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シアの修行その2

さて、魔族の姉妹達が誰か……まあお分かりかと思いますが一応答え合わせになります。

「ふむ……ちょっとすまないね」


ディールさんが私を連れて再び店主さんから離れて声を落とします。

……話したいことは同じでしょう。


「……ふむ、『ファーミュラス』という名字、確かカノン君もそうだったんじゃないかい?」

「……はい、私も今驚いています。以前カノン自身が『4人姉妹だ』と言っていましたからその数としても合います。ですが……」

「うむ、ゴホッゴホッ……彼女達がカノン君の妹かどうかや、そうだった場合どういう経緯でこういうことになったのかも含めて本人達から確認したいところなんだが……」


ディールさんは「ふーむ……」と深く考え込み、私も少し冷静になってみます。


カノンの妹なら是が非でも連れて帰ってカノンに会わせたいのですがそもそも先立つものがありません。

前提としてディールさんは私が闘技場で優勝し、それで得た賞金で奴隷等を購入しようと考えていました。


ですから……


「よし」


そこでディールさんが何かしら決断したようで、私の思考が打ち切られます。


「シア君、確認はしないで先に闘技場に向かおう―ズール、また後で来るよ」

「はい、お待ちしております」


ディールさんはそう言って歩き出してしまいます。

慌てて私も隣に追いつくと、ディールさんは行動の趣旨を説明してくださいます。


「君も知っての通り、私は君が闘技場に勝つことを前提として、ここに来た。つまりはカイト君から預かっている約5万ピンス―闘技場の参加料分程しか持ってきていない」


そして私自身がご主人様からお預かりしているピンスは今は一時的にエフィーに預けています。

ですので本当に負けたら……無一文ですね。


「負けたら勿論仲間を増やすことは叶わない。その状況であればシア君に背水の陣で挑んでもらえると思ったんだが……」


成程……つまり修行の第4段階は主に精神を鍛える目的だったんですね。


「ここでカノン君の妹かどうか確認してしまわなくても結果自体は変わらない。それは例えて言うなら……そうだね、何か冒険者の昇格試験を受けたとしよう。そしてその後と言うのはゴホッゴホッ……既にもう結果は出ているはずなんだ。だが中には発表の前に『お願いします……』といもするかどうかわからない神に願ってみる者がいる」

「確かにその例に漏れず結果が決まったことに対して何かに祈ったりしてしまうという気持ちは分からなくはないです」


私も……そう言った時には必ずご主人様のことを思い浮かべてしまいますから。


「ふむ、まあ自分で言っておいてそこまで行くと話が変わるんだが―兎に角、私が言いたいのは結果が既に決まっていることについても、それを知らなければ人は不安に駆られてしまう、という事なんだよ」

「……つまり、更に私が闘技場で勝たなければいけない理由が増える、ということですね」

「うむ。確認してカノン君の妹だと分かった場合でも君が勝たなければいけないという気持ちは変わらないだろうが……そう言った君達の覚悟の強さみたいなものはもう分かっているからね。だからこういった実践的な、より有り得る状況で鍛えた方が良い部分を鍛えようと思ったんだ」


そうしてディールさんは「……すまないね、こんな内容ばかりで」と続けます。

自分達から望んで、そしてその私達のためにして下さっているんです、どうしてそれを非難なんてしましょうか。


「……いえ、これも私のために考えて下さってのことだと分かっています。感謝こそすれそれに疑問を唱えることなんてありません……それに、ユウさんも優勝できると行って下さってましたし、ディールさんも私の力を信じて下さってのこの内容だと私は思ってます」

「……カイト君は本当にいい仲間を持っているね……―うむ、シア君にはこれ位のハンデがあった方が今後の成長にいいと私は思っているよ。……大丈夫、君が今日までユウや黒騎士としていたことを信じてやればいい」

「……はい、必ず勝って見せます!」



そうして私はその足を翻すなんてことはせず、そのままディールさんに付いて闘技場へと向かったのです。





闘技場の選手の控室は殺伐とした空気が流れてはいましたが予想に反して水でも打ったかのように静かでした。


もう少しざわざわしているものとばかり思っていたのですが……

まあ闘技場と言っても“闇市の”闘技場ですからね。


それはそうと、今回の優勝賞金はこの闇市内での通貨テネで、100億テネと、毎回最高級の景品が何か一つ付いている、とのこと。


通貨の価値は凡そ1ピンス=100テネで、ユウさんの場合、景品は破魔の剣という武器だったそうですがお金に換えたそうです。


今迄店主さんから色々と買ってきた経験からすると、優勝賞金だけでちゃんと買うお金は足りるとのこと。

ですから後は本当に私が勝つのみです……



ディールさんは私に戦闘以外の注意事項だけおっしゃって観客席へと移動なさいました。

ですので勿論今は私一人で集中しているのですが……


「jふぁうgはfjgsdらあsc?」


大柄な男が一人私に話しかけてきます。

周りに感じる雰囲気からも雑魚だと分かるのですが……何でしょう?


「fんsdkjlてゃjsL!?」


……何を言っているか分かりません。

ここは色んな所から沢山の人が集まってくるわけですから私の知らない言語を使う人がいてもおかしくは無いです。


ですがそもそも他の参加者に話しかける暇があったら周りにいる方々のように精神を集中させた方がよっぽどいいと思うんですが……


別に闇市に来た普通の客のように通訳をつけなければ困る事態というのも参加申し込みを終えた今は無いはずです。


「…………」


私は無視してもよかったのですがチラッと威嚇を含めて睨み付けてやると


「あkl!?」


たじろいで後ろに退きます。

面白半分に見ていたであろう他の参加者たちの中にも、私の放った殺気に身がすくんだ者が多々見受けられました。


……本当にそこまでレベルは高くなさそうですね。


私に何か話しかけてきた大男は悪態をついて去って行きました。

すると、入れ替わりのように私と同じくらいの背丈をした人が近寄ってきてまた話しかけられます。


「いや~、今の殺気、実にお見事ッス!!自分もあんな筋肉ダルマ共には嫌気が差してたッスから清々したッスよ!!」


? どうやら声からして女の子のようです。

ちらりとフードから覗くその可愛らしい顔からは犬耳がタラリとくっ付いているのが窺えます。


私のように女の子が闘技場に参加していたんですね……

それに普通に分かる言葉を彼女は話しています。


ですがどこかで見たことの有るような顔を……うーん、フードのこともあって分かり辛い、ですね。


……そして何と言ってもその隙のない動き。


恐らくこの中でも一番強いだろうことが雰囲気だけでも十分に分かります。



驚きですね……


「……ありがとうございます」


私は出来るだけ声音を抑えて顔も見えないようフードをまた深くかぶり直します。


「そんな警戒しなくても大丈夫ッスよ。自分、ただ単にここに情報収集に来ただけで優勝する気は今は無いッスから」


そうしてヘラヘラと笑う犬人の女の子。

情報収集?なら別に闘技場に出なくとも……


「知ってるッスか、今回の優勝の賞品?」

「……いえ」

「何でも凄い奴隷だって話ッス。実際には詳細は決勝の直前で発表されるそうッスが」


……何でそれをあなたが。

そんな私の疑問など関係なしに女の子は話し続けます。


「いや~、こっちにとってはいい迷惑ッスよ。決勝まで行けず、もしそれが目的の人物だった場合とか考えると……マジパネェッス!」


成程……詳細は兎も角、この女の子は賞品の奴隷というのが自分の探し人かどうか分からない、と。

だから決勝まで行かないといけない……


今の私と同じような状況にいるわけですか。



……そこまでの全てのやりとりも含めて、私は、決勝戦はこの女の子と戦うことになる、そう直感的に思いました。







そうして、私の直感が当たることになった決勝戦……




「あっ、自分、棄権するッス」




……参加者を蹴散らし、予選で負けた者達の中には参加費を支払うために奴隷となった者もいた中で……

優勝の賞品が告げられた後直ぐ、犬人の女の子は呆気なくそう言い放ってしまいました。


会場内は静寂に包まれた中、スタスタと入場口へと戻って行きました。

私も少々呆気にとられていましたが我に返って後を追って行きます。



「……本当に、いいんですか?」


遅れて状況を理解した観客たちのざわざわとする音を後ろに、女の子は振り返ってニコッと笑みを浮かべます。


「ん?別にいいッスよ。ソルテール帝国に落とされた国の巫女って言ったら確かに激レアッスけど、自分の探してた人物じゃねぇッスもん」

「……ですが、お金も……」

「ハハッ、金もあったら便利ッスがそのためにはアンタと戦わなければいけねぇッス。勝てる見込みが半分以上あるならまだしも、自分が死ぬ可能性の方が高い相手となんてデメリットの方が大きすぎるッスよ」


そうして女の子は「逆に賞品がアイツじゃなくて良かったッス。過酷な肉体労働は自分の範囲外ッス」とケラケラ笑って去って行きました。


チラッと視線を逸らしたらもうそこに彼女の姿は無くて……



不思議な、方でしたね。





その後、賞金を受け取り、優勝賞品である巫女・聖女(どちらとも呼ばれるそうです)の奴隷、セフィナが重そうな足取りで私の下に。


彼女は丈の短い黒い修道女の衣服にハイソックスだけ、と、なんとも簡素な衣装を身にまとっていました。


本当ならもっと長く綺麗な髪をしていたんでしょうが、うなじ辺りからバッサリと切られてしまっているその金髪は不揃いになり、巫女という肩書に相応しい、同性である私ですらも感嘆を漏らしてしまうほどのその整った綺麗な顔からは希望の色など一切見受けられません。


……私も、ご主人様とお会いする前はこんな顔をしていたのでしょうね。


奴隷契約は異なった場所でしなければいけないので、セフィナに一言「ついて来てください」とだけ言って歩き出しました。


丁度ディールさんも私を迎えに来て下さったようで合流したのですが、そこでセフィナが驚いた様子で


「……あ、れ?女性……」


と声を漏らします。


まあ、あんな体だけデカい大男達を倒して優勝したのが私みたいな女だったら驚きもしますか。


ディールさんはその言葉は聞こえていたようですが一先ず流して私を労ってくれます。


「お疲れ様、シア君。最後はちょっと意外な終わり方だったがそれまでの過程は上出来だったよ。ゴホッゴホッ……君自身も感じただろう?色んな攻撃を仕掛けられていたが……」

「はい、どれもこれも斬新な切り口ではあったと思いますが……全員に共通して言えることですが遅かったですね」


そうなんです、私が戦った者達は皆変な攻撃方法を繰り広げてきたのですがどれもこれも私の目には止まって見えました。


最初こそそれが技か何かかと疑ったのですがただ単に能力値の差が出てしまっていたようです。


色んな技を色んな相手と戦う事で知ることができたという意味では修行にはなったのですが、それ以外となると……本当にディールさんのおっしゃっていたように精神的なものしか鍛えられなかったような気がしますね。


ディールさんは「ハハッ」と笑ってそれについて答えて下さいます。


「ユウや黒騎士とずっと打ち合っていたら大抵の強者とも戦えるようになるさ。ユウは剣速だけなら騎士団内全てでも最速を誇るからね。ゴホッ……黒騎士だって身体能力はピカイチだ。着実に君は強くなっているんだよ」

「……ありがとうございます。―そ、そうだ、ディールさん、早くさっきの店に戻りましょう!!」


先程のやりとりからするとあまりお客が沢山来る店だとは思えませんでしたが、それでももしも、ということもあります。


そうして焦った私を見てディールさんは落ち着いて声を掛けて下さいます。


「安心なさい。ロード・スケルトンを見張らせていたが、誰も彼女には気づかなかったそうだよ。君が殆どの相手を瞬殺したことも、その結果を助けたかもね―どうやら条件設定が良い方向に働いてくれたみたいだ」


ディールさんはまた笑みを浮かべてゆっくりと歩き出します。


ホッ……良かったです。

これで他の誰かに売られた後にカノンの妹だと分かったら……悔やんでも悔やみきれませんから。


「あ、あの、その……」


後ろで控えていたセフィナはどうすればいいか、そもそも今の状況がどういうことか分からず戸惑っているようです。


私は一先ず


「今すぐ安心して、と言っても信じられないかもしれませんが一先ず私について来てください。大丈夫です、私もあなたと同じ奴隷ですから」


とだけ微笑みかけて歩き出しました。


セフィナは「え?奴隷……おな、じ……」とだけ呟いて私の後を追ってきました。




再び先程の店に辿り着くと、既にディールさんは購入手続きを進めて下さっているようです。


ちなみにお金は人魚さんが30億テネ、人族さんが13億4千万テネ、モンスターは全部合わせて28億2千万テネ、そして最後……魔族の姉妹が全員合わせて25億テネ。





魔族の姉妹が私達の前に出て来た時、一目見てこの子達はカノンの妹だと分かりました。

一番大きい子はカノンよりも少し幼いものの、他二人を守るという意志を全面に出して前に立っています。


後の二人は……双子、ですか?

顔かたち、背丈、衣装すべてにおいて瓜二つです。


私が見た限りでは髪型が唯一違っていて、左にいる子はツインテール、右の子はショートヘアで、カノンが子供の頃はきっとこんな感じなんだろうな、と言った女の子達ですが後ろ二人はとても怯えた様子です。


3人ともカノンが着るようなサキュバスの正装、そして首輪とその四肢には枷が。


この3人は奴隷と言うわけでは無いそうですが、やはりどのような人に買われるかというのは一番の関心事でしょう。


ディールさんは私のように話を聴かずとも彼女達がカノンの妹だということを確信できたようですが私に耳打ちします。


「彼女達には私達のこともそうだが、カノン君のことは黙っておこう。孤島に戻って感動の再会を果たした後に話した方が良かろう。―『君達だけでなくお姉さんをも救ったのは私達の主人(カイト君)だ』と」

「……そうですね、今はいらっしゃいませんから、ご主人様のことを印象付けるにはそっちの方がいいかもしれません」

「うむ、ではシア君は待っていてくれ」

「はい」


私は賞金をディールさんに渡してセフィナを促し後ろに控えます。


ディールさんが「良く見ていたまえ」と言っていたように契約の際の手元を見ていると、自分の掌を多少切ったかのように見えたのですが全くそんなことは無く、袖口から小瓶を滑り込ませ、その蓋を見えないようとって血を垂らします。


あれが事前に準備していたご主人様の血、ですか……


そして全員分の契約が一気に終わると、店主さんが呼んだ奴隷契約のための商人は水晶を持ちだし……あっ、OKが出ました。


ディールさんが水晶に手をかざす際はあまり何をしたのかよく分かりませんでしたが、恐らく魔法か何かの類でしょう。



店主さんが「ありがとうございました、ディール様。またよろしくお願いいたします。―主人になる方にも

よろしくお伝えください」と私達にだけ聞こえる声で挨拶してくださいました。


ディールさんも特に変わらず「うむ、ではまた」とおっしゃっる辺り、水晶の細工もお互いに了承の上なんでしょうね。





その後はディールさんが召喚したローブを纏ったハイ・スケルトンの更なる進化形態、ロード・スケルトンが5体現れて、モンスター達を運び、セフィナも含めた他の買い取られた者達も何も言わず私達に付いてきます。


人魚のオトヒメはロード・スケルトン達が運ぶ檻の中でぐったりとしているマーロワァンを心配そうに見つめていますがその足にあるヒレをペタペタと跳ねさせてちゃんと歩いています。



……人魚は陸ではああやって歩くんですね。



ディールさんも「今は黙ってついてきなさい。詳しいことは後で説明する」とだけ言ってそれ以降は特に何も言わず、私達はドラゴンゾンビに乗り込んでディールさん宅へと帰って行きました。







辿り着いた場所が森の中という事に皆大なり小なり狼狽していました。

ディールさんが「孤島に入る制限を解くためにクレイ君を呼んでくる」と行ってしまったので今はそれを待っている状況です。


そこに……


「あれ?シアさん、帰ったんですか?」


エフィーが六神人形シィドゥ・オ・ドールの2体、シズクとジンを従えて顔を出します。


丁度いいので私がエフィーにカノンを連れて来るように頼むとエフィーは一瞬私の後ろに控えている姉妹たちを見て驚いた表情をしましたが、直ぐに私の言ったことを理解して森の先へと向かってくれました。


そして5分程待つと、カノンがとても慌てた様子で戻ってきます。


後ろのエフィーやリン、フェリアは置いてけぼりになっていたようで、後から追い付いてきました。


そして、お互いにその姿を認めると、姉妹の方は信じられないものを見た、と言うような表情でまだ立ち尽くしています。


カノンはと言うと……



「アリシア……ミリュン、ミラ!!」



止まった足を即座に動かして3人に駆け寄ります。


距離は一瞬の間に縮まり、カノンは3人を抱きしめます。


「3人とも……良かった……」


抱きしめられた3人の内、二人はまだよく分かっていないようでしたが、一番背の高い、アリシア、と呼ばれた女の子は理解したようで……


「……カノン、姉、さん?」

「アリシア、そうだよ、私、カノン、だよ……」

「姉さん、本当に、姉さんなんですか?」

「うん、うん……」


そこまで話すと、そっくりの二人もカノンのことをちゃんと認識したようです。


「カノン、姉様?」

「姉様、姉様!?」



…………良かったですね、カノン…………



カノンたちの感動の再会を一通り温かい目で見守っていると、ディールさんが頃合いを見計らっていたかのように戻ってきて、一緒にいたセフィナやオトヒメ達に聴かせるように話し始めます。



「……君達のことを買うための資金は確かにそこにいるゴホッ……シア君が闘技場で優勝し得たものだが、彼女自身も実際は奴隷だ」

「え?……そう、なのでございますか?」

「本当、か?……」


オトヒメとエフィーの補佐をする予定のレイナが驚いていますね。

……今ハッキリ分かりましたが皆は一応言葉は分かるようです。


闘技場で私に話しかけてきた名前も知らない大男の件でそこに付いては心配だったんですが……


「はい、私はオトヒメやレイナ、それにセフィナと同じご主人様の奴隷です」


そこで皆の視線はディールさんに。

ディールさんは自分の水晶を取り出して彼女達に放り投げます。


「ふむ、説明すると、君達の本当の主人は私では無い。“カイト”と言う名の、とても心根の優しい青年だ。それで確認しなさい」



その言葉を皮切りに、彼女達は水晶をキャッチしたオトヒメの周りに集まり、「え?嘘っ!?」「ど、どういうことだ!?」とこれまた驚いているようです。



そしてディールさんはロード・スケルトンにモンスター達の檻を壊させ、そしてぐったりしているマーロワァンを孤島へと運ばせます。


オトヒメがそれを見て慌てて止めようとしますが、ディールさんの「騙されたと思って付いてきなさい」という一言で全てを納得したわけでは無さそうでしたが、オトヒメもそれでディールさんに付いて歩いて行きました。



カノンと再会を果たしたばかりの姉妹たちもカノンに促されてそれについて行きます。

私とエフィーはそれぞれセフィナ、レイナを伴って孤島への足を進めました。




私達が最後に孤島へとワープしたのですが、そこには……



さっきまであんなに打ち上げられた魚のように萎れていたマーロワァンが海でまるで暴れているみたいに活気に満ちて泳いでいるのです。


そしてそれを眺めて、唖然とするオトヒメ。

更に孤島自体にすら驚いているセフィナ達。


レイナは確かに孤島にも驚いているようですが、クレイを見て更に驚いています。

ああ、確か少尉の後はギルドマスターもしていた、って話でしたからね。


「な、何でここに……『剛神クレイ』、が……」


クレイはそこで新たな仲間ということを理解して


「……皆、新しい、仲間?……クレイは、クレイ。よろしく」


と挨拶して戻って行きました。


彼女達自身の自己紹介は後回しらしいですね。


ディールさんは一通り彼女達が驚き疲れた後、また話し始めました。


「……先程の彼女達の邂逅もそうだが、そこではしゃぎ回っているマーロワァンについてもそうだ。確かに君達を買うための資金を増やしたのはシア君だが、その元手を出したのも、このように君達を厚遇することを私に頼んだのも、君達の主人―カイト君だ」


そこで、カノンが姉妹たちから離れ、皆に聞えるよう真ん中に移動して話し出します。


「……マスターはね、とっても優しいの。上級魔族なのに、召喚がきちんと使えない私を、魔族としてでは無く、1人の人として接してくれて、そして召喚のことについてもマスターが何とかしてくれた」


カノンの声に、姉妹たちだけでなくオトヒメ達も耳を傾けます。

そして次にエフィーがカノンの横に。


「……私はハーフエルフです。ソルテール帝国や東の国々ではどういう扱いかは分かりませんが、リューミラル王国ではハーフエルフは良く思われていません。なのに、ご主人様はそんな暗闇にいた私を救い出してくださいました」


『魔族』と『ハーフエルフ』という単語に多少驚きの反応はありますが静かに彼女達は聴いてくれます。


そして……

私は二人の下へ。


「……そんな私達にとって、何よりも大切なご主人様は、間違いなくあなた達のことも大切にしてくださいます。……ご主人様は傷だらけになりながらも尚、お一人で戦われて、奴隷である、私達を守ってく、下さいます。……そんな、ご主人様を、お守りするためにも、お優しさに報いさせていただくためにも、皆の力を、貸してくれませんか?」


ご主人様のために、強くなるって、それまで、私はもう泣かないって……そう決めたのに、勝手に、目から、涙が……


「ふむ、カイト君は今とある事情でここにはいない。だが彼が帰ってきた時に、少しでも彼の力になれるようにとシア君たちは修行をしていて、君達を購入したのもシア君たちにとってはカイト君を守るために少しでも戦力が欲しいと言う意味だろう―どうだい?」

「……私、は……では、毎晩、女神様の前で、女神様を冒涜しなければいけないようなことには……」

「ふむ、何を言っているか一瞬理解しかねたが、セフィナ君。別にカイト君は君達が可愛い・綺麗な女性だからと言って夜伽を強要するような人間じゃない。君達がしてあげたいなと思うようになるだろう青年だとは思うがまあそこは安心しなさい」

「……私は、大切な友達のロイを―このマーロワァンを助けるために家を出て、そして捕まってしまいました。……その時は、もう、ダメかと、思っていたんですが……ロイがこんなに元気になれたんです、私もその方に対して何かご協力したくございます」

「うむ、海を自由に闊歩できる人魚の君がいてくれればシア君らも心強いだろう」

「……行方が分からないと聞いていたあの、『剛神クレイ』が望んでここにいる位だ、私の主人になる奴が凄いということは分かった。……まあ悪いようにされないのなら折角買ってもらったんだ、微力ながら協力位はできるだろう」

「うむ、君の知恵や力を彼女達にも貸してあげてくれ、レイナ君―そう言うわけだ、シア君」

「はい、はい……これ、から、宜しく、お願いします」



そうして、私達に新しい仲間ができたのです。


=====  シア視点終了  =====



=====  ????視点  =====



「はぁ~、マジで賞品がヨミじゃなくて良かったッス。あれは自分には勝てねッスわ。旦那もマジ酷いッスよ。絶対自分じゃ危険にならないところだって言ってたくせに……」


……まっ、愚痴を溢しても仕方ないッス。

さて……最後は……


残り一つ、×が付いていない項目に目をやる。

……やっぱり王都ッスかねぇ~?


ヴィオランの旦那も潜入するって言ってたし、放っとくと無茶しますから、旦那を1人にするわけにもいかねぇッス。


はぁ~……また、残業ッスか。

ヨミが見つかったら絶対残業代全部請求してやるッス、あのチャラ男め!!


あ!!前のあの事件の時、逃げる手助けもしてやったのに、その金もまだ一文も貰ってなかったッス!!

……旦那はやっぱり油断ならねッスね……





……ヨミの奴も……出て行ってからも、本当に手のかかる妹ッス。



=====  ????視点終了  =====

また一杯人が増えました。


物語的にはキャラが多いということは私自身も分かっていますがまあ普通の日常としては人が増えるという事もあるはずですので……スイマセン、言い訳です。


まあ今迄の沢山の情報についても、新たに増えた彼女達についてもじっくり何回も出して行きますのでご安心ください。



闘技場の話については……あんまりシアだけで長引くのもどうかと思いますし、それにシアが強くて悪いわけじゃありません。


名前すら出てこないような直ぐに負ける奴等が悪いんです!


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