達と同じく床にぺたんと座り込んでいたが、倒れるようにして地面に背中を預ける。


「…………ボク、助かったん、ですか?」

「ああ」

「そう、ですか……」


それからしばらく、ヤクモは言葉を発することは無く、ただレンの泣き腫らす声だけが静かにスラムの夜に響いた。






それからまたしばらくして、ようやくレンが泣き止んだところで、未だ俺達はその場から動かずにいた。

と言うより正確には動けずにいた。


俺は気疲れや連続した召喚からの疲れから、レンはずっと一人でヤクモと対峙していた肉体的疲労が主に、ヤクモはまあ……疲れだけじゃなく、脅威からの解放感からというものもあるのだろう。


無理すれば動けないことは無いが、3人ともしばらく動く気にはなれなかったのだ。

その間一応『索敵』で誰かスラムの住人が近寄ってこないかは気を張っていたがここには誰も寄ってはこなかった。


そうして一仕事終えた後の心地よい沈黙を味わっていると、徐にヤクモが一人語りしだした。


「……先輩、ボク、最初はユウさんやシキさん達に相談しようと思ったんです」

「……そうか」

「でも、ユウさんやシキさん達皆がボクに優しい顔して言葉をかけてくれるんです―『何かあったのか?』『大丈夫か?』って」


俺は変に急かすことはせず、ただヤクモの語ることに対して相槌を打つ。


「そうして優しくしてもらって、喜んでいる自分に気付いて……ボクは弱い人間なんですよ。皆が優しくしてくれたら、それで、嬉しくなって、皆に頼っちゃおうって思って……そしたらビックリしましたよ。侵食率がグングン上がるんですから」


ヤクモはそうして自嘲気味に笑って見せる。


「頼ったら頼ったで、皆さん何も言わずただ助けてくれると思います。でもそれがボクをボクじゃなくならせる―もし、そうして頼った挙句、助からず、ボクがボクじゃなくなってユウさん達大切な人々を傷つけるようなことになったら……ボクは死んでも死にきれませんでしたから」

「そうか……お前は強いな」

「ハハッ、そんなことないですよ~、言った通り、ボクは弱い人間です。弱かったからこそ……ユウさん達皆さんを信じ切れず……そうして、傷つけて……」


俺が第3者気取りで言ったことを気にしているのだろう。

確かに俺が言ったことは事実だったが、そこは彼女が気に病むことでは無い。


大切な人だからこそ、辛いことを背負わせたくないという気持ちは分かる。

そして自分のせいでもしも、という最悪の事態が起こってしまう可能性に思いを至らせてしまうことも。

それは別に信じる信じないではなくて人間としてはむしろあって当然のことだ。


それなのに自分を責めてしまうのはこの子が優しい心を持っているからこそだろう。



「気にし過ぎだ。俺は第3者だから適当なことしか言えんが、あの人たちはそれをネチネチと引っ張るような人柄じゃないだろう。お前が事情を話して、『ごめんなさい』って一言言えば温かく許してくれんじゃねえの? 大切な仲間なんだろ?」

「先輩……仲間なんてもんじゃないですよ、家族と言っても良い位、大切な人達です」

「そか」


そうして言葉は途切れる。


またしばしの沈黙が訪れるも、またそれを破ったのはヤクモだった。


ヤクモがユウさんに助けられる前―つまり、『黒法教』の手によって実験されていたことについて話してくれた。


俺も知っていることについては省いてもらい、彼女が知っていることについてのみ、促す。



ヤクモは殆ど生まれて間もなくその実験に晒された。

実験の内容は殆ど覚えていない様だが、知っている限りの知識と照合すると、恐らく体内に魔物の魔石を埋め込まれたようだ。


それで拒絶反応を示した者は無くなり、生き残ったヤクモのみが新たな魔法の素質を解放した。

寄生虫もその際体内に入れられた可能性が高い。

最終的に、自分達の意のままに動いてくれるようにするならその方がいいだろう。


寄生虫という共通項が思わぬところで出てきたことで、ユウさんを襲った奴等が『黒法教』だということの裏付けに一役買うことになったな(ディールさん自身は組織としての同一性については論じるべきことがあると言うようにも臭わせていたが)。




それを聞いた俺とレンは簡単に「大変だったな」みたいな安い言葉をかけることは避けた。

そんなことを言って彼女の境遇を知った風にするのは俺としては躊躇われたし、レンも色々と思う事もあったのだろう。


ただ、何も言わないという事はそれはそれで違うだろうという想いもあったので……


「まあ、それでも、お前には大切な人達がいんだろ? 今、生きててよかったじゃねえか」

「先輩…………」


また沈黙するのかな、とも思ったが、ヤクモは直ぐにまた俺を呼ぶ。


「先輩」

「ん? 何だ?」

「……ボク、先輩と今迄親しくなくて、本当に良かったです」

「何だそりゃ? 意味わからん」

「ふふっ、いえ、今はそれでいいです」 


友達いない俺への当てつけか、この野郎。


「先輩、レンさん……本当に、ありがとうございました」

「気にすんな。俺は何もしてねぇ」

「ボクはお兄ちゃんが無事なら、それでいいよ」


それ以上は特に会話をするでもなく、その夜を3人大の字になってスラムで過ごした。

思った以上にここもゴチャゴチャとしてます。

何かお気づきの方がいらしたら是非ご一報いただけたら。


ちなみに『刃魔法』は今後とも出てきますので詳細もその際記します。


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