夜になって……
……久しぶりにこういった話を書きましたが日和って殆ど描写は無いかもしれません。
……やっぱり丁度いいと言うのは難しいです。
夜、「帰ってくる頃には君が住みやすいようゴホッ……かなり孤島は変わっているだろうからね、見納めに孤島で過ごしておきなさい。今夜だけは鎧も外してね……その薬は寝る前にキチンと飲むんだよ?」とディールさんに言われ、あの良く効くディールさんお手製の薬を渡されて帰ってきた。
……ふむ、やはり王都に向かうのに体調が悪いというのはマズイだろうし、それを気遣ってくれたんだろう。
どこまでも、ディールさんには敵わないな。
修行をしやすくするためにこちらに修行の地や研究場所を造っても構わないとディールさんには伝えておいたがそもそも俺がいない間に色々と人が増えるかもしれないとのことで孤島の招待状、つまり孤島に入れる人を制限できる石板についてはクレイに一時戻しておいた。
頭を使ってどうのこうのを期待するのは難しいかもしれないがクレイなら悪い人間を入れてしまう、という事は無いだろう。
まあそれも含めて今ちゃんと戻って来れて機能していることをホッとしつつも最後の我が家を堪能しようと歩を進めると……
「あれ?皆、どうかしたのか?」
もう既にレンや聖獣達は寝静まった時間。
だが家から少し離れた砂浜にはシア、エフィー、カノン、リゼルの4人が三角に膝を折り座り込んでいた。
戻ってきた俺に気付いた4人は顔を上げて、シアが真っ先に駆けてきて出迎えてくれる。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
「おおう、ただいま。どうしたんだ皆して。皆も修行で疲れてるだろうから気にせず先に寝ててくれてもいいんだぞ?」
そこで追い付いてきたエフィーが
「いえ、ご主人様にお話があって、それで皆で待っていました」
「話?ああ、明日から俺とレンはいなくなるからな……それで、話って?」
「……主殿、今から時間は大丈夫なのか?」
≪……いきなり、ですから。ですができればお話しておきたく≫
リゼルがエフィーの後ろから顔を出してそう尋ねてくる。
「まあ後は寝る位しかすることは無いからな。折角4人が待っててくれたんだ。話位聴くさ」
「マスター……ありがとう―じゃあ」
カノンが俺に礼を言うと、4人は顔を見合わせて頷き合う。
……何だろう。
何か良くないことか?
皆が皆決意に満ちた顔をしているし、何があるかちょっと怖いな……
と、思っているとリゼルが前に出て来た。
「……では、主殿、ちと向こうに行かんか?」
≪もう少し遠く、二人でお話しできる場所に≫
「え?二人?話があるんじゃ……」
そう言って他の3人を見る。
しかしシア、エフィー、カノンは特に何も言わない。
むしろそう言う事が分かっていたかのようにリゼルに「頑張って来い!!」みたいな視線を送っている。
「……個人個人で話したいことが有るって解釈でいいのか?」
そう言ってやると前に出ていたリゼルを初め、皆が頷いてくれる。
じゃあ何で4人で待ってたんだ……紛らわしいな。
「分かった。じゃあ行くか」
俺はリゼルを伴って3人から離れて行った。
5分程歩いて「ここらで構わないか?」とリゼルに確認し、無言ではあるが頷いてくれたのでそこに腰を下ろす。
ここまで来るのにもリゼルは無言だった。
あのリゼルが、だ。
妹のファルは兎も角、姉まで無言だともう何かあったに違いない。
その何かに思いを巡らせているとリゼルは俺の隣に腰を落とす。
何か話すと思ったが座り込んでからもやはり黙り込む。
……まあ話し辛いことなんだったら仕方ないか。
急かさず待つことにした方が良いのか、でもシア、エフィー、カノンも待ってるんだよな……
まあこういう事も合わせて4人で話し合って決めていたのなら特に急ぐ必要も無いのかも。
「…………が」
「ん?」
リゼルが消え入りそうな声で何かを呟いた。
この場には波がさざめく音しかしない以上、その声がどれだけ小さいものかが分かる。
「……主殿が、主殿が」
「おう、何だ?」
「我は、我とファルはリゼルとして、主殿が……」
≪はい、これ以上、主様がもう、辛い思いをなさらなくてもいいよう、強くなる、です≫
「うむ、我等は必ず、今の我等なんて、目じゃない程、主殿がもう傷一つつかん位、強くなる。じゃから……待っていてくれ」
リゼルは真っ直ぐに俺を見つめる。
本当に真っ直ぐに……俺以外、その異なった色の両の瞳には映ってはいない程に……
やはり皆何か一つ、吹っ切れたと言うか、成長した、と言うか……
とても強い意志のようなものを感じる。
ディールさんが言うには何かきっかけを与えたという事だったが……これほどまでに皆が変わる何か……何だろう。
皆必死に強くなろうとしている、という事は共通しているが、どうしたんだろう?
俺のために、という事も含まれているのか?それだったら嬉しいのは嬉しいが……
まあ折角頑張ってくれてるのに水を差すのは憚られる。ここは……
「ああ、そうか。ありがとう」
リゼルをしっかりグシグシと撫でてやる。
こうすれば……えっ!?
伸ばしていた手がいきなり地面に。
頭はボフッと音を立てて柔らかな砂浜に着地する。
そして真上にはリゼルの顔と、その長い薄桃色の髪が。
……押し、倒されたのか?
リゼルの手が俺の胸にそっと当てられ、彼女は俺の太もも辺りに馬乗りに座っている。
あれ?何が……起こってんの?
「あの、リゼル?」
リゼルは答えず、胸に当てられていた手はゆっくりと俺のズボンへ伸びる。
俺は慌てて止めようとすると、リゼルは……
「ちょ、ちょ、ちょっと落ち着いた方が良いんじゃないか、リゼル!?」
「……やはり我一人では足りんのか?……ファル」
≪そうですか……では融合を解きましょうか?≫
「そうじゃな……主殿が、それを望むのであれば―」
「スイマセンした。大人しくしてるんでそれは勘弁してください」
ゆ、融合、解除、だと!?
な、なんて恐ろしい脅迫法を覚えたんだコイツ等……クレイがこんなことを教えるはずがない。
これがディールさん、クオンさんの修行の成果か!?
「そうか。では…………髪を巻きつけ……擦る。髪を巻きつけ……擦る」
何だかリゼルは壊れたロボットのようにひたすら同じ言葉を繰り返し始めた。
髪?髪が……何だって?
≪姉じゃ……やはりテンパってしまってますね。変わりましょうか?≫
「髪を巻きつけ……スマン、ファル」
ブオンッ
「ふぅ……すみません。何度もイメージトレーニングしていたんですがね。私もドキドキですが……今の姉じゃよりは上手くできると思う、です」
「う、うまくって……」
「この姿ですと髪がとても長いですのでこれを巻いて擦れば主様も満足してもらえるのでは、とカノンさんにアドバイスいただきました」
カノンめ……何を教えてんだ……
「では……失礼して……」
※省略
……何であんなことになったんだろう。
話したいことが有るって言われて二人っきりになったら……あんなことに。
ちなみにリゼルはその後「……本番は私達が強くなって、主様が傷つかずにいられるようになってから……お願いします」
≪……強く、なるから、の≫
と屈託のない笑みを浮かべて一人迂回しながらも家へと戻って行った。
はぁ…………
リゼルが去った後少し間を置いて戻ってみると、やはりそこには3人が残っていた。
……そして帰ってきた俺を見つけると今度はカノンが立ち上がる。
何故か着替えていて、外用の衣服では無く、カノンが仲間になって初めての小遣いで買ってきたあのサキュバスのエロい衣服でこちらに近寄ってくる。
……マジか。
「……行こっか、マスター」とだけ言ってカノンは俺の手を取ってその場から離れて行く。
俺は砂浜に足を取られないよう気を付けながらそれについて行くがカノンはその背に生えている黒い羽を器用に使って空を歩いている。
……そこからはやはり無言。
何なんだろう、皆の中で無言な女性が流行っているのだろうか。
そんなどうでも良さそうなことを考えてできるだけカノンの体を直視しないようにする。
……夜とは言え直ぐ近くを浮くカノンのその線までバッチリと見えてしまっている綺麗な体を目に入れてしまうのは猛毒を制した俺でも目には優しくないものとなっている。
そしてある程度言ったところで立ち止まり、砂浜に着地してから俺に向き直る。
「……マスター、あのね……」
カノンはリゼルとは違って直ぐに話し始める。
「おう、何だ?」
促してやると、カノンは上目使いで俺を見、そしてじっと見つめ続ける。
そして……
「…………っ!!」
「ど、どうした!?」
カノンはギュッと俺に抱き着いて来て、その顔を胸に埋める。
そして背に回されたその細い腕でしっかりと抱きしめて来た。
そのせいでカノンのたわわに実って今でも成長中の二つの果実がムニュッと押し付けられて潰れて行く。
……その感触まで明確に伝わってくるからこっちはたまったもんじゃない。
少しパニくっていると、カノンは再び顔を上げ……
「マスター、私……強くなるから」
カノンもか……
皆して「強くなる」って言ってくれるが、今でも十分に強いと思うんだけどな……
「そうか……まあそう言ってくれるのは嬉しいよ。ありがとな」
そう言ってカノンの肩に手を置きうっすらと力を入れて離れるよう間接的に伝えようとする。
だが、その俺の浅はかな目論見はカノンに簡単に打ち砕かれてしまう。
「……マスター、固いの、お腹に当たってるよ?」
何だろう、死刑宣告受けたとしてもここまで冷や汗ものにはならないのではないのだろうか。
何とか俺の中にいる天使と悪魔も共同戦線張らせて頭をフル回転させ、言い訳を考えるも……
リゼルの時と同じように、だがゆっくりと押し倒されてしまう。
下から見上げるとカノンの胸の谷間がくっきりと目に入ってしまい、速攻で理性と言う市民革命を起こして本能と言う名の脳内現政権をフルボッコに。
直ぐさま視線を逸らすという新政策を打ち出して現状の打開を図ろうとするも、馬乗りになったカノンが両手で俺の顔を固定する。
カノンがはめている黒く長い手袋越しに、温かい感触が頬に伝わってきた。
「……マスター、見て」
と言ってカノンは有ろうことか殆ど布地など無い自分の下着に手をかけて……とここでカノンが俺を固定した手が外れたことに気付いて慌ててまた逸らす。
……流石にそれは谷間を覗いてしまうのとはレベルが……
耳にはカノンから少々不満そうな声が入ってくるが、「いいもん」とだけ言って甘い声で今の行動を説明しだす。
「マスターは手袋越しに、とかニーソックスで、とかのフェチは無さそうだから少しでも興奮してもらおうと思っただけだよ。でも……ちゃんとマスターが私に興奮してくれて本当に良かった。固いの、当たってたもんね。……下着も、脱いだし、ちゃんとソックスの上の太ももで挟んで、肌の温かさ感じさせながらしてあげるから……」
「い、いや、カノン、あのな!―」
最後の抵抗を試みようとするも途端に悲しそうな顔をして泣きそうな、とても小さな声を出すカノン。
「……リゼルにはしてもらったのに、私じゃ、やっぱりダメなの?」
ぐっ、そこを突かれると……
それに今にも泣きそうな顔をしているカノンに否と言う事は出来なかった。
「い、いや、そういうわけじゃ……」
そこまで答えるとカノンの表情は一転し、小悪魔のような笑みを浮かべて……
「フフッ、―気持ち良くなってね、マスター」
※再び省略です
……何故だろう。
泥沼にはまった気分だ。
リゼルの段階で何とかできなかった俺が悪いのだろうか。
でもあんな凶悪な脅しに屈しないなんてことができる、そんな人間は果たしてこの世界にいるのだろうか?
いるのなら是非とも俺にその方法を教えて欲しいものだ。
カノンは戻り際に「……私が強くなったら、最後まで、して欲しいな」とカノンにしては珍しい、一切のツンや照れ無しに言いきって行ってしまった。
…………はぁ~。
一層深いため息をついて戻ってみると今度はエフィーが六神人形6体全てを引き連れて立ち上がる。
個人個人での話ってことのはずなのに……もう嫌な予感しかしない。
その後、エフィーと共に話せる場所まで移ると以外にも直ぐさまエフィー以外の6体に押し倒されてしまった。
完全に不意打ちだ。
エフィーが来るとばかり……
それに未だ何も話してないんだが……
とは言ってもエフィーについてはカノンやリゼルとは違って既に「強くなる」ということについては本人の口から聴いているのでエフィーもそこはすっ飛ばしたのだろうか?
と疑問に思っているとメカ4体に四肢を抑えられ、1体は十字になるよううつ伏せになって俺の腹の上から抑え込んでくる。
ここまでしなくても別に逃げはしないって!!
「エフィー……これについては……説明はあるのだろうか?」
最終の望みをかけて俺を見降ろすエフィーに尋ねてみる。
「……ご主人様、カノンさんやリゼルさんからもお聴きしたかと思いますが……私達は強くなります」
「うん、それは聴いたな。そのこと自体は嬉しい。ありがとうな。……それで」
と話を正常に持って行こうとしたのだがエフィーは止まってくれないようだ。
残りの一体、紅蓮の瞳と長い髪を持つ焔が自分の衣装に手をかけてずり降ろす音がエフィーと真剣に話し合っている声と共に聞こえてくる。
エフィーはカノンのように、最初に買ってあげた白のワンピースのみだったので……下は……
……それはいいんだが両腕両足+腹部に女性一人がしがみ付いてるって……状況的に言えば羨ましがられるのかもしれないが上空から見たら結構異様な光景じゃね?
「ホムラ、いいですね?カノンさんに教えてもらったように……」
「はい、エフィー様。キチンと私の臀部とエフィー様の臀部で密着して挟み込みます。そしてそれから練習通り上下に」
「ええ、その通りです。それでお願いします」
……またカノンの奴か。
ってかマジで動けねぇ。
力を入れようとすると敏感に感じ取ってしがみ付いている力を強くされる。
それに伴って胸も惜しげも無くくっ付いてくる。
製作者……リアルに作り過ぎなんだよ、凝るなよ、こんなところ!!
これならまだコアラ5匹にしがみ付かれてる方がまだ楽だわ。
「……ではご主人様、失礼します。―ホムラ」
「はい、エフィー様……動きます」
※……省略です……
もう……あきらめることにします。
エフィーは6体を引き連れて戻って行った。
去り際に「……私の胸がカノンさんやシアさんみたいに大きくなるまでには、ご主人様に最後までして頂ける位に、強くなりますから」とこれまたそうなることを疑わないような純粋な眩しい程の笑顔で告げられた。
……………………はぁ。
切り替えるとしても、ここまで来てシアだけ断ったらそれこそマズイだろ。
一人だけ、断られたってことでシアが傷ついてしまう結果になる。
……流石にそれはダメだよなぁ……
戻った時には当たり前だがシア一人だった。
なのでどこかに移動して、という事にはならずシアの隣に腰を下ろした。
「……お疲れ様です、ご主人様」
「お疲れ様、という事は……」
一縷の望みをかけてみるも……
「……その、できれば、私がさせていただくことも、ご容赦いただきたい、です」
シアは頭につくケモ耳まで真っ赤にして途切れ途切れながらも最後までそう言ってしまう。
……こうなったら、もう、仕方ない。
「ああ、スマン、シアや皆を責めている訳じゃないから。純粋に俺のためにしてくれてるんだろう?」
「……はい。今の私達は奴隷だという事を仮に除いたとしても、……強くはありません。ですから、ご主人様にのみ、気持ち良くなっていただいて……その先は、最低でも私達が強くならなければ、と」
ん?
今「除いたとしても」と「強くはありません」の間だけ意図的に言わないようにしなかったか?
……そこだけは俺に言えない何かがあるのだろうか?
……分からん。
それに意図的に言わないようにしているとしたらあえてそこを穿り返すのもシアに悪い、か。
「……そっか。まあ皆色々と俺には言い辛いことも有るかもしれないけれど、シアと二人でリンカの町を出て、小屋で話した時みたいに、言いたくなったら俺に言ってくれ。弱いなりにも、少しは力になれると思うから」
「……やっぱり、ご主人様は、こんな時でも、ご自分のことより、私達のことを、気にかけて下さるのですね」
シアは何かを呟いて隣から手を伸ばして俺を優しく押し倒す。
「私の心も、体も、この髪の毛1本ですら、全てがご主人様だけのものです。それが今後ずっと、一生続くためにも、必ず私は強くなって見せます。待っていて下さい、ご主人様」
しばらく見惚れてしまうようなあまりに綺麗なシアの笑みに圧倒されて「あ、ああ」としか言葉を発せられなかったが数秒後その金縛りのようなものを何とか振り払う。
「エフィーやカノン、リゼルにも言ったことだが、純粋にそれは嬉しいよ。ありがとな」
それを告げると、シアは「……はい」とだけ答えてくるりと体を時計回りに半回転させる。
……シアは座っていたから気づかなかったがシアもエフィーと一緒に買って上げた、スカートとニーソックスを履いている。
……何故それに今気づいたか。
うん、だってシアが半回転したってことはそれが今目の前にあるってことだから。
つまりはシアの下着、そしてそれとニーソックスとの間にチラッとだけ見えるムチッとした雪のように白く輝く太ももが見えてしまっているのだ。
俺の体の下半分、つまりは下半身だね、うん、テンパってる―そっちの方からシアの声が聞こえてくる。
「ご安心ください。この大きくなってしまった胸も、ご主人様だけのものです。カノンに教えてもらった通り、胸だけでなく口と併せてご奉仕させていただきます」
いや、そこで不安になっていた訳じゃなく……ってもういいや面倒くさい。
「……ご主人様、気持ち良くなって下さいね?失礼します……」
※申し訳ありません、省略です(皆さんの熱意如何では……もしかしたら……)
……シアは先に帰した。
ちょっとだけ時間が経った後俺も戻ることに。
……この回数は流石に疲れた。
ディールさんに薬を貰っておいて本当に良かった。
ん?何か引っかかるが……
もうその何かを考える力は無い。
取りあえず薬だけ飲んでもう寝ることにした。
…………お休み…………
そして朝、やはりあの薬はバッチリ効いていた。
昨夜あれだけ出しといて目覚めはスッキリだ。
疲労も感じない。
現に両手もこんなに柔らかいものをにぎ…って…………へ?
ム、ニュ……ムニュ!?
慌てて布団を引っ張るとそこには生まれた姿のままのクレイと聖獣3人が。
俺はクレイの二つの禁断の果実を握っていた。
やばい、このままでは失楽園に!?
何故!?ってかこのベッドの大きさで俺入れて5人……ってあれ!?俺ベッドで寝てない、床で寝てたのか!?
「…………カイト、起きた?」
「……ん~、お兄ぃ、うるさいぃ」
「……兄さん、えへ、えへへへ……でありますぅ」
「……ふあぁ……おはようございます、旦那様、クレイさん」
いつもなら目覚めが悪いクレイがしっかりと目を覚ましたことに驚愕を覚えつつも共に目覚めたユーリを初め、本当に俺以外の皆が布団一枚でしかその身を隠せていないことにパニックになる。
「お、おはよう……じゃないわ!!何でこんなところに!俺、寝る前に確認したぞ、ちゃんと俺はベッドに入って……」
「……クレイ、カイトと、一緒に、寝る、したかった」
「クレイさんのお願いを聞くためだったとはいえ、勝手に旦那様のお部屋に入ってしまったこと、申し訳ありません」
ユーリは本当に申し訳なさそうに頭を下げるがそれと同時に身を隠していた布団がハラリと落ちかけてしまう。
「あら」
「『あら』じゃねえ!!隠せ隠せ!!」
「本当に……そう言うところあざといよね、ユーリって」
リンはいつの間にか目覚めていたようで落ちかけた布団をキャッチしてユーリに手渡す。
「……あざとい、ですか?ただ旦那様に目の保養を、と思ったまでなんですが」
「それがあざといって言ってんの。……お兄ゴメンね、やっぱり長い間離れるわけだからさ、お兄の肌身が恋しくなっちゃった」
「……そう、だったのか」
……そんなこと言われたら頭ごなしに怒れなくなってしまう。
「……でも、流石に服位は着てくれよ。朝から心臓に悪いわ」
「えへへ、ゴメンね?」
可愛く舌を出して謝罪するリン。
本当に可愛く見える辺り、これも狙って見せているのだろう。
「……こうしないと、カイト、帰ってこないって」
クレイがいきなりそんなことを言う。
「へ?帰ってこない?俺が?」
「……うん」
クレイが俺の質問に肯定した時部屋の中で「(ヤバッ!)」と小さく誰かが呟く声が聞こえた。
「……ホへ?こうしないと、兄さんが……帰ってこないんじゃなかったでありますか?」
眠たそうに目を擦りながらフェリアが状況を把握して同じように尋ねてくる。
「……んな訳ないだろ。誰だ、その情報流した奴」
「……ゴメンね、ちょーっと私、用事を……」
「…………リン」
リンの抵抗虚しくクレイの指は無情にも犯人を指差してしまう。
クレイ自身が自分の意志で差したんだ、決してどこかの魔界の探偵に脅迫され、強要されて指差したわけでは無いだろう。
リンはとても居心地悪そうに眼を泳がせては言い訳を始める。
「い、いや~、ちょ、ちょ~っとリンちゃんの方にも誤解があったのかな」
「証拠は!?証拠はどこにあんだよ!?」と最初に言い出さない辺り犯人としては優秀な方だろう。
「……ごかい……五階でありますか?ここは一階建てであります」
「いや、フェリア、“五階”じゃなくて“誤解”。勘違いとかのほうな」
そうやってフェリア自身の勘違いを解いてやると、フェリアの顔は次第にプルプル震えだす。
……別に過去俺が消し去った盗賊のお頭のように進化のために震えているわけではない。
「じゃ、じゃあ……兄さんは裸で添い寝しないと、体の細胞が徐々に壊れてそのまま兄さんが大気へと還ってしまうというのも……」
「…………ウソ?」
フェリアの問にクレイも首を傾げてリンに尋ねる。
……いや、二人とも、流石にそこは気付こうや。
「……クレイさんが必死にお願いしにいらっしゃるからどう言う事かと思えば……リン、またあなたですか」
ユーリのその笑顔の裏に隠れる怒りの度合いは背後にゴゴゴゴッと言う効果音が付きそうな位だ。
怒っていても笑顔だけは崩さないところは評価されてもいいんじゃないかと思えてくる。
リンが以前「ユーリは腹黒だ」ということを言っていたがもしかしたらユーリはユーリで苦労人なだけなのかもしれない。
「な!?ユ、ユーリだって別に満更でもなく裸になってお兄を抱き枕にしてたじゃない!!フェリア、アンタも『し、しししし仕方ないであります、兄さんのいちいちいち一大事でありますから、これはフェリアが文字通り一肌脱ぐしか…………無いでありますな♡えへへへ……』とかコソコソ隠れて言ってたんだから同罪じゃん!!」
「な!?あ、あ、あれはち、ちが、違うであり、あります!!」
「ほらどもった!!図星なんだよ!!」
「……はぁ……本当に、あなたは……申し訳ありません、旦那様、クレイさん、リンがどうやら嘘をついていたようです。後で私がきつーく言い聞かせておきます」
ユーリは嘆息して俺とクレイに頭を下げる。
今度は布団を落とすようなことはしない。
それを見てリンは口を尖らせて、
「で、でも、でもだよ!?これでもしかしたらお兄が私達との触れ合いで戻って来たいな、とか思ってくれるかもしれないじゃん!積極的にお兄にそう思ってもらえる方が―」
「それはあなたの勝手な希望的観測でしょう。そんなもので私達だけならまだしも、クレイさんや旦那様まで―」
そこまで二人が言い争いをしたところで……
「……カイト、ちゃんと、帰ってくる?」
とクレイが真っ直ぐな、しかし不安が混じった瞳で、俺を見つめる。
本当に落ちてしまった布団など眼中になく、俺しか目に入らない、と言ったように……
「ク、クレイ、せめて布団をキチンと―」
「帰って、来る?カイト、帰って、来る?」
そしてクレイは俺の服の端をギュッと握って表情まで不安そうにしながら尋ねてくる。
クレイが話を遮ってまで同じことを繰り返して主張するなんてことは……
それだけクレイにとっては俺が肯定しないことは不安を誘う要素なのだろうか。
なら、しっかりと明言しといてやらないと。
「……ああ、ちゃんと帰ってくる。約束だ」
そう言ってやるとクレイは安心したのか、服の端を引っ張るのを止め、笑顔になる。
「……うん、約束」
クレイにとっても“約束”と言う言葉は特別な意味を持っている様だ。
俺も、この世界に来てからは一度たりとも約束が破られたとは思ってない。
それ位に俺は“約束”と言う言葉は重要視している。
それがクレイにも伝わったのなら何よりだ。
ユーリやリン、フェリアもこれを聴いて大なり小なりホッとしていると言った表情だ。
それは良かった、皆の不安は出来るだけ拭い去っておいた方が良いからな。
そして、その後何やら騒がしいと駆けつけたレンに4人の裸の女性と俺が同じ部屋にいたという事実について尋問を受けるという一騒動あったがそれ以外は特に問題は起きず、シア達もしっかりとあの後眠れた様子。
ディールさん宅前に出発前集合した。
勿論ディールさんとユウさん、それにクオンさんも見送りに出てくれて、皆俺とレンの出発に立ち会ってくれた。
「……以上の説明通りに進めばこの迷いの森を抜けることができる。後はこのブラックドッグ達が王都まで運んでくれるよ」
「はい、わざわざありがとうございます。……それと、皆のこと、よろしくお願いします」
「うむ、それについては任された……そっちも頼んだよ、カイト君」
「はい」
ディールさんと入れ替わりにユウさんが前に出てくる。
「……昨日も説明したけど、第10師団は皆、良い子達ばっかりなんだ。だから……」
「はい、大丈夫です。女性だけのところにポンと一人男騎士が入ってくるわけです。何かしらの反発が無い方がおかしいですから。それに、シキさんもいらっしゃいますし。上手くやって見せます」
「うん……カイト君、本当にありがとう。僕だけじゃなく、第10師団のことまで」
「いえ、気にしないで下さい」
「……シアちゃんは必ず今よりも強くして見せるから」
「はい、お願いします」
今度はクオンさんが出てくる。
そして短く一言。
「……ヨミのこと、無理はなさらないで下さい。リゼルさんの修行は関係なくきちんと見ますから」
「……無理のない範囲で、全力で探させていただきます。リゼルのこと、よろしくお願いします」
「……はい。ありがとうございます」
その間レンに俺のことを頼んでいた皆は俺の下に集まってきた。
リン達聖獣が最初に来た。
「お兄、ちゃんと戻って来てよね?」
「ああ。分かってる」
「……フェリアも、待ってる、であります」
「……おう、ちゃんと帰ってくるから待ってろ」
「旦那様、無理だけはなさらないで下さい。こちらのことは私達だけで何とかしてみせますから」
「……善処するよ」
その返事に少し不満げながらもユーリは下がってくれる。
……ここでだけ嘘ついて納得させるってのは違うだろう。
「……カイト様。お気をつけて。……ちゃんと私も戦うために、強くなりますから」
「……ああ、シーナ、あまり根を詰めずにじっくりな」
「……はい」
「ご主人サマ、御用がございマシたら召喚でお呼び下サイ」
「……ああ。まあディールさんの迷惑にならないよう極力控えると思うが頼りにしてるよ、サクヤ」
シーナ・サクヤと入れ替わりに来たのはクレイだ。
「……クレイ、カイト帰ってくるの、待ってる」
「……ああ、“約束”だ」
「……うん、“約束”」
それを言ってやると安心してクレイは下がって行く。
……本当に魔法の言葉か何かのようだ。
……そして最後に、4人が。
「……主殿、我等は、必ず、強くなるからの」
≪主様が帰ってきてくださった時、もう主様のなさることと言ったら休むこと以外ない位に≫
「マスター、その時は一杯……昨日なんかとは比べものにならない位……気持ち良くしてあげるんだから……だから、ちゃんと無事で帰って来てね?」
「ご主人様、ご主人様の隣に立たせていただくために……私達は強くなって見せます」
「はい、エフィーの言う通りです。私達は必ずご主人様のいらっしゃるところにまで上り詰めて見せます。……待っていてくださいね」
別に俺は死地に向かうみたいな認識は無いんだが……
これだとなんか俺に死亡フラグ立ったみたいで嫌だな……
でも折角皆その気で言ってくれてるのに水を差すわけにもいかない。
俺は居住まいを但し、真摯に答えることにする。
「……ああ。帰るまでの楽しみにしておくよ―じゃあ行ってきます」
「じゃあね、皆、ちゃんとボクがお兄ちゃんを守るから安心して!!―行ってきます!!」
俺とレンはそうして皆を背に王都へと出発した。
途中の※はジョークですのであまり本気になさらず流していただければ。
リゼルの脅迫の対処法をご存じの方がいらしたら是非お教え願いたいです。
これで第4章終わり……と申したいところなのですが一つ問題が。
以前お話したステータスのことについてです。
「然るべき変化の後」と申していたと思うんですが、もうお分かりでしょうか、変化とは皆の修行、そして闇市へと向かってもしかすれば仲間が増えるかもしれないことです。
折角ステータスを上げても修行等が一切反映されていなければ拝見いただいたとしてもあまり面白くないでしょう。
それにカノンの従者だって増えたり進化したりと大忙しの予定です。
ですので修行の内容等が反映されるだけを書いて、第4章を終わりとして、ステータスを開示したいと思います。
何かご質問等ございましたら感想でも何でも私は構いません、お送りいただければと思います。
あっ、勿論別にこのことに限定しているわけではありませんので。




